主人公のライバルオリキャラ(勘違い)に転生したので全力で原作合流を目指すことにした   作:富福

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どうにかまた更新できました。
途中から潔視点になるのでご注意ください。


タイミングって大事だよね?

 昼を少し過ぎただけのまだ日が高い時間帯、日本から遠く離れたドイツの通りを二人の子供が歩いていた。

 彼らは見た限り歳が近く、一人は金髪に碧眼の整った顔立ちに少しう薄汚れた身なりの現地の少年、もう一人は黒髪に現地の少年と少し色味の違う青い瞳の育ちのよさそうな日本人の少年だった。

 見るからに生まれも育ちも違う、本来ならば関わりのない二人がなぜ出会い、なぜ共にいるのか・・・答えは一つしかない。

 彼が本来の世界(原作)の主人公であり、俺がこの世界(夢小説)のライバルオリキャラだからだ。

 

 

 

「その、君のサッカー見てたけどすごかったね。あんな年上に混ざってゴール決めてたのメッチャカッコよかった!」

「あーうん、ありがとね・・・」

 

 言えない、未来の君のプレーを参考にしたんだよ、とは言えないよな。

 前回のあらすじ、俺は『ブルーロック』二次創作の世界に転生したライバルオリキャラ、ミヒャエル・カイザー。ストリートサッカーの賭け試合で稼いでいたら平和ボケした日本人観光客の子供が治安最悪な裏路地に迷い込んできた、余計なトラブルを避けるために目的地にまで案内してサヨナラしようとしていた俺は、その子供が原作主人公で前世の推しだった潔世一だということに気付かなかった!

 なんて劇場版〇ナンのオープニング風に振り返ってみたが、俺の内心はそれどころじゃないぐらいに荒れ狂っていた。

 

(ヤべーよヤべーよ、生潔世一、生潔世一だよ!会うタイミング早すぎない!?)

 

 マジでどうしよう、こんなところで原作主人公と、前世の推しキャラと出会えるなんてまっっっったく考えてなかった!だって俺まだ青い監獄どころかバスタード・ミュンヘンにも新世代世界11傑にも選ばれてませんが!?こんなタイミング予想してなかったってばぁ!

 迂闊だった、そういえば今はっきり思い出したけどこの子供、前世の『ブルーロック』アニメのあでぃしょなるたいむに出てたショタよっちゃんだわ・・・あのサッカー中継にかぶりつきになってチャンネル変えられたらギャン泣きしてそのまま寝ちゃう可愛いお子様をなんですぐに思い出せなかったんだよ俺ぇ・・・

 そんなある意味レアキャラな潔はさっきから横で、何時から見ていたか知らないが俺のプレーについてあれこれ感想を言ってくれる。だから俺のプレーは未来の君をお手本にしたものなんだよ、推しに褒められて嬉しいやら、まだ単なる後追いしかできないのにと複雑な気持ちになっちゃう。

 でも冷静に考えればこういう原作キャラと原作前にバッティングって確かに二次創作でよくある展開だ、まさか元になった夢小説ではこれもシナリオの一部だったのかな?だとしたら俺はこの後どうするのが正解なんだ?このままただ潔を目的地に送り届ける?それとも・・・

 

「そういえば君の名前まだ聞いてなかった!名前なんていうの?」

「ふぇ!え、あぁ名前、名前ね・・・」

 

 ヤバい、焦りすぎて変な声出ちゃった。

 え、名前教えていいのコレ?いや推しに名前認知してもらえるってスゲー嬉しいんだけど、でもタイミング的に問題にならない?だって俺はまだ無名どころか貧民街の賭け試合で稼いでるだけのガキに過ぎない。しかもさっきまでチンピラ共と睨み合いしてたから今名乗ってもあんまりいい印象残らないと思うんだよ。

 やっぱ名乗るタイミングって大事よ?潔がミヒャエル・カイザーの名前を知るのはサッカー選手として、強敵(ライバルキャラ)としてのインパクトともに認識してほしい、それこそ二次選考直前の凛ちゃんのあの空中狙い撃ちキックみたいなパフォーマンスと共に堂々と名乗りたいじゃん!

 うん決めた、俺ここでは名乗らない。最低でもあの準備運動以上のパフォーマンスができるようになってからじゃないとライバルオリキャラとして相応しくないもん。

 けどだからといってこのキラキラしたお目目の推しを無視するのは、それはそれで俺の良心が許してくれない。

 

「俺は、ラッキーボーイだ」

「ラッキーボーイ?」

「周りからそう呼ばれてる、サッカーでよく俺のとこにボールが落ちてきたり誰にも取れないとこでシュートを決めたりするから運のいいやつだって意味。要はあだ名だよ」

「え、えっと、あだ名じゃなくて本当の名前は?」

「(今はまだライバルオリキャラとして実力不足で名乗れないので)必要ない」

「え、でも名前呼べないし・・・」

「じゃあ俺がお前をよっちゃんって呼んでやるからそれでいいだろ」

「よくないし!てかなんで俺のあだ名がよっちゃんってわかったの?」

「日本人は大体そんな間抜けな感じのあだ名を付けるって知ってるからだ」

「ま、間抜けって!お前口悪くないか!?」

「おいおい酷い言い方だな、俺がここで案内を止めたらお前はまた迷子に逆戻りだって忘れてないか?」

「~~っ、うぅ~!」

 

