影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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chapter最後の話なので物凄く長くなってしまいました。逆に見返すとマガツノオロチが短すぎた気がします。


『chapter8 京都ネオン街炎上』⑦

 先陣を切ったのはイミテーションが腕部より放った冷凍光線であった。

 

 

 腕部装甲搭載型20ミリ二連装超低温レーザー照射砲『フリーズドライ』

 

 

 放たれた二つの青白い閃光は発射と同時に加速し、空気抵抗が弱まった大気を元の数十倍の速度で妖狐の顔面に突き刺さった! 

 

 

「ジェァアアアア!!!」

 

 

 しかし妖狐、これを意に介さず5本となった尾を伸ばし、纏う鉄塊ごとイミテーションを粉々に打ち砕く構え。

 

 

 しかし。

 

 

「させません!」

「ギァ!?」

 

 

 イミテーションへと尾が到達する寸前に、光の幕が全ての尾の一撃を悉く弾き返してしまった。

 

 

「はっはー!」

「ギャア!?」

 

 

 その隙に暗夜が聖剣より極大の光波を飛ばす! 更にイミテーションがダメ押しの両脚部に装備された6連装ミサイルポット『ファイヤーワークス』から極超低温弾頭ミサイルを撃ち放った! 

 

 

「ガアッ! ズニィイイイノルナァアアアア!!!」

 

 

 炸裂した光と超低温弾頭の多段爆破によってたたらを踏んだグレンキュウビが、憤怒に叫びながら前足を振るった。

 

 

「あぁ!」

 

 

 凄まじい一撃により、元より尾の爆破打撃によって脆くなっていた光の幕はあっさりと砕け散った。しかしそれに伴い速度が減衰! イミテーションはブースターを吹かして上空へ! 暗夜は逆に踏み込むことで爆破の衝撃から逃げきったのだ! 

 

 

「オノレ! 小癪!」

 

 

 聖剣と績から飛ばされる光の玉の弾幕にグレンキュウビは頓着せず、イミテーションただ一人を睨み、戦場のあちこちに散っていたキツネ型爆弾や狐火の全てをイミテーションへと叩き込んだ! 

 

 

「ちっ」

 

 

 たちまち空の全てが光に満たされた。

 

 

「「コーン!」」

 

 

 数えるのすら億劫なほどの膨大な数の五本尾の狐型爆弾は空を駆け回り、宙を駆るイミテーションを撃ち落とさんと殺到する! 

 

 

「邪魔ですね」

 

 

 肩部装甲搭載30ミリ2連装バルカン砲『コンフェティ』と脚部ミサイルポットから弾丸や極超低温弾頭ミサイルをばら撒いて狐型爆弾や狐火を撃墜しながら、イミテーションは無感情に呟く。

 

 

「コーン!」

 

 

 しかしイミテーションへと迫る狐型爆弾の群れが、突如として横合いから飛来した光球や氷の槍に撃ち抜かれて宙空で爆発した。更に爆発の余波で数百の狐火までもが連鎖爆発! 空はたちまち火花爆ぜる花火会場の如き炸裂音に満たされた! 

 

 

「悪魔を援護しろ―!」

 

 

 光の者の一人が叫び、その周囲で陣を敷いていた白い者の集団が空へと向けて銃火器発砲開始! 更にペットショップの構成員たちも何人かがそれに参加した。

 

 

「えぇい邪魔だカス共!」

「がぼがぼがぼ!?」

 

 

 チワワが虚部隊の虚無僧兵の一人の顔部をケルベロスで削り取りながら叫ぶ。

 

 

「ボスを援護しろ! くそったれ!」

 

 

 ポメラニアンが再びわらわらと湧いてきたレギオンを片っ端から切り裂きながら、周囲の者へと指示を飛ばす。

 

 

「えい! やあ! たあ!」

 

 

 シバイヌは空を埋め尽くす狐の群れに向かってイヌガミに搭載されていた火器を全開放! 少しでも数を減らし主君の負担を減らすべく奮闘していた。

 

 

『敵増援多数出現! 三本槍! 千歳の嬢ちゃん! 頼むぜ!』

『『了解!』』

『うるさいわたしに命令するな!』

 

