主人公のライバルオリキャラ(勘違い)に転生したので全力で原作合流を目指すことにした   作:富福

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あらすじのとおりです


なんか転生したみたいです

 俺という人間はすこし人より勉強ができること以外取り柄のない平凡な人間だった。

 そこそこ偏差値高めな大学に入り、勉学、バイト、趣味を楽しむ至って普通のキャンパスライフを送っていたはずだった。

 これといって善行も悪行も積んでいないはずで、道を聞かれれば分かる範囲で教えてあげる程度の良識は持っていた。

 ただ最近、オタクな友人に薦められたサッカーデスゲーム漫画『ブルーロック』にドハマりし、アニメを一気見した後に原作の単行本を全巻揃えて連休に読み耽ろうと浮かれていた。それで本屋までの道のりで信号横断の左右確認を怠ったのが、迂闊だったと言えばそうだろう。

 きっと現場は大騒ぎになって、親とか色んな人に迷惑をかけてしまっただろう。

 でも、だからってさ・・・

 

「お前はな、なんの役にも立たない、動物以下の、」

 

 これはないんじゃないかな、神様・・・

 

「クソ物だっ!!」

 

 どうやら俺はトラックに挽かれて新たな人生に転生し、絵に描いたような暴力親父に現在進行形で首を絞められているみたいだ。

 

 

 

 俺が転生してから、いや、正確には前世の記憶を思い出してから半年が経った。

 今世の俺の名前はミヒャエル・カイザーという、ドイツの貧民街に住む日本ならまだ小学校低学年の少年だ。だがこの名前を親から呼ばれたことは一度もない。

 母親は大物女優で、かつて所属していた小さな劇団の脚本家でそこそこ売れて有望株だったのが父親だ。しかし母親が有名になり、大手の事務所からスカウトされたのをきっかけに父親とものごころつく前の自分を捨てて家を出て行った。そこから父親は転落人生を辿り、今では一日中家で酒に溺れるか、ギャンブルをするか、俺に罵声と暴力を浴びせるかの日々を送っている。

 はっきり言って最悪の環境だ、なんでこんな家庭に転生してしまったんだと何度も神を呪ってやった。でもそんなのは無駄な現実逃避でしかないと理解してからは、なんとかこの境遇から抜け出せないか、そのことだけを必死に考えている。前世から何かに躓いても人より立ち直りは早い方だった、嘆いていも何も始まらない。

 少なくともまだ成人すらしていない子供の身分では家を出ていくこともできない。公共の福祉などに頼ろうにも日本とドイツじゃ社会制度が違う、学校にもまともに通えない俺は誰に助けを求めればいいかもわからず結局このクソ親父がいるゴミと酒瓶が散乱するゴミ屋敷の家に帰るしかない。

 

「やっと帰ったか、どこほっつき歩いてやがったこのクソ物!」

 

ガン!

 痛い!このクソ親父思い切り空き瓶投げてきやがった、ふざけんな当たり所悪かったら死ぬぞ!?こちとらまだお子様なんだよ!でも下手に避けると逆上して直接殴りに来るので、微妙に体を捻りながらダメージを減らしつつ痛がる演技をする。

 空き瓶の当たった腕を抑えながら「ごめんなさい」とか細い声でしたくもない謝罪をし、大人しく背負っていたリュックサックから今日の”仕事”の成果を渡す。

 

「チ、なんでミルクがねぇんだよ!あれがないと〇ンコ出ねーだろがぁ!」

 

 知るかよテメェの腹の事情なんか!欲しけりゃこんな子供に盗みなんかさせないで働いて自分で買ってこい、もしくは便秘で腹詰まらせて死ねばいい。

 そんな悪態を心の中でつきながら俺はまたクソ親父の首絞めに耐える、どうせこいつは何を盗ってこようが難癖付けて暴力を振るってくるのだ。本当にろくでもない親だ、前世ではテレビのニュースくらいでしか知らなかった児童虐待の被害者に自分がなるなんて思わなかった。あの頃の自分がどれだけ恵まれていたかこんな形で理解させらるなんて、何度目かわからない神への恨みを抱く。

 

「テメェはどこまでもあの女に似てムカつくガキだな、このクソ物、クソ物、クソ物がぁあ!」

 

 クソ親父の何度目か聞き飽きた母親への憎悪を聞きながら、ふと視線を横にずらす。そこにはこのゴミ屋敷に不似合いな綺麗な青薔薇の造花が、ガラスケースの中で一輪飾られていた。いつ聞いたかは忘れたが、あれは母から父への贈り物だったらしい。

