抜きゲーみたいな帝国から来たマスコットにTS魔法少女にされた僕はどうすりゃいいですか?   作:ペンギン3

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第7話 おねショタ 目覚め編

 こころと少年が消えて、その場に残ったのはポルノとパコリイヌの二人のみ。両者の表情は対照的で、ニヤケ顔のポルノと愕然としているパコリイヌがそこには居た。

 

「……パコを、犯すパコか?」

 

「相も変わらず冗談が微塵も笑えぬ。吐き気がするわっ」

 

「悪阻ってパコ?」

 

「ククッ──ここで死ぬか? 元より、貴様に淫導を渡すことにためらいなど無い」

 

 尤も、パコリイヌのあまりに人を虚仮にする物言いに、ニヤケ顔から一転してポルノはブチギレそうになっていた。人の神経を乱暴に愛撫して、萎えさせるかブチギレさせる。

 

 パコリイヌがパ国会で多用する手筋であり、そのために煽り散らかされる立場の野党支持者からは、パコリイヌを見つけ次第テクノブレイクさせろと手配書まで出ている。そう、このパコリイヌは命を狙われる立場の変態だったのだ。

 

「そうパコ、そもそもそれが疑問だったパコ。ポルノ、どうしてパコを害する能力が低いお前が出てきたんだパコ。もっと戦闘能力が高い変態が、NTR推進委員会には居る筈パコに」

 

 解せないといった感じのパコリイヌに、ポルノは口角が上がる。自分が優位な立場にいることを思い出し、苛立つことは己の格を落とす行為だと諒解したのだ。なので、パコリイヌの問い掛けにも返答する。取り立てて、隠し立てすることでもなかったがために。

 

「我の目的は、貴様らを撹乱し消耗させること。貴様の暗躍を食い止め、時を稼ぐためだ。我らが秘奥にして卑技、"クッ、なぜ私のアソコが疼いているっ。……ま、まさか、先程の電波は発淫性のモノだったのか!?"の発動には時間が掛かるが故にな」

 

 尤も、消耗させるどころか、こうして追い詰められて僥倖であるのだがと、ポルノは笑みを隠さない。優位な立場が生み出す嗜虐心が、如何にも怪しげなおじさんの微笑みを生み出しているのだ。

 

「それもおかしいパコ。こころが性交に成功すれば、パワーアップして帰ってくるパコ。言ってることとやってることが、処女と童貞のセッ◯スくらい噛み合ってないパコよ」

 

「ククッ、クククッ」

 

 その指摘に、今日の中で一番の笑い声が出そうになるのを、ポルノは何とか噛み殺した。その様なこと、わざわざ聞かれたことも愉快で仕方ない。これから起こる事態に、胸を高鳴らせざるを得ない。

 

 ──最低最悪なことに、彼の股間は仰角90°まで勃起をしていた。

 

「何が犯しいんパコか」

 

「言うこと一々然もあらんが、貴様は一つ勘違いをしておる」

 

「な、何をパコか?」

 

 自分の見落としがあるのか、思い当たることがなく動揺するパコリイヌに、ポルノは高らかに告げた。

 

「──たかだか一回、セッ◯スをした小娘が、我の崇高なる性の巡りに勝てると思うておるのか!」

 

 ポルノには自信があった。ロリショタの性交を録画し、それで昂る己の魔力は何者にも劣ることはないはずだと。普段の出力こそは低く、安定した勃起こそできない彼だが、己が一度昂れば最大出力は例え己らのリーダーにだって負けてなどいない。

 

 つまり彼は、ロリショタセッ◯スを眺める自分は、他の誰よりも興奮できて最強の勃起ができるのだと確信していたのだ。性交してパワーアップしたこころより、自分の方が強い自信がある童貞だった。

 

「そ、それがわざわざこんな場所で、暴発した精液みたいに魔力を垂れ流して誘い出した理由パコか!?」

 

