まぁ……飯炊きに専念しとけば大丈夫かなって   作:スターク(元:はぎほぎ)

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【提唱】胃袋掴めりゃDB世界の世渡り余裕説ww【検証】

【悲報】掴み過ぎて死にそう【逆効果】

 

1:この前胃袋掴みスレを立てたイッチ◆EATkugi!

助けて

惑星ベジータから逃がしてもらえない

 

2:名無しの転生者

詰みで草ァァァァww

 

3:名無しの転生者

宇宙の塵と化す事確定してる星に縛り付けられてるのサイバイマン生える

 

4:イッチ◆EATkugi!

笑い事じゃないのよ

サイヤ人達が今日も食堂に押し寄せる、怖い

退職させて貰えない

 

5:名無しの転生者

大人気やんけ。良かったな、予想通り胃袋掴んでるから殺されないで済んでるぞ!!

 

6:名無しの転生者

まぁデスボールが投げ込まれるんですけどね

 

7:名無しの転生者

そもそもイッチはなんで惑星ベジータにおるんや

この前は名も無い辺境の惑星からのスタートやったやろ

 

8:イッチ◆EATkugi!

>>7

いざ故郷(地球)を訪ねて3千光年しようと出航したら、最初に尋ねた星が侵攻に遭ってて

原住民の炊き出しを手伝ってたら攫われてこのザマ

 

9:名無しの転生者

そりゃあ乙

 

10:名無しの転生者

まぁ控えめに言って詰みですね間違いない

でもチートとか無いん?神様から貰ってた奴があるやろ、それ使え

 

11:イッチ◆EATkugi!

しゃあけどそのチートが料理スキル向上系だからこの有様を招いたんだ

人生の悲哀を感じますね

 

12:名無しの転生者

でも()()()()チートあるって言ってたやん

そっちも使えんのか

 

13:イッチ◆EATkugi!

もう一個のチートの内容ね、この際言うけど“不老”なんだよね

戦闘力たったの3な若いだけの身の上でDB世界を渡っていくとか無理ゲーでしょ。不公平だ!

 

14:名無しの転生者

不死じゃない不老かよwww

 

15:名無しの転生者

あーダメですフリーザ相手に役に立ちません

これはもう無理ですね(諦観)

 

16:名無しの転生者

>>13

しかしねぇイッチ、君は前スレで「チート二つ貰ってるし勝ち確(笑)」と書き込んでいたのだから

運が悪かったと諦めないと

 

17:イッチ◆EATkugi!

皆軽くない?俺氏しぬんですよ??

 

18:名無しの転生者

お前この掲示板の名前を思い出してみぃ

俺ら全員転生者やぞ

 

19:名無しの転生者

なんたって一度死んでるんだからな(ベジータ並の感想)

 

20:イッチ◆EATkugi!

そうやったわ……

でも最後まで足掻きたい。何すれば良いかな?

 

21:名無しの転生者

とりあえず目の前の業務に集中やな

腹空かせたサイヤ人が押し寄せるんやろ?怒らせたら死ゾ

 

22:イッチ◆EATkugi!

うへぇ……気が落ち込む……滅入る………

ギネさん早く来てぇ

 

23:名無しの転生者

ギネ?

さん付けな辺り、仲良くなったサイヤ人でもいるのか

 

24:イッチ◆EATkugi!

あーそっか。知らないよね公式じゃ出てないし

バーダックの嫁さんだよ

 

25:名無しの転生者

……………ファッ!?!!?

 

 

 

*1

 

 


 

 

「あら姐さん、早いですね」

「………」

 

食堂の朝は早い。アタシ達サイヤ人の燃費はすこぶる悪く、出立前に大量の飯を掻き込まなきゃやってけないからだ。日が昇ってからチンタラ準備してちゃ、その後に訪れる混乱なんか到底乗り切れない。

そんな戦場を取り仕切ってきたリーダーこと姐さん。そんな彼女に遅れを取らないよう、職場一番乗りを試みた訳なんだけど。

 

「姐さーん?」

 

そんな私の意気込みなんか何のその、とばかりに当然のように現着していた一見若い、幼いとすら言える背中──私よりも年上らしいけど──そんな姐さんは、一心不乱に包丁を振るって周りの音なんか聞こえてないようだった。そうそう、姐さんはこうでないと。