 笑える、こんなにも落ちぶれて、全力で憎んでる癖にあんな造花を今だに手放せないなんて未練たらたらじゃん。一度見た何かの賞を受賞した時の記念写真に写っていた母親は、とても煌びやかなドレスに化粧をばっちり決めた、俺そっくりの顔で微笑んでいた。

 こいつがここまで執拗に俺を虐げるのもそれが原因だと思うと、世間的にはイケメンと言われるこの顔面が忌々しい。好きで母親に似た訳じゃない、かといってクソ親父に似たいとも思わないけどな。

 あぁ、今日はこいつの気が済むのが先か、俺の意識が飛ぶのが先か、どっちでもいいから早く終わってくれ・・・

 いつか、いつか絶対にこんなクソみたいな家出て行ってやるんだ・・・

 

 

 

 今世で最も辛いことは何かと聞かれれば、クソ親父の虐待と”仕事”と称して盗みをさせられることだ。

 世界的に見ても治安が良く、道徳教育が高いと言われる日本で育った俺としては、スーパーなどの店で食料や日用品を万引きする度に胸が痛くて仕方ない。幸い、盗みのテクニックは前世を思い出す前からこの体が覚えていて今のところバレたことはほとんどないが、こんなのなんの自慢にもならないよな。

 だけどやるしかない、やらなきゃクソ親父に本気で殺されかねないし、それ以前に俺が食べるものが何もない。生きるためだと自分に言い聞かせて、今日も街中を歩き回る。

 道中、ゴミ箱を見つけ周囲を確認してから中を漁る。目当ての物は主に二つ、この辺は比較的住宅街に近く、一般家庭からすればゴミでも俺達貧民からすれば十分使える物が捨てられてることが多い。それを見つけて売れば貴重な現金が手に入る、クソ親父に大半は取り上げられるとしても少しづつ貯めていけば将来のための資金になる、これが一つ目。

 そしてもう一つは、お、あったあった。

 

「新聞紙見っけー、スポーツ紙もあるし」

 

 通勤ついでにビジネスマンが捨てていく新聞、雑誌は金と同じくらい貴重な情報源だ、今世では碌に教育なんて受けられない俺だが実は前世の大学でドイツ語を専攻していた。それに加え、以前古紙回収で捨てられていた辞書のおかげで読み書きを覚えることはできたのだ。マジでこれに関しては前世で俺をドイツ語の講義に誘ってくれたオタクの友人に感謝したい、好きなキャラの母国語だからってそこまでするかー?なんて笑ってたことを謝罪します。

 そういやあの時あいつが言ってたキャラなんて名前だったけ?たしか『ブルーロック』に関係するやつだったよな?俺まだアニメしか観てなくてネタバレやだから、SNSとかもあんま検索しないようにしてたし、あいつもそこんとこ配慮してくれた。だからドイツに関係するキャラといえばちょっとだけ出てたノエル・ノアしか知らな・・・

 

「『ノエル・ノアまたもハットトリックを決める、これで今季のリーグ得点王は確定か!』・・・?」

 

 そのスポー紙の見出しを読んだ瞬間、俺の脳はフリーズした。

 え?は?どういうこと?

 慌てて中身を確認すると、そこには間違いなく俺が前世の『ブルーロック』で見た世界一のストライカーであるノエル・ノアがでかでかと見開きに載せられていた。

 へーこの人の所属チームってバスタード・ミュンヘンっていうんだー、それはまだアニメには出てなかったから知らなかったなー・・・じゃなくて!!え、マジでどういうこと!?

 おかしいおかしいおかしい、だってノエル・ノアはあくまで『ブルーロック』の作中だけで出る架空のサッカー選手だ、実在はしない。でもこのスポーツ紙はどう見てもフェイク雑誌とかじゃない。つまり、これは、

 

「まさかここって、『ブルーロック』の世界なのか・・・?」

 

 どうやら俺は前世でアニメ視聴していた漫画の世界に転生したらしい。そんな支部とかで百万回は読んだ展開になるなんて、信じられない、いや転生なんてしてる時点で十分あり得ないんだけどさー!!

