時は過ぎ、遂に激動の5月に入った。5月に入る直前の授業で小テストが行われた。一教科4問ずつの計20問で各5点100点満点。先生曰く成績には反映されないそう。成績には反映されないと言う事はcptに反映されるのか?情報がないからそこまでしか予想できない。
しかもこのテストの数学のラスト3問。テスト自体は授業を真面目に受けてれば85点は取れる。しかし残りの15点分の3問は習ってない範囲だった。たまたま知っていれば解けるか?という問題もあったが、高3で習う範囲の問題もあった。俺は前にその範囲があるワークブックを読んだ事があるから解けたが。
これはまた学校からの俺たち生徒へのヒントか?絶対に解けない問題を解く方法。答えをあらかじめ知っていれば簡単だ。次に難度はぐっと上がるが過去問があれば範囲は絞れる。
んー………これは後で考えるか。
鬼龍院先輩と話した翌日、予定通り先生とSシステムを5月に入るまで口外しないという契約を結んだ。内容はこの通り
以下の契約は蝕廻傀斗(以降「甲」とすると)と教師一同(以降「乙」とする)の正式な契約とする
1.乙は甲に700万pptを譲渡する。
2.甲はSシステムについて5月1日まで口外を禁ずる。破れば退学処分とする。例外として答え合わせを求められた時のみ教師の前であれば口外を許す。
3.甲はこの契約の内容を5月1日まで口外を禁ずる。破れば退学処分とする。
というのが最初に提示された内容だ。あり得ない話だが、教師が口を滑らした場合は?と聞いたら次の内容が追加された。
4.乙が生徒への甲の事を口外した場合、口外した生徒と類似した契約を結び、甲へ500万pptを譲渡し、乙を減給の上謹慎処分とする。
まぁ、妥当だろう。4が履行される事はないだろうけど、あって損する事もない。
その後に契約にサインして端末に700万pptが振り込まれた。日用品などの購入で残りが98,342だったからこれで7,098,342になった。
その後に前日に先生に聞き忘れた部屋の事を聞いた。先生には若干呆れられたが、広さ2倍が200万、3倍が300万、とんでも5倍が600万と教えてくれた。
現時点の部屋も狭いというわけでない。逆に広いわけでもないけど。俺としては一部屋でいいからとにかく広い部屋が欲しい。なので5倍の部屋を600万で買った。ほぼ即決だったかな。今の部屋はどうすると言われたがそのまま残してもらった。家具を買い直す必要があるかもしれないけど、それは後ほどに。
さて、時は戻って、今日は5月1日月曜日。なんとも言えないスタートだ。月の始まりと週の始まりと一年生の動きの始まりが重なってしまった。
朝起きた時に端末を見たら昨日から1pptも増えてなかった。予想通りと言えば予想通りだ。やっぱり
準備を済ませて下の降りると丁度松下がいた。どうやら俺を待ってたらしい。
「あまり疑ってなかったけど、蝕廻の言った通りだったね」
「予想でしかなかったが、本当に合っててよかったよ。松下はポイントは大丈夫か?節約したとして友達付き合いでポイントは減るだろうから」
悲しいことに俺は学校外で遊ぶ友達はほぼいない。松下から誘ってくれるからまだマシだけど。クラスメイトと仲が悪い訳じゃないけど、どうしても教室内だけの関係なんだよな。
「それでも半分以上は残してるから今月いっぱいは大丈夫かな。来月も少なかったら流石にやばいけど」
「無料品もあるが、高い方が良質だもんな。学食に関しては無料はあまり食べたくないな」
「あれは美味しくないもんねー」
松下は苦い顔をしていた。食べた事があるのだろう。
実際無料の山菜定食はあまり美味しくない。まずいという訳じゃない。ただ味がしない。せめて塩とかの調味料が欲しい。
そんな事を話しながらいると販売機でジュースが買えない、ポイントが振り込まれてない。という声が聞こえた。
「たった1ヶ月に10万を使い切ったのかよ。少しぐらいは考えて使えよ」
「そうだねー。でも、私も蝕廻の話を聞いてなかったらほぼ全部使ってたかも」
「運が良かったと思ってるだろうが、運も実力のうちだ。ラッキー程度に思えばいいよ」
「うん。そうする」
そうして教室に着くと、やっぱクラスはポイントの話題一色だった。数人ジュースも買えないと言っていたから使い切った奴は多いだろう。他のクラスにもいるのかな。AクラスとBクラスはそこらへん大丈夫そうだけど。
クラスメイトの話に耳を傾けていると、茶柱先生が教室に入った。ホームルームの時間か、もう。
「おはよう、諸君。良い夢を見れたか?ホームルームの時間だ。席に着け」
良い夢、ね。昨日までの生活を夢だとするととんだ皮肉だな。これからは悪夢の始まりってか?
