コミュ力を顔に吸われた男   作:パレード

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陰キャと太刀川

 

 騒がしい。とても騒がしい。でもそれはさっきまでの人の噂話をする時の様なザワザワした騒がしさではない。ただ1人の手によって奏られる騒がしさだ。

 

 そして騒がしい張本人である小南が飛塚をスカウトしたモサモサ男につっかかる。

 

「そもそも!赤松は玉狛(ウチ)の隊員だから!」

「なに。そうなのか?」

「違う」

「と言ってるが」

「い!ま!は!違うだけなの!!」

()()ね。じゃあ今のうちに引き抜かないとだな」

「ボコボコにするわよ太刀川!!」

 

 唸る小南。ガハハと笑う太刀川。訓練が終わったらカオスな事になっていて困惑する出水。蚊帳の外の訓練生たち。

 

 そして既にチームを組む気満々の飛塚。

 

「おいおい目上の人間には『けいい』を払いたまえよ小南くん」

「あたしはNo.1でアンタはNo.2。つまりあたしの方が目上よ。ほら敬語使いなさい」

「おいおい、こりゃどういう状況だ飛塚」

「喧嘩」

「それは見りゃ分かるわ」

 

 飛塚の頭に軽くチョップする出水。あ、これ友達っぽいと心の中で盛り上がった。そのままの勢いで少々調子に乗った行動に出る。

 

「ん」

「連絡先か。いいぜ」

「ありがと」

 

 作戦は無事成功し連絡先をゲットした。コレで6人目、目標まであと24人。

 

「つーかもう正隊員からスカウトかよ!ま、有望株だし当然か」

「うん」

「ちったぁ謙遜しろっての。で、どっち選ぶんだ?」

「こっち」

 

 そう言って指差すのは太刀川の方。まさか美少女よりも老け顔の青年を選ぶとは思わなかったので出水は気や汗をかきながら驚愕する。

 

「マジでか!」

 

 いや、確かに顔だけで言うとソッチの方が強そうではあるが。

 

「ほら見ろ小南。()()()()は俺の方がいいってさ」

「なっ!ふざけんじゃないわよ赤松!おとなしくアンタはあたしたちの部隊に入ればいいのよ!」

「そういう強引な所が嫌なんだろ」

「アンタも大概でしょ!!」

 

 そこで小南は何かを思い付いたのかハッとした後にずびしと太刀川を指でさした。

 

「そもそも!なんで個人戦専門のアンタが急に部隊を組む気になったの!?」

「いやそれがさ、この前東さんの部隊に二宮が入ったんだが、それまで「強いヤツが1人いれば勝てる」とか言ってやがったのに、急に「戦術の重要性も分からんとはやはりバカだな」って言い出すんだ」

 

 言葉の所々に誰かのモノマネを織り交ぜる太刀川だが残念ながら元になる人物を知らないのでクオリティが高いのかどうかは分からない。

 

「それで」

「二宮の野郎をチーム戦で追い抜かしてその写真を待ち受けにする」

「そう。せいぜい頑張んなさい。じゃあ私たちは行くから……」

「待ちたまえ」

 

 自然な流れで帰ろうとしたが阻止される。隣から舌打ちが聞こえたが多分気のせいだろう。

 

「あと3020のお前。名前は?」

「え、俺すか?出水公平っすけど」

「お前にもポイントやるから俺の隊に入れ」

「ええ!?」

 

 まさか自分に飛び火するとは思わなかった出水は驚愕する。

 

 悪い条件ではない。この瞬間からB級に上がれ、最低でも上から2番目の攻撃手のチームに入れる。………だが、

 

「……うーーーん。………いや、遠慮しときます。そんな狡い真似したくねーし。なによりポイントだけで判断されるのは納得いかねーすよ。残りのポイント、1週間以内に取れたらまた誘ってください」

「よし。隊員候補ゲットだ。で、お前は?」

 

 再度飛塚に視線をやる太刀川。正直飛塚はポイントを貰う気でいたが出水曰くコレは狡いらしいので辞めておく。

 

「やめておく」

「そりゃ残念」

「チームの事は…………考えておく」

「本当か!」

「絶対!ずぇーーーったいダメ!!」

 

 その後、本部内にある施設の説明を受けると入隊式は終了になった。

 

 さて玉狛に帰って迅さんとゲームの続きを……。

 

「何言ってんの?C級のブース行くわよ」

「ランク戦か?」

「あたしじゃないわ。アンタがやるのよ」

 

 ???

 

「80ポイントなんて今日中に取れるでしょ。さっさと終わらせるわよ」

 

 明日じゃダメなのかな?

