交易都市グラディスの近くにある大きな学園。
男女比が1:9と驚異的な数字で、生徒のほとんどが人間ではない。
この学園では戦闘術、魔法、探索術、調合など数多くのことを学ぶことができる。
生徒達にも学園での立場、勢力があり、一つの国の様な図式が学園内で展開されている。
学園長の姿を見たものがいないとちょっとした都市伝説となっている。
まだまだ謎が絶えない学園である。
「うぉおおおおお!なんじゃこりゃあああ!?」
学園の裏庭。すっかり修行の場と馴染んでしまったこの場所で俺は吠えた。
「ほらッ集中力切らすと感電するよ!」
「ふぉおおおおおおおお!!」
現在、アサギの指導のもとで『魔法』の修行しています。
両足を逃げられないように鎖で繋がれおり、両手には謎の物体に繋がっているコード?を握り締めさせられている。
このコードに魔力決まった量注ぎ続けないと電撃魔法が体中を駆け巡ると言う、拷問道具を思わせる特徴している道具を使っています。
「幾ら強い魔法を沢山覚えても、燃料である魔力量が少なかったら数回使ってすぐにぶっ倒れちゃうの!そんなの意味のないことだわ!これはその魔力量を増やす修行のなの!実践はまだよ!」
そう言って何食わぬ顔で拷問物体をいじくるアサギ。
「じゃあ出力上げるわよ~、今より気合いれなさ~い」
「はぁっ!?ちょッおま!」
「そ~れッ」
「みぎゃあああああああああああ!!」
1秒ももたずに電撃の餌食になった。
俺が情けないんじゃない。アサギの情けが無さすぎるだけだ。
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「これぐらい、ねッ!」
「うぐっ、これは、キツいッ!」
今度はちゃんと丁寧に調整された出力で修行中。
キツ過ぎず、カル過ぎずの極致。想像以上に難しい。
「う~ん、暇ね~」
「仕方ないでしょ、俺の修行なんだから」
「よし、ならお話しましょ」
「俺集中したいんだけど」
「それぐらいの魔力コントロール、話ながらでもできなきゃ話になんないわよ」
魔法の仕組みのまの字も知らない俺にそこまで求めるかこいつは。
「まあ私の話を聞いてるだけでいいから。私の過去よ」
「・・・」
かなり気になる話題でした。
どうしよッ、適当に聞き流す気だったのに、やるにやれねーよ!
俺の心の葛藤など知らずに、アサギは大人びた表情で語り始めた。
「私ね、本当はサキュバスと人間のハーフなんだ」
え?そうなの!っのッッッッ!ヤバイヤバイ!電撃に呑まれるところだった!
「おと──父親が人間。私は父親が嫌い。私の魔眼は父親の遺伝なの」
内容が支離滅裂していて頭の中で頑張って整理する。が無理!しようとすると俺が感電する!
その後もアサギの話は続く。それを俺が理解できた範囲で教える。
まず、アサギはサキュバスの母親と人間の父親から生まれた子供です。
父親が魔眼を持っていて、母親もチャームと言う眼を使う魅了魔法を使いこなすサキュバスだったから、特殊な遺伝で特別な魔眼を宿したと思われるらしい。
んで、それなりに平穏な生活をしていたんだけど、父親が凄腕の傭兵だったそうだ。しかも、戦い好きの。
家庭では優しい父親だったけど仕事では魔眼を巧みに使い、鬼神の如く敵を殺していったと言う。
アサギは父親の嫌いな顔ができ、家庭で父親とのコミュニケーションがぎこちなくなっていったそうだ。
アサギは父親に傭兵の仕事を辞めてほしいと頼んだが、聞いてもらえなかった。
そのまま時は過ぎていきある事件が起きた。
父親が仕事に行っていた家に父親を仇と言う人物が訪れたのだ。
母親が殺された。
アサギの目の前で、アサギを守りながら。
この事を予感していたのか母親が殺されてすぐに父親が帰ってきて、そいつを殺した。
その時の光景が今でも心を苦しめる。
紅く染まり床に突っ伏す母親。
残忍に切り刻まれた誰かもわからない死体。
そして、全ての原因である父親の……狂気に満ちた笑顔。
全部紅く。怖い。こんな所に居たくなかった。
そう思ったアサギは家出した。そして辿り着いたのが『グラディス』、パンデモの近くにある大きな街だ。
体力的にも精神的にも限界だったアサギはそこで一人の女性に助けられたらしい。しかし、その女性は名を名乗らなかった。代わりにアサギに衣食住を与え、去っていった。
そんな女性をアサギは『神様』と呼んで今もしたっている。
神様は去り際にこう言ったそうだ。
「アサギ、あんたに上げた衣服はこの世界ではお目にかかれない物だ。つまり、珍しいんだよ。もし、それと同じ様な素材の服を着たバカ面で黒髪の如何にも童貞そうな男が訪れたらそいつが私に代わってあんたを幸せにしてくれるよ。それじゃ、また会えたら恩返ししなさいよ。楽しみにしてるわ♪」
はい、説明終わり。
アサギの過去もなぜ俺を運命の人と言うのかもわかった。
なるどね。
おい、神様。あんたがどうも他人に思えないんだよねぇ。でも誰だ?
