抜きゲーみたいな帝国から来たマスコットにTS魔法少女にされた僕はどうすりゃいいですか?   作:ペンギン3

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第9話 ムラムラじゃなくてイライラ

 エロ犬は今、両手両足をロープで縛られて、青空の下で宙吊りにされている。やった犯人は僕、エロ犬を絶対に許さないという意思の元にぐるぐる巻きにしていた。

 

「こころ、どうしてこんなことをするパコか!」

 

「自分の心にでも聞いてみたら?」

 

「分かったパコ、パコの内側でメス堕ちしてるこころに聞いてみるパコよ」

 

 エロ犬はどんな状況でも相変わらずで、微塵も反省する気なんてなさそう。やっぱり、口の方から去勢すべき生き物なんだ、こいつは。

 

 そうして、無駄に海綿体とミックスされた頭脳で事態の経緯を思考した結果、エロ犬は目をまん丸に見開いて。

 

「……ハッ、まさか、パコを愛してしまったこころは、拷問リョナエッチをすることで男の子に戻ろうとしているパコ!?」

 

 日本とブラジルくらいズレている、あまりにカスな解答を導き出していた。死ねばいいのに。

 

「早まらないで欲しいパコ! 絶頂はパコじゃなくて、こころがしないと戻れないんパコよ!」

 

 余計なお世話な上に、人の神経を逆撫でするのが相変わらず得意すぎる。思わず、口から気持ちが溢れた。

 

「──お前を殺す」

 

「???

 パコをTSさせるってことパコか?」

 

「殺害予告だよ」

 

「そ、そんなっ! パコが犯した悪行なんて、猥賂として山吹色の犯しを挿入したり、猥賂として袖の下をまさぐったり、猥賂として鼻の媚薬を送ったりしたぐらいパコ!!」

 

「普通に悪党なのやめろ」

 

 ロープをきつくすると、あふんと声を上げる。キモい。

 

「分かったパコ、分かったパコから! こころの欲求を言うがいいパコ、今ならヒロピンモノのエロ漫画だってあげちゃうパコよ」

 

「じゃあ、鈴にエロなカスを教え込まないで」

 

「エロなカス? ……チ◯カスかマ◯カスの知識という事パコか?」

 

「そういうところ!」

 

 逆さ吊りのままシェイクすると、エロ犬はブルブルと震え出した。まるで、スマホに通話が掛かってきた時みたいに。

 

「やめるパコやめるパコ! パコをバイブに品種改良して、一体どうするかパコか! ……もしかして、パコに欲求不満を解決して欲しいってパコと?」

 

「しね!」

 

 どこまでいっても、エロ犬はエロ犬でしかない。あまりに終わっている事実に絶望しつつ、何重にも巻かれていたロープを解き始めた。あんまりやり過ぎると、エロ犬が縛られる気持ちよさに目覚めてしまうかもしれないから。

 

 ……何でこんな心配、しなきゃいけないんだろ。本当にふざけてる、訴訟したら多分勝てると思う。

 

 

「そういう訳で、ただいマ◯コだパコ!」

 

「おかえり」

 

「野生にお帰り」

 

 少しは懲りれば良いのに、エロ犬は縛られた後も絶好調に鈴へカスな挨拶をしていた。鈴も鈴で、少しは嫌がればいいのに普通に挨拶を交わしている。ここで常識人なのは、悲しい事に僕一人だけだった。

 

「こころは青姦に憧れてるパコか。ちゃんと虫避けスプレーしないと、チ◯コもマ◯コも勃起するパコよ?」

 

「こころ、初めてのエッチはちゃんと家じゃないとダメ」

 

 何なら、鈴はエロ犬と結構仲良くなってる。友達は選ばなきゃいけない、その典型的な例。鈴はエロ犬を多分友達だと思っている、完全に面白い存在として気に入ってしまっていた。

 

「刺されて腫れるのを勃起とか言わないで、手が出そうになるから」

 

「手が出る……エッチな意味でパコね。なるほど、こころがパコを好きなのは、よく分かったパコ。でも、パコにも奥さんがいるパコからね。……許可をとって、3Pなら許してくれるかもしれないパコ」

 

「奥さんに去勢されないかな、お前」

 

「……もしかして、こころはパコではなくてパコのチ◯コ、パチンコに直接話しかけてるパコか?」

 

「話が分かる方にだけど、お前は脳みそか股間のどっちで思考してるの?」

 

「パコれるチ◯コの方パコね」

 

 道理で、話が通用しないはずだった。鈴、こいつはこういう奴なんだよとアイコンタクトすると、鈴も頷いてくれた。分かってくれたのかな?

 

「パコリイヌ、こころは男の子だから、出し入れする立場の方がいい」

 

 なんか違う!?

 そうじゃないよ、鈴!

