機動戦士ガンダムSEED ー霹靂の鬼は悪魔になれるか?ー   作:単眼駄猪介

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遂に最終回ッ

ちなみにサイコ・ザクがプロヴィデンスに噛みつけてるのは初乗りデバフとリユース・サイコ・デバイスありきなんで、普通はドラグーン展開された時点で大体詰み。
天パならスイスイと潜り抜けて一発入れるんだろうけど。
ジオングの弾幕をスイスイ避けて息切れもしてない天パさんならクルーゼさんも結果的には倒せるだろうなぁ…アレックス乗れば余裕で倒せそう()




芽吹く運命

 

 

ザフトと連合の戦いは、既に連合の勝利という揺るぎない流れとなっていた。

それでも尚も抵抗を続けるのは、パトリック・ザラに心酔した者達やナチュラルへの拭い切れぬ不信感、最後までザフトの軍人として命令を遂行しようとした者達。

しかし、新兵や憎悪に染まっていない者達はほとんどラクス・クラインの説得で離反している。

決定的だったのは、やはり味方ごと薙ぎ払おうとするパトリック・ザラの命令だろう。

ナチュラル殲滅に傾倒した結果、あまりにも多い他者の犠牲を強要する【ジェネシス発射までの死守】は開戦初発を避けられた時点で目を疑うものだ。

特に戦力差を理解している者達は、最悪特攻も覚悟した者達も多いだろう。

しかし、下された命令はジェネシス発射まで敵を引き付け、ヤキン・ドゥーエの死守だ。

非現実的である。

戦力差は連合が有利。

しかし、最後の抵抗として特攻するならば士気の高さでその場の雰囲気で誤魔化せるだろうがあくまでジェネシスに拘った上層部、もとい最高議長に失望した者達は多かったのだろう。

そもそも、ザフト兵の多くは【血のバレンタイン】を繰り返させないために戦うことを決意した者がほとんどだ。

ナチュラル殲滅を掲げるのは一部でしかない。

 

そんな彼らの代表格としてはサトーだろう。

血のバレンタインの被害者の集まりである彼らは、ジン・ハイマニューバを駆りながら連合と裏切り者達と戦闘していた。

 

そのまた一方では、ザフトの軍人として戦ってきていた者達の代表格ハイネ・ヴェステンフルスはラクスの事を若干不快感を覚えつつも、プラントの未来の為を考えればラクスに付くのが良いと考えていた。

割り切りの早い彼は、出来るだけ説得しながら戦うことになるのだが、まあそれは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、アークエンジェルのブリッジでは暗い雰囲気に染まっていた。

それが感染ったかのように、ドミニオン側も暗い雰囲気でいる。

 

その原因は、アークエンジェルの後方で爆散して残骸と化したナスカ級にあった。

 

「ムウ……ムウ……」

 

顔を抱えて泣きじゃくるマリューに、ブリッジのクルーメンバーは止めることなく己の業務に専念する。

精神が不安定な今の彼女に、指揮をさせることなんて彼らにはできない。

いや、彼らでなくても当たり前の配慮だろう。

 

「…まあ、技術士官出身ですし…」

 

「アズラエル理事、黙っておいてください」

 

「アッ、ハイ」

 

空気を読め、とナタルが有無を言わさない態度でアズラエルを黙らせる。

アズラエルは理解していた。

こういうときの女性を怒らせてはいけない、刺激してはいけないと経験則で理解している。

妻を持つ以上、そういったことにも配慮するのが紳士という奴だ。

まあ、それはそれとして軍人としてあるまじき姿なのではないのではないかと思うのだが。

 

