オーブを無事に脱出し、寄港した基地でミネルバの修理と補給を受けることになり、基地の屋上でレイとルナと一緒に休んでいると雑多なMSで構成された部隊、いや規模からすれば戦隊が寄港してくるのが見えた。
「なんだあれ?3機のザウートがデカイコンテナを引っ張ってるぞ。それに、変なジンまで着いてる」
「本当ね、見たことないわ。レイは何か知ってる?」
「いや、話にも、うん?口枷の付いたドラゴンのエンブレム、ドレイク戦隊か!」
「「ドレイク戦隊?」」
「ザフト特殊戦技戦隊、表向きはな。実際は懲罰部隊だ」
懲罰部隊、だからあんな旧式の装備なのか。ああはなりたくないと思いながら眺めているとそれが目に入り、驚きからドリンクを落とす。
「ちょっとシン、どうしたのよ」
「レイ、ルナ、あれ、カオスだ!」
ザウートが引っ張っていたコンテナから胸部が損傷しているカオスが搬送されていく。レイとルナも食いつくようにドレイク戦隊に注目する。
「あのトレーラーの部品、アビスか?」
「うそ、私たちがあれだけ苦戦した相手を旧式で倒したって言うの!?」
ガイアは見当たらないが、それでも大戦果を上げたといっても過言ではない。同時に自分達の尻拭いをさせてしまったことに心苦しくなる。
本当に自分は変われたのだろうか。オーブに居た頃の弱い自分のままではないのか?いや、少しは強くなった。それはあのMAを撃破したことからも明らかだ。だけど、それだけでは足りないのだと思わされた。
気付いた時にはドレイク戦隊の元に走っていた。そして男にされた。
いきなり突撃してきた赤服の坊やを食って男にしてやった翌日、少しは落ち着いた坊やが再びやってきた。今度は同じ赤服の男と女を連れて。軍人であることを舐めきっていたので三人まとめて食った。特にお嬢ちゃんは徹底的に。抵抗した坊っちゃんは調教した坊やに売られた。良い子の坊やには褒美をやる。
更に翌日、ちゃんとアポを取って正面から最低限の礼儀を保ってやってきた3人を迎え入れる。
「それで、話ってのはなんだい?」
「はい。カオス、アビス、ガイアのことなのですが」
「ああ、あれかい。正直ガイアが豹変したのは予想外だったねぇ。おかげでそこそこ被害が出た。ジンを2機も持っていかれるなんてねぇ」
「「「ジンを2機!?」」」
「ドレイク戦隊は懲罰部隊なんて言われてるけど、実態は死んでくれと思われてる奴らが半分を占める。本当に懲罰が必要なのは2割程度さ。ちなみに聞くけど、ただのオペレーターがナスカ級2隻分の資金を横流しなんて出来ると思うかい?」
「いえ、無理だと思います」
「あんたらを案内してきたのがそんな馬鹿げた罪を擦り付けられた子だよ」
まあ、私の監査として潜り混ませるため兼私腹を肥やすための事実だけどね。今はその上司の破滅を目の前で見せて調教したから問題無いだけだ。それをこの子達に話す必要はない。
「それはともかく3機に関してだけどね、パイロットは薬物なんかで強化したナチュラルだったさ。一人だけ捕虜に出来たからね。ただ薬物依存で死にかけてる。正確には薬物で調整しないと死ぬ」
「そんな!?」
「ザフトとしてはその技術が欲しいみたいでね。珍しくまともな補給を寄越してくれるのさ。たぶん、今日の午後の便でね」
タイミング良くメールが届き、補給品のリストと命令書を受領する。
「この話はここまでだよ。時間はたっぷりあるみたいだからね」
受け取った命令書を三人に見せる。以前から保留になっていた退役希望を全て許可、残った人員はミネルバ隊に合流。第2MS隊、及び陸戦隊に配置。合流後、情報部が調査した前回交戦した陸上戦艦を追撃、強化人間に関する資料と設備の強奪を行う。補給として次期量産機で落選したテスト機を配備する。
グフクラッシャー 6機
ドムトルーパー 3機
「両腕はザクの物に交換だ」
「背中もザクの物に」
「技術局はバカしか居ないのか?」
「現場を知らない頭でっかちばかりだよ」
「ドムもウィザードを外せ。スラッシュを持ってこい」
「弾槽をでかくさせろ。このままじゃ少なすぎる」
