ゴジラ ギャオス アンギラス 大怪獣総進撃   作:千生鉄斗羅

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先日・・・というかゴールデンウィークに、『ガメラ 大怪獣空中決戦』と『ガメラ2 レギオン襲来』のBS12で放送されてたのを録画したやつをやっと観まして、書きたくなっちゃいました。てへ(←似合わねーからやめろ)。


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  ヤマト朝廷というものは、皆様もご存知であろう。始まりは諸説あるが、ヤマトタケルや神武天皇にルーツを持つとされている。

 彼らは、突如このヤマトに現れた、三体の巨大な獣──怪獣を倒し、護国聖獣として崇め、奉った。

 それから幾百の時が過ぎ、1954年。人類は、史上初めて、ゴジラと遭遇する。東京を蹂躙したそれは、芹沢博士が開発してしまった悪魔の兵器、オキシジェン・デストロイヤーによって、彼もろとも葬り去られた。

 これから始まるのは、それからおよそ70年後。2018年に起こった、日本全土を震撼せしめた出来事の記録である・・・

 

***

 

「う、う〜ん、ふぁ・・・」

 もぞもぞと布団が動く。現在時刻は午前五時。彼女の標準的な起床時間である。

 彼女は、すぐに白装束に着替え、裏の井戸に向かった。井戸水を汲み上げ、頭から被る。

 それから、神棚に手を合わせ、祝詞をあげる。これが、モーニング・ルーティーンなのである。

『次のニュースです。天文台の発表によりますと、隕石が地球に向けて接近しているとのことです。直径は、およそ一(キロメートル)。予想落下地点は、太平洋と考えられております』

「・・・物騒だなー。地球を逸れてくれるといいんだけど」

 テレビのニュースを聞き流しつつ朝食をとり、制服に着替えると、最後に勾玉のペンダントを身につけた。幼い頃に、拾ったものだ。一度交番に届けたが、持ち主が名乗り出なかったため自動的に彼女のものとなったのだ。それ以来、彼女はこれを肌身離さず持ち歩くことにしている。

「いってきまーす!」

 そういって、彼女は学校に向かった。

 

 佐世保柚木は、伝説や神話、怪異が大好きな女子高生である。

 今日も、休憩時間には面白い伝承を求めて書物を読み漁っている。その題名は、『護国聖獣記』。伊佐山英二という人物によって著された本である。

「うーん、やっぱりイサヤマ先生の本は面白いな」

 もちろん、それが興味深いという意味なのは、いうまでもないだろう。彼女は、イサヤマの大ファンなのである。バイト代で購入する本は、大抵が彼の著作物である。イサヤマは、晩年、自らが没する直前まで、護国聖獣について研究を行っていた。それを引き継ぐ物好きは、かなりの少数派である。

「おーいユズキ、お昼ご飯食べないのー?」

「あ、ごめん! ついつい夢中になっちゃって・・・。今行くよ、エボシ!」

 そんな彼女を呼んだのは、白岳烏帽子。ユズキの同級生で、幼馴染だ。ユズキと違って、あまり神話などに興味はない。ただし、妖怪だけは好みが合う。もっとも、彼女の場合、イサヤマではなく水木しげるの大ファンなのだが。

「ユズキ、それ何回め? もうかれこれ十回は見てる気がするんだけど」

「あっはは、多分そうかも。私、こういうのが大好きだから」

「それも私物なんだからねー。バイトOKとはいえ、どこからお金が出てくるのやら」

「お給料がいいからね」

「えっマジで!? いいなー、後で教えてよ」

 思わず、エボシは身を乗り出す。高校生にとって、金銭は死活問題なのだ。ただし、多くの女子高生は化粧品や衣服などにお金を使うが、彼女らの場合は神話や妖怪、伝承に関する本にお金を溶かしていくという違いがある。

 こうして、食事を終え。ユズキは、護国聖獣記に意識を戻した。

「うーん、フィールドワークできたのは庵義良主(アンギラス)のとこだけなんだよなー。牙鳴須(ギャオス)魏怒羅(ギドラ)も遠いんだよなー。牙鳴須(ギャオス)なんて五島列島だよ!? なんだってまたヤマトはあんな辺鄙なところに封印したんだろ。せめて、本州にしといてよ・・・」

