影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『ネオン街地下施設群掃討』

『オペレーターはいつも通り俺。そして今回はニンゲンドックも担当する。おら挨拶しろ。いつまで嘆いてんだ、このボケ』

『くそ、医療部隊に派遣されるって話だってのに。間に合ってるから他のことやれとかぬかしやがってあの野郎! 聞いてた話と違うんだが! 報連相も出来ねえのかあの生臭坊主共が!』

 

 

 通信からトサケンとニンゲンドックの元気の良い声が聞こえてくる。

 

 

『お前ら位置についたか? そろそろ作戦時間だぜ』

『コード・クレイン、輸送は完了。持ち場に向けて飛翔を始める』

『コード・フェザント、輸送完了。こちらもすぐに現場に向かいます』

『コード・スワン、輸送完了、及び現地に到着した。作戦合図と同時に強襲を開始する。まだ準備は終わらないのか? 野良犬上りは準備も遅いのか?』

『チワワ、準備完了。いつでもいけるぜ。他は?』

『ポメラニアン現地到着。これから準備を始める。うるせえ鳥どもだ。てめえの運転が雑だから体が凝ってしょうがねえや』

『何だと貴様!』

『シバイヌ、準備完了! いつでもどうぞ!』

 

 

 犬たちも各々位置に着いたようだ。鳥どもはまだ位置についてはいないが、犬たちを輸送した後だから、こればっかりは仕方がないと諦めるしかないだろう。

 

 

「イミテーション、こちらも準備は済んでおります」

『そうか。おい鳥ども。お前らの速度ならもう着いただろ。騎士共はどうだ?』

 

 

 ニンゲンドックが三本槍へと聞いた。

 

 

『……コード・クレイン、現地到着。騎士たちもすでに準備は終えている。後は作戦開始時刻になるまで待機している状況だ』

『そうかい。鳳凰院コープビルの防衛は?』

『コード・フェザント、そちらも完了しています。あとそこを防衛している警備員、武装警備員派遣会社〝ペットショップ〟? という会社から派遣されてきた人たちも防衛に当たっているとのことです』

『何だその胡乱な……あの神経質な社長さんがそんなみょうちきりんな組織を雇用するとは到底』

「……」

 

 

 ノーコメント、だ。

 

 

『んな下らねえことどうだっていいだろ。ウチの準備も完了だ』

『オーケー。じゃあ最終確認するぞ? 今回の作戦は〝保健所〟と騎士団との合同作戦だ。時間になり次第一斉に地下施設への襲撃。および敵組織幹部『グレンキュウビ』の捕捉。どっちかってーとこいつがメインだな』

『とはいえ、あんまり刺激しすぎると奴さんが何しでかすか分かったもんじゃねえから慎重にやらざるをえんがな』

 

 

 ポメラニアンが補足した。

 

 

『分かってんならそれでいい。〝保健所〟は準備完了だ。鶴の嬢ちゃん。騎士団(そっち)に繋いでくれ』

『分かった』

 

 

 僅かなノイズ音と共に、騎士団の方へと通信が繋がった。

 

 

『こちら騎士団消防士(ファイヤーデパートメント)部隊。繋いできたという事は準備は万端という事だな?』

『そういうこった。救護班を潤沢に抱えたお宅らの準備はずいぶんとお早い事で。使える人材が多いのはいいもんだな。えぇ?』

『まだ根に持っとんのかお前は……と、時間だ』

 

 

 トサケンの声音が変わった。

 

 

『これより〝保健所〟と騎士団合同による教団の地下施設群掃討作戦を開始する』

『作戦開始だ。各員、突入せよ!』

 

 

 号令の下、早速突入した騎士団の雄たけびや教団の怒号、破砕音が通信越しに聞こえてきた。

 

 

「では、我々も動くとしましょう」

『『了解。これより突入します』』

『三本槍、突入を開始する。行くぞ』

『りょうか~い』

『うぉお殲滅だ!』

 

 

 犬と鳥も各々突撃を始めたようだ。凄まじい破砕音と悲鳴が幾たびも聞こえ、途切れることなく続いている。

 

 

『言われた通り俺たちはお嬢ちゃんたちをメインにオペレートするが、何かあったらすぐに言えよ?』

『言っても無駄だぜ。こいつの秘密主義は度を超えてる。こりゃ筋金入りだ』

「……」

 

 

 好き勝手言いやがって。この色狂いが。俺が好きでそういう事をしてると思っているのか。

 

 

 通信から聞こえてくる高齢者共の小言を聞き流しながら、眼下の建物を見下ろす。パッと見れば雑多な商業ビルの一つしか見えないそれは、その地下には悍ましい教団の加工所が広がっている。

 

 

 実際この施設への襲撃はゲームでもあり、chapter8はこのネオン街での仲間との交流、その合間に教団の悪だくみの解決を挟む格好で進行する。そして最終的にグレンキュウビが街のど真ん中に現れ、建物をなぎ倒しながら紅に染まる化け狐が顕現するのだ。

 

 

 駆け付けた騎士団と焔部隊が激突する中で、暗夜たち一行はゆっくりと進行するグレンキュウビの下へ駆けつけ、決戦が始まるというのがchapter8のあらすじとなる。

 

