魔立学園・パンデモ   作:DAMUDO

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【大浴場】
パンデモにある大浴場は男湯・女湯・混浴に分かれている。
男湯はホモ達のたまり場。女湯は美女達の楽園。混浴は変わり者が集まる。
設備は申請書を出すと大体は要望を聞いて設置される。
パンデモ内でもかなり投資されている場所である。
なんでも学園長が無類の風呂好きだからとか……



嘘は……ありません

「おぉ、広い……」

 

俺は大浴場に入り、早速驚きの言葉を漏らす。

目の前に広がる、温泉のような内装に一瞬我を忘れ、惚れ惚れした。

風呂場を一杯に広がる湯気が少し視界を遮るが、それも大浴場の醍醐味と言うか、お約束と言うか、兎に角必要なものであって、俺は非常に満足だ。

運良く、この混浴風呂には誰も居なかった。

そう!俺はこの場で一人!つまり!好き放題に堪能できるはめはずし放題と言うのだ!最高じゃないか!

 

「にしても広いな~。お、露天風呂がある!ジャグジーにサウナ、電気風呂もあるのか!一般的な大浴場のレベルじゃないね、流石異世界♪」

 

たまに目にはいる奇っ怪な色をした、個人的にけっして風呂とは呼びたく無いものを無視して、俺はシャワーの前まで行って腰を下ろす。

 

「ホントに温泉みたいだなぁ」

 

よくみる温泉に似た光景に俺は懐かしさを覚える。

昔は良く、家族一同で温泉に行ったよ。……どうしてだろう。思い出そうとすると頭が痛い。

 

俺はさっさと、シャワーを浴びた。

そう言えば、人によって風呂の入り方が違うとか聞いたのを思い出した。ここの魔物達は一体どうやって風呂に入るんだ?スライムとかアンデットとか常に燃えてるやつとか。ヤバイ、気になる!

そんなこんなで、どの魔物がどんな洗い方するのか妄想しながら体を洗う。考え事をしてたせいか一瞬で終わった気がした。

さて、いよいよ……

 

「ヌフッん、風呂に入りますか♪」

 

と言うわけで、ちゃっちゃっと風呂に近付き片足を入れる。

じんわりと足から熱が伝わってき、俺の胸は歓喜で高まる。俺、かなり風呂好きなんだ。

我慢出来んとばかりに肩まで一気に浸かる。

 

「んッ、ふぅ~~~」

 

あまりの気持ちよさに変な声まで出る。やっぱ風呂はええもんじゃ!

体の疲れが染みでる様な感覚で癒される。その内、体が溶けて風呂の湯と馴染んでしまうんじゃないか、と言う気持ちになる。

 

「極楽♪極楽♪」

 

爺臭い決まり文句を呟きながら俺は至高の時間を楽しんだ。

 

・・

・・・zzZ

 

「ッ!んばぁっ!」

 

突如、液体が鼻と口から空気を奪っていく感覚に襲われる。

急いで顔を上げて、酸素を確保する。

 

「はぁはぁ、なんつう危ないことしてんだよ俺は。危うく死ぬところだったぜ」

 

あまりの心地好さに眠っていたようだ。危ない危ない、気持ち好さに負けて風呂で寝てしまうと最悪死ぬからな。気を付けないといけない。

しかしこの湯、不思議だなぁ。かなりの時間、浸かっていた筈なのに全く逆上せる気がしない。

 

「魔法とかの効力かなぁ?」

「ワシの魔法式のお陰じゃよ」

「へ~すごいな魔法って。……お?」

 

幻聴か現実か、今絶対聞きたくない声の正体を確かめようとそちらがわに顔を向ける。

 

「どうしたのじゃ、変な顔をして。ワシの顔に何かついておるのか?」

 

深みのある、かわいらしい声の、幼い少女が、俺を見ながら、首を傾げて、何か言っております。

 

「いえ、別に、何も」

 

そう言って俺は顔を前に戻す。隣の少女は「変なやつじゃなぁ」と言いながら、俺と同じように前を向いた。

 

さて……どうしたもんかなぁぁぁ!?幼女と一緒に風呂に入ってるなんて状況、これ完全に犯罪じゃないですかぁ!?嫌々、ここ混浴だから犯罪にはならないよなぁ。……でも、御一緒してるのが幼女だもんなぁぁぁ!

