影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『chapter8 京都ネオン街炎上』③

「一体、何が……暗夜、暗夜―!」

 

 

 少女は、績はつい今しがた一緒にいた少年の名を叫んだ。

 

 

「暗夜! 軌陸! どこですか! 生きていたら返事を下さい! 死んでてもです!」

「お前こんな状況で何でそう言う不謹慎な冗談を言えるんだ……」

 

 

 やや焦げてはいるがぴんぴんしている少年、暗夜が瓦礫を押しのけながら績へと呆れた顔を向けた。

 

 

「良かった、生きてますね。怪我もなさそうですね。……やや焦げ臭いですけど」

「そりゃお互い様だろ。そら! これで最後!」

「うぐっ」

 

 

 話している間にも暗夜は瓦礫をどかす手を止めず、最後の一つを取り払うと、その下より出てきた少女、軌陸が呻き声を発しながら立ち上がった。

 

 

「軌陸!」

 

 

 績は目を見開き、すかさず光の幕で軌陸の体を覆うと傷を回復させた。

 

 

「すまない、助かった」

「気にしないでください……それよりも」

「あぁ、そんな事はどうでもいい。これに比べればな」

 

 

 そう言って周囲へと目を凝らせば、一変したネオン街の一区画が目に入る。

 

 

「何が起きた?」

 

 

 全員が思っている疑問を、軌陸が代表して口に出した。

 

 

「わっかんね。最後に見たのは何かが降って来て、遅れてなんかが落ちてきて、で、ボン。視界は真っ白。耳はつんぼ。気がつきゃこの様だ」

「その前にも爆音が聞こえましたね」

 

 

 そう言うと、績はネオン街よりやや離れた地点にある小山が()()()方向を見つめた。

 

 

 そこには何も無かった。ネオン街を見下ろす形であった小山は、今や焦げ臭さを孕んだ風がその名残を伝えるのみで、影も形も綺麗さっぱり消え失せていた。

 

 

「とにかく何かが起き、何かが爆ぜた。現状はそれしか分からないな」

 

 

 軌陸はそう結論付けた。二人も同意して頷いた。とにかく情報が足りなかった。

 

 

「先ずは状況の把握ですね。たしかすぐ近くに落ちてきた物がありましたね? まずはそれを確認しましょう」

「だな」

「ならば早くしよう」

 

 

 暗夜たちは走り出した。とはいったものの、落ちてきた物との距離はそう離れておらず、すぐに見つけ出す事は出来た。

 

 

「こりゃまたすげえなこりゃ」

 

 

 落下地点を見た暗夜は顔を顰めてそう言った。

 

 

 着弾点はまるで隕石の落下地点の如く黒く焼け焦げ、小さなクレーターすらできあがっていた。周囲は衝撃で吹き飛ばされ、残っている建物は何もなく、ぶすぶすと煙を吐き出すばかりだ。

 

 

 今しがた出て行った土産物屋も、服屋も、煌びやかなネオンを発していた看板も、今や等しく黒焦げに炭化していた。軌陸は奥歯を噛みしめた。

 

 

 その原因の一つ。クレーターの中心にある170センチ程の黒焦げの物体を、3人は凝視した。

 

 

「何だろな。酷い既視感があるんだが」

「奇遇ですね。私もです」

「既視感は無いが、猛烈に嫌な気配は感じているぞ」

 

 

 3人がそう言った時、その物体が身動ぎした。

 

 

「「―――っ!」」

 

 

 咄嗟に身構え、警戒する中、その物体が震え、焦げた一部がはらはらと散り、大理石の如く白い素肌が覗いた。

 

 

「がっ……はぁ……!」

「「──────」」

 

 

 黒焦げのそれは震え、黒を払い続け、やがて彼らの良く知る人物の姿形を取り始めた。

 

 

「まあそんなこったろーと思ったよ。績!」

「はい!」

 

 

 暗夜に言われ、績は飛び出した。

 

 

「どう見ても黒焦げ死体だったよなあれ? 何で生きてる?」

 

 

 息を荒げて再生しつつあったイミテーションを見て、軌陸は至極まっとうな感想を言った。暗夜はドン引きしながらも同意した。

 

 

「酷いやけどです! でも、もう再生しつつありますね。見てくださいよ!」

「やだよ、俺グロ画像苦手なんだよ!」

「しかしこれじゃあ事情も聴けないな。どうする?」

 

 

 どうすると聞いたものの、当てなどある筈もない。何せあまりにも唐突に全ては起こったのだから。

 

 

「それは俺が答えましょう」

 

 

 唐突な第三者の声に、三人は瞬間的に距離を取った。

 

 

「いや、そこまで警戒せんでくださいよ」

 

 

 声の主、ところどころ焦げたスーツを着た青と白の髪の男は、くたびれ切った表情で精一杯笑みを浮かべ、両手挙げてホールドアップした。

 

 

「ども、武装警備員派遣会社ペットショップ営業部門所属、星2警備員のホワイトペンギンです」

「どうも……」

 

 

 代表して一歩前に出た軌陸は短く返し、男の見てくれをつぶさに観察しながら男の言った言葉の意味を吟味していた。暗夜と績は無言で成り行きを見守る。

 

 

「武装警備員派遣会社とは?」

「その字の通りです。めちゃ強い警備員を派遣する極々普通の警備会社です」

「何故ここにいる?」

「ウチの社長、コネクションが太いらしくてね、こうなる事が事前に分かってらしい保健所から水系氷系、あとは防御系の異能を聖光教、それからウチでありったけかき集めてこの街に待機させてたのさ」

 

 

((またこいつか!))