 

「ダメ」

 

 ダメか〜。

 

「1時間で終わらせなさい」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

《玉狛支部》

 

「それじゃあ赤松(あかまっちゃん)のB級昇格を祝して。かんぱ〜い」

「なるほど。今日の晩飯を豪華にしてくれって言ったのはそれか。早いな」

「あたしが鍛えてんだから当然でしょ」

 

 何故か小南が自慢気にする。

 

 しかし小南のおかげですぐに80ポイント取れたのも事実なので孫のように見守る事にした。

 

「そう言えば!入隊式の時に太刀川の奴が赤松を引き抜こうとしやがったのよ!迅、アンタが何か言ったんじゃないの!?」

「んー。そういえば最近入った子がサイドエフェクト持ちって事は言った」

「アンタが余計な事したからあの餅バカに振り回されて迷惑してんの!」

 

 未だに太刀川への怒りが収まらない小南は迅に噛み付こうとする。しかし何故か隣にいた飛塚に噛み付いた。

 

 本人が言うには最近飛塚に噛みつき過ぎて自然に吸い込まれてしまうらしい。癖って恐ろしいね。それは構わないが食事中ははしたないからおやめ。

 

「で、どうするんだ赤松。受けるのか?」

「だめったらだめ!」

「小南。それを決めるのは赤松自身だ」

「うぐっ。遊ぶだけ遊んでポイ捨てなんて許さないわよ!」

 

 中々アウトな事を口走る小南だが、迅さんからのお墨付きを貰ったので小南の事を一旦頭から外し今一度良く考える。

 

「………俺は」

「うん」

「俺は太刀川さんとチームが組みたいです」

「なんで!あたしとレイジさんのチームに入りなさいよ!」

 

 もちろん。飛塚だって本音を言えば見知った小南とレイジがいる玉狛第一に入りたい。

 

 でもそれは貴重な機会をみすみす捨ててしまう事になる。

 

「俺の目標は、桐絵に勝つ事」

「そうよ!だからずっと玉狛にいた方がもっと勝負出来るわよ!」

「俺は()()()()()()()()()()

「!!!」

 

 さてどうするか。どこにも行かせまいと飛塚にしがみつく小南を迅はじっと見つめる。

 

 小南は手を離すと腕を組み、頭を掻きむしり、数十分たっぷり悩んで大きな大きなため息を吐いた。

 

「分かったわよ。さっさと上に上がってきなさいよね!」

「分かってる」

「でも!たまにはコッチに戻って来なさいよね。その、、、、いないままじゃ寂しいから

 

 いくら迅たちがいたとしても、やはり同年代の飛塚は特別で、別れるのは結構応えるらしい。

 

 普段飛塚の事をツンデレなどと呼んでいるがコレではどっちがツンデレなのか分からない。

 

 そんな2人を歳上連中は穏やかな心根で見守っていたが、小南には一つ誤解してる事があった。

 

 それを教えると怒るだろーなー。と思いながらも周囲の視線に晒され言外に教えてやれと言われた迅はへいへいと小南の肩をトントンする。

 

「ぐす……。何よ迅」

 

 おいおいマジかよ泣いてんじゃん。この未来を読み逃していた迅は僅かに動揺したが心を鬼にして言葉を放つ。

 

「あのな小南。赤松(あかまっちゃん)は別に引っ越す訳じゃないぞ」

「へ?」

「これからも普通に玉狛(ここ)で住むってこと」

「え………っ?ななな、騙したわね〜///」

 

 そして何故か噛み付きの標的にされる飛塚。

 

 まだまだこんな日常は続いていく。

 

 

 





キミに勝ちたい
『飛塚』
知らぬ間に小南の好敵手(ライバル)になっていた出世頭。今回めでたく未来のA級1位部隊に内定が決まった。
もし玉狛第一に入っていたらなんやかんやになんやかんやが重なりなんやかんやで特殊工作兵(トラッパー)になってた。迅さんの副作用(サイドエフェクト)がそう言ってた。コレは確定の未来。
表情が怖い程変わらないがごく稀に笑う。今の所目撃したのが陽太郎と雷神丸だけなのでセーフ。香取や氷見、国近などが目撃すると3回浄化される。
ポカリと違いメールで饒舌になる訳でもないので恐らく一生心の内が判明しない。


ふーんオモシレーやつ
『出水』
最初は飛塚の事を顔のいい堅物だと思ったがすぐにノリの良さを看破した。
無表情で冗談を言うそのシュールさがツボにはまってオモシレーやつと割とマジで思った。
入隊初日でB級になった奴の噂が流れた時は「アイツだな」とドヤ顔していた。
あと3日でB級に上がるので太刀川隊結成は早い。


ポイントくばりお兄さん
『太刀川』
飛塚がスカウトから引っ越してくるまでのどこかの期間で迅から飛塚の事を聞いていた。その時は特に思う事は無かったが最近二宮が生意気になってきたのでチーム戦でシバく為に才能アリの飛塚と出水をチームに誘った。
飛塚の事を覚えてた訳ではなく本当に偶々才能がある奴に声をかけたら飛塚でその時点では迅から聞いた人物だと気づいていなかった。
餅を焼いてる途中で思い出した。
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