このまま居たら、絶対に誰かに見つかって生きていけなくなる!てか、明日は大事な決闘だ。大事になるのことだけは絶体阻止せねば!

 

「ふぅ、そろそろ上がろうかな」

「ちょっと待つのじゃ」

 

逃げようとしたら、幼女に捕まっちゃった♪

何故逃がしてくれないんだ!と心で叫び、泣きたくなる衝動を押さえつけ、幼女に対応する。

 

「ど、どうしましたお嬢さん?」

「お主どうせ暫く暇じゃろ?ちょっとの間、ワシの話相手になってくれないかのぉ?」

「……断ったら?」

「新聞部にお主のことを混浴な事を良いことにワシの体を視姦するロリコン野郎と新聞部や連中に口コミするぞ♪」

 

どう転んでもバットエンドなので、まだ安全なお嬢ちゃんの話相手になる選択肢を選ぶ。

俺は再び湯船に身を沈める。

 

「聞き分けのよい子は好きじゃよ♪」

 

そう言ってこの子はニカッと笑った。憎たらしいが可愛いと思ってしまう笑顔だった。

 

「では、楽しくお喋りと行こうかのぅ。あ、ワシのことはシェリーちゃんと呼んでくれればよいぞぉ?」

「え?シェリーちゃん?」

「おお!そうじゃそうじゃ、そう呼べ♪」

 

やけに嬉しく反応するシェリーちゃん。

見た目相応の表情に俺は萌えた。

思うんだけど、ここの女の子達って素直なら皆可愛いよ。マジで。……仲良くできないかなぁ。

 

「で、話すって何を?」

「まあ、色々とな。お主が噂の転校生君じゃろ?決闘するそうじゃな」

「ああ、シェリーちゃんもご存じなんですね。そうなんですよね~、俺決闘するらしいんですよ……でも、俺って人間だし、よく思ってる奴も少ないし、何より弱いし……さっさと降参して、退学すれば丸く治まると思うんです、よ」

 

自分で言っていて情けなくなる。現実、俺は弱い。

アサギみたいにスゴイ魔法を使えるわけでも、ライラみたいに槍の達人でもない。ましてや、紫電のように奇妙な妖術やテオのような圧倒的身体能力に対抗できる術すら持ち合わせてない。

 

育った環境が違いすぎる。

 

「俺なんか……なにやっても意味ないんですよ」

「なるほどの~……。のうお前さん、今からするワシの質問に正直に答えてみ」

「え?……わかりました」

「よいよい。ではいくぞ?」

 

シェリーちゃんは笑顔を作り、楽しそうに質問を投げかけてきた。

 

「お主は明日の決闘、自分が勝てると思っておるか?」

「思ってるわけないじゃないですか」

「じゃあ、なにをすれば勝てると思う?」

「なにって……なんだろう。俺が勝てる勝負……」

「別に明日の対戦者のことは考えんでもよいぞ、友達とかワシとか相手は誰でもいいんじゃ。どんなルールなら勝てる?」

「んんーー?……料理とか?」

「ほう!料理とな!ええのええのう~♪他には?」

「他、か……他には~、工作も得意です。あと、走るのも。勝てるかどうか別として」

「一杯あるではないか。それだけ自信があれば決闘にも負けんじゃろうに。なにを弱気になっておるんじゃ?」

「聞いてました話!?決闘ですよ、こんな役に立たない特技あっても意味ないんですよ!」

「そんな大きな声出さんでも聞こえておるわバカもん!」

「なら……」

「ワシが伝えたいのは、戦闘技術だけが勝敗の全てを握っとる訳じゃないってことじゃ。テオや紫電が何を教えとるのか知らんが、お主の得意なことで戦えばいいんじゃよ」

「簡単に言いますけど、どうやって戦えと」

「ワシは奴等の決闘ルールをよく知っておる」

「え?」

 

シェリーちゃんの口から思わぬ言葉が飛び出した。

 

「あ~あ、それを教えてやろうと大浴場に足を運んでやったと言うのに……主がこんな根性なしじゃとわな~。無駄骨じゃったの」

 