 そんなことを言っても、イサヤマは何も言ってくれない。というか、話しかけようがない。

 その代わりに、何者かの咆哮が聞こえてきた。それと、誰かの悲鳴を。

「・・・は?」

 外を双眼鏡で見てみると、そこには、アンキロサウルスのような巨大生物がいた。すぐに、ユズキは護国聖獣記の挿絵を見る。

「・・・あれって、まさか、庵義良主(アンギラス)? しかも、なんか怒ってるっぽいけど・・・」

 足元に視線を移してみると、そこにはバイクの残骸が転がっていた。改造やチャラチャラした塗装が施されており、所謂珍走団の類であろうことは容易に想像できた。

「・・・ンの、馬鹿どもがーッ!」

 思わず、ユズキは叫んでしまった。大方、珍走団が封印の祠を破壊したのだろう。それで、庵義良主(アンギラス)が怒った。そう考えるのに、時間はかからなかった。

「えっちょ、何!? ねえユズキ、何がどうしてこうなったの!?」

「バカが庵義良主(アンギラス)をキレさせた! 多分今の庵義良主(アンギラス)は見境ないから、できる限りとっとと逃げて!」

「いやどこへ!?」

 幸い、庵義良主(アンギラス)にとってユズキたちの高校は眼中にないようだった。しかし、いつ向かってくるかわからないため、こうして警告したのである。クラスメートたちも、これはただ事ではないと理解したようだ。

「どこでもいい、あの聖獣が見えなくなるまで!」

 ユズキは、そう叫ぶや否や、窓から飛び降りた。校舎の二階とはいえ、高さはおよそ六(メートル)。普通であれば骨の一本は持っていかれそうではあるが、鍛えているので問題はなかった。読者諸君は、決して真似をしないように。

 ユズキは、必要な荷物を持って飛び降り、そのまま駐輪場へ走った。何のために? 庵義良主(アンギラス)のもとへ向かうためだ。

──なんとか、鎮めることができればいいんだけれど!

 彼女は、別に巫女の家系であるとかそういうわけではない。しかし、何があってもいいように、呪術的な儀式については一通り知識を得て、訓練しているのだ。毎朝井戸水をかぶるのは、その一環である。もっとも、庵義良主(アンギラス)相手にそれができるかと言えば、否だが。

 スーパーカブを叩き起こし、ユズキは校門を出る。

庵義良主(アンギラス)・・・! 聖獣が目覚めたってことは、()()()()()()か? だとしたら、かなり厄介だぞ・・・」

 数分で、ユズキは庵義良主(アンギラス)のもとにたどり着いた。そこで目にしたものは、脳脳とスマホを掲げてインスタグラムに興じる若者の姿だった。その背後では、庵義良主(アンギラス)が暴れている。いや、それだけではない。庵義良主(アンギラス)を、呉爾羅(ゴジラ)と勘違いし、「ゴジラ発見www」などとTwitterに投稿する者までいるのだ。

「・・・は?」

 ユズキは、呆れ返った。あの姿のどこが、呉爾羅(ゴジラ)だというのだろう。イサヤマの書物を読み進めるうちに、ユズキは呉爾羅(ゴジラ)の存在も当然知った。たった70年前に現れたことから、白黒とはいえ写真も残っており、その姿はまさに怪物。愛嬌などあるはずもなく、恐怖の象徴という単語が似合う存在だ。当然、その被害についても知っている。水爆実験によって生まれてしまった、存在してはならない存在──それが、呉爾羅(ゴジラ)だ。一方の庵義良主(アンギラス)は、確かに、一見するととても険しい顔をしている。だが、その奥にはどこか愛嬌じみたものがあり、優しさを内包しているのがわかる。だが、決して悪を許すことはないという正義感も、同時に持ち合わせている。

──なんでそれがわからないんだ!

 ユズキは、叫びたい衝動に駆られてしまった。そして、叫んだ。

「お前たちは、揃いも揃ってバカしかいないのかッ! 何の知識も知恵も教養もない者どもが、前に出るなッ!」

 その時、ユズキの目は怒りに満ち満ちていた。

 それでも、若者──馬鹿者どもの行動は変わらない。

 舌打ちをすると、ユズキは庵義良主(アンギラス)に最接近した。

庵義良主(アンギラス)ッ!」

 その声に、庵義良主(アンギラス)は反応した。動きを止め、ユズキを見つめる。

──これが、護国聖獣・・・! なんて、迫力・・・!