仔細としてはムウが身を挺してナスカ級の特攻を逸らした、であるがクルーゼとの戦闘でバッテリー切れ間近であった。

推進剤もドラグーンの攻撃を避ける為に酷使され、こちらもガス欠間近。

そんな時にナスカ級の捨て身の特攻は、執念か、それとも運命なのか。

どちらが凌駕したのかはともかく、結果的にムウを死に至らしめた。

爆炎をあげながらアークエンジェルにあわやぶつかろうとする所に、限界を迎えていたストライクがその脇腹を押して軌道を変えた。

アークエンジェルも被害が少なからず出ていて、機関部の出力が下がっていた事もあり、回避は不可能だったが故に、モビルスーツ一機で戦艦の軌道を変えた不可能を可能にした男はナスカ級と共に散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、クルーゼと対面するグエムはドラグーンの攻撃を捌いていた。

 

「どうせなくなるんだから!」

 

「なに?」

 

残量が残り僅かのプロペラントタンクを切り離し、即席のミサイルとして撃ち出すサイコ・ザク。

出撃前にはたくさんあったビームライフルやバズーカの類いはドラグーンとプロヴィデンスによって破壊されるか弾切れで捨てられて背部のバックパックの武装ラックには何もない。

故に心置きなく行える使い捨て戦法。

しかし、クルーゼに通用する筈もない。

 

「意表を突いたつもりだろうが、私には効かんよ」

 

プロヴィデンスはビームライフルでプロペラントタンクを破壊する。

そして、爆炎の向こうにいるだろうサイコ・ザクめがけてスラスターを吹かす。

 

「本命はこっちさ!」

 

爆煙を浮き抜けると、そこには眼前に広がるサイコ・ザクのバックパック。

モニター一面に映し出されたそれにクルーゼも流石に驚き、反射で上へ避ける。

それを読み勝ちしたグエムは雄叫びをあげながらビームサーベルを突き出す。

それはさながら、サンダーボルトでガンダムがサイコ・ザクにトドメを刺そうとした時のソレに似ていた。

だが、残念ながらその攻撃が失敗するのも同じだったようだ。

 

「右足が!?」

 

直感によってバーニアを吹かしてドラグーンの攻撃を避けるも、右足首を持っていかれるサイコ・ザク。

一方でクルーゼは冷汗をかいていた。

 

「今のは、危なかったな…」

 

ドラグーンがなければ、今のでやられていたかもしれない。

まあそれはそれで良かろう、と思うクルーゼだったがフリーダムの参戦で状況は不利となる。

 

「またこんなところで会うとはね、キラ・ヤマト君!」

 

「貴方は!貴方だけは!」

 

ミーティアのビーム砲とミサイルを撃ちながら肉薄するフリーダムに、クルーゼは大型ドラグーン2基によるビームの網を張ることで接近を止める。

 

「キラ、突っ込め!後ろは俺に任せろ!」

 

「はい!お願いします、グエムさん!」

 

連戦に次ぐ連戦。

プロヴィデンスもフリーダムと同じ核動力ではあるが、エネルギー供給が間に合わなければ核動力といってもフェイズシフトダウンやエネルギー切れは免れない。

現状、エネルギー消費の激しいドラグーンを多用した為、割とピンチなのだがそんな事を一切悟らせない冷静な動きで、フリーダムとサイコ・ザクの攻撃を捌いていく。

 

「もうすぐジェネシスは墜ちるんです!もうやめてください!」

 

殺生を好まないキラが説得を始めるが、クルーゼは笑いながら拒否する。

 

「今更止められはせぬさ!そして誰にも止められない!この宇宙を覆う、人の憎しみの渦はな!」

 

「貴方がいるから!」

 

「私は選択肢を与えただけだよ、キラ君。そして選んだのさ!人はどこまでも、どこまでも救い難い生き物であるとな!」

 

エネルギー切れ間近の小型ドラグーンをフリーダムに体当たりさせるも、フリーダムは瞬時にビームサーベルで切り払い迎撃する。

ピクウス76mm機関砲でもドラグーンを迎撃するが、その間にプロヴィデンスが接近し、ビームサーベルを振るう。

しかし、それを防ぐのはストライクダガーのシールドを構えたサイコ・ザクだった。

 

「救い難い存在がいれば、誰もが救いたい存在だっている!それが人類だ!悪い面を見ないのはクソだが、それを改めようとしないのはもっとクソだッ!その点、アンタもプラントに核を撃とうとしたブルコスと同じさッ!」