 

 トサケンは総力戦の外で湧き出た増援をいち早く察知し、空いている戦力をあちこちへ派遣していた。

 

 

「オラ! こっちを見やがれ、こら!」

「私たちが怖くないのですか!」

 

 

 口から火球を放ち、尾を伸ばしてイミテーションを叩き落そうと躍起になるグレンキュウビへ、暗夜と績はひたすら遠距離から打ち込んで注意を引こうとした。

 

 

 しかしグレンキュウビは一定間隔で全方位爆破をして接近を拒むばかりで、彼らには目もくれない。今のグレンキュウビに映るのは、イミテーションという男ただ一人のみ! 

 

 

「何だこら! 男のストーカーとか目も当てられないぞ!」

「執着は足元をすくわせるのです。こんな風に!」

「グォオオ!?」

 

 

 グレンキュウビは横っ面に走った強烈な衝撃に溜まらず後退した。績の怒りの巨大光球が爆破の衝撃を突き破って顔部やや横に炸裂したのだ! 

 

 

「エェイ鬱陶シイ!」

 

 

 ここでついにグレンキュウビがイミテーションから視線を外し、暗夜たちを睨みつけた。凄まじい圧力であったが、暗夜たちは怯まずに睨み返す! 

 

 

「やっと見たな畜生!」

「もう一度!」

 

 

 暗夜と績は間髪入れずに同サイズの巨大光球を無数に放った。

 

 

「邪魔ヲスルナ未熟ナ勇者ガ!」

 

 

 グレンキュウビは今まさにイミテーションへと放っていた爆破球を暗夜と績へ向けて放出! 尋常ならざる爆発の力が球体として打ち出され、巨大光球とぶつかり合い、対消滅爆破! 

 

 

 そして爆炎で視界が効かなくなった向こう側、フリーとなったイミテーションが折りたたまれていた背部の主砲を展開。隙は一瞬。溜めている暇は無し。故にイミテーションは出力を絞り、エネルギーを砲弾状にして瞬間発射! 

 

 

 同時に背後のガラクタ戦車より援護射撃飛来! 爆煙を突き破り、グレンキュウビへと超エネルギーが炸裂した! 

 

 

「グワワーン!?」

 

 

 ここで初めてグレンキュウビから悲鳴が上がった! それに呼応して尾の一本が不安定に揺らぎ、膨れ、爆発した! 

 

 

 凄まじい衝撃に戦場が揺れた! 

 

 

「「うわぁあああああああああ!?」」

 

 

 全ての者が攻撃を一時中断して堪えざるを得ない程の爆発的衝撃! 

 

 

 だがその只中。衝撃の弱い部分を探知で探り当てたイミテーションは衝撃に逆らってグレンキュウビへと突っ込んでゆく! 

 

 

「こんな隙を逃すほど俺は優しくねーぞぉおおおお!」

「畳みかけます!」

 

 

 績と暗夜も同じように衝撃に逆らい、グレンキュウビが怯んでいる隙にありったけの光弾を叩き込んだ! 

 

 

 イミテーションはブースターのエネルギーを圧縮、瞬間的に開放する事で超極度加速! あっという間にグレンキュウビ眼前へと出現したイミテーションは腕部レーザーを低出力で放出させたまま維持! まるでレーザーブレードの如く振り下ろし顔面を切り裂きにかかる! 

 

 

「イミテーション!!!」

 

 

 その姿を認識した瞬間に我に返ったグレンキュウビは大口を開いてイミテーションを噛み砕き爆散殺せんとする! 

 

 

 対応されたとみるや瞬時に腕を戻したイミテーションは腰部に備え付けられた20ミリレールガン『イナズマ』と肩部の2連装バルカンをフルオート射撃! 反動で後退し、間一髪のところで噛みつきをかわす! 

 

 

 一瞬遅れて嚙み合わされた口元が爆発! 衝撃で更に距離をとるイミテーション! 

 

 

「アァアアアアアアアア!!!」

 

 

 弱り、されど更に猛り狂った妖狐は一瞬のための後に、戦場全土を覆い尽くすほどの大爆発を放った! 

 

 

 しかし爆発はグレンキュウビよりわずかに広がった所で拡散が停止! その前方には悪しきを阻む光の幕が! 