 一瞬、その気迫に呑まれそうになってしまう。だが、何とかそれを振り払った。

「今は、貴方が出るべき時ではないはず。それは、貴方だってわかっているでしょう!?」

 庵義良主(アンギラス)は、じっとユズキを見つめている。

 彼女は、勾玉を掲げた。なぜかはわからない。ただ、勾玉が熱くなったことから、本能で察したのである。これは、鍵なのだと。

 すると、勾玉を通して庵義良主(アンギラス)の思念が伝わってきた。

──オマエは、誰だ?

「私は、ユズキ! 佐世保柚木!」

──俺に何の用だ?

「まだ貴方が目覚めるべき時ではないから、大人しくしていてほしいってことを伝えに!」

──うむ、確かに時期尚早ではあろう。だが、どうやらそこの武士(もののふ)らは、そうはいかないようだ。

「え?」

 ユズキは、はっと後ろを見る。そこには、警官が並んでいた。

「警察・・・!」

 彼らは、ユズキの方を伺っている。彼女が退けば、すぐさま庵義良主(アンギラス)を撃つつもりだ。

──狙いは、何なんだろうな? あの筒も、興味がある。

「多分、貴方が狙い。あれで、貴方を殺そうとしてるんだと思う。・・・あんなので、どうするんだって話だけど」

──フッハハハハ! 何だそれは、滑稽にも程がある! もしや、あやつらは俺を封じた方法を、知らんのではあるまいか!?

「・・・十分、あり得るかも。イサヤマさんの研究は、世間では空想の絵空事って言われてたから・・・!」

 と、その時。一つの人影が、ユズキの方へ向かってきた。

「ユズキ! 一体何を・・・ってええデカ!」

「エボシ」

──何だこいつは?

「私の幼馴染。・・・ねえ、大丈夫なの? 警察の人たちがいるけど・・・」

「大丈夫大丈夫! 今は、ユズキが人質みたいなものなんでしょ? 人聞きは悪いけど」

 ユズキは、目を見開いた。

庵義良主(アンギラス)を、悪いものだとは思ってないの・・・?」

「うん。だって、ユズキ、いつも話してくれるじゃない。護国聖獣のこと。そしたらさ、まるで神様の側面みたいな気がしてさ。だから、そんなニンゲンにとって悪いもの、って風には考えられなかったな」

「・・・そっか」

 ユズキは、再び庵義良主(アンギラス)に向き直る。

庵義良主(アンギラス)、今はまだ、目覚める時期じゃない。その時まで──」

──フン、皆まで言うな、ユズキよ。いいだろう、その時までは、俺は自らをこの山に戒めようではないか。

 そう思念を残し、庵義良主(アンギラス)は大地に沈んでいった。数秒ほどすると、アンギラスは完全に地中に姿を消した。

「・・・ああ、鎮められてよかった・・・」

 へろりと倒れ込むユズキをエボシが支えた。

「あー、ちょっと君たち、交番で話を聞かせてもらって大丈夫かな・・・?」

 そこに、一人の警官が声をかけた。若い男である。名を、田ノ浦勝海という。

「あー、確かカツミさんでしたっけ。ユズキ、どうする? ・・・って、ありゃ?」

「ん? ・・・ああ、こりゃあ寝ちゃってるな。じゃあ、交番に連れてって、そこで休んでもらうってことでどうかな。そこそこ近いし」

「じゃ、お言葉に甘えて。ユズキには、事後承諾取っときますよ」

 エボシたちは、パトカーで交番に向かった。

 

「えーと、それじゃあユズキちゃん。君は、どうしてあんなところに? というか、あれは一体何なんだい? ゴジ──」

「貴方の目は節穴ですか何をどう見ればあの姿が呉爾羅(ゴジラ)に見えるというんですかいいでしょうだったら貴方の目ん玉をくり抜いて本当に節穴にしてやりますよ」

「わーストップストップ! 落ち着いてユズキ、はいひっひっふー」

 ラマーズ法で、エボシはユズキを落ち着かせようとする。ここは、村の交番。復活したユズキは、エボシと共にカツミから事情聴取を受けていた。もちろん、きちんと録画してある。不正を防ぐためだ。

「あー、ごめん。あれは、確かにゴジラじゃなかった。でも、亜種の可能性だってある」

「・・・考えたことなかった。そうだ、たとえばヒトとゴリラだって、大きな目で見れば亜種みたいなもの。二足歩行と四足歩行が亜種とは思えないけど、見た感じだとどっちも爬虫類っぽいし・・・。いや、でも呉爾羅(ゴジラ)と見間違えるなんてそれこそあり得ない」

