機動戦士ガンダムSEED ー霹靂の鬼は悪魔になれるか?ー 作:単眼駄猪介
Q、なんで義手で普通に当ててんの?
A、少し前に言った通り射撃に才能があるのでそれなりに当てられます。
でも義手がちょっと食い込んで地味に痛いらしい。
Q、コーヒー飲めるんだ……
A、ゲロマズな支給品をちょっと大人ぶって飲んでたので、コーヒーの味が少しは分かるように。
Q、前話の女って一体誰なの?
A、ヒロインになるかもしれないオリキャラです。想定している設定的にはそこまで違和感はないはず
一応、再登場予定
それにしても感想で皆さん、前話の質問について答えてくれるので食べたくなってきましたね(笑)
機会があったら食べたいぜ……
砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの名はザフト、連合ともに有名である。
そんな彼と今、対面して駄弁ってるなんて言えば誰も信じてくれないだろう。
「どうだい?僕のコーヒーは」
「うーん、美味しいけど俺の好みじゃないな……」
しかもコーヒーの評価なんかをしているなんて、誰が信じてくれるのだろうか。
そんな事を思いながらグエムは、バルトフェルドの話に耳を傾ける。
原作でもあったキラとバルトフェルドとの戦争についての問答。
今回、その場にいるんだなと遠い記憶の中の情報を引き出しつつ、懐かしむグエム。
バルトフェルドは傍から見れば美味しそうに(無表情だが)飲んでいるグエムに満足しつつ、とあるものを指差す。
「これを知ってるかい?」
「エビデンス01…」
「の、レプリカだがね。彼は知らないかな?霹靂の鬼さん?」
グエムに話を振るバルトフェルドに、グエムはほぅ…と感嘆する。
「なんで俺がそれを知らないと思った?」
「まずザフトのモビルスーツにはない出力と機動性能、そしてGの一つとしてはあまりにもデザインが乖離している。そして砂漠にも関わらず人間臭い動きは、ジンでもあそこまではできん。それに、銃を撃ってから君は腕をよく擦っていた。義手だろ?」
「……俺が異世界からの漂流者、と言えば信じますかね?」
「信じるしかないだろうね。上は信じないだろうけど僕は納得できる」
切れ者故に、バルトフェルドは彼の言葉に納得し理解する。
流石は砂漠の虎、とグエムは内心で感嘆しつつ彼に話の続きを促す。
「さて、ジョージ・グレンが発見したエビデンス01。ファーストコーディネイターと呼ばれる彼が見つけたものは、人類の宇宙進出を早めるには十分だった」
そこからは大体、コズミック・イラの歴史の説明……いや彼ら的には振り返りだろうか?
とにかくそれを初めて、グエムはその説明を改めて耳を傾けて聞く。
風化しているガンダムSEEDという作品の物語と設定は、今のグエムにとって再確認するには絶好の機会であった。
そして、話は大戦の話になる。
「コーディネイターとナチュラルの戦争。戦争は試合のように明確な終わりがない。一体どこでやめればいい?敵を全滅するまでか?」
問いかけるバルトフェルドに、キラは口籠る。
彼は流されてこの場所まで来てしまった。
いや、途中からは彼の意思でここまで来た。
しかし、彼にとって戦争はただ人殺しという恐ろしく悍ましい事をするだけの世界で、戦争について何かを考えるなどそんな余裕はなかった。
だからこそ、彼にとってはその質問は想定していないものであり、必然的に口籠ってしまうものだった。
それを見越してか、バルトフェルドはグエムにも問う。
「君はどう思うかね」
その問いに、グエムはヒヤッとする無表情で答える。
「俺は、アンタらと同じように宇宙移民の独立戦争で戦場に立った」
コーヒーを飲み干し、続けて言葉を紡ぐグエム。
「だが俺の所属していた軍、ジオンは最初に何をしたと思う?同胞たるスペースノイドを毒ガスで虐殺し、スペースコロニーを地球に落としたんだ」
「……なに?」
まさかの話に、バルトフェルドは眉を上げる。
しかし、そんな彼の様子に気にする様子もなく語り続ける。
「最終的にジオンは敗北し、傷痍軍人の集まりである俺の部隊、リビング・デッド師団は残党になって地球に降りてまた戦う日々だ。終わった筈なのに続くんだよ、一部のバカ共のせいで」
「ふむ、そういった奴らはいるだろうね。特にザフトの上層部は」
「いや、ザフト全体がそうだよ。ナチュラルを下に見て戦う時点で、その思想はもはや洗脳だよ」
洗脳、そう言われ少しバルトフェルドの表情が曇る。
だがそれもまた事実なのでバルトフェルドは続きを促す。
「残党になった俺は、最終的に宗教集団に入っちまって皆、脳を焼かれたよ。焼かれてサイコブッダ……レヴァン・フゥ僧正の下に、本来、傷痍軍人のリユースを目指した技術を最高の戦闘マシーンにする為に利用しやがった」
そう言いながら見せる自分の腕と足。
キラは何度も見ているので慣れたものだが、バルトフェルドは無骨なその義手と義足に驚愕する。
「この腕と足はモビルスーツと直接繋がるためにちょん切った証だよ。そして、それに対応する俺の乗るサイコ・ザクは悪魔と呼ばれた【ガンダム】に比類する程の戦闘能力を得た」
「ガンダム……」
「ガンダム、G兵器にお洒落で付けられた頭文字の繋ぎだったか」
「こちらの世界ではそうみたいだが、俺の世界ではガンダムという名前のモビルスーツがあった」
改めてその名前を聞き、オウム返しに呟くキラと脳裏に地上に落着したクルーゼ隊の少年二人が乗っていた機体のOS名にあった名前を思い出すバルトフェルド。