 

「言っただろう!私にはあるのだと!この宇宙でただ一人、全ての人類を裁く権利があるとな!!」

 

「それは傲慢……とは言えないな。だが、それに抗う権利が俺達にある!」

 

「では、それに見合う資格があるかどうか、私が見定めてやろう!」

 

「それは傲慢だよ!皆、意識してないだけで誰にでも抵抗する権利はあるんだ!特にアンタみたいに、人類を纏めて絶滅させようとする奴には!」

 

エネルギー節約の為か、サーベルの出力が低めになっているプロヴィデンスのビームサーベルをサイコ・ザクが押しのけると拾ったジンのマシンガンで撃つ。

フェイズシフト装甲のおかげで無傷だが、放たれた弾のほとんどが命中した為、残存エネルギーが大きく削られる。

一度、その場を離れ場所を変えようとするプロヴィデンスを追いかけるフリーダムとサイコ・ザク。

フリーダムのミーティアは小回りの利くドラグーン相手には不利だとキラは悟り、既にパージしている。

 

「厄介な奴だよ、君は!その強さの秘訣を知れば、誰もが望むだろう!君のようでなりたいと、君のようにありたいと!キラ・ヤマト、それは君にも当てはまる!だからこそ、許されない……君の存在を!」

 

「力だけが僕の全てじゃない!」

 

「俺の力を羨む奴なんて一握りさ!わざわざ手足ちょん切ってまで強くなりたい奴なんて!」

 

「それが誰に解る?何が解る!?…解らぬさ!誰にも!」

 

下から追いかけてくるフリーダムとサイコ・ザクに、プロヴィデンスがビームライフルを下に向けて撃つ。

それを避けながらキラ達は追いつくべくスロットルを上げる。

 

「ならば理解させるってのが世の情けッ」

 

「ならば、全人類に叡智を授けてやるんだな!」

 

「それは人じゃないから却下!」

 

「ふざけるな!」

 

流石に茶化すような言葉に軽くキレるクルーゼ。

より過激にビームが撃たれるが、その頻度は高くない。

そして、逃走劇も破壊されたハッチを見てクルーゼはその中に飛び込む。

その際に急旋回して、フリーダム達の方へ前を向く。

 

「行けッ、ドラグーン!」

 

「アカンッ」

 

ドラグーンが展開され、再びビームの雨が二機を襲う。

足止めされている間にプロヴィデンスはジェネシス内部に進む。

そして見つけたのは残り5分で撃たれようとするジェネシスの動力部で破壊工作に勤しむジャスティスとストライクルージュであった。

 

「カガリ!」

 

「なっ!?」

 

初手にビーム砲とビームライフルの同時斉射でストライクルージュを狙うが、ジャスティスが身を挺して防ぐ。

 

「君か!アスラン・ザラ!」

 

「ラウ・ル・クルーゼ隊長!?」

 

まさかのカミングアウトに、アスランは驚愕する。

動力部に攻撃を加えて破壊して止めるという、まだ時間に余裕があるからこそできた行動だったがクルーゼの乱入でそれも難しくなりそうだ。

 

「前々から思っていたが、君も哀れなものだな。母を失い、友と撃ち合い、父に撃たれるとはね」

 

「何が言いたい!?」

 

ビームブーメランを投げて格闘戦を仕掛けるジャスティスに、プロヴィデンスはサーベルでブーメランを破壊し、ピクウス76mm機関砲を撃ってジャスティスに目眩ましをする。

 

「そういえば、君のお父上はどうしたのかね?いや、言わなくてもいい。ああいった者の末路は大体は死ぬ運命であるのはよく聞く話さ」

 

「ッ…!」

 

聞くまでもない、と遠回しに言われ一瞬アスランの頭に血が昇るがドラグーンの網を抜けたフリーダムとサイコ・ザクが合流する。

 

「アスラン!」

 

「キラ!」

 

互いの名を呼び合い、無事を確認する二人。

それに対してクルーゼは面白くなさそうに息をつく。

 

