主人公のライバルオリキャラ(勘違い)に転生したので全力で原作合流を目指すことにした   作:富福

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なんとか続きました。今回はあの原作キャラと出会います。


ラッキーボーイ

 大通りから脇道を外れた所にある寂れた広場、そこでは複数の少年たちが二組に分かれてボールを蹴りあっていた。

 蹴っているボールは粗末なもので形は保っているが表面の革が剥がれ、空気が若干抜けているのか弾み方に癖がある。ボールだけでなく両チームのゴールも廃材を立てて形だけ作った粗末なものだった。地面にも芝などは敷かれておらず転倒すれば怪我をする危険性が高い。

 そもそもこんな薄暗い路地裏の広場ではなく、大通りの公園にでも行けばもっと綺麗で芝の整ったサッカーコートがあるはずだ、なのに彼らはそこには近づかなかった。なぜなら彼らは世間一般では貧民と呼ばれる出身で、あまり大通りなどを歩けば余計なトラブルの元になってしまうから。

 だから俺たちはここで必死にボールを追いかける、なぜなら今日の飯代がこの一戦にかかっているからだ。

 

「おい、こっちパスだ!」

「ゴール前に戻れ!あと点取られたら終わりだぞ!」

 

 一方のチームがもう一方のチームのゴール前にほぼ全員で攻め込んでいく、それを必死に食い止めようと同じくほぼ全員を集めて守備を固めていく。

 前もって決められたルールでは五点先取した方が勝ちとなっており、広場の脇に置かれた粗末な木の板にはチョークで4ー3と刻まれていた。つまり今必死で守りを固めているチームはもう後がない状況であり、俺たちのチームはもう一点決めれば勝てるのだ。だからこの攻防に全てをかけている。

 

「よっしゃ俺が貰った、てクソがっ!」

「させるかよぉ!」

 

 味方の一人がゴール前でボールを力任せに蹴り抜きシュートを決めようとする、しかし間一髪相手のディフェンスが間に合ってしまった。ボールはそのまま不規則(ランダム)に弾かれていく。それはまさにどこに落ちるか予想などできない、気紛れな運命に身を任せるしかない、とその場にいる者はほとんどがそう思っただろう。

 だが俺は運命をただ口を開けて待つなんてしない、常にフィールド全体を見渡し続けて見つけ出した俺にとって”ゴールの匂い”が最も感じられる場所に一早く駆ける。

 

「おいこぼれ球誰か!・・・てあっ」

 

 そうすれば、ほらきた!

 

「いただき、ますっ!!」

 

 頭上から降ってきた(ラック)を俺は絶対に掴み取ってみせるんだ。

 この優れた目はボールの正確な軌道と蹴るべきポイントを見極められる。そして俺は跳んできたボールをトラップなどという無駄な手間は挟まず、そのままダイレクトシュートでゴールに叩き込んでやった。

 完全に俺のことをノーマークだったキーパーの反応は当然間に合わず、廃材の枠だけでネットなんてものはないゴールを通り抜け背後の壁にパシーンとゴム特有の音を立てて跳ね返った。

 狙い通りにゴールを決められた、その快感が俺の中で弾ける。例え俺の目指している”原作”にはほど遠くても、それでもこの瞬間は何度味わってもいいものだ。

 

「う、うおおー!またミヒャエルが決めやがったぞ!」

「くそ、またかよ!」

「どんだけアイツ運がいいんだ、いつもアイツのところにボールが跳んでいきやがる・・・」

「ホントにミヒャエルはラッキーボーイだな」

 

 いくらゴールの余韻に浸っていたくてもここは治安の悪い路地裏、最低限周囲への警戒をしていた俺の耳に周囲の声が聞こえてくる。勝利して喜ぶ味方も、敗北して悪態をつく敵も、今の俺のゴールが単なるラッキーゴールだという意見で一致していた。

 違う、今のは運だけどラッキーなんかじゃない。俺は運を掴むべくして掴んだんだ。そもそも本当に単なるラッキーなら1度きりで終わってるはずだろうがっ、俺のゴールは何度でも再現できるゴールなんだよ!

