「参」じゃないのは何でかって?
……まあ、物語を楽しんでくださいな!
水曜日のIS学園 参
IS学園のある一室。最近使われるようになった廊下の奥には、どこかのテレビ番組を彷彿とさせる部屋があった。複数のテレビカメラが撮影を開始するとともに、司会席のシャルロットとセシリアが口角を上げる。
「始まりました、水曜日のIS学園。本日の司会はフランス代表候補生のシャルロット・デュノアと」
「ビューティーでファビュラスなイギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ〜!」
「二人合わせて〜」
「「ドーバー海峡!(ですわ!)」」
体を寄せ合ってつかみの挨拶をキメた二人。だが、ガヤからの声をかけられず無言が辺りを支配し始める。
「うん、スベッたね」
「箒さん! 何か言ってくださいまし!」
「いや、逆になんて言えばいいんだ⁉︎」
ボケ不発の不満を箒にぶつけるセシリア。読者なら喜ぶ光景だが、いきなりのボケに箒が突っ込めるはずもなく、呆然としていた。
「では、気を取り直して……本日のプレゼンターですわ!」
聞き慣れたBGMとともに中央の回転扉がゆっくり回る。いつもは一人だけの登場だが、今回は体格差のある二人が現れる。一人は肩出し制服のツインテール少女、もう一人は軍服に軍帽を斜めに被った女性だった。
「凰鈴音よ!」
「クラリッサ・ハルフォーフだ」
三人の拍手が終わるとともに、鈴が今回の企画説明に入る。
「今回私が持ってきた企画はこれよ! 『ラウラ・ボーデヴィッヒ、どこまで嘘を信じるのか!』」
「……ラウラさんなら何でも信じてしまいそうですわ」
「僕はそれが本当に心配で心配で」
「母親か、おまえは」
純粋無垢なラウラならば、なんでも信じてしまうだろう説に各々言葉を出す。そして鈴がクラリッサに話題を振った。
「そこで、今回助っ人としてラウラをよく知っていて、偽情報を流して騙しているクラリッサさんに来てもらいました!」
ラウラのことを一番知っているということでクラリッサを招待した鈴。冗談でラウラを騙しているとおちょくった。しかし、
「……え?私はありのままの真実を隊長に教えているだけだが?」
「え?」
『え?』
クラリッサが大真面目に答える。その答えに沈黙がスタジオを支配した。
〜〜しばらくお待ちください〜〜
「えー、助っ人で呼んだクラリッサさんですが、クビです」
「何故だ⁉︎」
「当然ですわ!」
まさかのラウラの奇行の原因だったということで番組史上初のプレゼンターをクビとなった。ガヤ席で涙目にクラリッサは訴えるが残当である。
「私はただ、隊長のためを思って日本の文化やゴチャンというネットの情報を報告しているだけなのに!」
「原因それだぞ!」
「ネットで一番信じてはいけない情報よ!」
元凶の情報源に思わずツッコミを入れる二人。これだけで小一時間が過ぎてしまうため、未だに文句を言うクラリッサを尻目にシャルロットが司会を再開した。
「それでは検証VTRです。どうぞ!」
『『ラウラ・ボーデヴィッヒ、どこまでの嘘を信じるのか』を検証。ナレーターは更識簪がお送りします。
ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍IS特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』―通称黒ウサギ隊の隊長を務めており、学園内で最強候補に上がるほどの実力者であるドイツ代表候補生。そのような肩書きとは裏腹に可愛いぬいぐるみには目がないといったギャップもあるマスコット的存在でもあります』
「ラウラ、こんなに可愛くなって……!」
「オカンかあんたは」
ハンカチで涙ぐむシャルロットにツッコむ鈴。自分を母親と思ってないだけ、まだ幸いなところだ。
『そんな彼女ですが、少しばかり常識に疎く、馬鹿真面目ゆえに何でも信じてしまうことがあります。
そこで今回の企画でラウラは嘘を見抜けるのか。こちらの皆さんに協力してもらいます』
『イェーイ、映ってる〜?』