「それは、どうして?」

呉爾羅(ゴジラ)はケロイド状で真っ黒の皮膚。庵義良主(アンギラス)は、赤っぽい皮膚にトゲトゲの背中。これで近縁なんて、考える方がどうかしてる」

 すると、おずおずとカツミが質問する。

「・・・そもそも、アンギラスって、何?」

 その瞬間、ユズキは信じられない信じられないものを見る目をした。正確には、ノミやゴキブリなどを軽蔑する目で、カツミを見た。

「えっなに怖い」

「あ、ごめんなさい。ちょっと信じられない文を聞いたもので。それで、庵義良主(アンギラス)が何か、ですって?」

「うん。ちょっとピンとこないんだよね」

 ユズキは、天を仰いだ。

「ああ、そうだった。イサヤマ先生の研究は、空想としか捉えられてなかったからなー・・・。ちゃんと根拠となる資料もあったってのに・・・」

「そもそも、そういうのって日本史じゃあやらないからなー。そうでしょ、エボシちゃん」

「うん、考えてみれば、ゴジラの写真も載ってなかった」

 ユズキは、ガンと机に頭をぶつけた。感情がやり場を失った時に、よくする行為である。「あんまりだァーッ!」と泣いて喚くことで落ち着くキャラクターがどれだけマシかがよくわかるだろう。

「本当に、教育がどうかしてる! 広島の原爆だったら、毎年小学生は八月六日に登校して平和学習するし、資料館だってある。ゴジラにはそれがない! ちょっと東京の学校についてもネットを駆使して調べてみたけど、ゴジラについてなんかちっともやんない。やったとしても、教科書三行分くらい!首都が危機に晒されたってのに、何なのこの扱いは!」

 そして、すぅーはーと深呼吸した。

「よし落ち着いた。それじゃあ、この『イサヤマ先生スクラップブック』を使って、簡単に解説していきましょうか」

 というわけで、ユズキの護国聖獣解説、スタートである。

 

「それじゃあまずは、護国聖獣とはなんぞや? というところから話していこうか。まあ、簡単にいうと、ずっとずっと昔にヤマトを襲い、当時の朝廷に倒されて、神に祭り上げられた存在。それが、護国聖獣だね」

「・・・ってことは、元々は、ゴジラに似たものだった、ってことなのか? 姿形って意味じゃなくて」

「そう。でも、ヤマト朝廷の時代は、オキシジェン・デストロイヤーなんて作りようもなかった。その代わり、当時は呪術とかそういう、"最近の若者"が見たら『インチキ乙』とかほざきそうなものが溢れていた。ちょっと後には、大魔神と呼ばれる埴輪の存在も確認されてるしね。ちなみに、この大魔神、残念ながらその御姿を拝することはもうできないんだけど、イサヤマ先生の研究では、その体を作るのに聖徳太子が関わってたとも言われてるんだ」

「聖徳太子って、あの法隆寺の? 確か、ジライヤの磁雷神だったっけ」

「エボシちゃん、よく知ってるね・・・」

「そう、その通り。その元ネタが、阿羅羯磨(アラカツマ)だと言われてるんだ(※本作独自の設定です)」

「へぇー」

「へぇー」

「2へぇー・・・。まあいいや。話を戻して、この護国聖獣というのは、全部で三体いるんだ。そのうちの一体が、庵義良主(アンギラス)。彼は、肉弾戦が専門だね。同じ土俵(ステゴロ)で戦ったら、多分最強。地底を潜航することもできるから、だいぶ敵に回すと厄介だね」

「確かに。さっきのあれは、探すのに骨が折れそうだ。金属探知機にも反応しないだろうし」

「まさに、現代の天敵って感じだね」

「次は、牙鳴須(ギャオス)。古文書では、口から光のようなものを発射して、どんなものでも切り裂くことができたって書いてあるね。描写から察するに、超音波みたいなものだって考えられてる。私も実際にその古文書を読んでみたんだけど、確かにこれは"超音波メス"と言って過言じゃない代物だね」