 そう言ってやりたいのをなんとか飲み込む、ここは残念ながら青い監獄のようなサッカーの実力だけで全てが決まる場所ではないから。

 

「あぁ、俺はこのストリートで誰よりもラッキーなミヒャエルだ。幸運の天使様ってヤツだな?だから次の賭けにも入れてくれよ?」

 

 だからこうやってヘタクソな冗談にヘラヘラとした間抜けな笑みを浮かべる、媚びるような上目遣いも忘れない。これで今日の糧が安全に手に入るならば俺は進んで道化(ピエロ)になってみせるとも。

 ミヒャエル・カイザー現在11歳と数か月、12歳の誕生日を目前にして今日も今日とてストリートサッカーの賭け試合に精を出す。原作合流までの道のりは遠いものだ・・・

 

 

 

 自分(ミヒャエル・カイザー)が生前に大好きだったサッカーデスゲーム漫画『ブルーロック』の二次創作の主人公潔、のライバルオリキャラだと理解してから一年とちょっとが過ぎた。

 今世をサッカーでのし上がると決意してからまず最初に始めたのはとにかくボールの蹴り方を覚えるところからだった。だがあいにく俺は前世ではサッカーなんて全くしたことがない、『ブルーロック』のアニメで見たのと体育の授業でちょっとやっただけのずぶの素人に等しい上に今世ではサッカークラブになんぞ入れるような余裕はない。

 それでも俺は俺なりに頑張ったんだよ。ゴミ拾いや盗みで必死にやりくりした金でちょっと遠く(バス乗り継ぎ2本分)にあるバーサーク・ドルトムントとかいうクラブチームの練習場を覗き、じゃなくて見学させてもらいに行ったり、古本屋でできるだけ安いサッカー関連の本を買ってはクソ親父にバレないように夜中に家を抜け出し練習に打ち込んだ。

 そうやってまぁまぁボールを蹴れるようになったかな?て思ったころに俺は貧民たちのストリートサッカーの集まりを見つけ、そこに混ぜてもらうことに成功したのだ。

 

「ほらよミヒャエル、今日のお前の分だ」

「あぁありがとう・・・てちょっと多くないか?」

「今日の試合で二回もゴール決めたからな、それにお前は小回りがきいて中々使える」

「そりゃ嬉しいや!じゃあ遠慮なく貰っとくよ」

「次の賭けは三日後だ、また頼むぜラッキーボーイ」

 

 この辺りのストリートサッカーのまとめ役の男から今日の賭けでの俺の分け前を貰う。予想より多かった額にホクホクになりながら急いでパーカーのポケットにしまった、あまり見せびらかすと帰り道でスリかカツアゲにあってしまう。

 サッカーが国民に根強い人気があるここドイツでは、俺達貧民にとってもストリートサッカーによる賭け試合が貴重な娯楽となっている。貧民には貧民なりのルールがあり、治安が悪い路地裏でもきちんと賭け試合のまとめ役がいるから勝ち分の分け前をハブられるなんてことはない。

 とはいえそれはあくまで勝った場合の話であり、その上試合で役に立つとアピールしないとすぐにチームから追い出されてしまう。まぁ俺を含めたここにいるヤツらにとって勝ち負けがその日の飯代に直結しているのだから、ヘタクソに足を引っ張られるなんてごめんだと考えるのは当然だろう。

 とはいえただ闇雲に勝てばいいという話でもない、下手に活躍しすぎれば悪目立ちしてしまう。特に俺はここでは年少でまだ新参者だ、そんなヤツが一人だけでしゃばれば面倒なことになるのは流石にこれまでの経験から学んでいる。だから俺は目立ちすぎず、しかし稼ぐために適度に活躍して使える便利なヤツだと思ってもらえるように必死で立ち回った。

 その結果辿り着いた答えがこれまでの盗みのために磨いてきたテクニックをサッカーにも活用することだった。常に視野を広く持ち警戒を怠らないことで周囲を把握する、店員の動きや死角を意識しその逆を突く、店を出るまでの最短ルートを頭の中でイメージし続ける、これら全てがサッカーに活かせるというのは少々複雑だが使えるものは何でも使わなきゃな。

 更にそこへ必要なのはなるべく余計な動きを挟まないことだ、俺は周りと比べれば体格は平凡で力負けすることも多いしサッカーは独学だからテクニックに秀でてる訳でもない、もたつけばすぐにボールを奪われる。そうならないために最短効率を求めた結果、ダイレクトシュートで決めるのが必勝パターンとなった。

 さてここまで話せばお気づきだと思うがどうやら俺は潔世一と全く同じプレースタイルの選手らしい、広い視野、つまり空間把握能力+ダイレクトシュートというゴールの方程式が己にピッタリ当て嵌まるのがなによりの証拠である。

 これはやはり(ミヒャエル・カイザー)が潔のライバルオリキャラだからだ、考えてみれば『ブルーロック』のアニメ一期しか観てないが出てくる原作キャラ達は皆それぞれ潔とは全く違うプレースタイルばかりだったから、キャラ被りしないように考えた結果だろう。主人公と同タイプであり格上、つまり上位互換だなんていかにもらしいじゃないか。

 原作キャラで一番近いのは凛ちゃんだろうか、選手全員の思考を操りフィールドを支配する傀儡的支配サッカーは滅茶苦茶カッコよかったな~、こうして自分もサッカーをするようになってから改めてそのヤバさを実感できる。あんなん少なくとも今の俺には無理無理。

 と、話が逸れたが要は俺が主人公の潔と同タイプの選手だということ、つまり『ブルーロック』での潔を参考にすれば手っ取り早く上達できるのだ!指針が明確なのはありがたいよね!しかも流石ライバルオリキャラというべきか独学でも活躍できるだけの才能があるみたいでメッチャ助かります!!