「クククッ、我が策略は全て思い通りに動いておる。後は破瓜した後の未開発人を屈服させ、叡智(H)を授け、文明快感を成し遂げるのみよ。その先駆けとして、あの二人にはセッ◯スシンボルとして、いま行われている行為を撮影し、その痴態をネットの海に放流してくれるわっ」

 

「痴育が必要なロリとショタを、性治的理由でしゃぶりつくそうなんて、なんて性格が悪いんだパコ!」

 

「なんとでも言うが良い。これが我らが祖国を救う実験、その大望を担う大きな一役になるのだ! 大義の前の小事、挿入前の前戯、そういうことなのだ」

 

 パコリイヌは、口をつぐんだ。こころは今頃、必死になって脱出の手段を探していることだろう。だが、それが見つからなかった時は、やむを得ずに挿入するかもしれない。それで快楽を許容できるのならば、パコリイヌも大人になったパコね、などと言いこころを祝福するだろう。

 

 しかし、この世界の人間は繊細だということを、こころを通じてパコリイヌは知っていたから。行為を終えて、こころが傷ついて戻ってきた時、この子になんと声をかければ良いのか、パコリイヌとしても慎重にならざるを得なかった。

 

「ククッ、貴様の見つけてきた可能性の処女。その散り様をとくとそこで眺めているが良い!」

 

 ポルノはそう宣言し、魔法で部屋の中を投影した。宙に浮かんだ映像を、パコリイヌは恐る恐ると見つめて。

 

『一回も――ないんだね?』

 

 だからこころが口にした次の言葉に、パコリイヌは心から安堵した。逆に、ポルノは"何だと!?"と声を上げて驚愕する。二人の立場が、一瞬にして入れ替わった瞬間だった。

 

 


 

 

 妙にラブホテルっぽい部屋から、僕と男の子二人で必死に脱出しようと出口を探す。この部屋には、どうしてだか扉が存在しなかったから。

 

「どう、見つかった?」

 

「無い。扉、どこにもないよ……」

 

 泣きそうになりながら、縋るように男の子はこっちを見つめてきた。不安で仕方ない、これからどうなっちゃうんだろうか。そんな気持ちが聞こえてくるみたいな、切なそうに潤む目。……何とか、してあげないと。

 

「大丈夫だから、ね?」

 

 本当は困り散らかしてるけど、僕の方が年上でしっかりしなきゃいけないから。できるだけ優しい声を意識しながら話すと、男の子はうんって頷いてくれた。

 

「それじゃあ、今から君は僕の協力者だ」

 

「きょうりょく、しゃ?」

 

「うん、一緒にこの部屋から脱出する仲間ってこと」

 

 多分、暫くはここから出られない。でも、ずっと暗い雰囲気よりは、明るく居れた方が良い。だから、これは脱出ゲームなんだって感覚で、僕は男の子に手を差し出した。今からよろしくと、そう伝えるために。

 

「僕の名前は夏空こころ、よろしくね」

 

「僕は……」

 

「うん」

 

 モジモジとしながら、男の子は目線を合わせてきた。自分より小さい男の子のはずなのに、目線が同じなのが何だか不思議な感じ。

 

天音(あまね)(ひかる)って、言います。よ、よろしく……」

 

「うん、よろしく」

 

 そっと手を握り返してくれて、僕達は仲間になるための握手をした。このフザけた、ゴミみたいなエロ部屋から何とか脱出するために、文字通り手を組んだ。純真そうなこの子を変態共の魔の手から救い出し、僕の貞操も無事のままでこの部屋を出るための同盟だった。

 

 

「光くん、何か見つかった?」

 

「これ、何?」

 

 調査を始めて直ぐ、光くんが引き出しの中から何かを取り出した。ピンク色の、カプセルみたいな先端とケーブルで繋がれてるリモコン。リモコンのスイッチを押すと、ブルブル震えだす。……初めて見るけど、何だか如何わしすぎる。

 

「光くん、元あった場所に戻して」

 

「は、はい」

 

 さっきの物体は引き出しに仕舞われて、封印された。二度と出てこないで欲しい。それから、再び何か無いかを漁っていると、次はシャワー室の近くにナニかが落ちていた。

 

