能無し鷹は、爪を失くす   作:鷹幸

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 実は私も、「彼」につきまとわれています。
 要らぬ情報でしたね。では、どうぞ。(1000字程度)




ストーキングされる日々

 突然だけど、私はストーキングされている。

 でも、私は嫌がることもないし、被害もまったくない。

 

 

 

 ある晴れた日、私はストーカーにつきまとわれていた。

 そいつは、足音も立てずに、私の背後をつけてくる。

 顔は判らない。いや、私は、見ようとなんてしない。

 でも、私と似たような服装で、似たようなものをもっているのは確認した。

 私が足を速めると、ストーカーも足を速める。ゆっくり歩くと、そいつもゆっくり歩く。

 まるで、私に憧れて、真似をしているかのように。

 でも、私は、そんな憧れの対象になるような人間じゃない。

 だからといって、(さげす)まれるような対象でもない。

 そう、どこにでもいるような、いたって普通の、変哲のない人間。

 そんな私につきまとうとすれば、途方もない変人だろう。

 何の目的があって行動しているのかは分からないし、理解したくない。

 ふと、ストーカーがいるのに気付いたのはいつだろうか、と私は思った。

 そう……、それは、かなり最近のこと。

 その以前からいたのかもしれないけど、とくに気にならなかったんだ。

 でも……、そいつがいることで、日常生活に何ら支障はなかった。

 とにかく、不思議な奴。

 そして、得体の知れない奴でもある。

 でも、なぜか親近感の湧くような……もう、とても不思議。

 ふと、歩みを止めて振り返る。すると、そいつも、似た動きをする。

 そして(からだ)の向きを戻し、再び歩きだす。そいつも、似た動きをする。

 これが、いつもの日常。

 

 

 

 ある夜。街灯が照らす道を、私は歩いていた。

 すると、どこからともなく、そいつは現れた。

 でも、いつもと何かが違う気がした。

 足が長い。

 いや、身長そのものが大きいのだ。

 私は、少し歩みを速めた。いつものように、そいつは私を追ってくる。

 だが、不思議なことに私は気づく。

 存在自体が不思議な奴だけど、もっと不思議なこと。

 なんと、そいつの身長が、縮んでいくんだ。

 そいつはマジシャンか何かなんじゃないか、と私は思った。

 どんなタネを仕込んであるのか、どんな仕掛けなのか。

 ううん、仕掛けなんてないのかも。

 もしかしたら、躰のかたちを自由自在に操れるのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、そいつの身長は、ついに私の背丈の半分になっていた。

 そのままどうなるのだろう、と考えていると、

 今度は、私の目の前に、二人のストーカーが現れた。

 びっくりしたけれど、私は立ち止まらなかった。

 だって、危害なんて加えてこないのだから。

 また少し歩みを進めると、そいつらの距離は急速に縮まり、一人になった。

 そして、真上からくる街灯の光を浴びて、そいつは消えた。

 

 

〝影〟という名のストーカーが魅せるイリュージョンに、私は少し興奮を覚えた。

 

 

 

 




 すぐにオチに気付かれた方も多いことでしょう。
 気付けなかったあなたは、背後にお気をつけください。
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