影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『chapter8 京都ネオン街炎上』②

「シャアッ!」

 

 

 グレンキュウビは爆破エネルギーで構成された七支刀を瞬時に作り出すと、横薙ぎに振るい首を刎ねにいく。

 

 

 イミテーションは凄まじい爆破エネルギーが秘められた斬撃を上体を逸らし、地面に手をつき、天地反転の状態で回転しながら蹴りを繰り出す。

 

 

 速い! 

 

 

 反応する間もなく側頭部に炸裂した衝撃にグレンキュウビはたたらを踏んだ。イミテーションは間髪入れずに16の打撃を叩き込んだ。グレンキュウビは後退した。

 

 

「貴様、不遜であるぞ!」

 

 

 グレンキュウビは蠅でも払うかのように 〝尾〟を振るい、その軌跡を爆発させながらイミテーションを薙ぎ払い爆死させんとする! 

 

 

 しかし、無様に当たったかと思えばその姿はかすみ、雲散した。

 

 

「はっ!」

「ッ!?」

 

 

 いつの間にか接近していたイミテーションは瞬間的な当身を放ってグレンキュウビの目を晦ませると、右左のフックを顔面に一打ずつ。更には距離を離すことも兼ねた鋭いサイドキックすらも放った。

 

 

 グレンキュウビが反応したのはイミテーションが蹴りの反動で跳び離れたあとであり、放たれた七支刀の一撃は彼の残像を空しく切り裂くのみである。

 

 

「おのれ!」

 

 

 再び眼前に現れたイミテーションの打撃を辛うじてかわし、 執拗に放たれる小刻みな打撃を嫌い〝尾〟を旋回させて接近を拒もうとする。しかし悪魔はそれすらもかいくぐり、妖狐へと打撃を叩き込んだ。

 

 

 腹部にボディブロー。顎にアッパー。〝尾〟を絡みつかせて足を爆破しようとしたが、悪魔はすでに跳躍しており、更には肩に肘打ちを落とされ、反動で跳躍。〝尾〟の範囲から離脱していた。

 

 

 距離が離れ、両者は再び向き直る。構えたまま、円を足掻くようにじりじりと横へと動いた。

 

 

「……?」

 

 

 一拍子間が空き、そこでグレンキュウビは疑問に思う。なぜ爆発が起こらない? 

 

 

 その疑問は、直後に体表に乱れ咲いた爆発の花が解消した。グレンキュウビは目を見開く。

 

 

(時間の流れが……遅い……!)

 

 

 相対するイミテーションの動きがあまりにも速いがために気が付くのが遅れた。時の流れが滞留していた。全ては一瞬の出来事であった。

 

 

 見れば、周囲の動きは戦いが始まった時からほとんど動いてはいなかった。

 

 

(バカな! あの密度で一瞬だと!?)

 

 

 それは死を感じた者が死に物狂いで打開策を探るための一つのプロセス。人体の神秘の発露に他ならなかった。

 

 

()()()()()()?)

 

 

 その言葉に、グレンキュウビは違和感を覚えた。

 

 

 死? こんなものに? こんな、黒い者にも白い者にも届かぬような矮小で卑小で薄汚い裏切り者風情に、神聖壮大な教団の最終幹部が一人である『傾国』が、命の危機、だと? 

 

 

「ふざけるな!!!」

 

 

 グレンキュウビは激昂した。それに呼応して周囲の熱が渦を巻き、〝闇〟と交じり合い、何体もの〝狐〟を作り出した。

 

 

「カカレ!」

「「コーン!」」

 

 

 一斉に飛び掛かってきた〝狐〟に、イミテーションも同様に踏み込む! 更にはイミテーションを粉微塵にせんと〝尾〟までもが迫りくる! 