 それは、一見するとこけしにも似ている。ただ、よくよく目を凝らすと、どう足掻いてもオチ◯チンにしか見えない物体。……残念なことに、これのことは知ってしまっていた。

 

「お姉さん、何かあったの?」

 

「見ちゃダメ」

 

「え?」

 

 いわゆるバイブ、女の子が気持ちよくなるためのエッチな道具。もしかすると、この部屋に在るものは大体がエッチなのかもしれない。

 

 そうじゃないかもしれないけど、全部が全部疑わしく見えてくる。今なら、エッチなのは死刑な心理も分かってしまう。周りにあるもの全てが疑わしいなら、全てを疑ってかかるしかないんだ。この部屋は淫ベーダーが用意した、インモラルな部屋だし!

 

 ……僕、何言ってるんだろうね。

 

「お姉さん、それ……」

 

 遠い目をしてると、つい視界に入ってしまったのか、光くんは呆然と僕の手にあるものを見つめていた。一目、見た目がどうあがいてもそうだったから。

 

「こけし、だから」

 

「え?」

 

 でも、そんなことを認めたら、光くんにこの部屋がエッチな場所だとバレてしまうかもしれない。そんなの、教育的にもあまりに不道徳なので。咄嗟に、そんな言い訳をして。

 

「こけし……」

 

「うん、こけし」

 

 とりあえず、そういう事になった。良いね? って念押しすると、コクンと頷いてくれたからきっと大丈夫。バイ……電動こけしは、シャワー室へと放り投げておいた。二度と姿を見せないでほしい。

 

 それからも、僕たちは必死に探し物をして。それでも出口は見つからず、出てくるのもが一々そういうものだから、光くんも察してしまっていた。この部屋、なんかえっち! と。

 

 気まずさが満ちる中で、僕たちはいつしか無言になっていた。光くんになんて説明しようか僕は困っていたし、この子も聞いていいのかなって多分思ってる。

 

 そうして、成果なく時間が過ぎ去っていって。気が付けば、ベッド周辺を探ってた光くんが固まってしまっていることに気がついた。何か一冊の本を持って、真っ赤になって。

 

「光くん?」

 

 声を掛けると、露骨に肩をピクリと震わせた。そして、後ろめたそうに本を背中へと隠した。

 

「どうしたの?」

 

「な、なんでもないっ!」

 

 明らかに何かあったけど、多分脱出に関係ないタイプのエロだ。そんな確信のもと、光くんから背を向けて呟く。

 

「……ベッドの下にあったの?」

 

「なっ」

 

 なんで、と震える声で漏らした光くんは、泣いちゃいそうな感じで。その手に持っているのがエッチな本だと、自白してしまっていた。

 

「僕もね、ベッドの下に隠してるから」

 

「え?」

 

「エッチな本」

 

 ある日、河原で拾ったエッチな本。それを除菌ティッシュで拭いて、挙動不審になりながら持って帰った思い出。その本は今も、実家のベッドの下に眠り続けている。

 

 誰にも言ったことない、誰にもいえない秘密。それを、思い切って話してしまっていた。

 

「な、ななななっ!?」

 

「水着のお姉さんが、ちょっとずつ脱いでくやつ」

 

「い、言わなくていいよ、そんなの!」

 

 きっと、自分はエッチなやつなんだって思われることが、光くんにとって心外だった筈。だから敢えて、自分のエッチなところを晒して、それくらいどうってことないよってアピールする。これ以上、気まずくなっても困るし。

 

「そういうわけで、光くんが偶々この部屋にある本を拾ったとしても、エッチなんだって思ったりしないよ」

 

 ね、安心してって言うと、光くんはどうしてだか本を僕に渡してきた。顔は真っ赤で、ツンって態度をしながら。

 

「……お姉さん、悪い人じゃないけど、エッチな人だ」

 

 そうして、凄い心外なことを口にしていた。

 

「僕はエッチなわけないしエッチな本は偶々拾っただけだよ」

 