「こら!考え事してる暇あるなら集中!」
アサギが出力を上げる。
折角慣れ始めたのに、また気合いの入った声を張り上げるはめになった。
幸せに、か……。
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そんなこんなで俺の修行は続きまして、決戦の日の前夜。修行から帰ってみると一枚の紙がドアに貼られてました。
『本日、点検のため900~924号室の水道やらなんやら使えません。
ご協力お願いします。by寮長』
「なん……だと……ッ!?」
俺は自分の部屋の前で阿保面で固まった。
いや、無理もないでしょ。俺はここ最近、修行漬けの一日で蓄積された疲労に耐えるためにお風呂を心の拠り所にしていたのにこの仕打ちだもの。俺の部屋で終わってるあたり作為的な悪意を感じる。神様は名指しで死ね!って言ってるのか?
しかし、どうしたものか……。風呂に入らないと言う選択肢はない。……あ、そう言えば。
俺は急いで部屋に入ると学園の冊子を手に取った。
「確かここに……あった!」
俺は目的を達成すると、冊子を置いて着替えを取りだしあるところへと向かった。
冊子はさっき見ていたページが開いたまま机の上に置かれており、そこにはこう書かれていた。
『大浴場』
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ここは大浴場前。俺はそこで立ち止まってます。
銭湯とかの入り口でよく見かけるのれん眺めて見ると、
『♂』『♀』『混浴』
と書かれていた。
ここで俺がとれる選択肢は二つ。
男湯に入るか、混浴にはいるか。
まあ俺も男だから混浴に興味ないわけがない。でも明日は大切な日だし、なにより俺はエロスを求めてるんじゃなくて、癒しを求めてるんだよ。故にとる選択肢は……
「前者だな」
「何が前者なんだ?転校生」
聞きなれない男の声。
俺は反射的に声のする方へ振り向く。するとそこには、同じクラスの狼男がいた。
びっくりするくらい声が出ない。
今まで話し掛けて来なかった人が急に話し掛けてきたら当たり前の反応だと思うが、それがおきに召さない狼男さんは眉を寄せてこちらを見詰めてくる。
なんか喋らんとマズイ。
「いやなに、どっちに入る「お前顔怖いな!」…んだとゴラァ!」
なんなんだこの礼儀知らずな奴は!親しき仲にも礼儀ありと言う言葉があるだろうが!つまり、親しくない者なら更なる礼儀の極致を振る舞えってことだぞボケぇ!
心の中で毒づく俺。きっと表情にも出てるだろう。
そんな俺の気持ちも知らず、狼男は面白い物を見た風にケラケラ笑っている。
「なんだ、ちゃんと喋れるじゃねーか。俺はガイル・スロープだ、よろしく。で、転校生……お前は大浴場の前で何してたんだ?……本当に何してるんだ!?」
俺がしゃがんで曲げた右腕を水平に振るい続ける姿に驚いたようだ。ガイルって言ったらこれだろ?ソニックブーム!