「医療に活かせたら、もっと多くの怪我人も救えるだろうか」

「確かに。超音波って、金属じゃないし」

「実用化できるといいね。さて、牙鳴須(ギャオス)の姿はどんなものかというと、怪鳥っていうのが一番しっくりくる。翼竜を彷彿とさせる見た目で描かれてるね」

「・・・どれくらい速いんだい?」

「ええと、資料には、『牙鳴須(ギャオス)が飛ぶと、耳が潰れたものが続出した』というふうな記述があったので、まあ音速は超えてるでしょう」

「速・・・ッ!」

「戦闘機よりやばいじゃん。自衛隊勝てるかな・・・」

「うーん、超音波メスを使われなかったらワンチャン・・・と言いたいところなんだけど、残念ながら護国聖獣は現代兵器じゃ倒せない。ニンゲンが、ニンゲン自身が。手を下さないと、絶対に倒すことはできないよ。事実、かつてヤマトが聖獣を封じたときも、ニンゲン自身の手で封印に漕ぎつけたというからね」

「それは、刀なんかを使った、ってことか・・・。今じゃ、できそうもないことだな」

「・・・? ああ、銃刀法か」

「嫌な時代だね。さて、最後は魏怒羅(ギドラ)。見るからに強そうな見た目でね、三つの首に黄金の体。さらに、翼まで持ってる」

「ドラゴンだー!」

「実際、龍神伝説のモデルになったからね。さて、そんな魏怒羅(ギドラ)は、やっぱり飛べる。その武器は、口から吐く稲妻。古文書では、『魏怒羅(ギドラ)の吐いた稲妻は、如何なるものをも引き寄せる』というふうに書いてあったから、多分これは"引力光線"と言っていいだろうね」

「速さは?」

牙鳴須(ギャオス)と違って、そんなに速いってわけじゃないらしい。けど」

「けど?」

「それでも、『轟音が辺りに響いた』とあるから、在日米軍の戦闘機くらいはあると考えていいだろうね」

「よくもまあ朝廷はこんなものを封印できたね・・・」

「そうなんだけど、その方法が、実はどんな資料にも明記されてないんです」

「どう言うことなの、ユズキ?」

「一応、『銀の鎧の巨人が、ヤマトに現れし獣を下した』と言うふうな記述があるにはあるんだけど、それ以外の具体的な情報が一切ないんだ。だから、イサヤマ先生もこればっかりは匙を投げてる」

「ということは・・・」

「うん、これは何者かにとって都合の悪い事実だったか、もしくは口にしてはならないほど神聖なものだった可能性がある」

「陰謀論だねー」

「そこうるさい。というわけで、大雑把な解説は終わりだね」

 ユズキは、解説を切り上げた。

「でも、アンギラスの近くにはバイクの残骸があったというし、血痕もあったけど・・・」

 カツミが、質問した。彼の疑問は尤もだ。護国聖獣というのなら、どうして人を殺すのだろう。実に、警官らしい発想である。

「だって、護国聖獣が護るのは、ヒトじゃないから」

 窓を開け放ち、空気を入れ替える。

「彼らが護るのは、文字通りの"クニ"。山や川や森。そういったものたちを、護る存在なんだ」

 

***

 

「・・・ん?」

 灯台から、太平洋を見ていた青年は、異変を感じた。彼の名は大山浩二。趣味は、夜風に当たりながら海を見ることだ。今夜も、そうやって海に思いを馳せていた。

 しかし、不自然なことが起こった。

 波が、おかしいのである。まるで、海中を何かが進んでいるかのような・・・ 

 それは、間を置かずして確信に変わった。暗いのでよく見えないが、灯台の光が当たったことで、その輪郭が見えたのだ。その姿はまさに──

「ああッ! ゴ、ゴジラだ・・・ッ!」

 1954年に、東京を火の海に変えた、ゴジラそのものであった。

 ゴジラは、咆哮をあげた。

「う、ああッ!」

 思わず、浩二は逃げ出した。無理もない、それが生存本能というものだ。

 しかし、そんなことでゴジラは止まらない。

 バチバチと背鰭が光る。

「いやだ、死にたくない! 死にたくない!」

 ゴジラは、放射熱線を発射した。灯台のある港町は、跡形もなく消え去ってしまった。当然、大山浩二も死んでしまった。

 そして、ゴジラは日本に上陸した。

 

***

 