「フム…これはミスをしてしまったかな…?」

 

流石に4機とも相手になればクルーゼとて限界が近いプロヴィデンスでは無理というものである。

だが、アスラン達の目的はジェネシスの動力部の破壊である。

アスランらは知らないが、既に連合軍は外部からの攻撃では確実な破壊は望めないとして、核弾頭をジェネシス内部に持ち込み各区画に起爆装置を起動させていたりするのだが現状、連合軍も激戦で情報が錯綜しており、現在は撃沈した旗艦の代わりにドミニオンを旗艦に立て直しを図っているが、爆破のタイミングは完全にアズラエル次第にといったところだ。

そして、ザフトは言わずもがな。

パトリック・ザラが死んだ事で、既に敗色濃厚である事を理解していた司令部の者達は我先にとヤキン・ドゥーエから脱出していた。

 

よって完全に指揮系統が機能停止したザフト軍は、孤立して戦うかラクスに離反するかに分かたれた。

 

ちなみに核弾頭の話はグエムはクルーゼとの戦いに集中していたので完全に忘れていた。

という訳でアスランとカガリは変わらず動力部の破壊を、キラとグエムでクルーゼを抑える戦いとなった。

大量破壊兵器だけあって頑丈に作られたジェネシスは、動力部もかなり硬く作られており、破壊に一苦労である。

 

「落ちろぉっ!」

 

マシンガンを撃ちながら肉薄するサイコ・ザク。

プロヴィデンスはエネルギー消費を嫌がって回避行動に動くが、そこにフリーダムのフルバーストモードによる一斉射が飛び通う。

 

「クッ!」

 

「うおぉぉぉ!」

 

ジェネシス内部の壁を破壊し尽くすフリーダムに、クルーゼは破壊活動をするジャスティスとルージュを攻撃する暇はないと諦めてジェネシスから飛び出る。

既に稼働可能なドラグーンはなく、このままでは敗北は必至である。

 

「一つ、やってみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロヴィデンスを追いかけるフリーダムとサイコ・ザク。

しかし、宇宙に出てもプロヴィデンスの姿は見えない。

 

「どこだ!?」

 

グエムは周りを見渡すが、後ろからの殺気に気付く。

咄嗟に回避行動に移るがその時には既に左腕を肩からバッサリと斬られていた。

 

「ぐあっ!?」

 

「グエムさん!」

 

火花が散るコクピット。

遅れながら振り向いた機体がカメラに捉えたのはビームライフルをこちらに向けて撃とうとする光景。

銃口の奥から見える緑の光に、避ける事はできないとグエムは己の死を悟る。

だが同時に、そんな状況なのにも関わらず心は穏やかだった。

まるで静かな水面のように、今を見ていた。

 

「…………!!」

 

何かを掴んだ。

そう自覚するのに0.1秒もかからない。

サイコ・ザクの左足がこれまで以上の速さでビームライフルを蹴り上げる。

マシンガンは既に捨ててマニュピレーターでプロヴィデンスの顔面を肘で殴る。

一瞬、グエムが、サイコ・ザクが金色に光って見えたのは幻覚か。

キラが見たそれは普段の動きより格段に速く動いている、と解るだけだった。

 

「な、なにが…!?」

 

「俺のぉ……とっておきだぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

確実に殺したと、確信を持っていたクルーゼは反応できない速度の肘打ちによって吹き飛ばされて尚も混乱していた。

そんな彼に、サイコ・ザクが手にしていたのは最後の隠し玉ヒート・ホーク。

赤熱化したヒート・ホークが、バッサリと頭部を切り落とした。

 

「カメラがッ」

 

「墜ちろぉぉっ!!」

 

今度はプロヴィデンスの右腕をお返しと言わんばかりに肩から切断しビームライフルが爆散する。

 

「フェイズシフト装甲を破るだと…!?だがしかし、まだだ、まだ終わらんよ!」

 

「アガァッ!?」

 