「先生ー。ポイントが振り込まれてないんですけど。いつ振り込まれるんですか?」
「ポイントはすでに振り込まれてる。このクラスだけ忘れられてるという事はない」
そりゃあな。そんな差別を学校はしないからな。
茶柱先生の発言にクラスがざわつき始めた。……まさか、これでも気づかないのか?平田も櫛田も堀北も気づかないのか?奇人の高円寺は無視したとしても、優秀と思ってたこの3人も気付かないとはな。
なんとも
「「愚かだ」」
茶柱先生と重なってしまったが、このクラスはなんとも愚かだ。
「遅刻欠席合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回」
俺もある程度は知ってたが、まさかそこまでとは。1ヶ月で随分とやらかしたなうちのクラス。
「この学校はクラスの成績、評価が毎月のポイントに反映される。査定の結果」
Dクラスは最初に持っていた10万ポイントを全て失った。
「よって、お前たちに振り込まれるポイントはゼロだ」
茶柱先生は蔑んだ目で話を続ける。
「1ヶ月でポイントを全て吐き出したのは歴代でも初めてだ。ここまで行くと感心してしまうよ」
嘲笑うように茶柱先生は拍手をする。これには俺も感心したよ。危うく俺も拍手する所だったよ。
「毎月10万ポイントを振り込まれるなんて都合のいい事、ある訳ないだろう」
最初、誰もが疑問に思ったはずだ。だが、その額に魅入られ、疑問を疑問のまま、思考を放棄した。それが今の惨状に至った。
「リアルタイムで生徒を査定し、クラスごとに評価してそのクラスに支給するポイントを決める。これがSシステムだ。見ろこの数字を」
茶柱先生はホワイトボードにAクラスからDクラスとそれぞれの横に数字を書いた。数字の隣にはcptも書かれていた。
これが今の各クラスのcptか。
| Aクラス | 1260cpt |
| Bクラス | 970cpt |
| Cクラス | 810cpt |
| Dクラス | 0cpt |
Cクラスでギリギリ半分以下だったのか。こうしてみるとDクラスの無能さが際立つな。
「この数字の通りお前たちは自分たちで最低の不良品である事を証明した。結果、見限られた」
見限られた。まぁ、間違ってはないか。
その後平田が増減の詳細な理由を教えて欲しいと言ったが
「実社会では人事考課を詳細に教える事はない。それと同じだ」
と一蹴されていた。
茶柱先生は続けてポイントの説明を始めた。cptがついてる数字は各クラスが保有するクラスポイントである事。1cpt×100が振り込まれるpptになる事。最後に入学時点では全クラスに1,000cptが与えられる事を。
「え、でもそれじゃあ、Aクラスはなんで1,000cptを越えてるんですか?」
おかしな部分に気づいたクラスメイトの一人が茶柱先生に先生に質問をした。ま、これぐらいはおかしいと思うか。
やばいな、今の俺は大半のクラスメイトを下に見てる。言動には気をつけよう。
「そうだな。教えてやってもいいが、せっかくだから自分たちで気付いてもらうとしよう」
「んな事言われても……」
「なあに。ヒントぐらいはやるさ。まず一つ目、最初の一月にポイントの増加はない。二つ目、お前たちは見限られた。以上だ。後はお前たちで解いてみろ」
茶柱先生はヒントを二つ提示して話を終わらせた。
答えを言ってしまえば、こうなった原因は俺だ。俺がやったのはDクラスの現在保有してるcptをA、B、Cの3クラスに3等分して譲渡するというものだ。これをやったのは最初の月曜日。件の契約を結んだ2日後だ。
当然茶柱先生に理由を聞かれた。表向きはcptを使い潰すぐらいなら他のクラスに有効活用してもらおうと思った。
本心は心底Dクラスに呆れたからだ。授業2日目で早速欠席者2人。遅刻者1人。授業中には半分以上が私語や携帯を触る。果てには6限で1人が勝手に早退して帰った。見限るなという方が無理だ。
だからまだ大量に残ってる今のうちに3クラスに譲渡しようと思った。
4月で俺以外にSシステムに気付いた生徒がいないという事で、譲渡する際の契約には各クラスの担任が代表代理を務めた。譲渡額は各クラス320cpt。入学してたったの3日、授業が始まって2日で40cptを吐き出した。恥ずかしさで先生たちの前で顔を隠してしゃがみ込んでしまったよ。それ以降先生達が少し優しくなったのは気のせいのはずだ。茶柱先生からもらったハイチュウは美味しかった。
とりあえず、これが真相だ。果たしてこいつらは
茶柱先生は補足としてcptが他のクラス、一つ上のCクラスで考えると、821cptになればCクラスに昇格して、CクラスはDクラスに降格する。このクラスの昇格を説明した。
ざわつくクラスメイト達に向かって茶柱先生は最後にこれを言った。
「ようこそ実力至上主義の教室へ」
そう言った茶柱先生の顔には笑みが浮かび、期待の籠った目で俺を見ていた。
とりあえずこれでよう実のプロローグは終わりですね。
次は主人公のクラス内での立場を深掘りしていこうと思います。