 

 

「うぅぅ……あ、あ……!」

 

 

 績は今あるすべてのリソースを膜の硬度と範囲に割り振っていた。極度緊張により額には滝のように汗が流れ落ちる! 

 

 

 そして広がる爆発を、績は全て押さえ切った! 尋常ならざる熱量が空へと放出され、天に穴をあける! 

 

 

 そこで、光績の体力は尽きた。

 

 

「あう……」

 

 

 頽れる績を、しかし暗夜は振り返らない。彼女が死に物狂いで作り出したこのチャンスを、成してやる事こそが報いである! 

 

 

「オラアアアアア人の女によくも無理させやがったなこらァアアアア!!!」

 

 

 聖剣一閃! 凄まじい出力の光波が尾の一本を根元から切り落とした! 

 

 

「ヌォオオオオ!?」

 

 

 妖狐、再びの悲鳴! そして間髪入れぬ電光石火の勢いで悪魔が突貫! 先ほどは失敗した極超低温レーザーブレードを一閃してさらにもう一本! 

 

 

 勢い付いた混成部隊はついに増援や狐火を押し始めた! それにより完全にイミテーションを縛るものは何もなくなった! 

 

 

 残り2本尾となったグレンキュウビのサイズは今や10メートルを下回った! しかしここからが正念場である。追い詰められた獣の恐ろしさは、彼らは骨身に染みている! 

 

 

「イミテーションンンンン!!!」

 

 

 グレンキュウビはきりもみ回転しながらイミテーションへと突っ込んでゆく! 巨体に反して恐ろしいほど機敏な動き! 更に高速回転中にばら撒かれた爆破球が周囲を紅に染め上げながら一切合切を粉微塵に吹き飛ばした! 

 

 

「くそっ!」

 

 

 背後、績を連れて一目散に逃げ去ってゆくスズメたちを暗夜は守らざるを得ない! 凄まじい出力の光で強引に防ぎきる! 

 

 

「いい加減に……!」

 

 

 暗夜の掲げる聖剣の白い輝きに、黒が混じり始めた! 

 

 

「しやがれぇええええ!!!」

「ガァアアアア!?」

 

 

 闇と光が交じり合った光波が爆破球を切り裂きながらきりもみ回転するグレンキュウビに炸裂! 

 

 

 技の途中であるグレンキュウビには回避する手段がない! 無防備胴体に尋常ならざる対消滅の威力が襲い掛かる! 

 

 

 バランスを崩したグレンキュウビは回転しながら瓦礫の山に頭から突っ込んだ! 瞬間、グレンキュウビが反動で爆発! 瓦礫の山が蒸発した! 

 

 

 そして転倒したグレンキュウビの全身へ極冷凍30ミリ弾丸が、極超低温弾頭ミサイルが、冷凍レーザー砲が、その他異能の氷や光球が雨あられと降り注いだ! 

 

 

「ガアアア……ガァアアアアアアアア!!!」

 

 

 遂に一本尾となったグレンキュウビは最後の抵抗とばかりに混成部隊に向けて大口を開き、膨大な爆破の奔流を吐いた。

 

 

「あ──────」

 

 

 寸前に気が付いた暗夜は咄嗟に手を伸ばすが、間に合わない。

 

 

 しかし、その中を一条の閃光が走ったかと思えば、爆破の奔流と混成部隊の真ん中へ、青く流れる長髪をたなびかせた鋼鉄の翼を纏う悪魔の姿があった。

 

 

「──────へ」

 

 

 暗夜は笑い、そして、聖剣に闇と光を練り上げ始めた。自分の役目は、すぐに来る。きっと来る。あの悪魔はやる。だから、備える。

 

 

(それが俺の役目だからな)

 

 

 一方爆破の奔流と混成部隊の真ん中にいる悪魔は心底辟易していた。

 

 

((何で俺は毎度毎度こういう役目ばっかりなのだろうか?))

