トレセン学園職員の憂鬱   作:フェザーンの人

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ノリと勢いだけの産物なので、許して欲しい

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でも内容はアレなんだ
すまない


 case4 サクラバクシンオー

「ちょわっ!

トレーナーさんっ、何故私を行かせてくれないのですか!」

 

「そのテンションで突撃したらまずいだろうが!

あっちは仕事中なんたぞ!?」

 

「むむむむ

しかし、皆の委員長としてはブルボンさんやライスシャワーさんに負けるわけにはっ!」

 

「路線が違うからな!?

あっちはクラシック路線!こっちはマイル・短距離路線だぞ!

流石にスタミナが保たんだろう!」

僕は担当であるサクラバクシンオーの片手を握って、なんとか突撃しようとしている彼女を止めていた

 

トレセン学園事務所

いや、正確には事務室なんだがその広範な仕事内容から、事務所という認識をされているトレセン学園きっての魔境の一つ

 

 

学園の守り手 秋川やよい

陰の実力者 駿川たづな

そして

 

全力全壊の室長

 

 

誤字ではない

学園に生活する彼女達の生活を守る為ならば、URAにすら喧嘩を売る狂戦士(バーサーカー)と先輩のトレーナーから聞いている

 

 

その室長のいる事務室で大騒ぎする?

そんな無謀な事、誰が出来ると言うのか?

 

あの気性難で有名なシリウスシンボリやキンイロリョテイですら、事務室ではきちんとした態度になると聞くくらいだ

想像するのも恐ろしい

 

 

勿論バクシンオーの気持ちも理解できる

何せ室長は多くのウマ娘達を見守り、そして見送ってきた人物でもある。カブラヤオーとテスコガビー両名による『恐怖の逃げ世代』の時には既に事務室の一員だったと聞く

 

割と癖の強いトレセン学園のウマ娘達

今でこそやっていないそうだが、5年ほど前までは生徒やトレーナー向けの相談窓口の責任者だったそうだ

嘘か本当かは定かではないが、あのカブラヤオーの戦法を決定づけたきっかけを作ったとも

 

先行、逃げに高い適性のある彼女としては色々聞きたくなるのは仕方ないどころか寧ろ当然とも言えるだろう

 

 

とにかく彼女を落ち着かせないと

 

 

 

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「なるほど

それで私に話を聞きたいと?」

 

「はい、室長さんはカブラヤオー先輩と仲が良かったと聞きました

私は逃げを得意としていますので、ためになる話が聞けるのではないかと思いました!」

室長の言葉にバクシンオーは元気よく答える

その様子を僕はハラハラしながら見守っていた

 

「…彼女はそうだね

とにかく人の中に埋もれるのが嫌だった。入学式や何かのイベントなどでも人混みの中にいると顔色を悪くして、落ち着きがなくなっていた」

室長の話を私と彼女は静かに聞く

当時を知る関係者は前理事長も含めて殆どの人がその職を離れており、この様な話を聞くのは恐らく僕達が初めてなのだろう

 

「体力も根性もあった

だが、バ群に飲まれてしまっては彼女に勝ち目はない

…当時あまり逃げは良い戦法とされていなかったから、トレーナーが着くまで指導を担当していた方も彼女に先行型のトレーニングを課していた

君も知っていると思うが、逃げと先行では似ているが違うだろう?」

 

「逃げは基本的に相手から逃げ続ける為にそもそも抜かれた時点でほぼ終わり、でしょうか?先行ならばそこから競り合ったり抜き返す事も出来るでしょうが」

 

「…まぁ当時の私は新人でしかも君達の走りについても無知だった。だからつい聞いてしまったのさ

『前だけを走り抜けたらどうか?』って」

 

「そんな机上の空論じみた事を口走った私にも彼女は怒る事なく、真剣にそれを考えていたよ

そして模擬レースで逃げ。…いや、大逃げを繰り出して逃げ切った」

 

「凄かったのではないでしょうか?」

 

