影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『焔部隊殲滅』②

「急げ、連中を鎮圧しろ!」

 

 

 派遣された騎士団が洗脳兵士や爆弾を括りつけられた神風型レギオンを相手に奮闘しながら叫んだ。

 

 

「畜生! やっと取れた休暇だってのに腐れ教団がふざけやがって!」

「俺だって今日は娘の誕生日だったんだぞ! くそったれまたドタキャンだ!」

「私だって!」

「僕も!」

「「ア゛ア゛ー!!!」」

「下らねーこと言ってねーで手を動かせ!」

 

 

 指揮官クラスの白い者が部下の騎士たちを怒鳴りつけた。冷血漢、鬼、万年童貞などぶつくさ言いながらも、騎士たちは向かい来る洗脳兵士や試作型レギオンを次々と打倒してゆく。

 

 

「良し凌ぎ切った──────ッ射撃班!」

 

 

 一通り殲滅しきったと安堵したのも束の間、間髪入れずに爆弾が括りつけられたレギオンが襲来してきた。

 

 

 しかもその数が狂っている。一体二体は問題なく祝福付与済みの自働小銃で撃破したのだが、後から続いてきたレギオンの大群に数えるのも馬鹿らしくなり、彼らは必死こいて撃ちまくった。

 

 

「数が多すぎる!」

「くそったれこんな数何処から!?」

「きっとこの町に量産工場があるんだ! そこから試作品共を解き放ってるに違いありません!」

「ヌゥウウ……」

 

 

 部下たちからの報告に白い者は唸り声をあげて思考する。

 

 

(このままではじり貧だ。部下の言う言葉を信じるならばその工場を叩かねば戦いは終わらぬ! だが、手が足りん!)

 

 

「うわっ!?」

 

 

 そうこうしている内についに迎撃が間に合わなくなってきた。射撃をすり抜けてきた試作型レギオンが騎士の一人に向かって飛び掛かってきたのだ。

 

 

「わあ!?」

 

 

 迎撃に夢中になり、彼らは咄嗟に動き出せなかった。不自然に巨大な頭のレギオンがそれに相応しい顎を開き、びっしりと生えた不揃いの乱杭歯を剥き出しにして騎士の顔を食い千切りに迫る。

 

 

「ひえー」

 

 

 まだ若いその騎士は恐怖に竦み上がり、縮こまる事しかできない。乱杭歯が迫る。彼は目を瞑った。

 

 

 だが、次の瞬間轟いた魔獣の吠え声染みた金切り音に思わず目を開け、入ってきた光景に目を見張った。

 

 

 地獄の獣の息吹か、はたまた鬼の眼光の如き火花をまき散らしながら振り下ろされた回転刃が、レギオンを頭から股下まで真っ二つに焼き切ったのだ。

 

 

「ゲッ!?」

 

 

 間近にいた騎士たちはレギオンの体液をもろにかぶり、ぺっぺっと口に入った体液を吐き出した。

 

 

「ははっ苦戦してるみたいじゃん?」

「貴様は〝保健所〟!?」

 

 

 レギオンの残骸を踏みつけながらチワワが白い者へ声を掛ければ、その場の全員が手を止めずに視線だけを向け、予想外の第三者の登場に目を見開く。

 

 

「おっと話は無しだ。そんな場合じゃねぇしな。手短に情報共有といこうぜ」

「……良かろう」

 

 

 僅かな逡巡の後、白い者は頷き、手振りでそのまま迎撃を続けることを命じるとチワワから送られたデータに手早く目を通し、その詳細に記された情報に再び目を見開く。

 

 

「レギオンの量産工場の事は分ってるな? 今暗夜(ゆうしゃ)たちにも同じこと言ったがよ、あたしらはこのまま地上に溢れた雑魚共の掃討を、あのガキ共には工場を制圧してもらう」

「……それしかないか」

 

 

 白い者は渋面を作った。得体の知れない者どもの力添えを甘んじて受け入れるのもそうだが、年端もいかない少年少女を頼みの綱にする事も、彼にとってはあまりにも苦渋の決断であった。

 

 

「仕方ねーだろ。そういう状況なんだ。使えるものなら余命間近のジジイだろうが生まれたての赤ん坊だって使ってやるさ」

「貴様……」

 

 

 あんまりの物言いに、白い者は睨みつけるが、チワワはどこ吹く風とばかりに肩を竦めた。

 

 

「甘ぇこと言ってんな。四の五の言える立場か。んなこと抜かしてる暇があったらあんたも動け。このボケ」

「くそ……」

 

 

 毒づくと、白い者は懐から刃の無い柄を取り出すと、力を籠めて光の刃を形成し、構えた。

 

 

「へえ指揮官以上が持つ光の剣ってやつか」

「無駄口を叩くな、〝保健所〟」

「へいへい」

『嬢ちゃん、第二陣、来るぜ』

「おう」

 

 

 トサケンからの警告に、チワワは短く答える。

 

 

「……」

「へっ」

 

 

 白い者の一瞥に鼻を鳴らし、チワワもケルベロスを構えた。応えるように魔獣が一際強く火花を散らすと、それを合図に両者は弾幕が張られる空間の中へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 

 エミリーはレトリバーによって改造された聖光教カスタムの自働小銃の引き金を引き、レギオンや洗脳兵士たちを次々と撃破してゆく。時折近づいてくる者あらば、異能の怪光線や〝保健所〟仕込みの格闘術で難なく組み伏せてゆく。

 

 

「ふんっ」

 

 

 千歳はエミリーの奮闘を一瞥し、鼻を鳴らしながら無造作に腕を振った。途端に吹き荒れる破壊のエネルギーの嵐が敵対存在を付近一帯の瓦礫ごと根こそぎ薙ぎ払ってゆく。

 