 

「パコのお尻に挿入する気パコか!? そんなこと、アナルのせいで国難なのに、許される筈が無いパコ!!」

 

「いらない!」

 

 力強く穢らわしい物言いを否定すると、エロ犬は震え声で、それも本当に震えながら僕を見た。

 

「……ま、まさか、パコの奥さんに挿入する気パコ!? こころ、道徳心がNTR推進委員会と同レベルになってしまうなんて、狂っているパコ!」

 

「いらないって言ってるだろ!!」

 

 相変わらず、異世界人すぎて日本語を理解できていない。勢いのままに、素早く腰をヘコヘコさせながら僕ににじり寄って来てる。ゴミがよ……。

 

「そこまで性交を望むのなら、パコのオチ◯チンがこころのオマ◯マンの相手をするパコ」

 

「死んで?」

 

 微塵も望んでないのに、エロ犬は腰振りの速度をさらに加速させる。無意味に早くて、キモさも加速度的に上昇している。そのまま、ヘルニアになって床の上の住人になって欲しい。幽閉するから。

 

「パコが夜の騎士、ナイト(騎士)&(アンド)ナイト(夜)、つまりはギシアンナイトとして、こころに立ち向かうパコよ! これは、性器を賭けた決闘パコから、不倫セッ◯スじゃないパコ!!」

 

「政治家らしい言い訳」

 

「政治家の人に謝って、鈴」

 

「そうパコ、そこまでパコは女々しくないパコ」

 

「早く失脚して?」

 

 信じたくないことだけど、そういえばエロ犬も政治家を自称していた。国名からして終わっているから、こんなのでも当選できるんだ。革命でも起きて、キモくない国名に変わればいいのに……。

 

 

「そういうパコで、これから会議を始めようと思うパコ」

 

「どういう訳なの」

 

「アイスブレイクは十分ってこと?」

 

「流石は鈴パコ」

 

 鈴は最早、エロ犬翻訳機と化していた。意味のわからない文脈の言葉を、何故だかよく理解している。……僕のアイコンタクトは、分かってくれなかったくせに。

 

「こころ、どうしたの?」

 

「別に、ちょっとムッてしてるだけ」

 

 勝手に僕が拗ねてるだけだし、仮に思っていることを口にしても鈴が困るって分かってる。だから、ツンとするしかないだけ。……自分のことながら、子供っぽすぎる。

 

「鈴、こころはムラムラしてるパコよ」

 

「……そうなの、こころ?」

 

「イライラはしてるよ」

 

「生理パコね」

 

「お前を整理対象にしてやりたいよ」

 

 エロ犬は我関せず状態だけど、鈴はジィっと僕を見つめている。多分、どうしたのかって気に掛けてくれてる。……何か、そういう反応をされると、自分が凄く子供っぽい感じがしてくる。

 

「こころ、体調、大丈夫?」

 

「ごめん、鈴。えっと、その……」

 

「うん」

 

 優しい目をしてて、話してみてって鈴の目が言ってる。ちゃんと鈴の言いたいことが、目を通じて伝わってくる。僕は、ちゃんと鈴のことを分かってる。少なくとも、そんな気になれる。

 

「す、鈴が、僕より、えと。エロ犬のことを理解して、そうで……」

 

 でも、口に出さないと分かりあえっこないから。鈴の優しさに甘えて、どうにか恥を忍んで思っていたことを言葉にした。

 

 相当格好悪いこと言ってて、恥ずかしくて仕方ない。要するに、もっと僕を見て、構ってって鈴に言っちゃったも同然だから。俯いて、鈴の方をまっすぐ見れない。

 

 余計なこと、言っちゃったのかも……僕のバカ。

 

「……パコリイヌ」

 

「どうしたパコか?」

 

「こころ、何か可愛い」

 

「そうパコね」

 

 そっと、頭に鈴が手を置いていた。それから、ゆっくりと頭を撫でられる。よしよしって、まるで歳下の子を宥めるみたいに。それが、何だかとってもむず痒くて。

 

「……鈴」

 

「何?」

 

「……ありがと」

 

「うん」

 

 でも、やめてとは言い出せなかった。鈴の優しさが手に籠もってて、無下になんて出来そうになかったし。構ってって、自分から態度で示しちゃってたのもあって。

 

「……めんどくさくて、ごめん」

 

「うん、こころはちょっと面倒」

 

 僕の態度、あんまり良くなかった。そう思って素直に謝ると、鈴にそうだねと肯定される。……何だろう、ちょっと傷つく。

 

 そうじゃないよって、言って欲しかったのかな。もしそうだとしたら、僕って本当に面倒臭すぎる。前までは……男だった時は、こんなのじゃなかったはずなのに。

 

「女の子になってから、ちょっと変な気がする……」

 

「こころは元々そう」

 

 けど、そんな逃げ場さえ、鈴は塞ぎにかかってきた。イジワルかな?