 その時、俺の脳裏にかつてノエル・ノアについて語るオタクの友人の言葉が蘇った。といっても俺がネタバレを聞きたくないから大したことは言ってなかったけど、なんだったかなー?確か原作ではノエル・ノアが回想じゃなくて直接登場したとか・・・その時なんか支部の夢小説開いてたな、あいつ二次創作も結構好きで色々ブクマしてたっけ。他にも色々言ってたような・・・

 

『でさー、このミヒャエル・カイザーってキャラが俺は好きなんだよね!もうぼくがかんがえたさいきょうのライバルキャラって感じで潔の前に立ちはだかる奴!ドイツチームのバスタード・ミュンヘン所属で冴と同じ新世代世界11傑の一人でもあって、ホント夢主の理想形と言っても過言ではない・・・あ、ゴメンつい言っちゃった、テヘペロ♪』

 

 ・・・思い出した。そうだ、俺は、ミヒャエル・カイザーは、

 

「二次創作の潔のライバルオリキャラに転生しちゃったーー!!まじでこんなん支部で百万回は読んだ展開じゃん、てかせめて原作日本人キャラの誰かに転生させろよロック・オフゴッドがーーーーー!!!」

 

 俺はあまりの衝撃的事実にその場で絶叫した。ふざけんな、ふざけんなバカヤローーーー!!

 そりゃあさ、潔とか蜂楽、凛みたいな主要キャラに成り代わりたいとは言わないよ!せめてイガグリやなんなら一次選考脱落の名無しモブでもいいから、日本人キャラに生まれてれば今よりは遥かにマシな第二の人生歩めてたはずだ。それがなんで誰の二次創作かもわからない世界線に放り込まれなきゃならんのだ。もうやだ泣きそう・・・

 いくら主人公のライバルキャラ扱いでもこんな、こんな露骨に重たい過去でキャラ付けしなくていいだろ。多分同じドイツにいるノエル・ノアがフランスのスラム街出身っていうとこから設定したんだろうけど、実際その立場に立たされる方からしたらたまったものじゃない!

 いくら潔のライバルキャラでも限度が・・・待てよ?

 

「もしかして、これからサッカー頑張れば俺、ノエル・ノアみたいにこの環境から抜け出せる?しかも潔や他のブルロ原作キャラ達にも会えたりしちゃう!?」

 

 何を隠そう、俺は前世で『ブルーロック』のアニメ第一話を観て主人公の潔世一にドハマりしたのだ!県大会決勝戦でゴール前でパスを選んだことを後悔し帰り道での号泣シーンから、絵心の演説に一番に駆け出したシーンのギラギラした目のギャップにやられて推すと即決した。

 それから吉良君を蹴落としたり、実力不足で落ち込んだり、國神とステーキ半分こしたり、泣き崩れる二子を見下ろしてゾクゾクしたり、ダイレクトシュート決めたり、「ヘタクソ」返ししたり、そんな潔の一挙一動に何度悶えたことか。とにかく普段は青少年なのにフィールドではエゴイストになる主人公が俺の好みドンピシャだったから仕方ない、前世の死に際にも「もっと、潔の活躍を、見たかった・・・」て考えたくらいだからね。その潔に会えるチャンスがあるとわかっていて逃す手があるか?いやない!!!

 アニメでは世界選抜との試合が終わり、二次選考を勝ち上がった面子が発表された後にU20日本代表と青い監獄存続をかけた一大決戦が始まる!てとこで終わってたはずだ。あ、確か凛の兄貴の冴も出るって話だったな。滅茶苦茶楽しみで原作で一足先に読もうって思ってたから、ホント死んじゃったことが悔やまれる。

 でも、確かオタクの友人の言葉道理なら原作でノエル・ノアも登場する、つまり世界選抜みたいに青い監獄に突撃訪問的な展開があるってことか?普通に考えれば世界トッププロが日本の高校生対象のプロジェクトに関わるなんてまずないだろう、でもここが漫画の世界ならありえるはずだ。

 更に二次創作の世界線ともなればおそらく同チームに所属している(かもしれない)オリキャラがそれについて行って、潔や他の原作キャラ達の前にライバルとして立ちはだかる、なんて展開もあり得るよね?だってジャンルは違うけど似たような設定の二次創作作品を俺はいくつも読んだことがあるから間違いない、主にオタクの友人に薦められてな!