 

「オノレ―! 薄汚い裏切り者風情が我が焔部隊の誉れ高き花火会場を荒らすとは何たることか!」

 

 

 辛うじて嵐を避けたキツネ面型ガスマスクの黒い者が、その奥で目を血走らせて叫んだ。

 

 

「ははっ、下らんな。そんなに花火が好きなら、自分自身が爆ぜて見せろ」

「え?」

 

 

 言うや、千歳は黒い者へ掌を向け、人一人たやすく呑み込むサイズの破壊球を撃ち出した。避ける間など無かった。黒い者は破壊球と共に上空へと飛んで行き、次の瞬間凄まじい大爆発と共に消滅した。

 

 

「雑魚め……」

「ここは片付きましたね」

「おかげさまでな」

 

 

 睨む千歳を無視し、エミリーはスマホのアプリを起動し、敵エネミーの位置を確認する。

 

 

「一番近いのは……あっちですね。行きましょう」

「私に命令するな!」

 

 

 掴みかかってくる千歳の手をひょいとかわし、エミリーはそのまま駈け出していった。

 

 

「待てッ!」

 

 

 怒りながら、千歳も後に続いた。戦いはまだまだ終わる気配を見せない。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「皆さん! ここは私が押しとどめますから、急いで騎士団の避難地点まで向かってください!」

 

 

 

 シバイヌは未だ避難の終わっていない地点へと赴き、一人教団の大群を押し留めていた。

 

 

 辛うじて人の原型を残す悪夢から這い出たかのような怪物の大群が、狂ったように襲い掛かってくる。シバイヌはイヌガミの引き金を引きながら周囲を見回し、逃げ遅れた市民がいないか確認していた。

 

 

『おいシバイヌ! 近くに生体反応がある! 確認しろ!』

 

 

 トサケンの報告に周囲を見回すと、見つけた。自動販売機の影。そこに、もたれかかるように背を預けた小さな子供がいた。

 

 

 足を負傷しているのか。しきりに辺りを窺ってはいるが、動く気配が無い。

 

 

「んん……」

 

 

 シバイヌは引き金を引く手を緩めず、じりじりと子供の方へと近寄り、隙を見てイヌガミの内側へと引き込んだ。

 

 

「わっ」

 

 

 シバイヌは決して離さないように子供を抱き寄せ、イヌガミに激を送るように、引き金を引く手に力を籠めた。

 

 

「大丈夫! お姉さんが全部やっつけちゃうんだから! だからね、もう平気だよ」

「うん。ありがとうお姉ちゃん!」

 

 

 子供は安堵したかのようにシバイヌにしがみつき、気絶した。

 

 

「~~~~~~もう! いい加減しつこい!」

 

 

 守るものができ、より一層殲滅に力が入ったシバイヌは、らしくなく声を荒げ、グレネードと小型ミサイルを一斉発射した。

 

 

 爆炎が悪夢の軍勢を焼き払う。しかし、四散した仲間の肉片を踏みしめ、次から次へとレギオンたちはやって来る。

 

 

 相変わらず並の数ではない。尽きる気配が見えない。次第に追い詰められてゆくシバイヌ。

 

 

「このままじゃ……」

 

 

 シバイヌが懸念したその時、彼女の後方からマズルフラッシュと共に5.56mmの弾丸が飛来し、レギオンたちがバタバタと倒れてゆく。

 

 

「え?」

 

 

 シバイヌが目をしばたくと、白い近代的なボディアーマーをつけた騎士たちが横に並び、立ち膝姿勢で突撃銃の引き金を引いた。

 

 

「手を貸すぞ〝保健所〟!」

 

 

 一際大きな指揮官の白い者がガトリングガンを前方に向け、引き金を引いた。

 

 

 狂ったように吐き出される弾丸が、悪夢を晴らす嵐のように吹き荒れ、地獄の住民を元居た場所へと帰してゆく。

 

 

「……うん! 一緒にやっつけよう!」

「おうとも!」

 

 

 シバイヌは騎士の一人に子供を預けると、白い者の横に並び、イヌガミの引き金を引いた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「だぁああああ! 多い! 多いわ!」

「四の五の言ってないで手を動かしてください!」

「爆弾が括りつけられているタイプがいるぞ! 注意しろ!」

 

 

 暗夜の絶叫は、遠距離で倒された自爆型レギオンの爆発にかき消されて消えた。さらにその余波で同タイプのレギオンが次々爆破し、建物を、コンクリートを破壊してゆく。

 

 

「うひゃあ!?」

 

 

 余波を浴び、小柄なプードルはひっくり返った。

 

 

「ほら言わんこっちゃない!」

「す、すまねぇ……」

 

 

 軌陸の叱責に、暗夜はプードルを引っ張り起こしながら素直に謝った。

 

 

「馬鹿なこと抜かしてねぇでとっとと行くぞ! 雑兵どもは他の犬や騎士共に任せとけ! ウチらは蠅を寄越してくる糞溜めに向かうぞ!」

「ちょっとポメラニアンさん! 汚いですよ!」

「うるせーバカ。そんなこと言ってる場合か!」

 

 

 績に怒鳴りつけると、ポメラニアンはアプリと自分の異能による探知で敵の位置を把握すると、優先順位をつけてゆく。

 

 

『ポメラニアン、やべぇぞ! 1個分隊クラスの敵が近づいて来てる! 速くその場を離れるんだ!』

「クソ! おいガキ共行くぞ!」

 

 

 ポメラニアンは暗夜たちを引き連れ、レギオン生産工場があるエクスプロシブ社工場跡地に向けて前進を開始した。

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