右腕を失われてもまだ脚と左腕がある。

最大出力による長大なサーベルがサイコ・ザクの頭部を貫き、そのまま横に振るうことで横からサイコ・ザクを救援しようとしたフリーダムの頭部も吹き飛ばす。

 

「たかがメインカメラがッ!」

 

「キラァ!行けぇぇぇ!!」

 

後を託すグエム。

鼻血と涙、唾を垂れ流しながらそう叫ぶグエムに背を押されるようにキラはクルーゼと対決する。

 

グエムの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C.E.(コズミック・イラ)71年9月27日。

第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦は、レジスタンスによって救助されたアイリーン・カナーバ議員らクライン派の停戦の申し入れによって、後に第一次連合・プラント大戦と呼ばれる戦争は終わりを迎えた。

 

C.E.72年3月10日にはユニウス条約を結び、連合とプラント間の戦争は無事に停戦へと至った。

大量破壊兵器【ジェネシス】は第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦の際、ジャスティスと連合の破壊工作によって完全に破壊され多くの戦死者を出した。

 

一方で連合は今回の大戦で大きく疲弊し、また停戦後に英雄として担ぎ上げられていたブルーコスモスのムルタ・アズラエルの電撃引退は連合の軍事産業等に大きな影響を与えていた。

後任として収まったロード・ジブリールが尽力したものの、アズラエル程の手腕ではなく、またジブリール自体がコーディネイター排除の過激派もあってそんな彼を抑えるべく連合政府の動きは緩慢となっていた。

流石に軍が大きく疲弊し、その為にユニウス条約を結んだのに再び戦争を起こそうものなら連合の市民からの完全に信用を失う。

そして、そもそも疲弊した連合に幸いとばかりに独立をしようとする国々を抑える事にも力を割いていたので、また全面戦争する余力がないのだ。

 

 

一方で連合に支配されたオーブは、カガリ・ユラ・アスハ国家主席を中心に復興が行われていた。

オーブ軍に正式に所属する事になったキラ・ヤマト准将以下、アークエンジェル組は戦後のゴタゴタに乗じて隠遁し新たな生活を築いていた。

が、しかし本来プラント市民を導くべきはずのラクス・クラインもまたオーブにて半ば隠居生活をしており、惹かれ合ったキラとお付き合いをしているという。

キラ・ヤマト自体、かの大戦で精神的に大きく疲労し、最終決戦でのグエムに後を託されたキラとクルーゼとの戦いと舌戦は彼を大きく苦しめた。

決着はキラの勝利で終わったが、クルーゼの乗っていたプロヴィデンスは切断された手足のパーツを残して行方をくらましており、ザフトは状況からしてラウ・ル・クルーゼの生存は絶望的として彼を戦死処分とした。

まあ、爆発するジェネシスに巻き込まれたプロヴィデンスとフリーダムの事だ。

キラが生きているのなら、クルーゼが生きていても不思議ではないだろうとアスランはキラにそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、かの大戦を生き延びたアズラエルはというと……

 

「今回のコーヒーはベトナムとラオスの中煎りブレンド、ですか」

 

「疲労回復に良いって聞いてね。いやぁ、近所の奥様方の井戸端会議もバカにできないねぇ」

 

バルトフェルドと共にコーヒーを飲んで大量の書類仕事から離れて休憩していた。

彼曰く、「義体のコーディネイターだからといって書類仕事がてきなくはないでしょ?僕より優秀なんだから手伝え(意訳)」と言ってバルトフェルドを書類仕事に引っ張り出していた。

というかオーブに帰ってきたコーディネイター、ナチュラル共に仕事先に困った者達をアズラエルが雇っていたりする。

おかげでアズラエルのオーブ復興の貢献者となり、五大氏族から六大氏族になるのではと裏では囁かれている。

 

「ブルーコスモスは良いところでしたケド、命令を聞けないような奴が上にもいる奴等の頭なんてゴメンですよ」

 