 だが待てしかし、残念ながら今の俺はただ潔の後追いをすればいいという状況ではない、先に説明したようにここはストライカー養成施設青い監獄ではなく基本治安最悪の貧民街だ。俺一人が試合でゴールを決めまくれば当然周りから睨まれる、下手すりゃ夜道で金を奪われリンチにされる。

 だからそうならないようゴールのチャンスがあってもわざと味方にパスを出す選択をすることも多い、なんならアシストに回って一度もシュートしない試合だってある。これが正直悔しい、だって俺は自分でゴールを決めるストライカーを目指しているのだから。別に潔のライバルオリキャラだからというだけではない、これまでの賭け試合の中で自分でゴールを決める瞬間、その時俺は今世で唯一”生きている実感”を得られるからだ。

 非力でクソ親父に虐げられ、盗みに手を染めるしか生きる術がなかった俺が自力で勝ち取ったゴールと金、この二つがどれだけデカいかは言葉では表現できない。きっと原作キャラ達も形は違えどこういう喜びがあるからストライカーにこだわっていたのだろう、今ではものすごーく理解できる。

 このまま賭け試合での収入が増えていけばもう盗みなんてしなくて済む、現に昔より”仕事”をしなくてはならない回数は減ってきている。クソ親父はこのことを知らない、相変わらず”仕事”で食料や金を得ていると思っている。

 遅くても後数年、もっとサッカーが上手くなればスカウトに見つかるか、バスタードミュンヘンのトライアトを受けて合格すればプロへの、ストライカーの道は開ける。この世界(夢小説)はどういう設定だったかは知らないがシナリオなんて運命には身を任せない、俺は自力で運命を変えるんだ。そう胸に希望を抱きながら俺は途中クソ親父に命令された酒を買ってゴミ溜めの家に帰った。

 

 

 

 またいつも通り賭け試合で稼ぐ、今日はゴールは一回だけで味方へのアシストに専念する日だった。無事に試合に勝ち取り分も貰った時にはまだ昼過ぎで帰るには速すぎる、どうせクソ親父に「何してんだ!もっと稼いで来いクソ物が!」と殴られるのがオチだ。

 必要な額は手に入ったし残りの時間は一人で練習でもしようかと考えていたその時、背後から何か騒ぎ声が聞こえてくる。

 

「ーー!ーー、ー!」

「ー?ーー」

 

 振り返ってみれば今日の賭け試合があった広場の端っこ、フェンスの傍でなにやら人だかりができている。まるでなにかを囲んでいるような・・・

 

「なにやってんだあれ?」

「あぁ、なんか外国人の子供が迷い込んだらしいぜ、綺麗な服着てたから多分観光客とかじゃないか?」

 

 あちゃー地理のない観光客かー、偶にあるんだよなー。そんでそういうヤツは大体無防備で金目のもの持ってるから地元の連中にカモとして狙われてしまう。見ていて気持ちのいいものでもないが俺が首を突っ込んだところでどうこうなるものでもない、薄情だがいつもは我が身を優先して見て見ぬフリするしかないのである。

 だが今は子供という部分が引っ掛かってしまった、見知らぬ土地で訳の分からぬまま柄の悪い大人の外国人に囲まれる、それはまさに前世の記憶を思い出しその直後にクソ親父に首を絞められた俺が味わった恐怖そのものだ。あれマジで怖いんだよな、中身が成人してた俺でも体格で圧倒的に勝る大人に暴力を振るわれたら身がすくんでしまうんだ。

 気が付けば俺の足は騒ぎの元に向かっていた。

 

「(あ、あの、俺道に迷って・・・)」

「あー悪いけど何言ってっかわかんねぇよ!」

「顔立ちからしてアジア人っぽいな、どうした?ママとはぐれたのか?」

「(ごめんなさい、俺すぐに帰りますから・・・)」

「お、どこ行くんだ?まぁ待てよ、別にとって喰いやしないかさぁ~」

 

完全に弱いものを囲んで粋がっているチンピラどもに不快感を覚えながら合間に聞こえる声にもしや、という思いが芽生える。これ、日本語じゃね?

