まぁ……飯炊きに専念しとけば大丈夫かなって 作:スターク(元:はぎほぎ)
「ほう。見た目は中々」
コトリ、テーブルに置かれた皿に乗る──これまた皿状の食べ物。粉状に挽いた穀物を焼いて固めた物でしょうか?その上には質の良い干し肉やキノコが散りばめられて彩を成し、何やら粘性のある物体を掛けられた上で綺麗に焼き上げられていた。
「ピ、ピザと言い、ます。好き嫌いは無いと聞きましたので、えっと、大丈夫だとは思いますが」
「我々はそもそもモノをあまり食べませんからねぇ。しかし、このクセのある香りは何ですか?」
「チーズでしゅ。惑星チークサで飼育されている家畜から採れた乳を発酵させたものとなりますっ!」
「それはまた奇特な」
さて御託はここまで。確かめたい事もありますし、いざ実食と参りましょう。
綺麗に8等分された内の一欠片を掴み、先端を口に含めば───おや、まぁ。
「お、おい。獣の乳なぞ使って大丈夫なのか?」
「あっ、そそ、それは無問題でっです。牛乳は無茶苦茶栄養価高いので、ハイッ」
「栄養の話ではなくてだなッ」
肉と菜が香味の下に無秩序に散りばめられ……ているように見せかけて、チーズとやらのコクのある風味により互いを繋ぎ止め引き立て合っている。結果まるで層状に折り重なった旨みが、噛む度にそれぞれの味を主張していた。これは、
「そんなに怪しむくらいなら食べてみれば良いじゃないですかぁっ!もう一枚焼いてるので持ってきましょうか!」
「ヤケになるな!こんな状況じゃ幾ら其方の料理でも喉を通らんわッ」
しかし粘性と濃厚さが祟って後に引くかと思いきや、ここで皿状の穀物焼きが働くとは。ただ食材達を乗せてるだけではなく、同時に口の中で混ぜこぜになった油を乗せて喉へ押し込む役割ですか。考えましたねぇ。
さて飲み込み終わったところで、次の一欠片を……あれま。
「いつの間にか食べ切ってしまいましたねぇ」
「「おっ」」
「………」
「…っ、何をしている!おかわりを持ってこいッ!!」
「ここここれから焼くと10分ほどお時間をいただきますががが」
「ワシの分があると言ってたろう!?」
「わきゃりまひたぁっ!!」
アイコンタクトが通じ、動き出した彼らの姿に満悦。そしてそれ以上に、予想を超えてきた珍味への高揚。
それらを胸に、私は次の皿が出てくるまでじっくり待つ事にしたのでした。
・
・
・
「
「…!」
3皿ほど頂いたところで今度こそ満足。結局のところ、本題である疫病への効果は彼女の“ピザ”とやらからは感じ取れなかったのですが……この際二の次で良いでしょう。肝心の私は健康体ですし、また手頃な実験体でも用意して試せば済む事です。
それより、何より。
「ファムさんでしたか」
「ぁぃ」
惜しい。
他者の手の内に置いておくには、些か。
「一つ聞きます。貴方が料理に際し、大事にしてる事を一言でどうぞ」
「一言……ですか?」
「あんまり長々と話されても困りますから」
言い訳は好きじゃない。何事も簡潔に、手早く。
そんな私の注文にも、彼女は実に期待通りに答えてくれた。
「……病は気から。気は飯から」
「なるほど?貴女の故郷の格言と言ったところでしょうか」
「前半はそうです。後半は自己解釈で付け足しました……もしや、お気に召さなかった、とか」
「とんでもない!旧きを学び新しきを得る、大変結構じゃありませんか」
ねぇ?と同意を求めれば、渋々と頷くベジータ王の姿。この時点でもう、私の結論なぞ決まっているようなもので。
ファムさん。貴女………
「ウチに来なさい」
「えっ」
「っ………!」
猿風情の手元なぞに留めておけますか。こんな掘り出し物、そうそう得られるモンじゃありませんから。
「拒否権は与えません。これから貴女はフリーザ軍母船の厨房係長としてその腕を奮って貰います。給与は今の倍、ボーナスだって弾もうじゃありませんか。ただし遠征時には常に随伴して貰いますし、我が軍のエリート部隊の腹を満足させていただきましょう。周辺人事は貴女の要望通りに……とはいえこれはその時の人員状況にも依りますが。平時の休暇に関しましては完全週休二日制でどうですか?ただし拠点にいる時はそうですね、私の食事も作って貰いますが」
「ま、待て!コイツは我々の奴隷で、」
「歯向かう気か?」
言い訳と同じように、未練がましい奴も嫌いだ。前にもそう言ったよね、ベジータ王?