カメラが右に動き、一夏・千冬・そして楯無が画角に映った。そのまま簪は説明を続ける。
『ラウラが信頼する一夏と織斑先生にはラウラに嘘をつく役、そしてラウラに信頼されておらず、カスの嘘を言うのが得意なお姉ちゃんには嘘を作る役を担ってもらいます』
『酷くない⁉︎ここ最近特に!』
「妥当だな(ですわ)(よ)(だね)」
映像を観る一年生組から楯無への扱いも雑になってきた。生徒会長の尊厳破壊が着々と行われているようだ。
『お姉ちゃん落ち着いて。大きな螺子持って深呼吸して』
『カッコつけて話すのもいいかもですね』
『落とし穴の件、忘れてないからな』
『『私は悪くない!』』
「ん?」
「これは、めだかボ」
「作品名出すのは止めましょう」
「「「?」」」
某大嘘憑きのように楯無はおどける。日本の漫画を読み漁っているだけあって、元ネタが分かったクラリッサ。有名な漫画のため鈴も分かったが、他の三人は頭に疑問符が浮かんでいる状況だ。
つかみはそこそこに、本題に入っていく。楯無は別室で待機し、まずは一夏がラウラとの接触を図る。
『よっ、ラウラ』
『おお、嫁か』
一夏が自然とラウラと接触する。右耳には無線イヤホンを付けており、ここから楯無の嘘を指示してもらう。
ひとしきりの会話をしてもらった後に、一夏が切り出す。
『ところでさ、ラウラは寿司屋のルールって知ってるか?』
『ああ、テーブルにある黒いボタンの蛇口で手を洗うのだろう?』
「初手から間違ってる!」
某掲示板のネタを信じているラウラに反射で鈴が叫ぶ。こんなネタを信じる奴がいるのか、とガヤ席を見ると驚いている人物が一人。
「違うのか⁉少し熱いとは思っていたが」
「そんなことあ…いや待て、洗ったのか⁉手を⁉そこで⁉」
まさかのカミングアウトにキャラを忘れるほどに箒が捲し立てる。
「黒ウサギ隊では熱湯で手を漬けるなど訓練にもならん」
「限度がありますわ!」
「ラウラ、部下を変えた方がいいよ……」
今まで以上に騒がしくなる中で、映像で一夏が楯無考案の嘘をインカム通して伝えるフェーズに入った。
『実は日本には高級な回転寿司屋があってな、そこでは民族衣装を着ないと入ることができないんだ(嘘)』
『ほうほう』
『店入る時は『ヘイ大将!』って言いながら入るのがマナーなんだ(迷惑なのでやめましょう)』
「……うん?」
カッコの字幕を見ながら、どこかで聞いたことのある設定に鈴が首を傾げる。その答えは次の一夏の言葉で判明する。
『もしも皿からネタを落としたら、罰としてごつい男たちが出てきて、椅子ごと回されるんだ!(大嘘)』
「はね〇びじゃない!」
「客が回る寿司屋があるわけないだろう!」
某テレビのワンコーナーと分かった鈴と箒がツッコむ。昔観ていたテレビネタで若干の懐かしさを感じながらも、これはラウラでも騙されないと思ってた二人だが……
『そんな寿司屋があるのか!』
微塵も疑いなく信じた。それだけでなく、
『そうだったのか(ですの)(の)⁉︎』
「うぉい⁉︎」
ラウラだけでなく見事に欧州組が引っかかっていた。
「そういうアトラクションがあるのかな〜って」
「なわけあるか!」
「ドイツで提案してみるか……」
「訴えられるわよ! そんな寿司屋!」
欧州組が騙されるのだから当然ラウラも騙されるのかもしれない。説が立証に近づく中、次の映像に映る。
一夏が離れた後、名残惜しそうなラウラの元に千冬が近づいた。
『ボーデヴィッヒ、ここにいたか』
『きょ、教官⁉お疲れ様です!何か要件でしょうか⁉』
『ここでは私は教官ではない、織斑先生と呼べ』
千冬が話しかけるや否や、一瞬で表情が明るくなる。相変わらず千冬好きな少女である。
『硬くならなくていい。最近一夏とはどんな感じだ?』
『そうですね、良くも悪くも相変わらず、でしょうか』
自然な流れで会話を始める。ここから楯無が思いついた嘘を千冬に伝えていく。
『そうか、だが、最近キャラが立ってないのではないか?』
「どんな切り出し方ですか」
「今の時代でもキャラとしては濃いでしょ」
今度は欧州組がツッコミに回る。銀髪ロングに眼帯と大きな特徴を二つも持つ彼女にさらに属性を盛るのは供給過多である。
