まぁ……飯炊きに専念しとけば大丈夫かなって 作:スターク(元:はぎほぎ)
トランクスが心臓病の特効薬を持って来てくれなかった世界線がどういう物だったかよくわかりました
「───ごちそうさま。美味かったぜ、ファム姐」
「お粗末様。機嫌がよさそうだけど、何かいい事あったの?」
「姐さんに隠し事は出来んな。聞いてくれ姐さん、
「そっ…か………」
「そうだよカカロットが生きてたんだよ!近々迎えに行くつもりだ、アイツも名付け親に遭えると知ったら喜ぶだろうよ。楽しみにしててくれっ」
「ラディ君」
「何だ?」
「弟さんと仲良くね」
「俺達はサイヤ人なんだ、悪いが確約は出来ん…けど努力するよ。同じ
「……だよね」
「おい、着いたぞ。起きろ」
「Zzz」
「………起きろっ!!」
「うぇっ!?ここどこ?あっ、おとうさんがいじめられて、ぼく連れてかれて……びぇーん!!!」
カカロットから息子を取り上げてざっと30分。ポッド着地点に着いたと思ったらこのザマだった。
オイ泣くな。お前も勇敢なサイヤ人の血を引いてるんだぞっ!
「野菜人なんて知らないよ〜!」
「こいつ……この女々しさはもはや“優しい虐待”とかそういうレベルだぞカカロット……!」
このままでは埒が開かん、連れ帰ったところでベジータあたりが殺してしまうかもしれん。一丁前に反抗できるくらいの気概は身に付けさせておかんと、しかしそれには何をすれば良いのやら。
「おとうさーん!助けて〜!」
「だからお前の親父は……あっそうだ」
ここでふと閃いた。こんなにカカロットに頼るんなら、逆にその気質を利用してやれば良いのでは?と。
「小僧。ゴハンとかいう小僧、いいかよく聞け」
「ふぇ?」
「今までお前が見てきた通り、俺はカカロット……お前の父親の敵だ。そして父親より強い」
「おとうさんのほうが強いもん」
「痛゛ぁいっ!」
「そうだ痛いだろう!これからお前の親父はきっとここに来る、そして俺は今のと同じ事を父親にしてやる!!」
「……!」
父親がそんなに大事なら、その父親を人質とするまでだ。自分の事で怒れない?なら家族ではどうだ、ゴハン!
「どうだ!1発だけじゃ済まないぞ、何発も何発も喰らわしてやるんだ!カカロットの奴は何回目で泣くかな?」
「おとうさんを、バカにするな……!」
「俺の蹴り一発で無様にのたうち回るような奴をバカにするなだと!?見立てが甘すぎる、まるで学者脳だ!!」
「えっ、なんでぼくが学者になるって分かってるの?お母さんしか言ってないのに」
「えっ母親はお前を学者にするつもりなの?」
今のは「戦闘を生業とするサイヤ人が学者を目指すなど恥晒し」というスラングなんだが……えぇ、本当にコイツどういう教育受けてるんだ。小1時間ほど母親に問い詰めたいんだが、出来れば姐さん同伴で*1。
「コホン。ともかくだ、俺はこれから此処に来るであろうカカロットに痛い事をする。そしてそのザマを高らかに嘲ってやる。それを止められるのはお前しかいないという訳だ」
「ぼ、ぼく?」
「そうだ!今カカロットより先に俺と対峙しているお前にしか出来ん!さぁ俺をブチのめしてみろゴハン、父親を殴られたくなければなぁ!!」
さぁ怒れ!怒るんだガキンチョ、サイヤ人らしく怒りを力に変えてみせろ!やれば出来るっ!
「いやだぁ!そんなのおじさんが“イタイイタイ”になっちゃうっ」
「そうしなきゃお前の親父が“イタイイタイ”になると言ってるだろうが!さぁやれ!来いゴハン!!」
「ぅう゛……!」
そう、その表情だ。もっと恨みを込めて睨め、そして行動に移せ。それが出来ればサイヤ人の第一歩だ、ホラ頑張れ!あと一息!!
「怒れー!」
「うわーッ!!!」
……意識が飛んでた。
とりあえず、ゴハンを捕捉してたスカウターが“1307”を表示してた所までは覚えている。そこから先の記憶が無い。
「ぇ、ぁ、おお、ぉじさん。だいじょぶ?」
「あ、ぁ。今、何時だ」
「さっきとかわんないよ。10秒くらい」
つまり10秒気絶してたという事。ていうか何だこの声、死にかけか?いや実際死にかけたわ、心臓一瞬止まったし。
……頭突きで?