……言ってないか。どちらでも良い、いずれにせよ黙ったならそれが何よりだ。
「通常の星奴相場の10倍を支払うよ。それで
「ぐっ……あ、ぁ」
そうそう。君達サイヤ人はそうやって僕に差し出してれば良いんだ。とはいえそれを受け入れられないからずっと生意気なんだろうけど。
「……あっ、あのっ」
「どうしましたファムさん。雇用条件の交渉なら受け付けますが」
口を出してきたのは議題そのものである彼女。そう怖がらなくても、まるで私が悍ましい怪物みたいじゃないですか。ねぇザーボンさん、ドドリアさん。
「ありがとうございます…すみませんが、“助手”を1人、連れて行ってもよろしいでしょうか。サイヤ人なんですけど、優しくて仲が良くて、助けられてるんです」
「助手ですか、うーん……必要あります?」
「あっあります!その子がいないと何も出来ませんっ」
「しかし、貴女は1人でこの“ピザ”という芸術を完成させた」
空になった皿を小突けば、顔を青ざめさせて俯いてしまった。やれやれ、別に取って食おうって訳じゃあるまいし。僕は兄さんとは違うんですよ。
しかし助手ですか。サイヤ人じゃなければ……しかも彼女の立場から察するに同性、女。惑星ベジータ外での
「だ、だったら……私がフリーザ軍に転勤するのは、いつになりますか?!」
「そりゃあもう今日中です。早速出立の準備をしてもらいますからね」
「ごめんなさい!!」
と思ってたら殴打音。らしくもなくビクついてしまったあたり、私もまだまだという事でしょうかね?
だって仕方がないじゃないですか。彼女が唐突にしたのは、額が割れる程の勢いで行った
「明日……明日だけ!食堂を開かせて下さいっ!!」
1:イッチ◆EATkugi!
私の事はなんとかなったので
2:名無しの転生者
おっすイッチ。まずはおめでとう
だけどかなり難しいぞ
3:名無しの転生者
サイヤ人って時点でフリーザからの警戒心マックスやろうしなぁ
4:イッチ◆EATkugi!
それはそうなんだけど……流石に見捨てられない
彼女だけでも
5:名無しの転生者
意気やよし。けどここで立ち塞がってくるのが「原作介入への覚悟の有無」だ
上から目線ですまんが、イッチはイッチの存在によってドラゴンボールの歴史を変えてしまう事に対する覚悟はあるのか?それによって無くなる展開、生まれなくなる命、その事実を噛み締める勇気はあるのか?
6:イッチ◆EATkugi!
>>5
……わかんない。例えそれがあったとしても、出来たとしても、実際にそれに直面したら後悔してしまうと思う
でもきっと、今ここで友人を見捨てた後悔には勝らないから
7:名無しの転生者
随分と入れ込んだなぁ
8:名無しの転生者
あんなにビビり散らかしてたのにな
まぁ時間が経てば心も変わるか。ワイも
9:イッチ◆EATkugi!