 

 

 自問自答するが、答えなんかでやしない。生きてれば貧乏くじを引くことがあるが、こうまで頻繁に引かされるといい加減うんざりする。

 

 

 しかし、もうたくさんだと投げ出したところでくじの引きは変わらず、貧乏くじは清算されるその時まで永遠付きまとって来る。

 

 

 だったら引いた瞬間清算して次の貧乏くじに備える方が、よほど得策であるように思える

 

 

((何とかなるだろうか?))

 

 

 自問自答。

 

 

((何とかするか……))

 

 

 うんざりと吐き出すと、未だ動かない紅の息吹を見据え、コピーした加速と強弱の異能を発動し、強引に動かしてゆく。

 

 

 尋常ならざる負荷がかかる。耳鼻より出血。目からも血涙。悪魔は止まらない。

 

 

((主砲展開))

 

 

 ガコンと音をたてて主砲が肩から伸びでてきた。それを掴み、悪魔は照準を合わせる。

 

 

((3連結タービンフル稼働。エネルギー出力120パーセント、充填率40……60……80……100))

 

 

 主砲に青白い光が徐々に充填されてゆく。やがて、凄まじいエネルギーバチバチと音をたてて周囲に拡散してゆく。紅色に染まる世界に抗うように、青白い光が世界を侵食し始めた。

 

 

(まだだ!)

 

 

 悪魔の眼光が白と黒の光に燃えた! 

 

 

((ジェネレーター負荷暴走(オーバーロード)! 150……200……ブースター出力全開! ……300!))

 

 

 ジェネレーターが赤々と燃え、太陽の如く煌々と照り光る。背部のブースターが最大稼働し、まるで光の翼の如く火炎を噴出した。

 

 

((400! エネルギー超過充填(オーバーチャージ)!))

 

 

 今や主砲は青白の塊と化し、直視できぬほど発光していた。エネルギー過充填による放電がバリバリと音をたてて、激しく高鳴る。迫り来る脅威を打ち払う鬨の声の如く! 

 

 

((くたばりやがれ糞野郎!))

 

 

 悪魔は引き金を引いた。直後、滞留していた時が雪崩を打った! 

 

 

 紅蓮の息吹と青白の奔流が真正面からぶつかり合った! その瞬間、奔流は拮抗し、彼らの真ん中に天を衝かんばかりの青白と紅の巨壁が聳え立った! 

 

 

「──────!?」

 

 

 妖狐は目を見開く! 一体いつの間にあの悪魔は割り込んできたのか!? 

 

 

 しかしそれ以上の思考は許されなかった。グレンキュウビは尋常ならざる圧力を押し留めるのに、己のリソースの全てをつぎ込んだ。

 

 

「か、各員衝撃に備えろぉおおおおおおおおお!!!」

 

 

 突如この場に台風が発生したかのごとき暴風に、混成部隊も虚部隊も誰も彼もが攻撃を中断して耐えることを余儀なくされた。

 

 

「「コーン!」」

 

 

 狐火が、狐型の爆破エネルギーたちが、耐えきれずに吹き流され、遥か彼方の空で爆発した。もはやこの空間で動く者はおらず、対峙する紅蓮の妖狐と鋼鉄の悪魔ただ二人だけがこの場を完全に支配していた。

 

 

「ぐが……ぐがが……ッ!」

 

 

 イミテーションは尋常ならざる反動に耐える……耐える! 機体各部位が悲鳴を上げるかのように火花を散らす。ミシミシと軋み音を発して今まさに崩壊する寸前だ。

 

 

 凄まじい耐久力を誇る鋼鉄の外骨格ですらその有り様だ。生身のイミテーションは到底無事では済まない。実際彼の体は爆ぜかける寸前である。筋肉が弾け、臓器は傷つき、全身は血まみれだ。それでも悪魔は持ちこたえた。

 

 

「オォ……オォオオオ……ッ!?」

 

 

 一方グレンキュウビも限界を迎える寸前であった。解き放った息吹は、この怪物からしてみても今できる最大最強の一撃である。放ち終えればもう後がない。故に彼はすべてのリソースを叩き込んだ。

 

 

 妖狐の眼光が湧きたつマグマの如き熱を帯びた! 