 

 

「コーン!」

 

 

 飛び掛かってきた一尾の〝狐〟をサイドステップでかわし、それを狙って勢いよく突き出された〝尾〟を側転でかわし、挟むように飛び掛かってきた二尾と三尾の〝狐〟を跳躍してかわし、そこを狙って四尾、五尾、六尾の〝狐〟が飛び掛かってきた! 更に背後から4本の〝尾〟までもが迫り来ている! 

 

 

 イミテーションはカッと目を見開いた。凄まじい死線。凄まじい状況に、イミテーションの意識は限界を超えて引き延ばされ、脳はほんの少し枷を緩めた。

 

 

 全てが鮮明に見えた。見なくても〝尾〟がどのように動き、どのような狙いがあるのかすらも手に取るように分かった。

 

 

 世界の全てを掌握したかのような全能感が胸に満ちる。しかし、イミテーションはそれらすべてを機械的に処理すると、それこそ機械の如く精密な動作で動き始めた。

 

 

 イミテーションは両手にサプレッサー付きの拳銃を懐から出し、四尾、五尾、六尾の〝狐〟に向けて発砲した。ただ撃つだけでではなく、放たれた弾丸に加速をかけ、弾速を強め、瞬時にプラズマ化させた恐るべき速度のエネルギーは過たず〝狐〟を撃ち抜いた。

 

 

 その反動で〝尾〟をかわし、ほぼ同時に来った2本の〝尾〟を身を捻る事でかわす。タイミングを遅らせて放たれた〝尾〟が迫る。イミテーションは両足に黒炎と白炎を灯し、これを、踏みしめた! 

 

 

 グレンキュウビは目を剥いた! その顔面に稲妻染みたジャンプパンチが叩き込まれた! 

 

 

「グォオオオ!?」

 

 

 妖狐は唸り、しかし信じがたい光景に未だ動揺の最中である! その後方で〝狐〟が! 踏みしめられた〝尾〟が同時に爆発した! 七尾、八尾、九尾は〝尾〟と同様に飛び石代わりに踏みつぶされ、これも同タイミングで爆発した! 

 

 

 イミテーション背後で紅が爆ぜる。煌々と照らされ、シルエットとなった中で黒と白の燃える瞳が闇に焼き付く。妖狐は戦慄した。悪魔は踏み込んだ。

 

 

 黒炎に包まれた右フックがグレンキュウビの脇腹を狙う! 

 

 

「カアッ!」

 

 

 グレンキュウビは頬が裂けるほどに大口を開き、爆破の息を吐いた! しかし、目も眩むような爆発は己の視界を塞ぐことと同様! 判断ミスである。動揺は未だ抜けきっていなかったか! 

 

 

 視線が逸れた一瞬の隙にグレンキュウビの腎臓目がけた白炎に包まれた左キドニーブローが叩き込まれた! 

 

 

「ヌァアアアア!」

 

 

 グレンキュウビは血を吐きながら憤怒に吠えた! 悪魔の眼光が煮えるような熱を持った。

 

 

 両雄譲らず。再び距離を離し、殺意に煮える瞳で睨み合った。

 

 

 月明かりが覗く暗闇の中、両者は同時に地を蹴り、ぶつかり合った。

 

 

 悪魔と妖狐の長いようで、刹那の戦いを見つめながら狐達は踊る。陽炎が遊び、紅蓮が閃き、九尾は唄う。滅びあれと。

 

 

 下らん。悪魔は切って捨てた。

 

 

 悪魔の下段突きを〝尾〟で逸らし、妖狐は七支刀を捨て、短刀を作り出すと脇腹に突き刺しにかかる。

 

 

 当たればあっさりと突き刺さり、爆ぜ、上半身と下半身が分断される恐るべき刺突を、悪魔は見もせずに黒炎が閃く裏拳で弾き飛ばす。

 

 

 更に背後から迫る〝尾〟をバックキックで撃墜すると、反動で白炎が燃える前蹴りを叩き込んだ。強烈な一撃を妖狐は耐え凌ぎ、周囲に散らせていた〝狐〟を一斉に飛び掛からせた。

 

 

 しかし、当たる寸前に悪魔の姿は忽然と消え去った。

 

 

 消えた!? 否、背後! 