「凄い早口」

 

「弁解は早ければ早いほど良いの」

 

 どうしてだか、光くんは僕と本に交互に目をやって。首を傾げると、ギョッとした様に視線を外してから一言。

 

「でも、エッチな本の人と一緒の格好してるし……」

 

「は?」

 

 エッチな本の表紙に目を落とすと、そこにはクソデカ巨乳のお姉さんが競泳水着で決めポーズを取っていた。反射的に、本をベッドの下に戻す。

 

「僕のは違うからっ! 魔法少女はこの衣装なの!」

 

「……じゃあ、エッチな本の人も魔法少女なの?」

 

 光くんがどうしてだか、ジト目で僕を見ていた。酷い誤解を受けている気がする。

 

「これは……エッチな人だけど」

 

「やっぱりっ!」

 

「違うよっ!」

 

 サッと距離を取って、光くんは防犯ブザーを片手に握りしめていた。ここで鳴らしても誰も来ないって分かってる筈だから、きっと脊髄反射での行動。そこまで信頼されてないんだと思いつつ、自分の格好を振り返るとハイレグレオタードだった。……全部、エロ犬が悪い!

 

「ずっと、考えてた。ここの部屋、なんかエッチな物ばっかりだなって」

 

「それは僕も思ってた」

 

「だから、ここにいるお姉さんも、エッチな人なんだ!」

 

「その理屈で行くと、光くんもエッチになっちゃうよ」

 

「僕はエッチな服着てない!」

 

 魔法少女の衣装はエッチではない。そう言い訳するかとも考えたけど、ちょっと無理筋な気がする。僕から見ても、結構際どいから。

 

 エッチなものを見たことなさそうな光くんからすると、僕はスク水とかレオタードで徘徊する人も同然なんだ。その誤解を解く方法を、今の僕は持ち得ていなかった。

 

「……ごめん、光くん。僕はエッチじゃないけど、一つだけ隠してたことがあったんだ」

 

 もはや、これまで。これ以上拗れる前に、話すべきことは話した方が良い。僕がこのエッチな部屋の住人だとか、そんな勘違いをされてしまう前に。

 

「実はね、この部屋は――エッチなことをしないと、出られない部屋なんだ」

 

 だから、これまでひた隠しにしていた真実を告げると、光くんは固まった。防犯ブザーを落とし、え? と小さく呟く。

 

「ここに飛ばされる前に戦っていたおじさんは、エッチな犯罪者だったんだ」

 

「……悪の組織とか、そんな人じゃなくて?」

 

「エッチな悪の組織の人だよ」

 

 真実を告げると、光くんは呆然としてしまっていた。自らがエッチな犯罪に巻き込まれてただなんて知ってしまったのだから、無理はない。僕も、一緒に宙を眺めていたい気分だった。

 

「え、エッチをしないと出られない部屋って……何?」

 

「そのままの意味かな、多分」

 

「……じゃあ僕たち、さっきまで何してたの?」

 

「エッチなことをしなくても、出られる方法を探してた」

 

「……そうなんだ」

 

 どうしよう、と呟く光くんは、本気で困惑していた。僕もその気持ちがわかりすぎるから、どうしよっかと同調しながら呟いて。

 

「……お姉さんはエッチなのに、出られないの?」

 

「誤解がいっぱいあるけど、エッチじゃないから出られないんだよ」

 

「そう、なんだ。エッチじゃなかったんだ。……誤解してて、ごめんなさい」

 

「許します」

 

 誤解が解けてホッとする。けど、根本的な問題は何一つとして解決していなかった。事実として、エロしないと出られない部屋に閉じ込められたままなんだから。

 

「……エッチなことって、どうすれば良いのかな?」

 

「光くん?」

 

「ずっとここに閉じ込められてるの……困る、から」

 

 顔をすごく凄く赤くして、囁くみたいな声でボソリと光くんは呟いていた。必死に勇気をかき集めて、なんとか口にできた言葉なんだと思う。

 

「……エッチなことって、どんなことか分かる?」

 

 困りながらも、会話を続けた。エッチなことは絶対にしないけど、対案を持ってるわけでもなかったから。とりあえず、考えをまとめるために。

 

「お……」

 

「お?」

 

「おっぱい、揉む、みたいな……」

 

 可哀想に、光くんの顔全体が羞恥で染まっていた。こんなこと、女の子に話すなんて恥ずかしくて仕方がないって伝わってくる。

 

 でも、その頑張りのお陰で、光くんの性知識のレベルを把握できた。うん、こんな純真な子に、エッチな話をするのは犯罪すぎる!