 

 

「オオオオオオオオオオ!!!」

「ぬぁあ!?」

 

 

 息吹の出力が上がり、徐々に青白い奔流を押し流し始めた。

 

 

「く、うぅ、くわっ!」

『……無……茶よ! 機体……持……ない!』

『小……よせ……死……ん……ま……うぞ!』

 

 

 通信からノイズがかった声が聞こえる。イミテーションは無視した。

 

 

 放出されるエネルギー出力が500パーセントを超えた。主砲が悲鳴を上げる。だがそのかいあって紅の巨壁を押し戻し、両者再びの拮抗を維持。

 

 

 だがそれだけである。

 

 

((攻勢に出れない……機体を持たせるのと出力を安定させるので手いっぱいだ!))

 

 

 自壊しようとする機体を騙して強引に維持させ、気を抜けばすぐさま暴走しそうになるエネルギーを抑え込みながら歯噛みする。

 

 

((一瞬だ! 一瞬でいい! ともかく奴の気が逸れさえすれば! 出力がほんの一瞬弱まりさえすれば撃ち抜けるのに……!))

 

 

 あまりにも遅い時の中で、イミテーションは絶叫する。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 屈辱の極み! されどしかしそれこそが吉田健太郎の定めか。

 

 

 イミテーションの願望の発露にも近い叫びは、しかし気まぐれな天運は拾い上げた。

 

 

 グレンキュウビの燃える体表に、小さな青白の小爆発が巻き起こった。

 

 

「──―ッ!?」

 

 

 目を剥くグレンキュウビの顔面は、たちまちのうちに青白と白色の小爆発に埋め尽くされた。

 

 

「「やれぇえええええええええ!!!」」

 

 

 白い者が、ペットショップが、保健所が、混成部隊の一切合切が声をそろえて吠えた! 

 

 

 悪魔の眼光が赤熱した! その瞬間、青白の奔流が瞬く間に膨れ上がり、加速し、最も弱い箇所を見つけ出し、その先端に、黒炎と白炎が二重螺旋の如く巻き付いた! 

 

 

「ア──────」

 

 

 紅蓮の息吹が雲散消滅! 青白の閃光が妖狐の体を撃ち抜き、爆散させた! 

 

 

 そして、爆散した焔の妖狐の中から出てきたのは黒光りする炭の塊であった。

 

 

殺生石(てきほんたい)露出! 破壊しろ!』

「……くそ!」

 

 

 そうしたいのはやまやまだが、そこで巨人殺しの大具足は堕ちた。主砲を向けようとした矢先に出力が極度低下。ぶすぶすとブースターが煙を吐いたかと思えば、完全に機能停止。重力に沿って落下を開始した。

 

 

「こレはシタり!」

 

 

 機を見るに敏と言わんばかりに殺生石が割れ砕け、中から人とも狐ともつかない異形と化したグレンキュウビが、炭化した手足からジェットエンジンの如く爆破エネルギーを放出して逃走を開始! 

 

 

『あぁ!? 逃げる、逃げてしまう! 誰か迎撃を! あの災禍を逃がすな!』

「む、無理だ! 皆グレンキュウビの気を逸らすのですべて使い切ってしまった!」

 

 

 膝を付いた光の者が、滝のような汗を流しながら通信に吠えた。

 

 

『畜生、こうまで追い詰めたというのに!』

 

 

 悔しさの滲んだトサケンの声が通信から漏れ聞こえた。

 

 

「はッハハは! ではサラバだ!」

 

 

 完全に勝利を確信したグレンキュウビが高笑いしながら急上昇。離脱を決行した。

 

 

「まあああああだあああああ!!!」

「グワーッ!?」

 

 

 しかし、突如として飛来した刺突がグレンキュウビの横っ腹を貫いた! その瞬間グレンキュウビの脇腹が爆発! 襲撃者を焼き滅ぼしにかかる! 

 

 

「軌陸!?」

 

 

 気絶から起き上がったと同時に現場へと戻ってきた績が、グレンキュウビの脇腹を突き刺した者の名を叫んだ。

 

 

「離さないぞ!」

 

 

 爆発に晒されながらも、長谷川軌陸は決して剣を手放さなかった。

 

 

「オのレぇ!!!」

 

 

 グレンキュウビは激昂して軌陸の首を捥ぎ爆破殺せんと腕を振り上げた。

 

 

「うぉおおおおおおおおお!!!」

 

 

 だが下から轟いた咆哮に堪らず目を向ける。そこには聖剣に黒と白の光を纏わせた満身創痍の勇者が弾丸の如き疾走で迫りつつあった。

 

 

「ヌゥ! ツキあってイラれるか!」

 

 

 離脱を試みるグレンキュウビだが、軌陸が離さない! 離れない! 不退転の意志か! 