そうだよ。あまりに長く一緒に居過ぎたんだよ
サイヤ人が罪を重ねてきたのなんて百も承知で、その上で命惜しさと馴れ合いでその一助を担ってきた。彼らが罪人なら私だってそうだ
それで私だけが助かるなんて……受け止められない。受け止めたくない。全員だなんて言わないけど、ならせめて一番近くにいてくれた彼女だけでも……
10:名無しの転生者
……と、なると
頼れるのは彼だけやろな
“ファーム食堂閉鎖”。その報はスカウターを通して全サイヤ人に響き渡り、少なからぬ衝撃を与える事となった。
その証拠に今、惑星ベジータへ目掛けて降り注ぐ星、星、星。さながら流星群、その正体は遠征から急遽帰還する数多の常連客の物だ。俺もその1人だしな。
「ギネ、ギネ!──チッ、繋がりやしねぇ」
「食堂最後の日だ、ファムの手伝いで忙しいんだろうよ。出産直後ってのがちと気に掛かるが」
「憧れの姉御と肩を並べられる最後の日なんだ。それしきの事で参ってるような女に俺の妻は務まんねェさ……しかしフリーザ軍に移籍って一体全体何がどうしたっt「親父〜!!」……ラディッツか!どこだ?」
「ここだよ!真ん前5m、スカウター見て!!」
既に店が面する大通りは大混雑、地を走り空を駆ける下級戦士でごった返してやがった。その中を
「ぷはっ。やっと会えた、おかえり。トーマのおっさんも」
「おう坊主。見ない内に中々戦闘力を上げたみたいじゃないか」
「御託はやめやがれ揃いも揃って。オイ、母さんは。それとファムの奴はどうしてる」
「どうしてるも何も、
「早く入れろォォォォ!!」
「オイッばか!順番通り並びやがれ!!!」
「うッせぇテメェが並び直しゃ済む話だろうが!?あ゛ぁッ」
「糞がー!生き甲斐だったのにィーッ!!!」
「──地獄だなぁ」
「地獄っすねぇ」
ラディッツが指し示した先で広がっていた光景、その名は混沌。わずか一箇所の入り口へ雪崩れ込もうとする一段が揉み合い、将棋倒しになり、立ち上がり、他の奴らを踏み潰してまで押し入ろうとしていた。流石に引く。
待てよコレ、中のギネ達はマトモに料理出来る状況なのか?!
「お姉さんが一喝しまくってギリ抑えてるって感じ。日没の閉店時間までに捌き切れるかは……微妙かなぁ」
「だがこの数じゃ、俺が一人一人ドヤして落ち着かせたところで焼石だぜ。何か良い案あるかトーマ、このままじゃ入店も叶わん」
「無いな。ベジータ王かフリーザでも来なきゃ全員を一斉に収めるなんて出来っこないし」
「あっその件なんだけど」
コレからどう立ち回るか思案する俺達へ、ラディッツが見せたのは鍵。それはギネが働く時にいつも持って行くもので。
「俺は今朝着いたんだけど、家のテーブルにコレが置き手紙と一緒にあってさ。“秘密の裏口から入って来いfromファム姐さん”とさ」
「それを早く言えッ!」
「痛ぇっ!!」
無駄な時間を過ごさせてくれた我が子を制裁しながら、人目を忍んで路地裏へ。同封されていた手紙に記されていた地図によって、俺達は鬼女の城へと誘われていった。───
・
・
・
───熱気。
辿り着いた俺達を出迎えたのは、さながら灼熱の戦場で。そこに籠る闘志と殺気は入口の野郎どもに引けを取らない、どころか遥かに上回る。
最前線、その3文字そのものだった。
「……ヤベェな」
トーマがそう漏らしてしまう程、俺たちの存在が場違いに思える程。余所者が本来立ち入る事を許されない、そんな
だがその中でもラディッツだけ動けたのは、ガキらしい無思慮か無垢故か?
「母さん!!おーい!!」
「……あっ!ラディッツ、バーダックを連れて来たんだね!?」
妻が目を輝かせ、「姐さん!」と呼んだその先にアイツはいた。冷めやらぬ喧噪も意に介さず、かつその中心に立って渦を成していた
「……5分離れるよ。もたせろ!!」
「Yes,“Sis”!!」
その瞳がオレを捉える。ツカツカと歩み寄って来てから、これ見よがしに顎を遣る事で方向を示す。
どうやらお呼びなのは俺だけらしい。
「特別に個室を用意してある。ついて来な」