「お前、何者なんだ……って声戻った」
「ぼく悟飯です」
「それは分かってるんだが」
まぁ良い。とりあえずは良い。どころか、
(こりゃあとんでもない掘り出し物をしたんじゃないか、俺……!?)
この年齢で1300超えの戦闘力だと?逸材なんてレベルじゃない、まるで才能の化身だ!本気で鍛えればベジータ王子に匹敵、どころか上回る可能性すらあり得る。尚更学者にするなどあり得んっ!!
(いっそ姐さんの護衛にするか?姉さん子供好きだしな、きっと相性も良いだろう。となればやはり基礎戦闘力の底上げが急務……!」
「き、きそ?義仲さんでしょうか」
「おっと声に出ちまってたか?まぁ良い、続きだ!」
「さっきのを続けるんですか!?」
「当たり前だろうが!!!」
お前の才能、いよいよ以て腐らせるには惜しい。だったら取るべきは一択、強くする事だろう?
「さぁ来いゴハン!また怒れ、怒って俺を吹っ飛ばせ!!」
「やっだぁ!!おじさんさっきイタイイタイしてたんじゃん!」
「今度は油断せん!心置きなくやれ、でなければお前の親父がイタイイタイだぞォっ!!」
「ヤメロ〜ッ!!!」
「ぎぶはぁっ」
二度目の頭突き。さっきと同じく鳩尾に直撃、激痛で視界が真っ白になり……だが耐えた!プロテクターを貫通する衝撃か、素晴らしいじゃないか!!
「まだ、だァーッ!!」
「またですか〜!?」
「当たり前だ!俺を倒すかお前が倒れるかまで続くぞ、嫌なら本気出せ!!」
「本気でもうイヤだよ……」
「だーかーらー!倒さなきゃお前の親父に痛い事するって言ってるだろうが!」
「お父さんをイジメるなーッ!!!」
「急にスイッチ入rおぅふッ」
今度は顎に衝撃。一瞬変な川の向こうに親父の顰めっ面が見えた、って待てよ母さんどこ?なんで親父と一緒にいないの?
「その調子だ、さぁもう一本!」
「うぅ…… このーっ!!」
「がふぅ?!め、目指せ伝説の“超サイヤ人”!!」
「ぼくをまき込まないでよ〜!!」
「げぼっ!お、お前の未来のためでもあるッ」
「いみ分かりませんー!!」
「ぷぎゃあぁっ」
「何やってんだアイツ」
「待て孫!自分からダメージを負ってくれているんだ、暫く様子見に徹するぞ」
「けど悟飯がこれ以上変なこと教えられちまったらオメェ責任取れんのかよ!?」
「知るかァ!お前達のガキくらいお前達の家庭で勝手に矯正していろ!!」
・
・
・
「ぜー……はー……取り敢えず、最低限の怒りは身に付いた、か」
「Zzz」
「……身に付いたよな?」
激情を発するのも初めてだったらしく、怒り疲れて寝てしまった甥をポッドに放り込む。いやはや難敵だった。これなら星を侵略してた方がまだ楽だ。
「とはいえ加害行為への忌避感は未だ根強い……遠征に何度か連れ出し慣れさせる他は無いk 「もう我慢できねぇ!!」むっ!」
スカウターに反応、更に大声……いや違う、反応自体はとっくの昔からしていた!ゴハンへの教育に気を取られて見落としていたか、嫌になるぜ全く……!
「悟飯に変なこと教えてんじゃねぇぞッ、この……ロン毛野郎!!」
「ふふふ、気に入らんかカカロットよ。だが俺を恨むのは筋違いだぞ?世界は強者のみに生きる権利を与えるのだからなッ」
「……揃いも揃ってバカ兄弟ってか。声を出さなきゃまだ隠れてられたかも知らねぇのによ」
なかなか出て来たカカロット。それに続くのは……先程すれ違ったナメック星人!はっ、俺に敵わぬからと手を組んだと言う訳か。
「事を始める前に質問してやろう……貴様ら一体、ここは何しに来た」
「決まってるだろ、オラの子を取り返しに来たんだ!」
「兄に逆らうつもりなんだな?」
「オラにアニキなんていねぇさ」
……面と向かって言われると、流石に一抹の寂しさを覚えるな。まぁ仕方あるまい、それがお前の選択というのなら。
まさか2人掛かりなら勝てるなどというバカバカしい計算で来るような、そこまでの間抜けだったのならば!
「来い!お前達に後悔というプレゼントをくれてやるッ」
絶望という躾で応じてやろう。貴様が認めなかった兄として、家族としてなぁ!
