日曜日 東地区 “T” ブロック 26b
こちらに同人誌で寄稿しました
水曜日のIS学園
IS学園のある一室。普段生徒が足を踏み入れないそこには、どこかのテレビ番組を彷彿とさせる部屋があった。複数のテレビカメラが撮影を開始するとともに、司会席の簪と箒がぎこちない笑顔を浮かべる。
「さ、さあやってまいりました。IS学園新企画。『水曜日のIS学園』のお時間です。司会進行は私更識簪と」
「篠ノ之箒だ」
「「…」」
明らかに司会慣れしていない二人。自己紹介で早くも沈黙があたりを支配してしまう。
「いや、何故私たちなんだ!」
そんな沈黙に耐えられず、箒は不満を漏らす。
「司会は鈴とかシャルロットが得意だろう!何故話が得意でない私たちなんだ!」
「だってあなたたちガヤだとしゃべらないでしょ?小説で話をしないのは存在しないのと一緒よ」
パネラーの一人である楯無がメタ的で無慈悲な言葉を返す。これには二人も苦虫を噛み潰したような表情になる。
「くっ、ぐうの音も出ない…」
「ぐぅ」
「いや、ぐうの音は出るのね簪ちゃん…」
そんなボケをかませるのか、と楯無はツッコミを入れた。意外と掴みはうまくいったところで、司会の二人が企画を進める。
「では改めまして、本日のプレゼンターはこの方です、どうぞ!」
軽快なBGMと共に中央の回転扉がゆっくりと回る。そこから銀髪眼帯の少女が仁王立ちで登場した。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ、よろしく頼む」
パラパラとした拍手がやむと同時に、ラウラは勢いよく自身の企画説明に入った。
「さて、今日の説はこれだ、『織斑千冬、舌もブリュンヒルデ説』!」
「織斑先生が舌も肥えている、ということ?」
「そうだ!それなのに巷では味に疎いだの味オンチだの、ましてやバカ舌と言われるなどもってのほかだ!」
どうやら世間の織斑千冬の印象がラウラにとって納得できない様子。楯無に唆されつつもこの企画に自ら参加したのだった。
「だからこそ、今回の企画は汚名を返上するために持ち込んだのだ!」
「でも、織斑先生はバカ舌っぽいわ」
「なんだと⁉」
楯無の本音に噛みつかんとする。これ以上は尺が足らないということで司会の簪が強引に話を遮った。
「それでは検証VTRです。どうぞ!」
進行と共に映像が流れ始めた。
『織斑千冬、舌もブリュンヒルデ説を検証。ナレーターはシャルロット・デュノアがお送りします。
世界中で知らない者はいない初代ブリュンヒルデ、織斑千冬。現在はIS学園で教師を務めており、僕たち学園生にISの指導をする生ける伝説。そんな彼女ですが、世間ではある噂が飛び交っています。そう、バカ舌ではないかと。』
「ズバズバ言いすぎてないか⁉」
ナレーションの淡々としすぎる発言に思わずラウラがツッコむ。
『そこで今回は検証として織斑先生に調理や食材が異なるチャーハンを食べ比べてもらい、どちらが一番良かったかを答えてもらうという方針で検証を進めていきます。』
「お正月の〇付けチェックみたいな感じ…」
「これ以上テレビ番組の題名言うのは止めましょ」
楯無が制しながらも映像は続く。するとカメラが切り替わり、殺風景な部屋に千冬が座っている光景が映る。
『全く、お前達が食べればいいだろう』
『すみません。でも上手にできたものもあったのでどうしても食べてほしかったんです。』
少しの悪態は吐きつつも、今のところ怪しまれている感じはない。そうこうするうちに最初のチャーハンが運ばれる。
『Aの炒飯は超有名店の炒飯。シェフの中でも20年以上業界にいるプロが作る炒飯はチャーハンを凌駕する味。僕のお墨付きです』
「食べたのね、シャルロットちゃん」
「ずるい」
画面では小洒落た皿に盛り付けられた高級炒飯を千冬が一口頬張る。
『あれだな、最近食べたチャーハンの味がする。』
『織斑先生が作られたのですか?』
『ああ、レンジで5分だ』
「「「ブッ」」」
「教官⁉」
