影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『chapter1 黒い者襲撃!』

「──────ッ」

「あ? どうしたみみ……ッあ?」

「これは!」

 

 

 いつの間にか私たちを囲むように悪意ある気配が周囲に満ちていた。

 

 

「2人ともいったんここは逃げムグッ!?」

「「みみ子!? (さん!?)」」

 

 

 取り合えず2人を連れて逃げ出そうとした矢先、背後にいた黒い者が私の口元を押さえ、グイと腕で抱き寄せた。

 

 

「ムグ~ッ!」

 

 

 な、何てデリカシーも気づかいも無い人なのだろうか! しかも臭い! エチケットが欠片も感じられない! なんて人だ! みみ子ムカつく! 

 

 

 苛立ちの発散もかねて投げ飛ばしてやりたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。私はあくまでか弱い女子高生で、ここは彼らを観察する事が私の仕事なのだから。

 

 

「あ、テメーなんだこら!」

「そのもやしを離しなさい!」

「ふっふっふ……」

 

 

 またもやしって言ったなぁ~! もう、もう! 何なんだよ~! ていうか後ろの人凄い意味深な笑いしてるけど、あなたただの雑兵ですよね!? なにこう、俺は危険なナイフなんだぜ? みたいにできるんですか? しかも私を抱えながら! 私ってもしかして人質扱い!? ()()に舐められるってムカつくなぁ~! ボスの言った通りだ! こんなの我慢できる訳が無い! 

 

 

 でも我慢、我慢しないと。

 

 

「ムガムガ(早くしてよ~)」

「俺たちは『教団』の使いだ。くくく、それにしてもツイてるぜ。ガキ一人なぶろうとしてたらまさか聖女とおまけに()()()までついてくるとはな」

「ムガッ~!」

 

 

 あんたもですか! いい加減にしろ~この~! 

 

 

「問答はお前らを連れ去った後でたっぷりとしてやるぜ! その体と一緒にな! かかれ!」

 

 

 リーダーの黒い者が命じるや、私達を囲んでいた『教団』に洗脳された兵士たちが飛び掛かってきた! 

 

 

「『教団』の雑兵が生意気な!」

「なんだか知らんがお前がスゴイ悪い奴だってのは分ったぜ!」

 

 

 二人はすぐさま臨戦態勢に入り、かかってきた兵士たちを迎え撃った! 

 

 

「おりゃ! おりゃ! おりゃあ!」

 

 

 光黒君は大剣をバットみたいに構え、ナイフを逆手に持った兵士を大剣の側面を叩きつけて吹き飛ばした! 後から続く兵士も同様に、まるでボールのようにポンポン吹き飛ばしてゆく! 

 

 

「えい! たあ!」

 

 

 豪快な動きで撃退して行く光黒君に対し、光さんは光球で一人一人を撃ち抜き、確実に意識を飛ばしていった。しかし接近されるや光球を握り締め、思いっきり腹部に叩きつけて吹き飛ばした! 

 

 

 吹き飛んだ兵士は私のすぐ横を物凄い勢いで通過していった。あぶな! 雑! 清楚な見た目に反して凄い雑ですよあの人! 

 

 

 二人の殲滅速度はすさまじく、あっという間も無く兵士たちは全て片付けられてしまった。

 

 

「ふん、雑魚を片付けた程度で何を粋がっていやがる!」

「フギャッ!?」

 

 

 と、黒い者は私を放ると、その両手に黒炎を生じさせ、二人に向かって火炎放射さながらの爆炎を放った! 

 

 

『炎』の異能だ! 基本的に属性の異能はポピュラーなものとされ、黒い者の中でもその割合が多いというのはボスの弁だ。

 

 

「あぶねぇ!?」

「ふん」

 

 

 光黒君は横に跳んで危うくかわし、光さんは光を盾にすることで造作もなく受け切った。

 

 

「お前のそれ良いな~。俺にも使わせてくれよ!」

「この力は私が祖先より代々受け継いできた力です! 他者への譲渡は出来ません! というか貴方のそれこそ何なんですか!」

「知らん! 爺さんが言うには生まれた時から俺のそばにあったらしいぜ!」

「意味が解りません!」

「俺だって知らねーよ!」

「(怒!)」

「(怒!)」

 

 

 仲いいなおい! もしかして2人ってけっこう似た者同士なのだろうか? だから同族嫌悪的な感情で衝突し合うのかな? 

 

 

「貴様らぁ~! 俺を()()にイチャつきよってからに!」

「イチャついて!」

「ねぇ!!!」

「ぶえっ!?」

 

 

 光さんが光の盾を爆散させて黒炎を散らし、その隙に接近した光黒君が大剣の側面で黒い者をぶっ叩いた! いややっぱ仲いいでしょ君たち! 絶対! 

 

 

 黒い者は地面を二転三転しながら無様に地面を転がった。ざまぁみろ! わたしを雑に扱った報いだ! やーいやーい、ばーかばーか! 