 や、ヤバい、あんまり名前のこと突っ込まれたくなくてつい意地の悪い言い方してみたけどまさか泣き出しそうになるなんて!?しっかりしろ潔世一、お前は将来青い監獄で数々のライバル相手にレスバ大王として猛威を振るわなきゃならないんだぞ!そんなんで「うるせぇ天才、今いいとこなんだよ」とか「俺たちの邪魔すんなっつってんだよ、ヘタクソ」とかできると思ってんのか!?

 そんな推しを泣かせてしまった焦りを押し殺しなんとか宥めにかかる。えーと、ライバルキャラらしい宥め方ってどんなんだ?

 

「あーもうこの程度で泣くとか世一君は本当に泣き虫ね~、ママの代わりによしよししてやろうか?」

「!ば、バカにすんな、こんなんで泣かないしっ」

 

 なんとかライバルキャラらしくちょっと演技臭いような、嫌みで上から目線の言い方を意識してみたぞ!これは中々いい感じにライバルオリキャラを表現できたんじゃないかな?

 そう俺が自画自賛してると、潔は涙を溢しかけた顔をゴシゴシと服の裾で勢いよく拭いてキッと前を向いた。よしよしいいぞ、それでこそ未来のレスバ大王だ!俺もライバルキャラとしてふるまった甲斐があるというものよ・・・それはそれとして推しの必死に泣くまいと堪える表情ってなんかいいね、手元にスマホがあれば絶対撮影してるのに~。

 そんな感じでちょっと気まずい空気になったが流石は潔世一というべきかすぐにまたサッカーの話題に戻った。お前どんだけだよ・・・

 

「・・・運がいいからあんなゴール決められるってこと?」

「そういうことになってる」

 

 そう、そういうことにしているのだ。単なるサッカー限定で運がいい子供、それがまだなんの力も無い俺なりの処世術。

 実際は違う、潔と同タイプであるゴールの方程式とは別に、必死に思い出した前世のアニメで絵心が語っていた”運のからくり”を俺なりに実践した結果だ。

 例えば今日のゴールならばボールを持った味方の背後から相手選手の一人が迫っていたのを確認し、ボールが弾かれた場合を想定してそれを俺がゴールを決められる最適のポイントで待っていたのだ。フィジカルのぶつかり合いではまず分が悪いと判断しての空間認識力を駆使しての立ち回りだが、周りからしたらチョロチョロしていた俺の元に偶々ボールが落ちてきてのごっつあんゴールにしか見えないだろう。

 もちろん毎回成功するわけじゃない、あくまで自分の元にボールが来る確率があるかもしれない、っていう話でしかないからね。でも回数を重ねるごとに運を見極める精度は上がってきている。

 それに毎回運任せじゃない、ただ闇雲に走るのではなくどこにボールが向かうか、どう動けばボールが取れるかを先読みして動けば自分よりデカいヤツらに囲まれても勝てると俺は学んだんだ。もちろんそれを学べたのはアニメでの潔の脳と目の使い方を参考にさせてもらったおかげである。

 そう考えるとここで潔を助けるのは推しキャラ云々とは別に恩返しとしての意味もあるな。

 そんなことをつらつらと俺が考えていると、潔がこちらを何か納得いかないような表情で見ていることにやっと気づいた。

 

「その、本当に運がいいからそんな呼ばれ方してるの?」

「・・・どういう意味だよ?」

「だって、えっと、ごめん上手く言えないけど、お前のプレーがただのラッキーだなんて思えないから」

 

 

 

潔世一 side

 

 長期休暇を利用して家族と憧れのノア様がいるドイツに旅行に来た俺はとても興奮していた。特に今夜はノア様が所属するバスタード・ミュンヘンの試合のチケットをお父さんが取ってくれて、初めてノア様を生で見れるとなって朝からずっとソワソワしていたんだ。

 昼間は家族で近場の観光スポットを巡ることになっていたが俺の頭の中はずっとノア様の試合で頭が一杯だった。そのせいで気が付いたらお父さんとお母さんからはぐれて一人、人気のない道でポツンと立っていた。

 自分が迷子になったんだ、と理解した途端にジワジワと焦りが浮かんでくる。ドイツに来る前から両親に

 

「よっちゃん絶対にお母さん達から離れちゃダメよ?外国では日本語が通じないから道を聞くこともできないのよ」

「最悪逸れた時のためにホテルの連絡先を日本語とドイツ語で書いたメモを渡しとくから、絶対に無くすんじゃないぞ」

 

とあれだけ言われてたのに、周りには誰も通りかからないし、ポケットに入れていたはずのメモすらいつの間にか無くなってしまった。

 