「武装ラックを増やすぞ」
ミネルバに搬入された機体を速攻でバラして改造を始める部下達にミネルバ隊の整備員が目を丸くする。
「わああぁ!勝手に資材を使わないで!」
「うるせえ!文句は上に言え!おい、スクラップ置き場から使えそうな部品をぶんどってこい!」
ミネルバ隊の整備員を押し退けて資材をドムとグフの改造に注ぎ込んでいく。それを満足気に眺めていると艦長に呼び出しを食らう。
「これは一体どういうことかしら」
内容は格納庫の件だ。
「見ての通り。受領した機体の整備だよ」
「それは分かるわ。私が言いたいのは資材を勝手に使っていることよ!このままだと元々配備されてる機体の整備が出来なくなるわ!」
「その件だけど、あの坊や達は当分出す必要は無い。出しても直援だけさせときな。軍人もどきを戦場に出すんじゃないよ」
「なっ、あの子達は」
「結果を出せずに資源を食い荒らす役立たず。文句があるなら私達以上の結果を出しな。あんたもだよ、艦長」
「私も役立たずと?」
「少なくとも格闘戦に強く射撃戦がそこまででもないルナマリアにガナードの使用を許可してる時点であんたの評価は議長の元恋人と言うコネで最新鋭艦と白服を与えられた雌狐だよ」
雌狐と言う言葉に顔を歪ませるけど、事実を叩きつけて黙らせる。
「次の作戦はこちらの人員だけで行う。ミネルバには足だけ貸して貰えば良い」
「くっ、良いでしょう。お手並み拝見させて貰います」
機体を立ち上げながらドレイク隊のMSに通信を繋ぎ最終ブリーフィングを始める。
「最終確認だ。我々の目的は陸上戦艦から強化人間に関する資料と設備の強奪だ。情報部から陸上戦艦の位置は判明しており、増援は無いとのことだが、恐らく間違っている。しかしながらMSと戦闘ヘリの補充程度と思われる。作戦の手順はこうだ。我々MS隊は陸上戦艦に取り付き陸戦隊を送り込む。その後艦周辺で遊撃。陸戦隊は艦内を捜索、目標を確認。資料を集め、ロケーターで位置を報告。MS隊で外壁を破り、設備を強奪。陸戦隊もこの時同時に離脱する。後はケツをまくってトンズラだ。何か質問は?」
『ミネルバの動きはどうなんです』
「今回は我々だけだ。現地までの足と帰りの足だよ。坊や達は直援さ。まっ、余裕があるなら止めを任せて多少の戦果を上げさせてやるけどね。家賃代わりさ」
『随分大盤振る舞いっすね』
「最新鋭艦だからね。みすぼらしい服は着せられないんだよ。コンペに落ちたとは言え高性能機を寄越してくれるぐらいにはね。この環境はあんまり手放したくはない。それに議長のお気に入りだから任務内容も今までの物よりマシになる。そう考えればこれぐらいの家賃は払ってもいいだろう?」
『ですなぁ。どうせこれからもヤバイ任務でしょうからなぁ』
「そういうことさ。フォーメーションはトライデント、順番を間違えるんじゃないよ!」
『『『了解』』』
暫く待機したところでオペレーターのメイリンから通信が入る。
『目標の陸上戦艦を補足しました。周囲に戦闘ヘリを20確認しています』
「了解。こっちは何時でも行けるよ。発進順はドム、陸戦隊を乗せたグフ、残りのグフの順番だ。間違えるんじゃないよ!それから艦長に回しな」
ドムがカタパルトに移動させられる中、モニターにグラディス艦長が映し出される。
「手筈通りだよ。ドレイク戦隊で任務は達成させる。余裕がありそうなら陽電子砲で陸上戦艦を落としな」
『こんな場所でタンホイザーを使えと?』
「時間をかけるなと言っているんだ。救援が来ると思いな!」
『まさか。この周囲に連合の基地なんて』
「じゃあ、あのヘリは何処から来た?侵攻用の簡易基地位は建設してるんだろう。こういう強奪任務ってのはね、さっとやって、さっと退くのがコツなんだよ。自信がないなら攻撃をする必要はない。判断はそっちに任せるよ。やるってんなら格納庫に医療班の準備と対MS戦装備の換装準備をさせておきな。ドレイクリーダー、ドム・トルーパー出るよ!」
