駅に着き、まずは券売機へと向かう。朝早い時間では並ぶ人も少なく、スムーズに買うことが出来るのは嬉しい。そして忘れないように領収書の発券ボタンも押す。シャーレの当番で交通費が出ることが知らなくて、前回は師匠が立て替えてくれたのは非常に申し訳なかった。
駅の改札まで行き、駅員に買った切符に切り込みを入れてもらう。普通は学生証をかざしてそこからお金が引き落とされるのだが、これもハイランダー側がこちらに気を使っての事らしい。ただ、ちょっと不便さを感じる部分も多いので私としては早く学生証をかざせるようにして欲しいと思ってしまうものだ。ああ、でも師匠は風情があっていいとか言ってたっけ。
駅のホームに立ち、そこにある時刻表と時計を交互に見ていく。あと3分ほどで着くみたいだし、ホーム上のベンチで座る必要は感じないので、モモトークを確認する。新着メッセージは何件かある。1つはナグサ先輩。これはシャーレの当番に行く事を伝えてその返信としてスタンプが返されているから、見るだけで特に返信は要らない。しかし、焼き鳥のキャラクター?が了解と言っているのはなんともシュールである。というかナグサ先輩もこういうの使うんだ。次は師匠、これは何時ごろ到着予定なのかという内容なので、返しが必要になる。
「次の電車に乗るとすると、シャーレの始業時間よりちょっと早いぐらいかな?」
思ったことを口に出しアタシはそれをそのまま師匠とのトークに返す。シャーレの当番はあさイチで行かなくてもいいんだけど、余程の事がない限り、皆朝から行くらしい。まあ、そりゃそうだよなって話だ。元々シャーレの当番は人気が高いし、シャーレの先生こと師匠は他の生徒からも人気が高い。なにか用事がなければ勿体ないとしか言いようがない。
後は、企業とかの広告メッセージやキャンペンーンメッセージばかりなので、確認する必要はない。路面電車の音も近づいてきたし端末を仕舞い、決められた場所に並ぶ。電車から降りる人が居なくなったことを確認してから電車内に入り、近くの席に座る。2人掛けの椅子が向かい合う様に並んでいるこの車内も他では見られない作りだそうだ。
ドアの閉まる音が鳴り、路面電車がゆっくりと動き出していく。先ほど貰ったおにぎりの包みをひじ掛けのスペースにおいて次に水筒を取り出す。ここからシャーレまで時間があるからご飯を食べるなら今の内だ。
「あのう、その包みの中身、見せて貰ってもいいですか?」
ふとハイランダーの生徒に声を掛けられる。何かを心配しているような目を他所に包みを開ける。女将さんがくれたおにぎりの味はおかか、たらこ、昆布の3種類。
「ああ、ご飯でしたか。これは申し訳ありません。是非ゆっくりとしてくださいね」
少し、話を聞くと最近ゲヘナ方面の電車で事故があったようで、出来る範囲での手荷物検査をしているようだ。
「おう、お仕事お疲れさん」
そう、声をかけて一つ目のおにぎりを手に取る。ゆっくりと時間をかけてそれを味わう。やっぱり美味しい。ただ、お米を具材と一緒に握っているだけなのに何故こうも美味しいのだろうか?
「今度、師匠に作ってあげるお弁当はおにぎりにするのもありかな」
その場合の青春を感じられるのは...ピクニックかな?そう考えると、このおにぎりはもっと味わって食べなければならない。この味を真似できるとは思わないけど、いいところはマネしていかなくちゃいけない。
喉に詰まらせぬよう、そして味わう様にゆっくりと食べ飲み込む。その次に水筒に入れた麦茶で口の中を一度整理する。水の方がいいのだろうが、今はこれしかないので仕方がない。
ふと、自分の端末に目を落とすと師匠から新しいメッセージが来ている。
-レンゲ、ごめん。今日の午後トリニティに行く事になって、こっちに来たら紙で学生証のコピーとらせてもらっていいかな?
もしかしなくても師匠は巻き込まれ体質なのかもしれない。片手に端末、片手におにぎりを持った体制でアタシはそんな事を思ってしまった。