まぁ……飯炊きに専念しとけば大丈夫かなって   作:スターク(元:はぎほぎ)

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死んでも、繋げ。


ZERO to Spariking

ファムが残した未来の情報。

ファムが託した()()()()

 

それを軸とした起死回生の策を最初に打ち明け、そして乗ってくれたのはトーマだった。

 

「危ねぇ!!」

 

顔繋ぎ役としてセリパ達を説得し、愚連隊として宇宙を駆けずり回った。激戦区の仕事をわざと選び続け、鉄火場で戦闘力を高め続ける為だ。戦闘力1億2千万、低く見積もっても53万に手を届かせるためにはそれしか無く。

 

「ガッ……」

「…トーマっ!!」

 

その志半ばで彼は斃れる。戦友(バーダック)を死角からの攻撃から庇い、心の臓を失って。

地に落ちた彼を引き上げられたのは、その場の敵の殲滅に2分を要してやっとだった。

 

「なにしてる、早くファムの握り飯を食えよ!傷が癒えるんだぞ!?」

「ハナから致命傷だ……見てくれだけ治したって、助かるものか……」

 

トーマは笑う。自身に見切りをつけ、志を同じくする友へ総てを託す。

 

「ファムの “ ち ー と ” とやらは5個しか無い……使い時を誤るなよ」

「てめっ……!」

「勝て、バーダック……勝って、運命を…!」

 

 

サイヤ人の死者は還れない。命潰えたその星が墓標となる、そして墓参りする習慣も存在しない。戦闘民族は死した弱者を省みない。

トーマも例に漏れず、遺体はその場の土に埋められた。

 

 

それでもバーダックたちは飛ぶ。形見のバンダナを引き継ぎ、彼から託された未来を掴む為に。

 

 

───1年後。東の空に明けの明星が輝く頃、4つの光が天の川を駆けた。

 

 


 

 

───ま、想像してはいたさ。そう簡単にフリーザの所まで行けやしないって事は。

 

「何だ貴様ら!ここから先は立ち入り禁止だぞ!?」

「ひっとらえろ、サイヤ人は一人たりとも近付けさせるなとのご命令だ!!」

 

高度を上げれば上げる程、ウジャウジャ湧いてくるわ雑兵ども。実力差も見切れないまま群がって、行く手を阻んでくる。だが所詮は敵じゃない。

 

「止められん!増援をっ」

「緊急事態発生ー!!」

 

敵じゃない、んだが。

 

「死ねーサイヤ人!」

「殺す……」

「倒すけど良いか?答えは聞かん!!」

「猿は木から落ちていろッ!!!」

「邪魔だァァァァッ!!!」

「「「「「ぐおおあああぁぁあ!??」」」」」

 

数が多い!多過ぎる!どうなってやがんだ母船の収容人数は、明らかに体積超えてんだろ!?

 

「どけや木っ端がァ!!」

「パンブーキンっ」

「露払いは任せて温存しろよバーダック!フリーザに一発かませるのはお前だけなんだからなッ!」

 

背後をカバーしてくれた戦友に頷きで返す。ただでさえ戦闘力で劣ってる以上、ワンチャンスを掴む為に消耗してる場合じゃない。

 

「だったらここは俺に任せろォ!!」

「頼むっ!」

「アングリィーランチャァァァアア!!!」

 

トテッポの口から放たれた極太のエネルギー砲が火を噴く。吞み込まれた兵士共は悲鳴も上げられないまま塵となり、包囲網に確かな穴が穿たれた。

 

「次はこっちだぜ、マッスル・カタパルトッ!!

「「「カババビャビャバヤ……!!!」」」

 

続くパンブーキンの突貫により、穴はさらに抉り貫かれる。母船へ通ずる道が開け、俺もその後を追う。

しかし側面から押し寄せる敵に、対処したのはセリパだった。

 

「ハンティングアロォー!!」

「恩に着るぜ……ッ」

「礼は後だ!さっさと終わらせて来な──!」

 

蹴り上げられたエネルギー弾が分裂、俺達にまとわりついて横方向をカバーしてくれた。出鼻を挫かれ立ちすくんだ兵士たちが、視界の外へと置き去りにされていく。

後はどこまでパンブーキンの勢いが持つか……!