 

 

 妖狐は反射に任せて肘打ちを繰り出した。

 

 

「チィ!」

 

 

 鷲の爪で喉を抉りに来ていた悪魔は舌打ちして飛びのいた。肘打ちは空を切り、遅れて肘の先から爆発が起きた。

 

 

 妖狐は笑みを浮かべた。悪魔の動きが精彩を欠き始めていた。

 

 

(畳みかけるは今ぞ!)

 

 

 グレンキュウビがそう考えるや否や、周囲で座っていた〝狐〟達が一斉にイミテーションに向かって飛び掛かってきた! 

 

 

「さらにさらにぃイイイイ!!!」

 

 

 グレンキュウビは大量の火球、狐火を解き放った。周囲は今や蛍飛び交う草原の如く如く大量の光に満たされていた。

 

 

 死が、逃れぬ死がすぐそこまで迫る気配を、イミテーションはひしひしと感じていた。

 

 

((ここで終わりか?))

 

 

 静止した時の中で、イミテーションは自問自答する。

 

 

「そんな訳があるか!」

 

 

 悪魔の眼光が赤熱した! その両腕に黒炎と白炎が二重螺旋染みて巻き付いた! 

 

 

 紅蓮も! 狐も! 何の事があろうか! 

 

 

 この世は理不尽に満ちている。その中で傾国? 灼熱? 片腹痛し! 所詮は闇に溺れた卑小な悪者! 悪道を語るなど滑稽の極み! 

 

 

 死を置き去りにして悪魔は駆ける! 何もかもをも振り切って、妖狐の眼前に出現した! 

 

 

「……?」

 

 

 妖狐は眼前に出現した悪魔を見て、一瞬の間呆けた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 

 疑問は、次の瞬間訪れた衝撃によって瓦解した。刹那の間に叩き込まれた56の打撃の衝撃によって。

 

 

「グッハァアアアアアアアアア!?」

 

 

 妖狐は震え、血を吐いて絶叫した。一瞬遅れて衝撃波が放たれ、周囲を染め上げていた焔も、〝狐〟も、一切合切を吹き飛ばした。

 

 

 しかし、それに続いて、ダメージに耐えきれなかったとでもいうかのように、グレンキュウビは凄まじく大爆発した。

 

 

「なあっ──────」

 

 

 流石に予想外だったイミテーションは両腕をクロスさせて身を守ったものの、尋常ならざる爆風に押し流されて紙屑のように吹き飛ばされ──────。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「楽しかったなぁ」

「そうですねぇ」

「また来れたらいいな」

 

 

 とある三人の男女が仲睦まじく歩いている。

 

 

 刹那、尋常ならざる爆音が猥雑な宣伝音声すらかき消して轟き渡った。

 

 

「「っ!?」」

 

 

 目を見開いて音の方向へと顔を巡らすと、空を照らす赤、そして何かが近い地点に凄まじい勢いで落下してきた。

 

 

「あぁ? 何だあ!?」

 

 

 少年が瞠目して落ちてきた物を見ようとし、少女たちは続けて落ちてきた物へと目を向けた。

 

 

「これは!」

「馬鹿な! なぜここに!?」

 

 

 身構えた二人の少女の対応は、しかし何もかもが遅かった。

 

 

「──────!!!」

 

 

 それは、落着と同時に、すでに爆ぜていた。ただ、それだけの事であった。全ては手遅れなのだ。

 

 

 少女たちの視界は白く染まった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「うぅ……」

 

 

 自分の呻き声で目が覚めた。何が起きたのだろうか? 

 

 

 ずきずきと痛む体を難儀して起こし、霞む視界を頭を振るって元に戻し、改めて見る。

 

 

「そんな……!」

 

 

 少女は茫然と呟いた。

 

 

 京都ネオン街が、炎上している。

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