「……いや、正直ここでオメェと戦うつもりは無ぇ」
「「は?」」
「だって既に息も絶え絶えじゃねぇか。さっきまでの万全なオメェならともかく、今のオメェを袋叩きにすんのは正直気が引けるというか……悟飯にもゲンコツ以外ひでぇ事してねぇし。悟飯を返してくれたら一旦退くから、明日辺りに仕切り直さねぇか?」
「きっ──貴様ーッ!!俺含めて世の中という物を舐め過ぎだろうがァーッ!!!」
「い!?持ち直しやがった!」
「こればっかりはあの異星人に同意するぜ。甘過ぎて反吐が出そうだ」
「待てよピッコロ、オラが悪いってのか?!」
「やかましい!ナメック星人に言われたくないわッ!!!」
「え?俺も異星人だったのか!?!」
「なぁ、やっぱ明日にしようって……どうすんだよこの流れ……」
開幕の空気感とは裏腹に、悟空・ピッコロとラディッツの戦いは熾烈の様相を呈した。
まずこのラディッツ、実は戦闘力が本来の歴史よりやや高い……のだが、悟飯との特訓により奇遇にも1500弱まで落ちていたのでそこまで問題は無かった。
しかし同時に、尻尾の弱点も克服していたのが不味かった。掴んで油断した悟空が不意の一撃を食らってダウンし、その隙にピッコロが両腕をもがれる。“切り札”を封じられ、地球最強の二人は万事窮すに陥ったのだ。
……ピッコロの機転が無ければここで終わっていたかも知れない。
「死ねぇ!
復帰した悟空がラディッツを羽交い絞めにした瞬間だった。ピッコロがそう叫んだのは。
悟空もラディッツも意味が分からず一瞬呆気にとられる。味方である悟空を狙うなど、この局面では全くもって意味が無いのに。
だから一瞬、気付くのが遅れた。
ピッコロがラディッツ達を挟んで──ポッドから対極の位置取りを得ていた事に。
「やめろぉーっ!!!!!」
「……あっ!」
「そうか成程ぉっ」
父のピンチにより引き起こされた悟飯の怒りが、頑強なポッドを突き破って覚醒する。ピッコロは想定通りとほくそ笑み、悟空は称賛に目を見開いて、ラディッツすらその発想に瞠目を隠せない。
ここから悟飯がラディッツに突貫すれば、相当なダメージにより時間稼ぎが見込める筈だ。幸いにも悟飯の気はこれ以上ないほど膨れ上がっており、その証拠にスカウターも2000という過去最高数値を記録している。
その間に体勢を立て直し、奥の手である魔貫光殺砲を今度こそ……という目論見だった。
ここまでは。
「おとうさんをォォォォッ」
「「「えっ」」」
「イジメるなァァァアアアアッッッ!!!!」
……突貫じゃなかった。
ド派手なエネルギー放出、超ド級の範囲攻撃だった。気のコントロールなど習ってないが故の全ブッパ、それはもう豪快に。
轟音を以て他全てを無音にする大暴発。それが過ぎ去った後に残ったのはクレーター、その中で仲良く黒焦げとなった男衆三人と無傷の子供一人である。
「ぶ…無事かッ、お前達……」
「なんとか、な…!」
災害的な衝撃に立場を忘れ、ピッコロとラディッツがお互いの存命に息を吐く。この事態を引き起こした張本人は色々出し切って気絶したようで、唯一立ち上がれたピッコロがその尻尾を掴んで回収する始末となった。
……が、無事でいられなかった者が一人いた。
「ハハ……
「カカロット!?」
「……正直スマン」
悟空が血を吐く。全身の骨折に内臓破裂、もはや分と
そんな命の瀬戸際で、彼は遺言を残すべく口を開いた。
「おめぇに謝られるなんてなぁピッコロ……喜べよ、父親の仇が死ぬんだぜ」
「そうも言ってられんだろう。1年後にはコイツより強い奴らが来るというんだぞ」
「だから安心してんだ。しばらく地球を頼むな」
「ケッ、軽く言ってくれるぜ」
吐き捨てるように告げたライバルに苦笑。しかしそれに対し声を荒げたのは、よりにもよって敵であるラディッツだ。
「バカ野郎、諦めるなッ…!我が子を置いて死ぬつもりか!?そんなとこまで親父に似るな!!」
「安心してくれ……オラはドラゴンボールで生き
「ドラゴンボール?」
「願いを大体なんでも叶えてくれんだ……詳しくは後でピッコロから聞いてくれ。それよりもさ………」
もう息をするのもやっとなのか、何度か喀血を催しながら悟空は笑う。こちらへと必死に手を伸ばす、初めて出会えた
「
「…は?」
「戦ってる途中から、兄ちゃんが手ぇ抜いてるって分かってたんだ。殺す気無かったろ…?」