 

「流石にキチぃな!やっぱ仲間もっと集めりゃ良かった!!」

「弱音吐いてンじゃねぇ!」

 

本音を言えば俺だってそうしたかった。だがスカウターが配備し尽された今、全サイヤ人はフリーザの監視下にあるんだ。下手に大きな動きになれば即座に全滅させられる、だったら限られた少数精鋭に掛ける以外方法は無ェだろ。

 

……それと引き換えに。

 

「勝って、運命を…!」

 

トーマが逝った。

 

「離れろ、このッ……ガッ!?」

「しまっ、うあああああ!!」

 

トテッポが傷付き、セリパが叩き落された。パンブーキンに至っては現在進行形で耐えがたい衝撃に総身を晒されている。

俺の為に、俺を庇う為に。

 

()()()()()だろうが、バーダック!!)

「行けよ、リーダーァ…!」

 

迷いそうになった己を叱咤し、減速しつつあったパンブーキンの肩を蹴り跳んだ母星が間近に見えた、このタイミングで。

そうだ、止まるわけにはいかねぇんだ。それだけの覚悟を以て、この最終決戦に全てを賭けたんだろうがッ!!

 

「フリーザァァァ!!俺はお前が許せねェ───!!!」

 

渾身の威嚇を兼ねた咆哮。それに応じるかの如く、とうとう、そいつは上部ハッチから現れた。

その二の腕は毒々しいピンク色。

頭の中から病的なまでの粛清者。

 

俺達サイヤ人の、()()()()が!

 

 


 

 

「──バーダックさん。フリーザへの反逆を考えているなら、絶対に抑えておくべき技術があります」

「1億2千万相手に小細工が何の役に立つッてんだ」

「死ぬほど役立ちます。どうか手にしてください……“戦闘力のコントロール”を」

 

 


 

 

煩わしい猿だ。

情けない部下どもだ。

 

一連の流れを見ていたフリーザの感想はその二つ。嗚呼嘆かわしい、この事態その物がまるで自身の名誉を穢すものだと。

 

ならば──()()する他、あるまいて。

 

(許せない、だと?それは此方の台詞だ)

 

迫りくる、しかし未だ遠方の猿へと毒づいた。フリーザの内心は怒り心頭だった。

折角ファム料理長からの弁当を食べて良い気分になっていたのだ。後味の悪い物など不要、ここで綺麗サッパリ消えて貰おう。

 

(さぁ、慄けサイヤ人……!)

 

指先にエネルギーを集中。突如現れる巨大な光球(デスボール)に、戦闘力5()0()0()0()()()のサイヤ人たちは恐怖に震えるだろう。だがもう遅い、総てが手遅れ。

その事実を前に、尻尾を巻いて逃げ惑え………!

 

……。

 

(ん?)

 

尻尾?今突っ込んできている奴はサイヤ人だよな?

ならば何故。

 

 

()()()()()?)

 

 

「ぐぇばォッ」

 

考え事をしていられたのは、頬に打撃を食らうまでの事。

 

目で追えなかった。一瞬で距離を詰められた。

 

初めて真近に、戦闘民族の憤怒を見た。

 

 


 

 

戦闘力は、気は、体の一点に集中できる。集中すれば、他の部位の防御が薄くなる代わりに、その部位による攻撃の威力は爆発的に跳ね上がる。

逆に薄め、低める事も出来る。それが叶えばスカウターによる評価を欺き、目を付けられる事無く活動が出来るようになるだろう。

バーダックは三か月でそれを獲得した。元より下級戦士の頂点レベル、何より宇宙の趨勢を担う事になる英雄の父だ。その素養は既にあった。

 

そして、シリアル星での顛末。ヒータ一味の虎の子たる戦士、ガスとの決闘で突如起こった不可解なパワーアップ。

要因は恐らく尻尾の切断。危機的状況で大猿化を生物学的に封じられた事で、苦難を脱そうとした肉体が()()()()()()()()()()()()()()()のだろう──という推測。ちなみにだが、惑星バンパに流された旧友(パラガス)息子(ブロリー)も、同じ理屈でその力を大きく飛躍させる事となる。

 

閑話休題。いずれにせよ、バーダックの手元にその二つの切り札がある事実こそが重要だ。

 

死地をくぐり続け、死にかける度にファムからの握り飯で回復した事により上昇した真の戦闘力、5万

 

それを両腕に集中し、局所的2倍の10万

 

大猿の力を宿し、更に10倍で───

 

「テメェの第1形態を上回る100万パワーだアアアアア!!!」

「が、ハッ!?ぐォッ…!!」

 

1打、2打、3打。続けざまに放たれた両拳は、面食らったままのフリーザに深々と突き刺さった。

苦悶、飛び散る汗、口から僅かに散る吐血。

 

勝機。連打!