そう言って彼女は風呂から出ていこうとする。

ここで呼び止めなきゃ!でも、決闘ルールを聞いたとして、勝てるとは限らない。そうだ、俺が勝てるわけがない。負けて、この学園を去る。最悪死ぬ。もし仮に勝ったとしても、俺がここにいる意味がない。……情けないな。

 

「・・・」

 

体の半分は浴槽から出ているのに呼び止められない。無駄と理解しているなら、何故未練がましくシェリーちゃんを目で追っているんだ。

 

あるんだ。こんな場面を昔。誰かが俺に背中を向けて何処かに行ってったことが。その時、俺は後悔した。一緒についていく選択肢もあったはずなのに。それを選ばなかったから。

今と同じように、俺にはできないと決め付け諦めきっていたから。

 

「ぁ、まっ待ってくれ!」

 

言った。遂に言ってしまった。

シェリーちゃんは此方を振り返る。その目から放たれる冷たい氷の様な視線に俺は固まってしまう。

それでも、体を潰してでも、喋らなきゃならない。

 

「俺は……勝てる自信がない。でも、だからって黙って負けたくない!さっきまで都合のいいこと言ってたけど、勝てる可能性があるなら、勝ちたい!だから、協力してくれ!いや、協力してください!お願いします!勝てる可能性を上げるために!」

「……本当に勝手じゃのう。ただの出任せなら止めとくとよいぞ」

「違います!勝ちたいんです!」

「もう、引き返さんか?後悔せんか?意地はって無理しとらんな?」

「はい!」

「嘘、じゃったら殺すが……よいか?」

 

瞬間、シェリーちゃんから放たれる殺気。俺は今までの感じたことのない恐怖にかられる。今までの味わった悪寒より強い殺気に、今すぐ、自殺してでも逃げたくなる。

 

「嘘は……ありません」

 

声が震える。でも、告げるんだ。もう逃げない。

 

「そうか。では最後に一つ質問じや。なぜ今になって覚悟を決めたのじゃ?さっきまであんなに弱気じゃったのに」

「わかんないですけど。今になってここに居たいって。誰とも別れたくないって。さっき、俺がいなくなっても誰も悲しまないとか言ったけど、そんなことなくて!いてほしくなかったら、最初っから協力なんて、仲良くなんてしてくれるはずがないし!そもそも全部自分が決め付けただけで!そんなことなくても、思われてなくても俺が皆と一緒に居たいってだけで!いや、ちょっと待ってください!今俺、喋ってること無茶苦茶ですよね?ちゃんと整理して話すんで……」

 

「もうよい!」

 

大声を出して俺の声を遮るシェリーちゃん。

俺はビビってそれ以上話すことはできなくなった。

完全に見放された。そう思った時、シェリーちゃんの口から出た言葉は意外な言葉だった。

 

「言いたいことはなんとなくじゃがわかった。今回だけ特ッッッ別にッ!!教えてやるわい」

「え!?」

 

今、教えてくれるって……?

 

「一度しか言わんからな。よいか、シュラんとこの奴等が好む決闘ルールはなんでもありのバトルロワイアルじゃ。勝ち負けはどちらかが戦闘不能になるか降参するかで決まる。お主が勝つには後者の降参を狙うしかないじゃろ。どうするかは自分で考えるんじゃ、なんでもありのバトルロワイアルなんじゃからな。戦闘区域は恐らく学園全体じゃろ。教えることは以上じゃ、後は知ったこっちゃない。ま、せいぜい生き残ることじゃ」

 

そう言ってシェリーちゃんはサウナ室へ向かっていく。

 

「あ、ありがとうございましたぁ!!!」

「はいはい。また会うことがあったら、今度はゆっくり話をしようのう」

 

そう言って彼女はサウナ室へ入っていった。

 

この後の俺の行動は早かった。もう迷いはないから。

風呂から出て急いで自室へ戻る。机に陣取り、棚から持ってきたファイルの中にある紙を取り出す。

 

『荷物転送申請書』

 

俺は実家から送ってもらう物を殴るよう書き綴った。

 

 

───────────────

 

 