「も、もう良い、喋るな!生き返るからなんだ、死んで良い理由になるか!!」
「それがどうしてか、こうなっちまったけど……許してくれるなら、さ」
「カカロット…───!!」
そう遺して、最後の家族は目の前で力尽きたのだった。
亡骸を前に、ラディッツはどうしたか───
それは仔細を記すより、1年先へ飛んだ方が分かりやすいだろう。
「……で。決意は変わらねぇって具合のようだな、
「我ながら呆れるぐらいにな」
どうしてこうなった。故郷が宇宙の塵と消えて以降、面倒を見てくれた恩人を前に俺は立ち塞がっていた。
しかも纏っているのは戦闘服ではなく、あの日カカロットが着ていた“道着”とかいう布だ。動きやすさには目を見張るが、これじゃ防御力に期待は出来んだろう……これから行われる戦いに、戦闘服の防御力などあって無いような物でこそあるが。
「悟空の兄ちゃんか。頼りにさせて貰っても良いよな?」
「期待させたなら悪いが、奴らの戦闘力相手では俺など木っ端も良い所だ。
「クリリン、なんかコイツ凄い事言ってるが本当に信用して良いのか」
「まぁ…武天老師様のところでちょっと修行してたし。俺は尻尾で殴り飛ばされたけど信じるよ」
「……礼は言わんぞ」
戦闘力、この星で言えば“気”のコントロールを学んだ半年間は中々有益な物だったと言えるだろう。後はそれがどれだけ足しになるか……どうした悟飯?
「こ……こわい、です」
「……だろうな」
俺は初陣の時は怖くなかった。だがこの子は俺じゃない。そんな俺にしてやれるのは、ただ答えの一つを示してやる事だけだ。
………まぁ。姐さんからの受け売りなんだが。
「“退けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ”」
「へ?」
「だから悟飯。せめて、退くな」
「!!」
「言うようになったじゃねぇか!こりゃあもう、弱虫は卒業かぁ?」
「そうありたいと願ってるぜ!」
「……ああ、冗談抜きで良い目をするようになった。嘘じゃねぇぞ」
それを聞いていたんだろう、ナッパがガハハと笑い出す。構え、迎え撃つは俺達。生きるか死ぬかの瀬戸際、命運を分つ瞬間が迫り。
音頭を取ったのはピッコロだ。
「覚悟は良いな──行くぞォッ!!」
「「「「「「
「………ごちそうさま、と。ラディッツがこうも化けたとなれば……カカロットのご到着が俄然楽しみだな」
そうやって駆け出し激突する俺たちを、弁当を食い終わったベジータが、笑って見ていた。
拝啓親父、そして母さん。俺は俺なりに胸を張れる道を歩んでいるつもりだ。弟との出会いを経た今、一層そう思えるようになった。
ファム姐さん。きっとアンタがいてくれたからだ。アンタが俺の腹を満たしてきてくれたから、俺は
だからその……なんだ。俺、頑張るよ。
……ラディ君が死んで1年経った。死亡報告は聞いてないけど、地球に向かって帰ってこないのはつまりそういう事だろう。
(何もしてあげられなかったな)
惑星ベジータから離された時のバイタリティはどこへやら。もう色々疲れて、言ってあげれたのだって「弟さんと仲良くね」の一言ぐらいな物──言い訳だなぁ。ダサいなぁ。
───何の為に生きてるんだろう?何一つ出来てないのに。
「トワさん、よくぞお越しくださいました」
「宇宙の帝王陛下のお呼びとあらば、駆け付けない訳にはいきませんから」
(お客さんか)
執務室への差し入れに伺えば、ドア越しに聞こえてきた会話。こういう事は珍しくない、ドドリア達幹部だったりギニューさん達だったりヒータの人達だったり。というかエレクって誰?原作にいなかったよねそんなキャラ。まぁ考えるだけ無駄か。
そんな無意味な疑問は置いといて、話が終わるまで外で待機。ただ息を潜めてじっと待つ。邪魔にならないよう壁に寄り、息を潜め、無害ですよと一目見て分かるように……
「ほう、これが……」
「ええ。我々が開発した探知機、ドラゴンレーダーです」
…………え。
(今、なんて?)
息を潜めて、ただ楽になるのを待つだけの時間は。
今ここに、唐突な終幕を迎えた。
レタス「子が親を殺す、それがサイヤ人d……ほぼ不慮の事故じゃねぇか!!」
明日の更新も多分無いです。なので土日投稿のタグは今更ですが消しました
申し訳ありません