 

「全てが変わるッ」

 

この惑星ベジータの末路。

 

「この手で変える!」

 

騙してまで遠ざけた、愛する妻の悲劇。

 

「これで…」

 

信じてついて来てくれた仲間の結末。

 

「この一撃で、」

 

……情けなくも、この血を確かに継いで生まれてきた、我が子達の宿命。

 

「…最後だッ!!」

 

その運命を知る女(ファムファタール)から突き付けられた、絶望の未来を──

 

「リベリオン!」

「待て……!」

「ハンッマァァアアアアアアッ!!!!」

 

───確かに、捉えた。

バーダックの鎚は、運命を、殴り飛ばした。その確かな手応えがそこにはあった。

連打の〆、高出力エネルギーを纏った拳に打ち抜かれて吹き飛ぶ帝王。最後の一瞬だけかろうじてガードが間に合ったようにも見受けられたが、第1形態のままでは底が知れるだろう。そのまま彼方、小惑星群にぶつかって煙に消える。

 

「フ……フリーザ様ぁっ!?」

「テメェよくも………!!」

「へっ。遅過ぎたな腰巾着が」

 

慌てて出てきた様子のドドリア、ザーボンに挟まれるバーダック。しかしその表情は清々しさそのもので、焦る様子は無い。フリーザ亡きフリーザ軍など恐るに足らないからだ。

 

(とは言っても…俺ももう限界だが)

 

両腕が震えるのは武者震いなどではない。強がりすら許さない激痛、限界を超えた威力を放ち続けた反動によるものである。特に最後の一撃を見舞った右手など、複雑骨折により辛うじて形を保っているほどだ。

だが問題は無い。運命が変わったのなら、憂う事など何一つ───

 

 

「───っ、ハ」

 

それはきっと、不幸と形容されてしかるべきものだった。

戦闘力のコントロールを身に付けたバーダックは、付随する形で“気の探知”をも会得してしまっていた。しかしそれは自覚できない程に未熟で、だからこそ気付くのが遅れてしまったのだ。

 

ぬか喜びした後に。勘という形で、現実を突き付けて。

 

「……?どうした」

「待てザーボン。オレの新型スカウターが反応を、うわっ!?」

 

Bomb。破裂するのが仕事だとばかりに、最新精密機械が故障する。真の恐怖、その到来を祝う儀礼。

背後に鳴るは、降り立つ足音。

 

 

「………今のは、痛かった」

 

悪寒が迸り、告げた。

 

来るぞ。

 

“死”が。

 

「痛かったぞォォォォッッ!!」

 

──結果から言えば、バーダックは回避に成功した。翻した身で、視線で、先ほどまで立っていた宇宙船天板に突き刺さるフリーザの左腕──丁度、鎚の如きトドメの一撃をぎりぎり防いだ方だったか──が()()()()()()()()()のを視認できた。無事だったのはそこまでだ。

 

「ぐああぁあぁぁぁ……?!」

 

散った破片が、たかが石礫が痛い。フリーザの巨腕から振り下ろされた一撃は、それらにサイヤ人の表皮を裂いて吹き飛ばせる威力を乗せる程に強烈だったのだったである。

爆裂的な衝撃を前にバーダックは抗えない。塵芥が風に翻弄されるように宙を舞い、やがて受け止められて止まる事となった。

 

「大丈夫か、オイ!」

「……か、はっ、パンブーキンかっ」

「俺達もいるぜ!だがなんだありゃ、フリーザの奴膨れてんぞ!」

 

後から追い付いてきた仲間達だ。しかし彼らは皆一様に、初めて見るフリーザの様相に戸惑いを隠せない。

だがバーダックだけは知っている。この後に待つ絶望を。

 

「……変身だ……!」

 

 

 

「許さん!絶ッ対に許さんぞ猿野郎!!生きた証も何もかも消し去ってくれるぅぅぅ!!」

「落ち着いて下さいフリーザ様!それ以上パワーを高められては我々も……」

「それがどうしたァッ!?!」

 

フリーザが助かったのは、防御部分である右腕の部分的な“第二形態化”が成功した事による側面が非常に大きい。逆に言えば、それが出来なければどうなっていたか───は、無惨に折れた左角とひび割れた頭部が物語っている。

とんでもない激痛と、屈辱が今、フリーザを激震へと導いていた。

 

全身を第二形態へ移行、に止まらない。巨大はすぐさま歪にゆがみ、異形の第三形態へ。

そこから更に進化。否、元の姿を解放すると言った方が正しいか。

 