「凄かったと思う。少なくとも彼女のトレーナーになった人はあのレースで彼女に魅せられた

…全てを彼女に賭けて良いと思わせる程に」

室長は切なそうな顔をして目を閉じる

 

「元々カブラヤオーのトレーナーになった人物はどちらかと言えば、トレーナーとして相応しくない人物と見られていたね」

 

「その様な方がカブラヤオーのトレーナーになれるものなのですか?周りが止めるか認めないかしたと思いますが」

思わず疑問を口に挟む

 

「彼女は模擬レースであっても必死に歯を食いしばって走っていたんだ。どうやらその姿を見て漸く自分の中でトレーナーの意味が分かったと言っていたよ

…長い、長い回り道だった。そう言っていた」

 

「カブラヤオー先輩の走りがトレーナーさんの人生すら変えたのですね」

彼女は室長の言葉に目を輝かせていた

 

 

 

 

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「君が彼女のトレーナーを?」

 

「…はい。虫の良い事だと理解しております

ですが、この通りです!」

 

「…何故そこまでする。君は今までウマ娘達と契約はしても、その実トレーニングには一切関知していなかった

それとも何かね?彼女が金の卵と知って」

 

「…これを読んで頂ければ」

 

「…これは」

理事長が手渡されたのは彼女の、カブラヤオーの今後の希望ローテーションとそれに対する対策やトレーニングについての詳細なメモや走り書きに施設の利用申請書

担当ウマ娘に対して、精々出走レースについての打ち合わせしかしていない事で有名だったこのトレーナーらしかぬもの

 

「私は彼女を支え、そしてトレーナーを引退したいと思っております」

更にその申請書と共に辞表が添えられていた

 

 

「…分かった。そこまで言うのなら」

 

「…ありがとうございます」

 

「ただし、今の言葉に偽りがあると見れば」

 

「その時は如何なる処分を受ける覚悟です」

理事長の言葉にそう真剣な表情で返答したトレーナー

 

 

 

----

 

 

「彼女のトレーナーは言っていたよ「私達トレーナーも教育者であり、教え子を育てながら、教え子に育てられている」と」

室長はそう笑うと

 

「少し待っていると良い」

そう言って、自身の机に向かい何かを取り出していた

 

 

「…参考になるかどうかは分からない

が、何かの足しにはなるだろう」

 

「こ、これはっ

室長さん良いのですかっ!」

 

「勿論君のレース人生が終わったら返しておくれよ?

これは私にとっての宝物なのだから」

 

「…ありがとうございます」

バクシンオーに渡されたものを見て、僕は室長に頭を深く下げる。彼女もまた頭を下げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サクラバクシンオー

 

ミホノブルボンとライスシャワーと同時期に活躍し、短距離・マイル路線において活躍をしたウマ娘

『短距離の鬼』とも呼ばれる圧倒的な成績を残した

 

短距離レースでありながら、高松宮記念において2着と5バ身離すという圧倒的勝利を始めとして、その圧倒的な逃げはかつて活躍した逃げの巨頭の1人カブラヤオーの影を見た者も多い

カブラヤオーの所謂『破滅逃げ』程では無いにせよ、彼女を倒さんとした数人のウマ娘がレース中に故障してしまう事態が発生

だが彼女達は故障しても勝者であるサクラバクシンオーを讃える事は忘れなかった

 

ある記者からの取材においてカブラヤオーのレースの様な感じを受けた人も多いのでは?

と聞かれた彼女は

 

「それは光栄な事ですね!カブラヤオー先輩とは路線も世代も異なりますが、私達よりも先に走り終えたのですから!」

と満足そうな表情で答えたという

 

 

なお、世間には知られていないが彼女はいつも古びたメモ帳を大切に持っていたとされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




秘密メモ

『カブラヤオーのトレーニング日記』
速さ+20、スタミナ+15、パワー+10、根性+25


バクシンオー可愛いよバクシンオー
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