 港町消滅──。その報は、すぐさま日本中を駆け巡った。各地の新聞は、一斉に朝刊でそれを報じた。

 ユズキも、新聞を読んで知った。

「・・・」

 絶句した。

 下手人については書かれていなかったが、放射線の痕跡が残っていたというところから、誰が──いや、何がやったのかは想像がついた。

呉爾羅(ゴジラ)・・・」

 恐るべきことが起こってしまった。ついに、日本に悪夢が再来したのだ。

 そして、理解した。護国聖獣庵義良主(アンギラス)が覚醒したのは、このためなのだと(直接のきっかけは、珍走団であろうが・・・)。

 今日は休日であり、ユズキは和装で過ごしている。

「確か、庵義良主(アンギラス)は・・・」

 以前庵義良主(アンギラス)が潜った、交番付近の地に、ユズキはスーパーカブで向かった。

 勾玉を掲げ、叫ぶ。

庵義良主(アンギラス)──! 呉爾羅(ゴジラ)が、呉爾羅(ゴジラ)が来た!」

──やはりか! 俺が覚醒(めざめ)るのはもう少し後だと思ってはいたが、それが今だ! して、呉爾羅(ゴジラ)は今どこにいる?

「ニュースによると、日本海側から灯台の港町に上陸した、って・・・! そして、それはこの新潟で、だから呉爾羅(ゴジラ)は、もうすぐここに来る!」

──なに!?

 その言葉通り、ユズキの耳に、空をも震わせる強大なる咆哮が聞こえてきた。

「これが──」

 それは、山あいから姿を現した。まるで、最初から獲物を見定めていたように。

 庵義良主(アンギラス)も、浮上を開始した。

 それは、黒目を持っていなかった。その代わりというべきか、真っ黒でケロイド状の皮膚を持つ。背中には、三列の背鰭を持っている。そう、それこそが──

「──呉爾羅(ゴジラ)

 正解だ、と言わんばかりに、呉爾羅(ゴジラ)は咆哮をあげた。

 庵義良主(アンギラス)も、歓迎するが殺す! という意思を持って雄叫びをあげた。勾玉は、熱を増した。

 先手を打ったのは、庵義良主(アンギラス)だ。体を丸め、大回転しながら呉爾羅(ゴジラ)に突撃する。庵義良主(アンギラス)の必殺技の一つ、暴竜怪球烈弾である。

──!

 しかし、その一撃では、呉爾羅(ゴジラ)にダメージを与えることはできない。呉爾羅(ゴジラ)の肉体は、G(ゴジラ)細胞によって構成されている。これは、生物の埒外にある遺伝子を持った細胞である。少しの傷であれば、受けた瞬間に再生する。『ゴジラVSデストロイア』では、デストロイアに切断されても瞬時に再生していたが、あれは体内炉心の暴走の影響を受けたものであり、本来であれば数時間を要するものである。

 今回のケースでは、庵義良主(アンギラス)の今の一撃は、人間でいえば蚊に刺された程度の傷だ。G細胞の効果もあり、ダメージは文字通りなかったことになった。

「どれだけ規格外なの・・・」

 そう呟きつつ、ユズキは呉爾羅(ゴジラ)との対話を試みる。勾玉を掲げ、思念を受けようとするが。

「・・・!」

 呉爾羅(ゴジラ)から聞こえてきたのは、

 

 

──殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎

 

 

 負に支配された思念だった。

「・・・! これじゃあ、鎮めようにも鎮められない!」

 ユズキは、護国聖獣の存在から、「怪獣とは、性質は違えど本質は似たようなものである」と言う考えを持っていた。だから、呉爾羅(ゴジラ)も護国聖獣のように意思疎通ができると思っていた。

──認識が甘かった・・・! そもそも、呉爾羅(ゴジラ)と護国聖獣は、生まれからして性質が違うんだ・・・!

 庵義良主(アンギラス)呉爾羅(ゴジラ)の方を見ると、庵義良主(アンギラス)が劣勢に立たされていた。何度も蹴り付けられ、ボロボロになっている。対する呉爾羅(ゴジラ)は、当然のように無傷だ。

庵義良主(アンギラス)・・・!」

 そこまで考えて、庵義良主(アンギラス)とは思念が繋がっていないことに気づいた。

──まさか、ダメージを共有しないために・・・

 直感でそう感じた。その意味が、ユズキにはわからなかった。

 見ると、呉爾羅(ゴジラ)の背鰭がスパークしていた。これも直感で、何かが起こることを感じた。その何かは、庵義良主(アンギラス)に向かうであろうことを嫌でも感じさせる。