「お前はッ」

 

その右手が、憤激に任せて引き絞られた。

 

「俺にィ……!」

 

甲殻が溶け、収束し、白と紫のシンプルな模様を成す。フリーザの真の姿、真の力を顕わす。

バーダックとファムの恐れた最終形態の力が、掌に集い。

「殺されるべきなんだ─── ッッッ!!!」

 

放たれた。

星を消し去る光線が、何の躊躇も無いまま。部下を巻き込む事を何ら考えもしないまま。

 

抗う術は無い。だが抗わない選択肢も無い。圧倒的奔流を前に、バーダック達は最後の抵抗を試みる。

 

「「「「ちっっくしょぉぉおおお!!!!」」」」

 

自壊の危険も顧みない、傷だらけの身体での全力エネルギー波。その一斉発射が死の光を迎撃。衝突地点である惑星ベジータ上空に新たな星と誤認するほどの輝きが生まれた。

 

彼らは良く戦った。最高を目指し、最善を尽くし、運命を揺らがせた。その手は確かに運命に届いたのだ。

 

そして、激昂した運命が牙を剥いた。それだけの事。

 

 

「 エ ブ ゥ 」

「 ギ ャ ッ 」

「 ア ? 」

 

「お前、ら……アアアアア!!!」

 

拮抗など無い。絆など無意味とばかりに光は三者を飲み込み、一瞬にして消し炭へと変え、バーダックに絶叫を齎した。

その彼もまた押されるがまま大気圏に突入。全身は焼かれ粒子レベルで砕かれ、何を引き換えにしても破壊を止められない。

止められない奔流の先端で、薄れゆく意識の中でそれでも足掻き続け───

 

 

───最中に、視た。

 

不可思議な星だった。空は緑色で太陽は三つ、まるで夜の無い世界。そこにベジータ王に似た若い戦士が倒れている。

 

その周囲にはサイバイマンの死骸の山と……ラディッツ。無事に成長を終えた我が子の1人がしかし、死を待つ身とばかりの(てい)で荒く息を吐いていた。

 

その前にフリーザが立っていた。今目にしていた怒りではなく、澄ました顔で。

 

何がどうなっている。まさか弱いクセにフリーザに挑んだのか。馬鹿野郎、なんでお前まで死にに行く。

 

くそ、くそ。どうしてだ──と、思ったその時だった。

 

山吹色の衣を纏った青年が降り立った。

その青年を目にした瞬間、ラディッツとフリーザの顔色が変わった。

前者は歓喜。後者は……果てしない怨嗟の色に。

 

その青年は、バーダックと同じ髪質と、体格を備え。

 

そして瞳に、ギネと同じ柔らかな光を宿していた。

 

……カカロット!

 

 

「 カ カ ロ ッ ト よ … ───! 」

 

 

 

その日。戦闘民族サイヤ人は、本拠地たる惑星ベジータ諸共絶滅した。

 

ハッキリ記しておくが、彼らに同情される余地は無い。フリーザが巨悪であるなら彼らもまた巨悪、怯え泣く弱者を嗤いながら捻り潰し踏み躙ってきた殺意の軍団だったが故に。彼らが生きた事で発生した不幸は、彼らが齎した実利や幸福など余裕で塗り潰す程に罪深い。

 

そんな暴力が、より大きな暴力によって制された。それ以上の要素など無い必然の結果だ。

 

 

それでも悲しむ者はいる。

 

報せを聞いたファムは泣いた。

 

感じ取ったギネは放心した。

 

父との絆を自覚していたラディッツは半狂乱となり、ナッパに叱られた。

 

シリアル星での一件で救われたモナイトは、事を知った折、グラノラに勘付かれぬよう夜更けになってから恩人の最期に思いを馳せた。

 

その嘆きは報われない。報われる必要が無い。

彼らは同情される余地の無い悪人であり、そして何より。

 

 

希望の火は、既に灯されているのだから。

 

 

 

「ほほぉ〜!尻尾のある赤ん坊か!」

「ぁぅ?キャッ」

「あたっ!こりゃ元気の良い子じゃ」

 

その赤子を拾った老齢の男は高らかに告げる。

 

「名前は…んん…おぉ!」

 

後に宇宙中に轟く、その名前を。

 

「悟空!お前は孫悟空じゃ!!」

 

 

 

───これにて。   

 

ドラゴンボールの物語が、はじまりはじまり。

 

 




次回は再来週になります(多分)
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