『一夏が振り向くような最強の武器が欲しくないか、ボーデヴィッヒ』
『欲しいです‼︎比類なき最強を、唯一無二の絶対を‼』
『懲りてませんね……』
いつぞやのセリフを繰り返すラウラ。そんなラウラに呆れる簪だが、他人事ではない方々が身を乗り出していた。
「皆さん、何故そんな前のめりに?」
「え⁉ いや、なんとなくっていうか?」
「そうそう! どんな嘘を言うのかなーって」
「た、体勢を変えるためだ!」
「身を乗り出すのも淑女の務めですわ!」
クラリッサの指摘に慌てて言い訳する四人。一夏関連なら彼女たちも騙せそうだ。
『ボーデヴィッヒ、おまえに足りないものは……ズバリ色だ』
『色……ですか』
「毒色とかどうでしょう」
「アンタもう黙ってなさいよ!」
某ミームに無駄に詳しいクラリッサだが、発言権がそろそろ失われそうだ。そんな中で映像では嘘の下地が固められている。四人も興味津々に次の言葉に耳を傾ける。
が、しかし。
『一夏が好むのは、『ゲーミング色』だ(大嘘)』
「「「「おい!」」」」
「色じゃないし!」
とんでも嘘に四人はのけぞる。恋に盲目とはいうものの、これだけ光っているものは嘘だとわかる。
『なるほど!有益な情報をありがとうございます、教官!』
「信じるなアホ!」
「なるほど、ゲーミングですか」
「流石に嘘に決まってますわ‼」
眼帯組は信じきっていた。どうやら彼女たちの眼帯は遮光性で両目に付けているのだろう。
『そして、ゲーミング色を最大限活用できる最先端の装備……それが『全身タイツ』だ(トンデモ嘘)』
『全身タイツ……!その手がありましたか!』
「んな訳あるかぁ!」
本日何度目か分からない鈴の叫びがこだまする。映像にはイメージ図で全身ゲーミングに光るフォー〇ガイズの着ぐるみのラウラが映っていた。これではキャラの特徴うんぬんの話どころではない。
『こうしてはいられません教官! 新たな装備を手配し、ラウラ・ボーデヴィッヒの新たなる姿を嫁に見せます!』
『ボーデヴィッヒ、今日じゃなくてもいいんじゃないか?』
『いえ! 思い立ったが吉日、それ以外は全て凶日と言いますので! では!』
「思い切りが良すぎますわ!」
「ラウラ、少しは疑って!」
すくっと立ち上がると同時に駆け出すラウラ。セシリアとシャルロットの言葉も虚しく、画面から消えていった。
『という訳で結論、『少しは疑え』でした』
「結論雑すぎないか!」
「分かり切ってはいたけど!」
過去一雑な結論で映像が〆られた。
ツッコミしかない映像に各位、特に鈴が満身創痍になっている。その中で手元の資料を見ながらセシリアが進行に回った。
「そして、今回ですが特別ゲストが来ていますわ!」
セシリアの掛け声を皮切りに、中央の回転扉がゆっくり回る。何も知らされていないラウラが首を傾げながら登場するが、辺りのセットを見回して何かを悟った。
「これは、水曜日か。むっ!クラリッサもいるではないか」
「何の企画かわかりましたか、隊長?」
「……更識楯無の下着エグい説か?」
突然の流れ弾に会場は笑いに包まれる。改めてシャルロットが企画を説明する。
「で、どれが嘘かわかった?」
「……『猫ミーム』とやらが流行っていると楯無が言ってたな」
「どれだけ更識先輩を信頼してないんですか、ラウラさん!」
「あれか、アル中カラカラが復活したことか」
「お前いったいどんな情報を仕入れているんだ!?」
「私ですが何か?」
「自主退役しなさいな!」
ここからラウラ&クラリッサのエンドレスボケが続いていき、シャルロットが強引に番組を締めにかかった。
「み、皆さんの案も募集していますので!それではまた次回!ごきげんよう~!」
「wawawaが復活したことだな!」
「一緒よ!」
おしまい
ここに小説が出るということはですよ。はい、その通りです。
今回もくろだありあけさんの同人誌に寄稿しました。
夏コミまで早すぎるんじゃないかと思った方、いると思います。それはくろださんのXで確認してください!
それでは、今年もよろしくお願いします!
p.s. 本編滞っててすみません!!!