 

 ……けど、一応は聞いておきたいことがあった。普段なら絶対に聞かないけど、この状況では致し方ない質問。

 

「その、一応聞いておくんだけどさ……光くんは、勃起って現象を習った?」

 

「ぼっき?」

 

「その、朝起きたらね、股間の辺りが大きくなっている現象のこと」

 

 今度は僕が恥ずかしくなりながら、おかしな質問をする。顔が熱いけど、でも光くんも勇気を振り絞って答えてくれたから。本当にどうしようもなかった時のために、一応聞いて。

 

 一方の光くんは、顔はまだほんのり赤いままだけど、不思議そうに首を傾げていた。まるで意味がわからない、みたいな感じで。

 

「オチ◯チンって大きくなるの?」

 

「……一応」

 

「そうなんだ……なったこと、ないけど」

 

 その言葉で、僕はおや、と思った。こんな猥談擬きで気付きなんて得たくないけど、まさかとも思ったので。

 

「オチ◯チン、一回も大きくなったことないんだね?」

 

「そう、だけど。お姉さん、どうしてそんなこと聞くの?」

 

「ちょっとね……」

 

 確認が取れて、確信する。

 ──光くんはまだ、精通してない!

 

 この状況で、それが良いことなのか悪いことなのかわからないけど、確実に僕はホッとしていた。だって、精通してないんだったら、エッチなことなんてできるわけもないから。

 

 九死に一生、光くんのお陰で感じていた恐怖がおおよそ緩和された。思わずこの子の頭を撫でると、真っ赤にして、けれども大人しく頭を撫でられている。ちょっと、可愛いかもしれない。

 

「あのね、光くん――」

 

 エッチな方法で出られない。だから、と口にしようとしたところで。

 

 どこからか、急に声が聞こえてきた。

 

『き、貴様、勃起出来ないとはどういうことだ!?』

 

「え、な、何?」

 

 声の主に唐突に怒鳴られて、光くんは怯えた表情を見せた。大人気ない、それでいてこの変態な物言いは……。

 

「児童ポルノっ!」

 

『如何にも、我である。だが、そんなことはどうでも良い! 何故勃起が出来ぬ、我がオチ◯チン=オマ◯マン二重帝国では、その様なこと5歳児でも容易くできるというにっ』

 

「早すぎるよ、それは……」

 

『早いだと!? 我は早漏ではないっ!』

 

「言ってない」

 

 光くんが怖がらない様に手を繋ぎながら、変態おじさんと口論を交わす。こんなこと、あまりに馬鹿馬鹿しいと思いながらも。

 

「そういう訳で、エッチなことなんて出来ないよ」

 

『み、未開発人の未開発さを、我は甘く見ていたとでもいうのか。バカなっ!!』

 

 なぜか分からないけど、おじさんはひどく動揺していた。その理由を探るために、油断なく耳を傾けていると、おじさんとは別の聞き慣れた別の声が耳に入ってきた。

 

『こころ、ポルノは萎えかけているパコ!』

 

「エロ犬!」

 

 聞こえてきたのはエロ犬の声なのに、何だか嬉しい。味方がいる、なんとかなるって思えるからかも。でないと、嬉しいなんて、こいつ相手に思う筈ないし。

 

「どういうこと?」

 

『ポルノは、上質なインピオを観測できると思ってヘコヘコしていたパコ。なのに、着衣モノのAVで唐突に脱がされた時の様に、こころが中出しされる可能性が0になって、オチ◯チンが落ち込んでいるんだパコ!!』

 

「死ねば良いのに。……それで、どうすれば良いの」

 

『あともうひと押し、何か萎えさせることを言うんだパコよ!』

 

「了解!」

 

 エロ犬の言葉で、頭がフル回転し始める。ロリショタ好きなおじさんが萎えそうなシチュエーション、この状況で連想させられる一番嫌な光景。僕と光くんの二人で、あの変態おじさんを折れさせるには……。これだっ!