 

 

「ヌァアアアア放せェ!!!」

「離さない!」

 

 

 妖狐は爆破の勢いを強めた。天使は決して離さなかった。

 

 

「おりゃああ俺の女を離しやがれえええええ!!!」

 

 

 そうこうしている内に勇者到達! 跳び上がってきた暗夜が聖剣を大上段に振りかぶりながらグレンキュウビのすぐ目の前に! 

 

 

 しかしグレンキュウビは切られる寸前に爆破のエネルギーを下へと放出! 反動で急上昇! 聖剣は空を切った。

 

 

「あぁ!?」

 

 

 勇者は絶望で目を見開く。妖狐は喜悦に笑みを浮かべた。

 

 

 が。

 

 

「残念ながらあなたがこれ以上先を生き延びる可能性はゼロです」

「「ッ!?」」

 

 

 鈴の音のような声が耳朶を打った。全員が目を剥き、その音の出所へと顔を向ける。

 

 

 悪魔のにっこりとした微笑み。刹那、勇者は蹴り飛ばされた。真上へと! 

 

 

「ナ―――」

 

 

 驚き固まる妖狐は、ふと脇腹を見た。半ばからへし折れたロングソード。使い手はいない。正面を見る。勇者は決意に満ちた表情で聖剣を振りかぶる。

 

 

 死が迫る。鈍化した時の中で、グレンキュウビの脳裏に様々な情景が過った。

 

 

 硫黄の匂い漂う狐火村。生贄として選ばれた自分。吹き飛んだ村。吹き飛ばした都。吹き飛ばした命。命。命。

 

 

 命。自分の命。今まさに消えようとしている。

 

 

 悪魔。イミテーション。この男が現れた瞬間から、全てが狂った。

 

 

「イミテーション……」

 

 

 グレンキュウビは呟く。最後に彼が見たのは自分を殺す勇者の精悍な顔ではなかった。

 

 

 眼下。飛来してきた三本槍に回収され、天使と共に離れゆく満身創痍の悪魔。

 

 

 悪魔は顔を上げた。目が合った。ぞっとするほどの無関心が、そこにはあった。

 

 

「イィイイイイイイイイミィイイイイイイイイイテェエエエエエエエエエショォオオオオオオオオオオンンンンンンンンンン!!!」

「死に晒せカスがー!」

 

 

 グレンキュウビは憎悪に狂って叫び吠えた! それを、勇者の黒と白の軌跡が刈り取った。

 

 

「オォオオオオオオオオ!!!」

 

 

 真っ二つになったグレンキュウビはなおも吠えた! その体に罅が入り、膨れ上がった。

 

 

「不味い! 離脱するぞ!」

「アレ、もしかして爆発する流れ?」

 

 

 その兆候を見て取った鵠が暗夜を引っ掴み、全速力で離脱を開始した。

 

 

「イミテーションンンン!!! イィイイイイイイイイミィイイイイイイイイイテェエエエエエエエエエショォオオオオオオオオオオンンンンンンンンンン!!!」

 

 

 

 膨れ上がる! 膨れ上がる! 原形をとどめぬほどに膨れ上がってもなお、グレンキュウビの恨みは留まるところを知らない! 

 

 

 やがて思考する事すらできなくなってなお、叫びは消えなかった。最期の最期までそこにはただ恨みだけが残っていた。

 

 

 炭と肉の混合物体と成り果てたグレンキュウビだったものは全身に罅が入り、中から光が漏れ、そして、爆発した。

 

 

 祭りの最後を締めくくる特大花火の如く、グレンキュウビは宙空の遥か上で盛大に爆発四散した! 

 

 

 永きに渡って人々を焼き滅ぼし、国を傾けてきた傾国の災渦、グレンキュウビここに墜つ!

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