 

 で、俺は交流と悪だくみへの対処を分けることにした。交流はみみ子と萌に任せ、悪だくみは俺たちが請け負う。

 

 

 暗夜たちのストレス管理の関係上、小刻みに教団と関わらせるよりも大規模な事件に放り込んだ方が効率的である事を俺は知った。

 

 

 野菜の栽培も常にストレスを与えるよりも、適度な刺激を与える方がよりおいしく実るものだ。人だってそう。飴と鞭のバランスは常に気を遣わねばならない。『暴力』に精通しているからこそ、その天平の傾き具合の見極めが出来るのだ。

 

 

 誇る事ではないと分かってはいるが許してほしい。俺にはそれしか誇るものが無いのだ。

 

 

 街のあちこちで騎士団と教団がしのぎを削っている中、人々は平穏そのものであった。真実を知らなければ、この街は楽しい。素晴らしい。しかし、そのテクスチャーを引っぺがせば、覆い隠された様々な不都合な真実に誰しもが眉を顰めるであろう。

 

 

 人は己の見ているものの中で生きている。それが悪いことではないが、そう言う奴等は想像もできないだろう。自分たちの平穏をぶち壊す事を良しとするような輩が、この世にはごまんといるという事実に。

 

 

((そもそもこの街に秘密裏に教団を入り込ませたのは京都の伝統主義の権力者共だし))

 

 

 権力への固執。伝統への固執。愛への固執。家族への固執。……平穏への固執。

 

 

 みんな何かにしがみついて生きている。それが脆く儚く吹けば飛ぶ様なものなのだとしても、人は何かを拠り所にする事を止められない。

 

 

 人は脆いのだ。だからこそ何かにしがみついていなければ、たちまちの内に人生という名の激流に流されていってしまう。

 

 

 固執とは要するに、己の魂という名の船を固定する(アンカー)の様なものなのだ。

 

 

 だから彼らが他の何かを傷つけてでも己の固執する物を守ろうとするのは、ちっとも不思議な事じゃない。結局の所人は誰しもが自分の身が可愛く、時としてあまりにも身勝手な選択をとるものなのだから。

 

 

 他ならぬ俺がそうなのだ。だから、俺が彼らの選択を否定する事など、出来るはずも無いのだ。

 

 

 何者にも注目されていない事を良い事に、俺は立っていたビルの屋上から身を投げた。轟々と唸る風の音を聞きながら、あっという間に眼前へと迫った地面を脱力しながら足を付き、勢いを殺さずに力を爆発させながらビルへと侵入した。

 

 

 静止した世界の中、全てを後方に置き去りにして地下施設の入り口の前に立つ黒い者へ手刀を撃ち込んで首を折り、入り口をこじ開け、中へと入り込む。

 

 

 誰も動かない時の中、俺だけが動き回り、施設内の指揮官クラスの黒い者だけを殺して回る。その傍らで民間人を閉じ込めていた檻の鍵を破壊して開け、その前に置手紙を一つ置いておく。

 

 

 すでにここに向けて残党処理班が向かっている事は確認済み。俺がするのは指揮官クラスの殲滅だ。

 

 

 最後の黒い者が目前に迫る。勢いを殺さず拳を突き出して後頭部を殴りつける。あっさりと頭蓋がひしゃげ、躯と化した黒い者の体がゆっくりと崩れ落ちてゆく。

 

 

 この施設の黒い者はこれで全滅だ。後は最奥にいる闇の者を殺せばこの施設で俺がやるべきことはお終いとなる。

 

 

 再び体を脱力させ、力を籠めて爆発させる。死も、嘆きも後方に置き去りにして、道中で邪魔になる洗脳兵士の首を刎ね、うろついていた四足型試作型レギオンの頭を踏み砕きながら施設の奥へと進んでゆく。

 

 

 最奥に入り口は鍵がかかっており、俺はダクトをこじ開けて滑り込む。そのまま最奥の部屋へと侵入し、勢いを殺さず後頭部に向けて拳を突き出す。

 

 

 流石に闇の者というわけで、かろうじて反応された。ギリギリの所で首をかしげてかわされたが、突き刺した拳を開き、その口をふさぎ、反応されるよりも早くもう片方の手刀で喉笛を切り裂いた。

 

 

「ぶへッ―――!?」

 

 

 片腕を火炎放射に置換した闇の者はスプリンクラーの様に血をまき散らし、よろよろと後退り、そして痙攣した。

 

 

「おげっ」

 

 

 吹き出ていた真っ赤な血は今や真っ黒な粘着質のタール染みた液体と化し、その顔は何処か解放されたかのように心安らかであり無垢であった。

 

 

「おげげ~!」

 

 

 片腕の火炎放射を向け、新しい玩具を買ってもらった子供のような笑みを、闇の泥は浮かべていた。

 

 

 こうなる事は分っていたから、動揺は無かった。時計を見る。侵入から1秒弱経過していた。

 

 

 これ以上の時間経過は許されない。残り5秒でカタをつける。

 

 

 信じがたい勢いで発射された黒い熱線をかわしながら、拳を握りこんだ。

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