と、兵士達の証言によりサザーランドの暴走がアズラエルの耳に入った為、グエムからもブルーコスモスからは足を洗った方が良いという助言もありブルーコスモスとついでにロゴスからも抜け出したアズラエルは、割と生き生きとしていた。

アズラエルのコネと資金力はロゴスの中でもかなりの上位であり、そしてアズラエルの手元には最強の切り札がいる事が分かっているロゴスメンバーは触らぬ神に祟りなしとして、アズラエルのロゴス脱退を黙認していた。

一応、ロゴスの事は何も喋らないし干渉しない代わりに脱退する云々の宣誓書もあったりする。

 

とにかく、色々あったが今の所世間体には連合の勝利に漕ぎ着けた英雄として連合の市民には祭り上げられている。

オーブの国民は流石に未だに敵視するものは多いが、オーブ復興や半ば難民と化しているオーブ国民の雇用などをしていけばそれも収まるだろうとアズラエルは考えていた。

それでもまだ問題は山積みである。

 

「コーディネイターが嫌いなのは相変わらずかい?」

 

「嫌いですよ。でも、使えるなら使いますよ。逆らわないでちゃんと僕に利益をもたらしてくれるのなら、それ相応の報酬は出さないと。社会奉仕の基本ですよ、基本」

 

「まあ、それはそうだな」

 

バルトフェルドは過激なブルーコスモスのリーダー故に、下っ端達が叫ぶような者達と同じような者ではないかと思っていたが、案外理性的なアズラエルに驚いていた。

まあ、漏れ出るコーディネイターへの憎悪は感じるには感じるが……そこら辺は世界の歪みに影響されたからとしか言いようがない。

積極的に排除しようとするロード・ジブリールよりはマシだと、バルトフェルドはそう考えてコーヒーを飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、グエムは―――

 

「アサギ!マユラ!今日の晩飯を抜かれたくなきゃ必死に当ててみせろ!」

 

「晩飯抜きは嫌だぁぁぁぁ!!!」

 

「私も同じよぉぉぉ!!!」

 

グエムは外部顧問として、オーブ軍に雇われていた。

そもそも肝心のサイコ・ザクが中破し、傭兵活動もままならないので当然とも言えよう。

アズラエルからも一時的に雇用から外されている。

まあ、友の頼みとあらばどんなモビルスーツでも友の敵になるやつを殺す覚悟はあるが。

 

とにかくオーブ軍は現状、政府共々再建と国力強化に奔走していた。

いつまた戦争が起きるか、考えたくはないが今の世界情勢では未だにありえる話なので備えることは大事だ。

その為にグエムを雇い、オーブ軍の新兵やベテラン相手に教鞭を取らせている。

まあ、最近はもっぱら実技指導だが。

 

 

 

 

 

 

「グエム〜」

 

シミュレーションの実技指導が終わり、帰ろうとするグエムを呼び止めるのは赤ん坊を抱いたマキナだった。

 

「おいおい、マルキオのトコの赤ん坊連れてきてどうすんだよ」

 

「だってこの子、私にずっごい懐いてくるんだもん……」

 

まさかとは思うが、パイのデカさで懐いていねぇよな?と落ち着くのかスヤスヤと寝ている赤ん坊に怪訝な目を向けるグエム。

そういう事を考える方が破廉恥極まりないという事を知ったほうがいい。

 

「起きてる時に離れるとすぐ泣いちゃうんだから、この子」

 

「まあ、赤ん坊にして母親も親父も亡くして孤児になってるんだから、恋しいもんだよな…」

 

まあ、赤ん坊にそんな助平心はないかと慣れない眼鏡をかけ直して考え直すグエム。

 

「眼鏡、やっぱ似合ってる」

 

「そうか?」

 

「いかにもマッドサイエンティストって感じ」

 

「失礼な!」

 

あの戦いの後、グエムの視力は低下していた。

その為、こうして眼鏡を掛けることになったのだが未だ慣れない日々である。

原因はやはり、クルーゼとの最後の戦いで見せた本来の反応速度を超えた蹴り以降だとグエムは考えていた。

 