明らかに冷凍チャーハンの感想を述べたことに思わず3人は吹き出す。対照的にラウラはバカ舌の光景に思わず身を乗り出してしまう。
もう企画は成立してしまってるようなものだが、まだ映像は続いていく。
『Bのチャーハンは一見すると料理ベタな人が作ったと思うようなチャーハン。これは調理工程から見ていきましょう。』
カメラが切り替わり、IS学園の調理室が映る。そこに一組の男女が入室してきた。唯一の男性IS操縦者の織斑一夏と中国代表候補生の鳳鈴音だ。
『ここで合ってるよな?』
『そうね。家庭科室に来いとしか聞かされてないけど、ってシャルロットじゃない』
『二人ともよく来てくれたね』
スタッフであるシャルロットの指示で内容を知らされずに来た二人。シャルロットが企画で手作りチャーハンを作って欲しいと伝える。
『それだけなら企画とかじゃなくても作るわ』
「ただの料理動画になるぞ?」
「わざわざ動画にすることかな?」
進行役の二人が訝しむ中で、画面の二人はエプロンを着けて料理に取り掛かろうとする。が、ここでシャルロットからとんでもない言葉が投下される。
『そうそう、今回は特別ゲストと一緒に料理してもらうから』
『『え?』』
バーン!と扉が開くと、そこには金髪立てロールのあの少女が立っていた。
『お待たせしましたわ!このセシリア・オルコットがいれば百人力ですわ!』
『というわけで、三人で作ってもらうから』
『『待て待て待て待て!』』
助っ人どころか足枷がやってきたことに猛抗議をする二人。
『シャル、本気で言ってるのか⁉』
『なんで疫病神を連れてきてるのよ⁉』
『誰が疫病神ですか!このエリートな私がいましてよ!大船に乗った気分でいてくださいまし!』
『ちなみにアンタ今回の料理分かってる?』
『作り方はよくわかりませんが、《とりあえずヨシ!》でなんとかなりますわ!』
『アンタ中華料理なめんじゃないわよ⁉』
「泥船だ…」
「「「アハハハ」」」
ド辛辣な簪の言葉で笑いに包まれる会場。画面ではセシリアが気合を入れる中で、一夏と鈴は後ろで作戦会議をしている。
『それでは、いざ…』
『セシリア(イケボ)』
突然一夏のイケメンムーブにセシリアだけでなくプレゼンターたちが固まる。
『セシリアはかわいいな』
『え? え? え? い、一夏さん?』
流れるように顎クイを決める。セシリアはたまらず恍惚とした表情を浮かべた。
『かわいいセシリア、目を瞑ってくれるか』
『ハイ…』
言われるがまま目を閉じるセシリア。しかし、画面を見ている皆は文句を言う前に気づいた。
鈴が思いっきりフライパンを振り被り…
『よし、これで邪魔者はいなくなった』
画面が戻ると、セシリアの姿がない。最初は何が起きたか分からず混乱する一同だが、この発言で全てを悟った。
(物理的に)排除したのだと。
『それにしてもアレであんなに無防備になるなんてな』
『言っておくけど、さっきの他の娘にするんじゃないわよ。やりたきゃあたしにやりなさい』
「アイツ、何抜け駆けしてるんだ!」
「ちゃっかりにも程があるわよ!」
鈴へのブーイングが起こるが、当然その声は届かない。中では邪魔者がいなくなったことで問題なく調理が進んでいく光景が見て取れる。
『二人とも手際良いね。息ぴったりだし』
『中学の頃は鈴の店の手伝いもしてたしな』
『一緒に料理もしてたのよね~』
『ずるい』
「「「「ずるい」」」」
ドヤ顔鈴にシャルロット含めヘイトが向く。突き刺さるような視線の中で優越感に浸る鈴。何も知らない一夏。
そして最後の炒めるところまできた。が、ここで二人の手が止まる。
『待て鈴。先に具材を入れるだろ?』
『いやいや、米から入れて水分を飛ばすでしょ』
『いやいや』
『いやいやいや』
ここにきて調理の方針で意見が割れたようだ。先ほどまで阿吽の呼吸だった二人が互いににらみ合う状況に。
『鈴、ここは譲れないぞ』
『あたしが中華で譲るとでも思う?』
意外と頑固な一夏に譲らない鈴。冷戦のごとく続くかに思われたが、ある人物が乱入する。
『この私にお任せですわ!』