「戦争はいつ終わるのか?それは人類が自らを滅ぼすまでだよ。レヴァン・フゥの見せた未来予知に、俺は本来見せられるものよりも先の未来を見ちまった」
震えだす身体を抑え、グエムは言葉を絞り出す。
「俺は視たんだ。全ての未来の先に∀の紋章を額に宿した白いモビルスーツが、文明を灰燼に帰すのを。宇宙世紀の成れの果てを見せられた。じゃあこの世界は?その前に自分達のプライドに殺されるだろ」
「……未来予知、急にエスパーな話が来たな」
「ニュータイプ、そう呼ばれる人々は分かりあう為に進化した新たな人類、なんて言われてたが人はそう簡単じゃない。分かり合えないものが分かっただけだったり、人ならざるものになりかけるだけの人には制御できない能力だ」
そこでキラは自分の意見を初めて表に出す。
「でも、分かり合おうとする姿勢は大事じゃないんですか…?」
その言葉にグエムは頷く。
「そうだ。分かり合おうとする努力は必要だ。その点、そういった特殊能力もない君達なら、時間はかかるだろうがいずれは共存できるさ」
「だが、現在をどうにかせんとソレはただの夢物語だろ?」
「そして生み出されるのが俺みたいな戦闘の為だけに生まれる命だ。これはナチュラルとコーディネイターの問題じゃない。個人の問題なんだよ」
それは貴方も同じだ、バルトフェルド。
遠回しながら、バルトフェルドもそういった偏見があるのでは?という問いにバルトフェルドは先程よりも表情を曇らせる。
確かに、周囲にはコーディネイターだけでナチュラルとマトモに関わったことはない。
「貴方が平和を望む兵士なら、まずナチュラル達の事を知るべきだ。俺達、スペースノイドが地球に住む人々を知らなかったように、コーディネイターもまた知らないといけない。無論、それはナチュラルも同じだが」
「平和を望む兵士、ね」
淹れ立てのコーヒーを飲むバルトフェルドに、グエムは自嘲する。
「本当は、死んだはずなんだよな。トチ狂った戦友を騙して間接的とはいえ殺して死のうとしたはずなのに……そもそもジオンの兵士のクセに何が平和を望む兵士だ。俺にはそんな資格はねぇのに」
愚かな自分を自分で嘲笑うその姿は、無表情なのにも関わらずあまりにも痛々しい姿だった。
いつもよりコーヒーの苦みを強く感じたバルトフェルドは、何と言えば良いのか考えるが思いつかない。
「霹靂の鬼の故郷の世界は、人類の半分が最初のコロニー落としで死んだ。なんて馬鹿真面目に報告しても笑い者にされるな」
苦肉の策として、場の雰囲気を和らげる為に呆けるバルトフェルド。
グエムもその雰囲気を散らしたいのか、それに乗っかる。
「そうだな。霹靂の鬼が実は義手と義足という傷痍軍人ですよ、なんて言っても信じてもらえないだろうね」
それは皮肉っているのだろうか?と疑いたくなるくらい、ネタのチョイスが酷い言葉にバルトフェルドとキラの顔が曇る。
触れて良いのか良くないのか分からないネタに、スベったグエムはただ一言。
「……大変申し訳ありませんでした」
「謝るな。僕も謝りたくなる」
「アンディ、ようやく終わったわよ――って何、この空気」
「キラ、マジで何があったんだ」
丁度、カガリのドレスアップが終わり戻ってきた所で気まずい空気に入り込んでしまったアイシャとカガリ。
困惑する女性陣に、グエムとバルトフェルドは説明しづらくて顔を彼女たちから背け、キラはカガリを見てはいるがとても言いづらそうな雰囲気であった。
ーキラ達が出立して少ししてー
「どうだった?あの子達」
「一癖二癖あるメンツだったよ。特に霹靂の鬼は」
「良い子そうだもんね、キラって子。グエム君に関しては本当に何があったのアンディ…」
「いや、今は僕もなんと言えばいいのか分からないから纏めさせてくれ」
そんなやり取りがあったとかなかったとか。
ちなみに、ダコスタは義手義足のグエムを見て少しビビっていたりする。
一方で、帰り道をグエムの運転でアークエンジェルへの道を辿っていた。
助手席に座るキラはバルトフェルドに言われた【
だが、そもそも意味が分からない彼はグエムに聞くことにした。
「グエムさん、狂戦士ってなんです?」
そう問うと、グエムは少し言い出しづらそうに少し間をおいて答える。
「戦闘になると人が変わったように戦いを好んだり、徹底的な戦い方をする奴の事だな。バルトフェルドは比喩としてそう言ってるだけだ。あんまり気にするな」
「…………」
黙りこくるキラに、後部座席から身を乗り出してグエムに耳打ちするカガリ。
「絶対に気にしてるよな?」
「…だな」
とはいえ、その戦い方は本当にソレである。
足癖の悪い蹴りや一寸の無駄のない動き、それがSEEDの力だとしてもそれを行えるだけの技量がキラにはある。
グエムは狂戦士と呼ばれた理由を思い出しつつ、バルトフェルドとの最後の戦いに思考を移す。
「俺には、戦争を何かと考える余裕さえなかったな…」
感情を爆発させただけのバルトフェルドとの会話は、グエムにとってはコーヒーのように苦い記憶となるのであった。
実は∀が月光蝶する所まで見えちゃった運のない奴、グエム・タキオン(18)
そこから若干狂気に取り憑かれて最終的に物語開始の状態になります。
無力感と月光蝶から放たれる負のオーラに、メンタルが少しイカれてあの地獄を戦いました。
おかげでちょっとアタオカな動きが取れるようになったけど
とまあ、そんなグエムの裏話をしつつしっかり曇らせできてか不安です(本音)
読了、ありがとうございます