カタパルトからドムが押し出され、ホバーで滑りながら後続を待って隊列を組む。スラッシュウィザードを装備したドム三機が横並びで先頭になり、その真後ろに陸戦隊が乗り込んでいるコンテナを持ったウィザードを装備していないグフがローラーダッシュで付き、更にその後ろにブレイズウィザードを装備したグフが付く。
「行くよお前たち!フォーメーショントライデント!ラムアタック!」
3機のドムがスクリーミングニンバスを展開し、攻勢防御シールドで陸戦隊を抱えるグフをカバーして一直線に陸上戦艦に突撃する。戦闘ヘリが慌ててミサイルや機銃でこちらを狙ってくるが全てスクリーミングニンバスに阻まれる。そして、そのまま陸上戦艦に三機のドムが肩部から激突する。激しい衝撃と共にコックピット内にアラームが鳴り響くがどれもイエローアラートなので無視して場所を空ける。ひしゃげた装甲から内部が見えているのでそこから陸戦隊を送り込む。その間はスクリーミングニンバスを解除する必要があるのでスラッシュウィザードのビームガトリングで薙ぎ払うようにヘリを撃ち落とす。
『陸戦隊、侵入完了!』
「あいよ!各隊、遊撃開始!」
ドムとグフ2機の小隊に組み替えて遊撃を始める。足を奪う部隊と機動兵器を狙う部隊とそれらをカバーする部隊だ。予想よりも早くMSが発進を始めたのでそちらに向かう。イエローアラートを確認すれば体当たりに使った左肩の反応低下とスクリーミングニンバスの出力低下。後者はオーバーロードのようで冷却が追いつけば問題なしと判断する。前者は予定通りだ。なので今回の装備はザクのビーム突撃銃とスラッシュウィザードのビームガトリングだけだ。
「来たよ、ダガーが2と、新型だね。ダガーから削るよ」
『『了解!』』
一瞬だけ左足を地面に接地させて強引にターンして突出してきた新型をスルーしてダガーにビームガトリングを放つ。慌ててシールドを構えるけど、それは悪手だ。こちらはホバー機であり、足は止まっていない。そのまま連射を続けながら横に回り込んで撃墜する。隣のダガーが驚いて足が止まっている所にビーム突撃銃を叩き込んで黙らせる。そして新型はこちらに気を取られてグフにビームを叩き込まれて爆散する。
「このまま出てきたのをやるよ!」
「艦長、ドレイク隊長から通信です。目標を確保した機体を先に帰還させるそうです」
「格納庫に連絡を入れなさい。受け入れ準備を。索敵、援軍はどうか」
「今のところ確認されておりません」
「そう」
どうするか、ドレイク隊長の言う通りに陸上戦艦を狙うか。狙うならタンホイザーを使うかどうか。幸い、ドレイク隊長が敵艦の足を奪ってくれている。問題はないはずだ。いえ、ここは素直に撤退しましょう。ドレイク隊長の言う通りだ。私は結果を出していない。まずは結果を出すことからだ。
「目標を回収次第この空域から撤退します。信号弾の用意を」
「撤退か。見えていないね。まあいいさね。引き上げるよ」
副長に通信を繋げて撤退を開始する。連合側には追撃する余裕はないだろうが油断はしない。
ギリギリ赤点回避だね。まっ、赤点回避のヒントは分かり易く教えておいたんだ。間違われる方が問題だから良しとしようかね。支援の一つぐらい寄こせばもう少し点数は高かったんだけどね。
「とりあえずはこれでステラも何とかしてやれるかねぇ」
『やっぱりウチで引き取るんですかい?』
繋げたままの通信から副長が質問してくる。
「モルモットにされるのを黙って見る訳にもいかないだろう?」
『上はそのモルモットを欲しがってると思うんですがね。特に量産できるのかを調べるために徹底的に解剖するでしょう?』
「そこは私の伝手でどうとでもするさね。まあ、それでもドレイク隊の一員として引き取るので限界だろう。施設での調整が出来ないと死ぬんだからね。まあ、いずれはもう少し何とか、週1位の通院なんかで生きていけるように成れれば万々歳って所かね」
『大変ですな』
「それがどうした?それこそが私だ」
『出来る限りお供しますよ』
「降りれる時に何時でも降りな。付き合う必要はないよ」
『ええ、降りたい時に降りますよ』
その笑顔から降りる気がないのが良く分かる。全く、馬鹿ばっかだね。