 

「こうなった姐さんは誰にも止められないもんね〜」

「……」

 

トトトトトッ、絶え間無く刻まれるリズムで食材が舞う。下拵えまで完璧に施された肉や葉野菜が隣に(うずたか)く積まれ、しかもその幅感覚は見事に均等ときた。大雑把極まるサイヤ人には、到底辿り着けない神業だ。

 

(って、いけない!こうしちゃいられないんだった)

 

姐さんが動き出してるなら、それをサポートするのがアタシの仕事。無くなっていく食材の山を運ぶ、並べる、積み上がった処理済みの物をそれぞれの鍋に放り込む。的確にこなさなきゃ到底追いつけっこない!

 

ネコマジンの手だって借りたい状況が半刻ほど。それを経た時、不意に入り口の扉が開けられた。

 

「遅い!もうとっくの昔に姐さんは──」

「──誰が誰に口利いてんだァ?」

「えっ……」

 

同僚かと思ったら違った。大柄な背格好、光を喪った複眼は実に見覚えがあるもので──勿体ぶらずに言えば、アタシが戦闘員だった頃の上官だった。

 

「暫く見ない内に偉くなったなぁ、えェ?」

 

──それも、とびきり鬱陶しくて嫌いなタイプの!!

 

「ちょ、ちょっと!まだ開店前だよ!?」

「知るかよォ。客に飯を出さなくて何が飯屋だァァァップ」

「うっわ酒臭っ!」

 

私の制止などなんのその、とばかりにキッチンまでグイグイ押し入って来る。姐さんの牙城へ、部外者の入ってはいけない()()へ。

それどころか、立ち塞がる私の肩へ手を回して来る始末だ。コイツ……!

 

「離してッ…!!」

「へへへェ。良いじゃねぇかギネ、飯が無いってんならお前が相手になれや。バーダックだって遠征三昧で()()()()なんだろゥ?だったら今の内に俺が()()()()()()()()tブリョッ!?」

 

……手が出た。それを自覚したのは一瞬後の事で。

でも仕方ないじゃないか。弱くたってアタシは立派なサイヤ人で、戦闘民族の女で、バーダックの妻なんだ。夫以外の男に体を許すつもりなんかさらさら無いし、その覚悟を貶して来る奴なんか何があっても許せなかったんだよ。

 

「───テメェッ!!!」

 

きっと、それは私の戦闘力と立場を鑑みれば悪手でしかなくて。

力任せに肩を掴んできた両手はアタシの力じゃ到底振り払えない。そのまま押し倒されて背を地面に打ち付ける。

苦悶に歪んだアタシの表情を見て、気を良くしたのだろう奴の口が歪に笑った。くそっ、こんな……!!

 

「離、して……!」

「うっせェ!じっとしてな、すぐ終わるから──」

 

アタシは弱い。サイヤ人らしくも無い臆病な性格で、力も無くて、毅然と振る舞おうとしても……一度こうなったら、目尻に涙すら浮かべてしまいそうになる弱虫だった。だからこんなクソ上司にだって目をつけられて、好き勝手される。

悔しい。こんなの、どうして。

 

助けて。

バーダック。

姐さん……!

 

「───ぉ、おォっ?!」

 

()()()が聞こえたのは、その瞬間の事だった。

開いた目に映ったのはアホ面を晒してのけぞる上官の姿で。アタシに覆い被さっていた状態を起こし、二歩三歩と後ずさる姿は滑稽ですらあった。

ふと背中に垣間見えた尻尾。そこに絡みつき締め付ける金属バンドを見て、全てを察する。アレは命令を無視するサイヤ人を即座に無力化するべく開発された新発明、特殊銃から発射されて尻尾の弱点を刺激する特殊弾だ。

 

────オイ」

 

そして、その声は背後から。

ドスの利いた声音だった。ありったけの怒りを込めたそれは、間違いなく特殊弾を発射した当人の物だった。

店内なら気温が数段階下がる。そう錯覚する程の、歴戦の上級戦士にも匹敵し得る“殺気”。

 

「お前、何だ」

「…い、いやァ。つい腹ァ減っちm」

「土足」

 