「明鏡止水……まさかな」

 

何かを掴んだあの時、いつもよりもよりサイコ・ザクと一体化したような気がした。

本能的な所まで一体化したような、曖昧でなんとも言い難い体験だったが、あれから何度か修復中のサイコ・ザクに乗ってもあの現象は起きなかった。

だが、いつもよりも考えが澄み渡り思考が一つに絞られたあの感覚は忘れたくても忘れられない。

SEEDではないか、とも考えたが直感的に違うと感じたグエムはやはりあの時掴んだものは明鏡止水ではないかと考えている。

それでもあれは【武闘家】だから到れるものであって、一介の軍人が得れるものではないとグエムは思う。

だが、幸いにして視力が低下した原因は頭部を破壊された事によるものだろうと分かっている。

憶測混じりなのは、やはり人体と機体の融合という未到達領域故だろう。

 

 

宇宙世紀とは別の技術【阿頼耶識】と言う脊髄と機体を直接繋げることで、より直感的で生物的な動きができるという技術だ。

リユース・サイコ・デバイスと近しい技術であるが、こちらは物理的な接続だけでなく、ナノマシンも用いている。

 

作中ではガンダム・バルバトスの阿頼耶識をフルパワーで使った主人公である三日月・オーガスの右半身を不随にさせていたが、サイコ・ザクでも同じ様な事が起きないわけがない。

 

「まあ、失明だけじゃないだけマシか」

 

これで失明していたら完全にニートと化していただろうと思うと、グエムはサイコ・ザクで良かったと思う。

まあ、良くはないのだが。

 

「今日の夕飯はシチューだからね!」

 

「おー」

 

マキナは裏稼業から足を洗い、アズラエルの元で正規社員として働いている。

アズラエルが新たに立ち上げた会社は、その資金力とコネもあってすぐに大きくなったが、他の会社のバランスも考えて今は成長を緩やかにしている。

独占は結果的に不利益が生じるのは既に歴史が証明しているだけに、アズラエルが同じ轍を踏む訳が無いのだ。

 

それはともかく、現在マキナはアズラエルからの心遣いで長期休暇を頂き、マルキオ導師の所の孤児達の世話をしつつグエムの与えられた住居で同棲している。

 

通い妻である。

 

ゴールインはまだか、とアークエンジェルのメンバー達は密やかに、二人がいつくっつくのか賭け事が行われていたりいなかったりしているらしい。

 

 

 

 

 

たった二年の平穏。

その間も世界の何処かで誰かが戦い傷つき、死んでいく。

だが、今の彼らには休息が必要だ。

 

グエム・タキオンはその長いようで短い平穏を噛み締めるべく、鉄の足で今日も歩く。

今尚もサイコ・ザクを駆りたいだろうダリル・ローレンツにはもう味わえないだろう、平和な時間を過ごす為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――鬼は流星に至った。次なるステージは…―――

 

 

 

           〜Fin〜

 

 

 

 

 

 

 

 





プロヴィデンスの下格の薙ぎ払いはやっぱ強いって分かんだね。
射撃ガード付きで格闘拒否に持って来いや……(マキオン知識)

それはさておき(定期)、ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。
ここまで来れたのは皆様の応援のおかげでございます。
改めて感謝申し上げます。

さて、SEEDは終わりましたので次は種死もといSEED DESTINYになりますが、その間にちょっと休憩挟んで続きを書こうと思います。
オリ小説の方をとりあえず基盤だけでも書きたいのと、他の思いついたネタをとにかく排出してスッキリさせたいのと、並行して進めていた妖怪ウォッチの方も進めたいからですね。ハイ(焦)

まあ妖怪ウォッチの方はちょっと記憶がアレなんで微々たる進行になりそう。
丁度、火曜でもDESTINYやり始めてていつの間にか同期されてるなぁ、なんて思いつつこれからも頑張っていく所存です。
目指せ、FREEDOM!

感想、高評価、ここ好き、励みになるのでこれからも良かったらお願いします!

ジークアクス楽しみだよフォウ!
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