(どうしようどうしよう・・・、このままお父さん達に会えなくなったら、今夜の試合見に行けなくなっちゃうかな、いやもしかしたらこのまま家に帰れなくなっちゃうかも・・・)

 

 そんな最悪の想像をしてしまい、ジワリと滲み出そうになる涙を堪えながらとにかく足を動かす。もしかしたら両親がいる場所に辿り着けるかもしれない、そう考えてとにかく闇雲に。

 

 その結果、この辺りで最も治安が悪い貧民街の通りに足を踏み入れてしまったことにも気づかないまま潔は歩き続けた。

 

「どうしよう、全然道わかんない・・・ん?あれって・・・サッカーやってる!」

 

 どれくらい歩いたかはわからない、しかし子供の体力からしたらそろそろ疲労が溜まってきたころに俺は人の声と聴きなれた音が耳に入ってきてそちらに向かう、するとそこには現地の少年達がサッカーをしているのを見つけた。

 大好きなサッカーの光景にその時ばかりは疲れも焦りも忘れて傍に走り寄り、フェンス越しに見学をさせてもらう。どうやら数人ずつでのミニゲーム形式で試合をしているようだ。

 しばらく眺めている内にある一人の少年の姿が俺の目に留まった。

 

(あの子すごい、俺と同い年くらいなのにあんな年上に混じってあんなプレーできるなんて・・・)

 

 金髪の、俺より一つか二つ上くらいの彼のプレーは体格の勝る年上の中でも決して負けてはいない。

 俺も地元のサッカークラブでコーチに認めてもらってたまに学年が上のチームに混ぜてもらうことがあるが、流石にあんな中学生や高校生ぐらい年の離れた相手との経験はない。それなのにあの子は当たり前のようにそんな相手と戦っている。

 力では押し負けてるし、テクニックもそこまで上手いわけではない。なのに彼はそのフィールドの上で一番輝いているのだ。

 

(あ、そこは・・・いける!)

 

 味方が敵にボールを弾かれ、まるでそれがどこに落ちるのかわかっていたかのように待ち構えていた彼はそのまま綺麗にダイレクトシュートでゴールを決めてみせた。

 

(すごい、あんなゴール俺も決めてみたい!)

 

 年の近い子供が決めたみせたゴールは、TVで見るプロの試合とは別の興奮を俺にくれた。もっと彼のゴールが見たくて、彼のプレーを更に目を焼き付けようと俺はフェンスに顔がくっつくぐらいに近づく。

 しかしそれ以降彼は積極的に前に出ず、なぜか味方へのパス出しに専念するようになった。何度かゴールを狙えるチャンスがあるように見えたのにそれすらアシストを選んでいる。

 結局試合自体はそのまま金髪の少年がいるチームが勝ったみたいだが、俺はなぜゴールを狙えたはずの彼がアシストなんてしたのかが理解できずにいた。そのことで頭が一杯になり、彼と話してみたい、でも日本語は通じないだろうし・・・と考えていたらようやく俺は自分が迷子になっていたことを思い出した。

 そして気が付けば周りをテレビの中でしか見たことがないガラの悪いチンピラのような男達に囲まれてしまった。なにやらドイツ語で早口にまくしたてられながらニヤニヤと嫌らしい笑みで見下ろされ、言葉はわからずとも確かな悪意を感じる。

 

(誰か、助けてよ・・・!)

 

 逃げなきゃ、と思った。だが壁のように囲まれてそれはできない、恐怖で足がすくんだその時、そこに彼が現れたのだ。

 

「(おい、お前日本人か?)」

 

 なにやらチンピラ達とドイツ語で話して睨み合ったと思えばそいつらはどこかに行ってしまい、俺と向き合った彼の口から出てきたのはまさかの日本語だった。

 

「(俺の言葉わかるなら返事しろ、お前日本人なんだろ)」

「(あ、ごめんなさい、俺日本人です!あの、その、ドイツに旅行に来て、でもお母さんとお父さんとはぐれちゃって、それでどうしようって思ってたらサッカーやってるのが見えて、それで、えっと、えっと!)」

「(あーもうわかったわかった、ようは迷子ってことね)」

 

 驚きで一瞬固まってしまったが迷子になってから初めて日本語の通じる相手に出会えた喜びでつい早口でまくし立ててしまった。そんな俺をなんてことはないように受け入れた彼はお母さんが行くと言っていた観光地に案内してくれると言ってくれたのだ。さっきのゴールも合わさりその姿はまるでヒーローのようにとてもカッコよく見えたんだ。

 だから俺は嬉しさのままに感謝を伝えると同時に自分の名前を伝えたのだが、その時彼はなぜか微妙な表情をしていた。




ライバルオリキャラらしい振る舞いに内心苦労する成り主とそんな成り主に意地悪されて泣きそうになっちゃうよっちゃんでした。
成り主はアニメ一期しか観てないので、一難洗脳前の天然エゴイストな潔世一を知りません。だから次回色々とあてられます。
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