 

「ねぇ、おじさん。実は僕ね――TS魔法少女なんだ」

 

『な、に?』

 

 頭の中で組み上げられたモノを、順番に伝えていく。TS魔法少女、その言葉を聞いたおじさんの声は、震えていた。慄いている、それに近い声質。それに僕は勇気づけられて、思いっきり嫌なことを言ってやった。

 

「だからきっと、このままだと僕は男の子に戻っちゃうんだ。それでも、この部屋から出られない。そんな時……どうすると思う?」

 

『何を言って――貴様、まさか!?』

 

「そうだよ――僕は、ホモになる」

 

 一瞬の静寂。言ってる僕はやけくそテンションだけど、光くんは何を言ってるんだろうこの人はと、微塵も困惑を隠せてない。けれども、直ぐにそんなことを気にしている余裕なんて、なくなった。

 

 おじさんが、悲痛な声で爆発したから。

 

『この真性なる我が部屋で、ロリショタセッ◯スしか認められていない部屋で、ショタホモセッ◯スを行うだと? ……ふ、ふざけるなぁ!!』

 

 おじさんの声と一緒に、部屋が震え始めた。まるで、地震にでもあったみたいに。

 

「お、お姉さん!」

 

「大丈夫、きっとね」

 

「お、お姉さん!?」

 

 不安そうな光くんを抱きしめながら、上手くいったと確信する。この揺れは、勃起を維持できなくなったおじさんが、魔力を霧散させているんだ。

 

 この部屋は、ロリショタ以外のエッチを認めていない。そう本人が言っていたから、部屋自身もホモ行為に及ぼうとした僕たちを追い出しにかかったのだ。……こんな考察、したくないけど辻褄を考えると間違いない筈だった。

 

 そうして、僕たちは戻ってきた。あの部屋に飛ばされる前にいた、お山の所へと。

 

 僕はロリから元の姿に戻っている。抱きしめていた光くんを離して、おじさんの方へと視線を向けた。無惨にも、既に哀愁が漂っているおじさんの方へ。

 

「クッ、蛮族どもが! 未開発の猿めらが!!」

 

 悔しげに顔を歪めながら、おじさんは崩れ落ちていた。負け犬の遠吠えすら、なんかズレてる。馬鹿馬鹿しすぎて、微塵も侮蔑されている気にすらなれなかった。

 

「こころ、流石パコ!」

 

 そんなおじさんを尻目に、エロ犬が嬉しそうに尻尾を振りながら肩に飛び乗ってきた。今回は、振り落とさずにそのまま受け入れる。

 

「……助言、ありがと。助かった」

 

「こころがデレたパコ!?」

 

「デレてないし!」

 

 けど、やっぱり一言余計だ。本当に余計だけど……感謝もしてたから、今日ばかりは勘弁しておいた。明日からは、また振り落とすと思う。

 

「こころ、そう言う訳でトドメを刺すパコ!」

 

「うん」

 

 一歩おじさんに近づくと、怯えるみたいに這いずって逃げようとする。そんなこの人に、女の子の僕がお母さんにオナニーを見つかってしまった妄想をしながら、詠唱を開始する。

 

「”ば、ババア何勝手に部屋に入ってきてんだよ!"」

 

「や、やめろっ!」

 

 絶望の声を上げるおじさんに、僕はその目の前にまで迫って告げた。

 

「”思春期の息子が部屋を閉め切ってたら、シコってる最中なんだよそれは!! 見ろよっ、この無惨に萎えたチ◯コの姿をよぉ!”」

 