「ふぅ~、疲れたの~……いや~弄り概のあるやつじゃなぁ、あやつは。ちょっと挑発しただけで、あそこまでムキにならんでもよいのにのぅ。くくくっ愛らしいのう。……独り言が多くなると歳を感じてしまうわい……身体は成長せんのに……」

 

サウナ室にいたシェリーちゃん。

汗が滴る童子のような身体を揉むようになで回す。主に胸を。

 

「ぐぬぬ……」

「なにを自分の胸を見つめて唸っている?シェリルよ」

「!?」

 

成長しない胸に絶望していた為、部屋に入ってくる気配に気付けなかった。

声に反応して反射的に顔を上げた。そして、視界に入ってくる声の主。

シェリーちゃん──シェリルはその人物を見て一気に不機嫌になる。

 

「誰かと思えばシュラではないか?どうしたんじゃ急に……お主には自室の悪趣味な浴場があるじゃろうに」

「別にアタシがデザインしたわけじゃない。あんなに宝石を飾ってどうこうなるもんじゃないのにさ。それに比べて、ここはスッキリしていていい」

 

シェリルが憎み口を叩く相手は褐色肌の美しい女性だった。スタイルもよく、出るとこ絞まるとこスッキリしている。ただ、普通の女性のような筋肉の付け方をしておらず、細いボディービルダーと言う印象を受ける。

そして何より特徴的なのは、彼女の腕である。彼女の腕は常人の二本より四本多い六本あるのだ。

彼女の名前はシュラ。六芒星の一人だ。

 

シュラはゆっくりとシェリルに近づき、隣に座る。

 

「ふぅ……」

 

シュラが一息つく。

そこからは静寂の世界だった。

サウナの熱気、互いの呼吸音、たまに聞こえる雫が落ちる音。それら以外は感じない。

いつまで続いたか。遂に静寂は打ち破られた。

 

「何か……ワシに話したいことでもあるのかのう?」

「そうだね~……キミは聞き手に回るのが得意だったと覚えているが……どうかな?」

「ふんっ、話し手方が好きじゃがな。……あやつのことか?」

「わかってるじゃないか。その彼に情報を与えたどうかが聞きたい。与えたならキミは中立としてアタシにも情報を提供するべきだと思うけどどうだい?六芒星のシェリル?」

「ワシは中立としてあやつに情報を提供したまでよ。アマチュアとプロの決闘じゃからの。それにそこまで身は詰まってないわい」

「そうかい」

「お主、今度は何を仕掛ける気じゃ?」

「アタシは別に。皆が勝手にやるだけだからね。それに、彼のバックが対策を興じているらしい」

「その通りである!」

 

凄まじい声量と共にサウナ室の扉は開かれる。

入ってきたのは、金色の筋肉ダルマのナイスガイ、テオであった。

テオはズシンズシンと歩き、シェリルの隣を陣取る。

 

「ふんぬぅーーー。シュラよ、貴様のいいようにはさせんぞ」

「ああぁん?アタシがやってるんじゃないって言わなかったかい?」

 

二人は互いに殺気をぶつけ合う。その迫力は一般人なら裸で土下座して命乞いをすると思わせるほど濃厚で突き刺さるような空間を作り出す。

 

「お主ら!ワシを挟んで睨み合うではない!息が詰まるわ!」

 

そんな居心地悪い空間を作り出している張本人に文句を言うシェリル。

テオとシュラは互いに睨みながらも殺気を抑える。

 

学園最強の六人の内の三人が鎮座するサウナ室。

今この時、世界で一番混沌としたこの空間は、妙な緊張感の中、誰かがここのドアを開けるまで続いた。

 

 

───────────────

 

 

何処にでもある家のリビング。

だらしない格好の女性がお腹をボリボリと掻きながら電話に出ていた。

 

「申請書は届いたよ。まったく家のバカ息子は何を考えてるのやら……え?そんなことになってんの!?やだなにそれ!面白そうじゃない!あ、録画しといてよ!お願~い♪……お!やった!ありがとう!今度、なんか奢るわ。じゃあねー♪」

 

女性は電話を切ると階段を上っていった。

 

「んじゃ早速、あいつの部屋を物色しますか……」

 

 

 

 

 




半年以上間が空いて投稿になりました。
ごめんなさい!
そして、許してください!

次もこんだけ空くかも……
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