「逃げて・・・!」

 その瞬間、呉爾羅(ゴジラ)は放射熱線を発射した。

 襤褸襤褸になった庵義良主(アンギラス)は、それをまともに食らってしまった。

 庵義良主(アンギラス)は、最期の咆哮──断末魔の咆哮をあげた。そのまま、庵義良主(アンギラス)は粒子と化した。

庵義良主(アンギラス)──ッ!」

 慟哭するユズキをよそに、呉爾羅(ゴジラ)は勝利の雄叫びをあげた。

 そして、呉爾羅(ゴジラ)は、東京へ進撃を開始した。

「私には、何もできなかった・・・ッ!」

 ユズキは、悔しさで崩れ落ちた。

 

***

 

 五島列島・姫神島。夜、物音はほとんどない。

 一隻のボートが、近づいてきた。乗船しているのは、若者数名。彼らは、肝試しのためにここに来たのである。その内容は、山奥に行って、石を小動物にくくりつけて近くの川や湖などに落とすこと。彼らは、悪辣な集団だ。

 山奥までは、難なくたどり着けた。この姫神島には、かつては集落があった。しかし、高齢化などの影響で、すでに島民はいなくなり、集落としての役目を終えたのだ。だから、彼らを咎め立てする者は、誰もいなかった。

 彼らの一人が、大きな石を見つけた。手入れをする者がいなくなり、荒れてしまった祠の中にあったものだ。彼らは、適当な小動物を見つけ出し、石をくくりつけた。そして、ちょうど近くにあった井戸に、勢いよく投げ落とした。

 その瞬間。

 周囲の石ころなどが震え出した。さらに、祠のあった場所も、大きく揺れ出した。

 彼らが、気味悪がって後ずさった瞬間、それは現れた。それは、彼らに顔を向けた。

 彼らの首が飛んだ。

 続いて、それは井戸を破壊した。落とされた小動物は、その余波で石を破壊され、助かった。

 それを見届けると、それは本州に向けて飛び立った。

 それの名は、牙鳴須(ギャオス)。護国聖獣の一体である。

 

***

 

 庵義良主(アンギラス)が倒れて数時間後。ユズキは、やっと立ち直った。いや、正確には体裁を取り繕えるようになったと言うべきか。

 そうして、山の方に目を向けると、風が吹いていないのに、木々の一部が揺れているのが見えた。双眼鏡を取り出すと、何かが登っているのがわかる。ユズキは、迷わずそちらへ向かった。

「一体、何が・・・!」

 そこで目にしたのは、小型犬を同等の大きさになった庵義良主(アンギラス)だった。

「え、ちょ、え・・・?」

──チッ、あの野郎、規格外がすぎるんだよ・・・!

庵義良主(アンギラス)、なんでこんな姿に・・・?」

──ん? おお、ユズキか。いや、まだ危機は去っていないだろう。だから、こうしてギリギリの形で限界しているというわけだ。

「そんなことできたんだ・・・」

──封印された時は、そんなことできなかったからな。こうして霊体と実体を行き来できるようになったからこそ、だろう。

「確かに、千年以上封印されてたのなら、特殊な処理をしない限りは骨になっちゃうから・・・」

──そういうことだ。

「なんとなく、わかった。とりあえず、庵義良主(アンギラス)が生きててよかった、よ・・・」

 そういうと、ユズキはその場に倒れ込んだ。

──?

 庵義良主(アンギラス)は、ユズキの鞄を探り、スマホのロック画面を開いた。緊急通報の文字があったので、それをタップした。

 数分後、ユズキは、またしてもカツミの世話になった。

 

 




本作は、もともと一話で完結させる予定だったんですが、長すぎると絶対途中で飽きられると思ったので、ここでぶった斬りました。
実を言うと、本作は二作でセットになっていて、その前編という立ち位置だったりします。OVAのジャイアントロボが監督の構想では全二六話の一話だった、というのと似たような感じです。
さて、護国聖獣について、もうここで話しちゃいましょう。ぶっちゃけ、ガメラを今作で出したかったんですが、GMKを下敷きにする以上、ちょっと無理っぽいので諦めたというところはあります。で、その代わりにというべきか、ギャオスを出し、モスラをリストラしたという感じです。魏怒羅(ギドラ)は、今回千年竜王に覚醒できるかどうか微妙なところではあるんですよね・・・。
何はともあれ、本作がどのような結末を迎えるのか、楽しみにしていてください!

・・・実は、一本の映画のイメージで執筆してました。
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