「やめろぉぉーーーーーっ!!」

 

 おじさんの悲鳴と共に、その股間から光が漏れ出した、見た目が最悪である。そして、ゆっくりと輝いたあと、そこに残されたのは……。

 

「我が勃起がっ、我が性癖がっ、この様な未開発人にぃ!!」

 

 オチ◯チンを抑えながら、血涙を流すおじさんのみ。僕は、取り敢えずは街の平和を守れたらしかった。

 

 

 

「ねぇ、エロ犬」

 

「どうしたパコ?」

 

「このおじさん、どうすれば良いかな?」

 

 何度も股間を地面に擦り付けて、ピクリとも動かないそれに涙を流すおじさんを指差して言う。カスそのもの、キショさが天元突破している光景だ。でも、これを見る限り、めでたく不能になったみたいで一安心できるね。

 

「放置で良いパコ。暫く不能になって、魔法が使えない筈パコから。早めに聖キガクルーウに戻って治療しないと、EDになるパコよ?」

 

 その言葉を聞いて、おじさんは股間を抑えながら立ち上がった。内股になっていて、僕たちを睨みつけてくる。そこはかとなくキモい、おじさんには許されない所作だ。

 

「クッ、覚えているが良い。我が股間が討ち果たされようと、第二第三のオチ◯チンが勃起(たち)アガるということをなっ!」

 

「股間蹴ってトドメ刺して良い?」

 

「やめておくパコ。新たな性癖に目覚めたら、厄介パコからね」

 

「我が性癖は、永遠なるロリショタインピオ属性であるぞ!!」

 

 最悪な捨て台詞と共に、おじさんは離れた場所に置いていた自転車に飛び乗って山を降っていった。空とか、飛んできていた訳じゃなかったんだ……。

 

「ふぅ、一件落着パコ」

 

「落着感、全然ないけどね」

 

 脱ぎ捨てていたジャージに袖を通して、ため息を吐いた。ドッと疲れが襲って来るけど、山奥まで来てしまった僕は、これから歩いて帰らないといけない。

 

「それじゃ、帰ろっか」

 

 けど、そんな態度は隠して。光くんに、手を差し出しながら告げた。思いもよらず、変なことに巻き込んでしまったこの子は、大丈夫だろうかという心配もあったから。

 

「……うん」

 

 そっと手を取ってくれた光くんと一緒に、僕たちは下山を始めた。ちゃんと帰るまでが遠足って言葉と一緒で、光くんを無事に家まで送り届けてあげないといけない。

 

「今日あったこと、誰にも内緒だよ?」

 

「……うん」

 

 疲れちゃってたのか、光くんは言葉数少なかった。

 

 


 

 

 なんか、変だった。

 

 今日は色々あって、ぼぉっとしちゃって。パパもママも、顔が赤いし風邪かなって言ってる。そうだったら、お姉さんに移しちゃったかもしれない。そう思うと、しょんぼりとした気持ちでいっぱいになった。

 

 寝なくちゃと思って、いつもよりも早くベッドに入って目を瞑る。すると、フって思い浮かんできちゃう。

 

 ――お姉さんに繋がれた手の柔らかさとか、抱きしめられた時のフニってした感覚が。

 

 無性に恥ずかしくなって、頭をブンブンする。けど、水着みたいにピッチリしてた格好でくっ付かれて、頭を撫でられたことを思い出すと寝られなくなっちゃって。

 

 どうしてか、お姉さんのおっぱいを触る妄想をしちゃっていた。

 

「バカ、そんなの、考えちゃダメだ!!」

 

 何でか、すごくエッチなことを考えちゃう。それが恥ずかしくて、枕を被って無理やり目をギュッと閉じて、僕は頑張って眠った。途中から、お姉さんが頭を撫でてくれたことを思い出して、なんとか。

 

 ――朝起きると、何かおしっこじゃないお漏らしをしちゃってた。

 

 何これ……。

 どうしよう、お母さんに殺されちゃうよ……。

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