さて、無視するのもあれなので。答えよう。
「大したことじゃないけど、男湯か混浴。どっちに入ろっかな~って考えてたたげ」
「ふ~ん、でどっちだ?」
「まあ、男湯かな」
「なんだよ……ちーせーなー?」
「今の俺に必要なのはエロスじゃなくて癒しなの」
「へいへい♪」
ニヤニヤと口元を歪ませる。ギラリと輝く歯が姿を現れる。
何だかんだで親しくなった。
脱衣場で服を脱ぎながら、俺はガイルと話続けた。
「しかし、なんで俺なんかに話しかけてきたんだ?」
「まあ確かに最初は話しかける気なんて無かったよ。俺は元々喋らない方でね。本当にそんな気はこれっぽっちも無かったんだ」
「んじゃどうして?」
「遥って知ってるだろ?あいつ、俺の幼馴染みなんだよ。だからたまに、お前の話を聞かされてるんだよ。『他の人間達とはなにか違う雰囲気を持ってる優しい人だ』ってな。だから今日偶然見つけたお前に話しかけてみたって訳だ」
「へ~。遥、そんな風に思ってくれてたんだ」
とてもいい話を聞いた。
よくわからんチームのリーダーやらされてるが慕ってくれる奴がいると俄然ヤル気が出てくるな。
「まあ、俺が話し掛けたのは只の気まぐれさ」
互いに服を脱ぎ終わり、浴場に向かう。中に入ろうと扉に手を掛け開ける。
「ムハハハハハハハッ!中々の力!モチョス殿も腕を上げたな!」
「ムッシッシッシー!テオ様にそう言ってもらえて感激の極みであ~る!」
「ハッハッハッ!御二人、中々の名勝負であるぞ!」
*バタンッ*
「・・・」
なんか大浴場で見知った人達がレスリングみたいなのやってるんだけど。……入りたくねー!
「おいおい、どうしたんだ急に?」
いきなり扉を閉める俺に不満げな顔で聞いてきた。
「どうした?じゃねーよ!!お前こそなんで平気なの!?あんな地獄の最下層みたいな光景みてどうして平気でいられる!?俺は今すぐ目玉と脳をくり貫きたいのに!!」
「落ち着け!あの人たちは目さえ合わせなければ狙ってこねーから」
「無理無理無理!あんな体中が油だか汗だか何だかでテカテカ光沢放ってる物体を無視しろか無理だから!鴉でもいたら一瞬で誘われて一瞬でポックリだよ!」
俺は肺が空っぽになるまで必死に訴える。が、どうもことの深刻さをガイルは理解してない。
「俺、入るのやめるわ!またなガイル!」
すぐに体を布で隠し、急いで隣の混浴浴場に向かった。
「・・・あ~はいはいなるほどね~。なんやかんや言っても男ってことか?えぇ?」
ガイルは男湯の入り口を見詰めながらニヤニヤと笑いギラリと歯を剥き出す。
*ガラガラ*
「なにやら声がすると思えばガイル殿ではないかぁ!」
「主も一汗流しに来たか」
「ご一緒させてもらいます、テオ様、紫電さん」
ガイルは二人を追うように浴場に入っていく。
熱気が帯びる白い湯気の中を進んでいくと、次第に大きくなっていく人々のざわめき。
ある所まで進むと湯気は晴れ、視界がクリアになっていく。すると、
「では、これから漢郷会議を始める」
タオルを腰に巻き、腰に手を当てて会議の開催を宣言するテオ様と、
『オオオオオオオオオォォォ!!』
それに呼応して、紫電さん含めた筋肉ダルマ達が大声で吠えた。
この学園には男子が圧倒的に少ない。ここにいるのはそんな一握りの男子生徒達、全男子生徒の半数以上は居るだろう。
「では急いで会議を始める。皆は明日に決闘が催されるのをご存知であると思うぞ!今回の会議はその決闘を無事に進むことが出来るように、どう配慮するかを考えたい!」
テオ様が視線で合図を送る。
ガイルは前へ出て口を開く。
「情報屋のガイル・スロープだ。俺の掴んだ情報によると、共存反対派が明日の決闘に向けて何やら怪しい動きをしているらしい。確実かどうかは知らんが、用心に越したことはない。《戰皇女》のことだ、戦いを大事には思うが勝つために手段は選ばんかもしれない。気合いを入れてくれ」
俺はそれだけ言い終わると後ろへ下がる。
「うむ、ありがとう。では皆のもの!細かな予定を立てる!意見の有るものは…ッ!」
テオ様は腰に巻いてあるタオルを投げ捨てる。
「身体で語れぇぇ!!」
『うぉおおおおおおおおおおおお!!』
次の瞬間、浴場の所々で男達が全裸で語り合いながら絡み合う(レスリング的意味で)光景に姿を変えた。
俺は端の方にある湯槽に浸かり、ゆっくりと息を吐く。全身に染み渡るような心地好さ、これだから風呂はいい。
「さて転校生。頑張れよ」
俺は目を瞑りながらポツリと呟いた。
放置してた訳じゃないのですDAMUDOです。
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