『なっ⁉』
『セシリア、どうして⁉』
『なぜか頭が痛くて記憶が飛んでますが、復活しましたわ~!』
『くそ、思い切りが足らなかったか…』
『調理なら、このブルー・ティアーズで一瞬にして火を通して差し上げますわ!』
ビットのみ展開して、鍋に照準を合わせる。が、その前に一夏が行動を起こした。
『セシリア(イケボ)』
またしてもイケメンムーブをする一夏。
『セシリアはかわいいな』
『え? え? え?い、一夏さん?』
流れるような顎クイ。セシリアはまたしても恍惚とした表情を浮かべた。
『かわいいセシリア、目を瞑ってくれるか』
『ハイ…』
言われるがまま目を閉じるセシリア。そして…
『あっち向いてホイで決めましょ』
「いや、じゃんけんでいいだろ」
「なんでひと手間加えるの」
誰もセシリアがいないことに突っ込まない。そして早送りで勝負が進み、
『よっしゃ!あたしの勝ち!』
鈴のやり方が採用されることに。豪快に食材たちを入れていく。
『じゃあ、あたしが鍋振るから…』
『今度こそ私の出番ですわ!』
『という訳で、完成!』
「凄くカットされたわね」
「セシリアの扱いが雑すぎる」
「ファンが見たら暴動が起こるぞ」
『じゃあ、お疲れさまでした~』
『えっ終わり?』
『という訳で二人ともお疲れ。じゃ』
再度千冬のいる空き部屋に画面が戻る。千冬の前に先のチャーハンが運ばれる。
『…なんか失敗してないか?』
アマチュアが作ったことに気づく千冬、怪訝な表情で一口チャーハンを口にする。
『!これは』
「「「えっ」」」
「教官?なぜ目が生き生きしてるのです?」
まさかの反応に驚くスタジオ一同。トンデモ調理のチャーハンに千冬は舌鼓を打ってしまうのか?
『うん、こちらの方が美味い』
「きょーかーーん!!」
ラウラが席から崩れ落ちる。しかし千冬の失態は止まらない。
「これは、一夏が作ったのだろう。味付けが私好みだ」
「味付けは鈴ちゃんよ」
「べちゃっとしてる感じがしたが、これはこれで食べやすい。一夏が私用に調理したのだろう」
「それも鈴です」
全て的外れな回答に更識姉妹もツッコまざるを得ない。
『という訳で検証結果、《織斑先生はバカ舌でブラコン》でした』
「シャルロット、お前殺されるぞ⁉」
ラウラのツッコミと共に映像が終わり、パラパラと拍手が起こる。ここからは映像の感想を語り合う。
「シャルロットちゃんが毒舌すぎる」
「一応台本があってそれを読んでるらしいよ」
「シャルロットが裏で操られてるのかと思ったぞ」
その時に今までほとんど喋ってなかった箒は昔の出来事を語りだす。
「そういえばなんだが、私が小さいころに一夏と千冬さんと夕飯を食べたことがあるんだ。出てきた魚料理に『このサバおいしいですね』と千冬さんが言ってたのだが、その魚がブリだったのを思い出した」
「バカ舌じゃない!」
「じゃあこの企画いらなかったのでは?」
「あの二人が不憫すぎるぞ」
昔話一つでも説が立証され、楯無除く三人は一夏たちに同情した。
「じゃあ今度はパスタということで。一夏君たちも頑張ってもらいましょう。また次回、お楽しみに~♪」
こうして企画は幕を閉じたのだった。
「ああ、ちなみにこれ同人誌に乗るから」
「「「えっ」」」
上の小説、ネタと思うでしょう?
ガチです。出ます、小説。
くろだありあけさん(https://x.com/KurodaAriake2)のIS同人誌にマジで寄稿しました。(https://x.com/KurodaAriake2/status/1799401971855847912)
本当にただの一般ハーメルン投稿者だったのに、評価も高くない小説の投稿者なのに、数か月更新がないことなんてザラなのに、これを書き始めた大学生の時から想像もしないことが起こりました。
それだけでなく、小説に挿し絵まで。夢のようです。
これからもぼちぼち頑張っていこうという所存です。
そしてですが、この場を借りて一言
くろださん、声をかけてくださり本当にありがとうございました。