 

 

 暗夜たちの心の声が重なった。3人は足元で気絶している男を睨みつけた。

 

 

「あんたたちも思ったろ。()()()()()()()()()()()()

「そりゃ……」

 

 

 言葉に詰まった暗夜は男から視線を外し、山があった方向を見やった。そこには最早何もない。見晴らしの良くなった風景に、暗夜は今更になって戦慄した。脳裏に閃くは天蓋の如き威容の八岐の蟒蛇。それと同質のものを暗夜は感じ取っていた。

 

 

「俺たちがチョー頑張ったからな。そうでなきゃ、今頃この街は無くなってたはずだ。避難もほぼ済んでるから、建物の被害に比べれば人死にも少ないはずだ。そうでなきゃ困る」

「だからそんなに焦げていたんですね」

 

 

 納得のいった績は合点した。

 

 

「ともかくあんたたちは保健所と合流してくれ!」

「あなたは?」

「俺は消防と協力して火消し作業さ! そら来たぞ!」

 

 

 ホワイトペンギンが指さした方向から、ナース帽をかぶった数匹の鳥たちが担架を持って現れた。

 

 

「医療部隊!」

「はいはーい怪我人を回収重点ですー」

「「ですー」」

 

 

 鳥たちはてきぱきとイミテーションを担架に乗せると、揺らさないように細心の注意を払って再び飛び立った。

 

 

「という訳で、君たちも早く行け! 出ないと被害が……げっ」

「うん? ……げっ」

 

 

 

 ホワイトペンギンの視線の先を見やると、暗夜も同様に声を漏らした。最新鋭のミリタリーアーマを纏ったキツネ面型ガスマスクを被った不審者たちがぞろぞろと姿を現したからだ。

 

 

「むっ! 火薬になりそうな男女発見! 爆殺重──────」

 

 

 黒い者の声が凍り付いた。声だけではない。いまやその前身は霜を発する氷に閉じ込められていた。周りの兵隊も同様に氷漬けである。

 

 

「行け!」

 

 

 汗を滂沱と流し、今にも死にそうなほどに顔を青ざめたホワイトペンギンが振り返って叫んだ。氷を砕き、その奥から増援が一人、また一人と現れた。

 

 

「おっさん!」

 

 

 暗夜が叫ぶが、その直後、町の中心に近い地点で尋常ならざる爆発が起き、暗闇を切り裂き、天を焦がす火柱が立ち昇った。

 

 

 瞠目して爆発へ目をやると、そこには30メートル近い6本の尾を持つ紅蓮の化け狐の姿があった。

 

 

「ギャワアアアアアアアアアン!!!」

 

 

 天地を揺るがす大咆哮! それに呼応して化け狐の周囲が幾度も爆発し、紙屑のように瓦礫が舞い上がった。

 

 

 同時に青や白の光が化け狐へ殺到し、恐るべき進行を抑えにかかる。しかし化け狐は意に介さず、狂ったように尾を振り回して周囲を紅に染め上げていた。

 

 

 途端に街中のあちこちで爆発音が轟いた。もはや待ったなしの極めて緊迫した状況である。

 

 

「行きますよ暗夜!」

「あそこが私達のいくべき場所だ!」

「……あぁ。行ってくるぜ!」

 

 

 ホワイトペンギンの背へ各々投げかけながら、3人は駆けだした。

 

 

「チクショー! ああ言われちゃ離脱できねえじゃねぇか! 良いぜコノヤロー、やってやるってんだよー!」

「「爆破開始」」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 轟く爆発音を背中に受けて、暗夜たちは加速する。

 

 

「あ、やっと動き出しましたねー☆」

 

 

 と、そこへホワイトペンギン同様にスーツに身を包んだ女が合流した。足を止めず、視線だけを向け、女を見やる。

 

 

「どうもー武装警備員派遣会社ペットショップ事務担当星3警備員ハスキーです~。よろしくね☆」

 

 

 暗夜に迫る180の長身、績をも超えるバストに暗夜は目を奪われた。績はひっぱたいた。

 

 

「今そんなあほな事やっている場合ですか!?」

「いやだってしょうがねーだろ! 見ちゃうってアレは!」

「このアホ共はどうでもいい! 続けてくれ!」

「はーい☆」

 

 

 ぎゃあぎゃあと喧しく言い争う二人を無視し、軌陸とハスキーは言葉を交わす。

 

 

「私があそこまで案内役をするので~、軌陸ちゃんたちは付いて来てください~」

「分かった!」

 

 

 ハスキーはにこやかに笑いかけ、亜栗色の髪をたなびかせながら脚力を『倍増』させ、先行した。

 

 

「コラ、馬鹿やってないでついて行くぞ!」

「「誰が馬鹿(ですか!)だ!」」

 

 

 同時に叫び、同時に互いを見やって睨み合うと、競い合うようにハスキーの背を追った。

 

 

「はあ……良くこんな状況でふざけていられるよな。ブレないというかなんというか……私がしっかりしなくては……!」

 

 

 呆れ顔で前を行く二人へ呆れ顔を向けながら、軌陸も足に力を籠め、疾走の速度を上げた。

 

 

 目指すはグレンキュウビの足元。総力戦の最前線だ。

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