 

「いける、いけるぞ。可能性があるなら挑む価値はある!」

 

 気が付けば俺は走り出していた。まずは一旦家に帰らなきゃ、確か今日クソ親父はギャンブルをしに外出しているから今なら顔を合わせずに済む。

 予想どうり、家には誰もいなかった。俺は真っすぐ自分の寝床に行って、ベッドの床下から拾い物の手提げ金庫を取り出し、中に入っていた紙幣と硬貨を全て取り出す。これは将来この家を出るために貯めていたなけなしの全財産だ、それを持って俺は再び家の外にとび出した。

 向かう先は大通りにあるスポーツショップ、店前に立ち俺はショーウィンドウに並べられている目当ての物を確認した。値札を見ればギリギリ手持ちの金で足りる、良かったと安堵の息が漏れる。そしてそのまま今世では無縁だろうと思っていた店内に俺は足を踏み入れた。

 チリンチリン、と来客を告げるベルが鳴り響き、店の奥から店員が出てきた。客を案内しようと思ってきたのだろうがこちらがボロい身なりのガキと見るや否や、不審げに顔を歪めてくる。そのまま追い出すことはしないが、すぐに手の届く距離でチラチラと視線をよこす、大方何か万引きするんじゃないかと見張っているのだろう。俺の普段していることを考えれば間違いではないので、仕方がない。

 がしかし、今日の俺はちゃんと金を持って買い物にきた客である、目当ての物を手に取りレジに行って「お会計お願いします」と言ってやった。店員は露骨に驚きの表情でレジに入り、一応ちゃんと対応してくれた(渡した金が偽札じゃないか入念に確認はしていたが)、そういえば今日は俺の今世の誕生日だったな・・・

 

「あの、バースデー用に包んでください、カードもお願いします」

「・・・名前と歳は?」

「ミヒャエル・カイザー、10歳です」

 

 いいよね、今日は特別なんだから。

 

 

 

 この店員はこちらがちゃんと金を払う客なら多少の怪しさには目を瞑ってくれる人だったようで、綺麗に包装してカードも注文通り付けてくれた。俺を見た瞬間問答無用で叩き出そうとする店もあるので十分親切な部類だ。

 俺は生まれ変わって初めての、自分自身からのバースデープレゼントを受け取り店を出て今度は近くの広場に向かった。

 平日のまだ昼過ぎの時間帯なので他に遊んでいる子供などはいなかった。ベンチに座りドキドキと高鳴る胸を抑えながら包装紙を丁寧に剝がしていき、新品ピカピカのサッカーボールを両手で抱えた。

 前世では体育の授業でしか触ったことのない、合成ゴムの質感がこんなにも嬉しく思ったことはなかった。

 これから俺はサッカーで俺の運命を変える、まずはバスタード・ミュンヘンからスカウトを貰いあの家を出ていくことが当面の目標だ。そしてプロになり、新世代世界11傑に選ばれて、いつか青い監獄に行って潔のライバルオリキャラとして立ちはだかってやる!

 もちろん上手くいく保障なんてない、ミヒャエル・カイザーはあくまで二次創作の夢小説のオリキャラだ。本来の原作の世界線なら存在すらしないイレギュラーでしかない。でもそれがどうした?俺なんて存在が転生している時点でこの世界は原作からは外れたと見るべきだろう、だったら遠慮なんてする必要がどこにある。

 それに原作とか関係なく、俺がこの現状を抜け出す手段はサッカーでのし上がるくらいしかないだろう。アニメで絵心が言ってた、世界にはノエル・ノアを始めスラム出身とかのプロが大勢いると、彼らの測り知れなハングリー精神こそが世界で戦うのに必要だと、なら今の俺は誰よりも飢えていると断言できる。

 クソ親父への怒り、前世との落差、大好きだった『ブルーロック』を最後まで見れなかった未練、なにより自分の人生をこれ以上誰かに好き勝手されてたまるかという反骨心、誰が作った二次創作の世界か知らんがここからは俺の物語に変えてやる。これは所謂神への反逆というやつになるのだろうか?いいさ上等だ、それくらいハードルが高い方が燃えるってものだろう?

 ここから(ミヒャエル・カイザー)の人生が本当の意味で始まるんだ。

 俺は大切なボールを抱きしめながら、誰に告げることもなく己自身の胸の内でそう宣言した。

 

「ハッピーバースデー、ミヒャエル」

 




 この後成り主は自分がオリキャラと勘違いしたまま原作合流を目指して奮闘します。
 原作カイザーより早くサッカーを始めて賭けサッカーで稼いだり、バスミュン加入後はネスと出会って「こいつ多分潔の相棒MF枠に収まる原作キャラだ!」と勘違いしたり、まだFW時代の冴と出会って「お前MFじゃないのか?」と無自覚に煽っちゃったり、潔のライバルオリキャラに相応しくなるためにカイザーインパクト開発したり、新英雄大戦で本物の潔に会えてキメ顔で内心(うおー!生潔世一、生潔世一だーー!)て大騒ぎしたりとか色々あるけど、書けるかどうかは未定です。
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