 

「おい何やってんだ」

「あ?てラッキーボーイじゃねぇか、見ての通りアジア人の迷子の相手してやってたんだよ」

「あーそりゃご苦労さん、じゃあ後は俺が表通りまで送っていってやる」

「んだテメェこら、なに言ってんだ?今日の勝ち分だけじゃ足りないってか?あ?」

 

 どうやらこのチンピラ共俺がカモを横取りしようとしている思ったらしい、アホか。だがあんまりぐだぐだやるとそれこそめんどくさいことになってしまう。ので、虎の威を借ることにした。

 

「ちげーよ、そいつ貧民街の親無しじゃなくて観光客のガキだぞ?変に手出して騒ぎになったら表から警察が来るかもしんねぇだろ」

 

 ホラ、と後ろで静かにこちらを見ていた賭け試合のまとめ役に視線をやる。まともな保護者のいる子供相手にやりすぎればマジで警察が取り締まり強化をする可能性はある、そうなれば当分賭け試合ができなくなってしまうかもしれない。

 

「この辺で明日もフットボールしたきゃ俺によこせ、ガキの面倒はガキが見てやるよ」

 

 しばし睨み合いが続いたがまとめ役の無言の圧に分が悪いと思ったのだろう、チっと舌打ちしながら離れていく。すれ違いざまに唾を吐きかけようとしてきたがサッと避けてやるとまた舌打ちしやがった。バーカバーカチンピラ漫画のモブ野郎、と心の中だけで言い返してやる。

 さて、問題の観光客の子供に向き合う、言葉はわからなくとも目の前のやりとりから物騒な気配を感じ取ったのだろう、すっかり引け腰で涙目になっている。この顔立ちは、うん間違いなく日本人だね。前世以来の久しぶりに日本語を話す。

 

「(おい、お前日本人か?)」

 

 俺が日本語で話しかけるとピクっ、と肩を跳ねながら驚きの表情でこちらを見つめてきた。まさか貧民街の子供が日本語で話しかけてくるなんて思わなかったのだろう。

 

「(俺の言葉わかるなら返事しろ、お前日本人なんだろ)」

「(あ、ごめんなさい、俺日本人です!あの、その、ドイツに旅行に来て、でもお母さんとお父さんとはぐれちゃって、それでどうしようって思ってたらサッカーやってるのが見えて、それで、えっと、えっと!)」

「(あーもうわかったわかった、ようは迷子ってことね)」

 

 やっと言葉が通じる相手に会えてこれ幸いと思ったのか堰が切ったかのようにまくしたてる子供をなんとか宥める、ステイステイ。にしてもやっぱ予想通り迷子だったわこの子。

 

「(旅行なら泊ってるホテルとかわかるか?)」

「(その、ホテルの電話番号と住所書いた紙があったんだけど、さっき無くしちゃって・・・)」

「(ホテルの名前もわかんないか?)」

「(う、ご、ごめんなさい・・・忘れちゃった)」

「(なら元々の行先はどうだ?親とはぐれた時の待ち合わせ場所とかあったらいいんだけど)」

「(あ、それならわかる!お母さんが〇〇〇ってとこ見に行くって言ってた!)」

 

 なんだ、あの有名な観光スポットね。あの辺は浮かれた観光客が多いので、スリや置き引きなんかやりやすいとして俺たちにとっても有名スポットだからよく知ってる。観光スポットから道一本外れただけもでこんな治安悪い場所に行きついちゃうのが海外の怖い所だぜ、気を付けろよ日本人。

 まだ時間もあるし大して離れてはいないから直接案内してやった方が速いか、いつまでもこんな無防備なカモにうろつかれる方が迷惑だし。

 

「(その辺なら道知ってるから連れ行ってやる、そうすれば親も見つけられるかもな)」

「(ホントに?あの、ありがとうございます!)」

 

 ぱぁ、と迷子の子供はまるで花が咲いたように安心した笑みを浮かべる。

 コイツ、俺から言い出したことだがこんなあっさり信じるなよ。いくら年の近い子供相手だからってもっと警戒しろ、そんなんじゃここだとすぐに騙されるぞ?なーんて平和ボケした日本人の子供にわかる訳ないか。

 ・・・にしてもこの子供の顔、どっかで見たことある気がするなー。でも日本人の知り合いとなると・・・まさか前世の知り合い?はありえないはずなんだけど・・・

 

「(あ、そういえばまだ自己紹介してなかった!俺の名前は世一、潔世一って言います)」

 

 ・・・なんですって?




はい、という訳でまさかの主人公と早すぎる出会いをした成り主君でした。
次回はよっちゃんを無事に案内できるかな?の巻になります。
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