彼女は指差す。床を汚したアイツの足を。

 

「泥」

 

帰ってきたばかりで身体も洗ってないのだろう、肌と戦闘服にこびりついた汚れを。

 

「汗」

「ままま待てよ!汗は仕方ないだr\ドスッ/ひうっ」

 

瞬間、奴の顔の真横に突き立った()()。平常ならともかく、尻尾を拘束されて弱まった今では当たりどころによっては致命傷になり得るそれが、皮切りだった。

 

───す」

「「えっ」」

(おろ)すぞテメェェーーーッ!!!!」

「おわぁぁあああっ!!?!?」

 

怒髪天。鬼のような形相を浮かべた姐さんが標的を追い回す様を、アタシはポカンと見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

 

食堂の掟その①。部外の者が立ち入るべからず。

破りし者には鬼女(おにめ)より鉄槌が降る───と、言われているとかいないとか。

 

 


 

 

───んぇ?あれっ?

 

「どこここ」

 

今はいつ?私はだぁれ?

 

……というギャグは置いといて、気付けば路地裏。そこに打ち捨てられたゴミ溜めに犬神家しているサイヤ人を目にした瞬間、私の内心は今日は一色に染まった。

 

「ひぃーっ!!」

「姐さん!ここにいたんですか」

「ギギギギギネさん!殺人事件!ししし死体がーっ!!」

「えっとうとう殺っちゃったんですか───なぁんだ、安心して下さい姐さん。ずっこけて突っ込んで気絶しただけみたいですよ」

「ほんとぉ……?」

 

なんなのもー!掲示板の奴らはロクに同情してくれないし、気が付いたら目の前に死に体のサイヤ人がいるしで厄日じゃんか!私の居場所はキッチンなんだからそこに閉じこもらせてよ〜!!

 

「もぅマヂむり……ずっと食材とだけ向き合ってたい」

「はいはい、お望み通りまな板の前に戻りましょうね」

「やったー」

 

ギネお姉ちゃん一生ついていきます!と、おぶられながら言ったら「姐さんはそっちでしょ?」と返された。なんで慕われてるのか分からんけど、彼女がいるだけでどれだけ心強いか。

サイヤ人が皆、彼女みたいに穏やかだったら良いのになー……なんて思ってられたのもその時まで。

 

「姐さん!ギネ!どこに行ってたんですか!?」

「開店間際ですよ、行列並んでますー!」

「だから遅いんだってアンタ達は!こっちは大変だったんだよ!!」

「え゛っ」

 

店の前には人、人、人人人だかり。厳つい目を血走らせた怖〜い人達が、それぞれの尻尾を待ち遠しげに揺らめかせてて。あれよあれよと言う内に仲間たちは厨房に連れ込まれ、立たされて、しかもそこは出入り口から見える所。

そして開店(おわり)の時が来た。

 

\ガチャンッ/

 

「飯ぃー!!」

「寄越せぇぇぇ!!!」

「食わせろォ!」

「ひぃぃぃーっ!!───ぁ°ッ」

 

プッツンと。私の意識は、またそこで途切れた。

 

 

 

 

────さて、と。

 

「いくよ、アンタ達」

「………!」

「返事ッ!!」

「「「っ、はい姐さんっ!!!」」」

 

恐怖をスイッチに切り替わる意識。二重人格みたいな大層な物じゃない、絶望に対する逃避から生まれた感情OFFの超集中状態……とは言っても、他人に胸張って言える代物じゃあないんだが。さっきみたいに怒りが暴走する事もある程度には不完全だし、限界超えてるのか記憶持ち越せないしね。

 

そんな情けない私だけど、それでも料理に対する情熱は本物だって。自分でそう信じてるから。

 

「……さぁ。始めようか」

 

包丁を手に、いざ来い猿ども。その程度の舌と胃で、私を軽んじられると思うな。

 

 

 

 

 

 

 

「うぇーんまた気が付いたら夕方だよー!疲れたーッ、働くのヤダーッ!!」

「姐さん、格好いいのか可愛いのかどっちかにして下さい!」

「どっちも持ってるから良いんじゃないか。ねぇ姐さん?」

*1
この時点では、転生者達の前世の死亡時期は2014以前。銀河パトロールジャコは未出である

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