 

「そんなこと、ないと思うけど?」

 

「噂されると恥ずかしいからなんて理由で、距離を置かれた」

 

 ……そうだけど、あれ? もしかして鈴、それ結構根に持ってる?

 

「嫌、だったの?」

 

「イヤだった、離婚するみたいな気持ちだった」

 

 無茶苦茶根に持ってた。言った時は、うんって素直に頷いてたのに。

 

「言ってくれれば……」

 

「私のこと好きなんじゃないかって揶揄われる度に、こころ真っ赤になってた。違うって、チワワみたいに否定してた」

 

 ジーっと、鈴が僕を見つめている。表情は変わらない、けどいつもなら目が何かを語りかけてくれてるのに、今は何だか読み取れない。透明色で、何かを隠すみたいな緑の瞳をしてる。

 

「……ごめん」

 

 答えに困ってまた謝ると、鈴は小さく首を振った。今日の鈴は、ちょっと難しい。

 

「こころが困ってたのも事実。誰も見てない所で、こっそり会いに行けば良かった。……こころは私のこと、嫌いじゃないから」

 

 でも、難しいけど、優しさは据え置きのまま。むしろ、鈴の方も僕のことが分からなくなって、困ってたのかもしれない。

 

 だから、さっき言ってた様に声を掛けることができなくて、少しずつ、ちょっとずつ疎遠になっていった。そう考えると、少し胸が痛い。僕の都合で、鈴のことを遠ざけてしまってたから。

 

「その……鈴、寂しかったの?」

 

「……うん」

 

 頷かれて、そうなんだと呟く。

 胸に、モヤっとした何かがざわめく。

 

「ごめん」

 

「良い、今はお話できてるから」

 

 複雑な気持ちで、複雑な心境。

 

 ただ、ハッキリと自覚できているのは、もうちょっと考えてから行動する方が良かったってこと。鈴に寂しいと言われて、胸に忍び寄ったのは、鈴を悲しませてしまったという後悔だったから。

 

「こころは、寂しくなかった?」

 

「それは……」

 

 言葉に迷う、僕は望んで離れたから。鈴、どうしてるかなって思うことはあっても、偶に連絡するくらいだったし。元気ってスマホに返信が届くのを確認して、それだけで満足してた。それ以上、確認しようとしなかった。多分、鈴と僕の間には感じられるくらいの温度差があった。

 

「そっか」

 

 察して、鈴は寂しそうに言葉が溢れた。胸が、ギュッと締め付けられる。寂しいだとか、切ないだとか、そんな気持ちにさせたくなんてなかったから。

 

 自分の恥ずかしいって気持ちと、鈴が寂しいって気持ち。どちらを優先するかなんて、考えるまでもない。少なくとも今は、そう思っている。

 

「鈴、これからも……仲良くしてくれる?」

 

「私は、ずっと仲良くしてたいよ、こころ」

 

 鈴はやっぱり無表情だけど、指で口角を上げて笑みを作ってくれた。それに、照れ混じりの笑いが出てくる。何と言うか、最初に感じていたモヤモヤがすっと晴れた感じ。そもそも、何で僕はエロ犬相手に嫉妬しなきゃいけないのか。ふと、正気に返るとバカバカしい悩みすぎた。

 

「うん、これからもよろしくね、鈴」

 

 何となく手を伸ばすと、そのまま鈴は僕の手を握って握手する。何度も何度も、軽く繋いだ手を振り続けて。

 

女の子でも、こころなら──

 

「鈴?」

 

「……何でもない」

 

 特に喧嘩をしてたわけじゃないけど、仲直りした気分。少なくとも、僕はスッキリした気持ちになれていた。そんな中で、鈴はエロ犬を拾い上げて。

 

「パコ?」

 

「パコリイヌには感謝してる。こころは大変で、許してあげられないかもしれないけど」

 

 頭を撫でられ、オホッって声を上げてるのにも関わらず、鈴は気にしたりせずにいて。

 

「私とこころを、また繋げてくれたから」

 

 それが、鈴がエロ犬に甘い理由なんだ。言われてみると、鈴の側からすればそうなのかもしれない。僕にとっては女にしてきた変態でも、鈴にとってはそうでない。確かに、事情を聞くと納得できちゃう。……僕も、エロ犬に優しくしてあげたほうが良いのかな。

 

 

「つまりパコは、鈴とこころの関係を着床させた精子ってことパコ?」

 

「そう、流石は政治家」

 

「パ~コパコパコ、気分が良いパコ! こころと鈴の新婚初夜には、パコを呼ぶと良いパコよ!」

 

「結婚式には呼ぶ」

 

 やっぱり、優しくしなくてもいいや。あと、勝手に結婚しようとしないで、鈴……。

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