俺のバケモノという言葉に先輩は首を傾げていた。
「ただの戯言なので気にしないでください」
「そうか。そう思うとしよう」
なーんか疑われてる気がするけど、まぁいいか。
「先輩はなぜ俺をつけてたんですか?そりゃあ、入りたてほやほやの一年生が『監視カメラの無い』この特別棟に来てたら気になるでしょうが、こんな部屋まで一人でつけてくるのは流石に無用心ですよ」
他の男もいたらどうしてんですか。そう先輩に言うと
「ふっ、ハッハッハッハッ!まさか私の心配をしてくれるとはな!なに、これでも腕っぷしには自信がある。囲まれても監視カメラのある場所まで逃げる事ぐらいは出来るさ」
ほーん。
ザッ
ガシッ
グルンッ
腕っぷしに自信があるそうなので、試すことした。まずは先輩にスッと近づくと、一瞬で腕を掴まれ背負い投げをされた。なるほど、これなら大抵の男は対処できるな。だが、
ガッ
投げ出された体を無理やり捻って、両足で着地をした。それには先輩も驚いていた。驚いて力が緩んだ隙に逆に先輩の腕を掴んで
ドンッ
壁に追いやって押し付けた。いわゆる壁ドンというやつだったか。
まぁ、なんにせよ
「実力に差がありすぎるとこうなりますよ」
「……その様だな」
なーんでこの先輩は壁に押し付けられてるのに嬉しそうに笑うんかね。バトルジャンキーかこの先輩は。
「はぁ、俺だからこれで済みましたが。大抵の男だとこれで済みませんからね。全く」
先輩の腕を離して先輩から離れた。
「強いな、君は。益々興味が出てきた」
こんな事で興味を持たれても。
「それで先程も言った通り、新入生がここに入って行ったからつけてきたのですか?」
「そうだ。2日目に見覚えのない生徒がここに入っていったからな。気になって尾行をしたわけだ。こうして面白い後輩に出会えたから尾行したのは正解だったがな」
ドヤ顔でそう言うが……まぁ、いいや。何を言ってもこの先輩には意味ないだろうし。
「そうですか。それは良かったですね。もののついでで聞きたいのですが」
「いいだろう。面白い後輩に出会えた記念に聞いてやろう」
先生より生徒の方が知ってると言う事は多いはず。先輩の了承も得たわけだから早速聞いてみよう。
「pptはどうやって増やすのですか?毎月のポイントが増減するのは把握してますが、毎月のポイントが例え五万に抑えられたとしても店にはそれだけでは到底買えないものが置いてあるみたいですから」
家電販売店もあると聞こえたからな。家電ならテレビとか置いてるはず。そしてテレビはいいものになるとそれは高くなる。毎月のポイントだけで買えるとは思えない。貯金すれば買えるだろうが、それをわざわざする生徒はほぼいないだろう。だから必ず他の道があるはずだ。
「ほう……やはりポイントについて気付いてたか。まずは質問に答えよう。ポイントを増やす方法はまずは毎月の支給。他にポイントは他人に譲渡できるから他人から借りる。そしてポイントを賭けての勝負だ。いわゆる賭博だな」
なるほど。賭博か。ポイントはこの学校におけるお金なのだから賭けが生まれない訳ないか。賭博とはいえカジノがある訳じゃないから
「部活で部員に勝負を仕掛けるのが普通ですかね」
「その通りだ。チェス、将棋といったボードゲームからサッカーなどのスポーツ。最近ではe-スポーツも世間に広まってるからそれもあるな」
なるほど。意外に選択は広いか。これならたくさん楽しめそうだ。その部活に挑むときはしっかりとルールを頭に叩き込まないと。
「今度はこちらから質問をしたい」
「なんでしょうか?」
「他に何に気付いてる?答え合わせぐらいはしてもいいぞ」
2年生にもなれば学校の事は完璧に理解できてるか。先輩が優秀そうなのもあるだろうけど。
「では」
学校は主に監視カメラで生徒を評価し、クラスごとに評価結果を出して毎月のポイントを決める。pptはcptを元に支給。A、B、C、D順に優秀な生徒を振り分けている。評価方法は定期テスト以外に特別な試験がある。進学就職の支援は一部に生徒、おそらくAクラスしか受けられない。この学校では文字通りポイントでなんでも買える。
生徒の評価方法が監視カメラでの素行調査と定期テスト以外にない訳がない。そうなると授業のない夏休み中に評価することができないからな。
あとこの学校では本当にポイントでなんでも買えるだろう。退学をポイントを支払って無効にすることもできるだろう。そういえば先生に聞くの忘れたな。もっと広い部屋をポイントで買えるかを。
「こんなところですね。まだ気付いてない部分はあるかも知れませんが、この学校の仕組み、Sシステムでしたかね。そのSシステムの8割以上は把握してるつもりです」
「ハハハハ!素晴らしい!ほぼパーフェクトだ!まさか入学して2日目でそこまで気付いてしまうとはな」
『ほぼ』か。…………あぁ、なるほど。
「cptの数でクラスがCからBになるという訳ですか」
「あぁ、それで100点だ。お前は本当に面白いな。ほぼパーフェクトという言葉だけでそれに気づくのだから」
「褒め言葉として受け取らせてもらいます」
「事実褒めてるわけだから」
あなたが言うと素直に褒めてる様に聞こえないんだよ。さっきからずっと獲物を見つめる様に俺を見てるんだから。
「そうですか。さて、この場所を把握したので俺はそろそろ帰ります」
そう言って先輩を置いて帰ろうとすると
「待て」
先輩に呼び止められて先輩に体を向けた。
「連絡先を交換しよう。面白い後輩とこれっきりは嫌だからな」
「まぁ、いいですよ」
学校から配布された端末を取り出して先輩に教えられながら連絡先を交換した。
「それと、名前を言っていなかったな。鬼龍院楓花だ。今後ともよろしく頼むよ、後輩」
「鬼龍院先輩ですね。俺は蝕廻傀斗。先輩だからと言って無茶振りとかしないでくださいよ?」
「善処しよう」ニコ
この人絶対俺に何かさせるつもりだ。満面の笑みで言いやがって。
会話を終えて俺は先輩を置いて帰った。
今日は先輩に会えたおかげで思わぬ収穫を得た。先輩がわざと言わなかった裏がないのであればSシステムの100%を把握した。絶対にあの人に言ってあげないがな。
あ、いや100%ではないか。学校がどうやってcptを出すかわからないな。最初からクラスの変動はそう起きないと思うんだよな。と、言う事は毎月cptを出すのではなく、入学と同時に全クラスに等しいcptがあって、そこから減点していく感じか。
場合によってはうちのクラスがcptを全部放出する前に有効活用しないとな。
e-スポーツって入れても大丈夫なんでしょうか。高校にe-スポーツの部活はあるそうですが、高育って国直営なんですよね……。
まさか鬼龍院先輩との会話で1話行くとは。