 

 

 と、内心舌を出して馬鹿にした報いだろうか? 

 

 

「グガガ……この、ガキ!」

「え゛!?」

 

 

 怒り心頭の黒い者は、両手の中に先ほどとは比べ物にならない黒炎を瞬間的に生み出し、周囲の被害もお構いなしに解き放った! 当然近くにいた私は巻き込まれるわけで。

 

 

(やばいやばいやばい!)

 

 

 既に間近まで迫った黒い炎の壁に、私は冷や汗をダラダラと流しながら、咄嗟に『付与』の異能で『頑強』と『耐熱』を全身にかけてガードしようと試みた。

 

 

 しかし。

 

 

「うぉおおおおおお!!!」

 

 

 吠えるような雄たけびが聞こえた。目を向けると、そこには()()()()()()()()()()()を黒炎に叩きつけて雲散させる光黒君の姿が! 

 

 

「バカナーッ!?」

「俺のダチに何してくれとんじゃあああああ!!!」

「ムンッ」

 

 

 光黒君は大剣の側面を黒い者の脳天に叩きつけた! 黒い者はそれで昏倒し、ばったりと大の字に倒れ、動かなくなった。

 

 

「貴方、それ……」

「ハァー、フゥー……あ? それ?」

 

 

 光さんの指さす先、薄っすらと輝く大剣へ光黒君も目を向ける。

 

 

「あ? 何だこりゃあ?」

 

 

 薄い光を帯びる大剣に、光黒君は素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「貴方も知らないんですか?」

「あぁ、今までさんざ使ってきたけど、こんなの初めてだ」

「この光、私の『光』と同じ……? 貴方はどうお思いですか? ()()()()

 

 

 光さんが呼びかけると、物陰からぬるっと生徒会長が腰に差したロングソードから手を放しながら現れた。

 

 

「覗き見とは人が悪い。手伝ってくれても良かったのでは?」

「まさか! 手伝おうとしたとも! それよりも前に終わってしまっただけさ」

 

 

 嘘だ! だってこの人途中から来てたけど、様子を窺うばかりで手を貸す気配が微塵も無かったもん! 

 

 

「御託は結構です。どうなのですか?」

「ふ~む……」

 

 

 輝く大剣に近寄り、しゃがみ込んでつぶさに観察する生徒会長だったけど、肩を竦めて立ち上がった。

 

 

「文献で見た『勇者の聖剣』によく似ているが、あの剣は決して朽ちぬ不死の剣と聞く。恐らくこれはその()()()()か何かだろう。辛うじて力が残っていて、それが君の想いに端を欲し、目覚めた、なんてどうだ?」

「まあその線が妥当でしょう。どうですか? これは貴方の異能でしょう? 何か分かりませんか?」

「わっかんね。しかもこれ俺の異能でも何でもないぞ」

「え?」

「俺、異能持ってねーもん」

「「えぇ!?」」

 

 

 衝撃なカミングアウトに驚愕する2人。事前に答えを聞かされていなければ、私だって同じように驚いていたはずだ。それでマシンガンのように疑問をぶつけては光黒君にはたかれる。ありありと目に浮かぶ。私ならきっとそうなる。

 

 

 でもそうならない。私にはやるべきことがある。いまがその時だ。

 

 

「ね、ねえ光黒君」

「あ、何だみみ公?」

 

 

 振り返ってくれた光黒君へ、私はある提案を口にする。

 

 

「その剣の正体が分からないんだよね? 助けになるか分からないけど、その剣を整備できる人に心当たりがあるんだ」

 

 

 怪訝な顔をする3人へ、私は紹介する。

 

 

 ジャンク屋、『J(ジャンク)B(ブロック)』を。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「といった感じです。いかがでしたか?」

「ふぅ~む」

 

 

 プードルの報告を聞き終え、俺は顎に手をやって思案する。

 

 

 事前に上げていた要注意人物全員との接触は済んでおり、その上、暗夜から勇者の力の片鱗を引き出すことに成功。更にはレトリバーの店へ誘導まで行ったと。

 

 

 デカシタ! 

 

 

 おどおどするプードルに、俺はだらしなく満面の笑みを浮かべて褒めちぎってやりたい衝動を秒で捨て去り、口の端をわずかに上げ、眉尻を少し下げて微笑みを作って労いの言葉を贈る。

 

 

「素晴らしい成果です。次も期待していますよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 ぱぁ、と顔を綻ばせるみみ子を見ながら、俺は次のプランについて考える。

 

 

 その時、スマホがメール受信しブルブルと震えた。

 

 

 プードルに退出を促し、彼女の姿が部屋から消えると、送られてきたメールを確認するため、スマホを取り出す。

 

 

 送り主は鳳凰院社長。内容は次の通りだ。

 

 

『明日企業間で秘密裏の談合あり。指定した服を着用しだい、○○ビルへ来るべし』

 

 

「はんっ」

 

 

 鼻で笑い、メールを削除した。

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