暴虐と平成とスライムがわちゃわちゃする話   作:Stuffing

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1.魔王降臨2019?

 それは、よく晴れたとある日の午後。

 

 ジュラ・テンペスト連邦国――通称・魔国連邦(テンペスト)に、激震が走った。

 

 大勢の魔物や人間が集う首都・中央都市リムル。

 賑やかなその地に、突如としてふたつの影が現れた。

 

「――ふむ、妙だな」

 かたや、紫紺の双眸を炯々と輝かせる黒髪の青年。

 

「――ったた……って、どこだここ?」

 かたや、穏やかなうちに芯のある面立ちをした茶髪の少年。

 

「、何ごとだ!!」

 遠巻きに取り囲む群衆の中、ちょうど巡回中だったらしいベニマルが駆けつける。

 どこからともなく落ちてきたのか、中心には僅かに土煙が立ち残っていた。

「――そこにいるのは何者だ。何の目的があってこの地にやって来た」

 場合によっては実力行使も辞さない――腰の剣に手を掛け、暗にそう告げるベニマル。

「目的は分からぬ。何ぶん気付いたらいきなりここにいたのでな」

 対する黒髪の男は、だが傲岸不遜を体現したかのような笑みを浮かべて言った。

「分からぬ、だと……?」

「まあ良い。名を聞かれたのだ、答えてやらねばな」

 信用できない、と眉根を寄せるベニマルも意に介さず、男はどこか嗜虐的な笑みを更に深めて言い放つ。

「俺の名はアノス――アノス・ヴォルディゴード。ディルへイドを統べる、『暴虐の魔王』だ」

「ディルへイド? そんな国、聞いたこともないぞ」

 今にも剣を抜きそうなベニマル。その警戒も当然だった。

 そも彼らにとっての魔王とはすなわち世界の調停者。たとえ彼らの主のように真なる魔王として覚醒せずとも、ただそこに在るだけで並の者たちへの影響力は凄まじい。そんな存在を伊達や酔狂で名乗る者などこの世界にはいないのだ。

 故に、眼前の男の実力はある程度本物ということになる。

 男――アノスとやらが、何の目的でこの魔国連邦(テンペスト)を訪れたのか。如何なる理由にせよ、無断でこの地に足を踏み入れた以上は捕縛および尋問あるのみ。

 密かに念話を飛ばして自らの親衛隊である紅炎衆(クレナイ)を呼び寄せながら、ベニマルは剣の鍔に手を――

 

「……あんた、魔王なの?」

 

 ――あまりにも唐突に。

 この場に似つかわしくない呑気な声を上げたのは、茶髪の少年だった。

 正直、彼のことは誰も気に留めていなかった。ベニマルにもその他大勢にも、何の変哲もない、ただの人間にしか見えなかったが故に。

「俺は常磐(ときわ)ソウゴ。よろしく」

「トキワか」

「あ、ソウゴって呼んで。そっちが名前だから」

「成る程。変わった風習だな」

「俺の国とかだと皆そんな感じだよ」

「ほう」

 ――故に、一同が次の発言に度肝を抜かれたのは自明だろう。

「ねぇ、俺と友達になってくれない? 魔王友達にさ」

「……は?」

「ほう?」

 ベニマルとアノスの声が重なる。

「貴様も魔王か」

「うーん……正確に言えば、見習いかな。まだ俺の目指す王様にはなれてないし」

「王になりたいのか」

「うん」

「何故だ?」

「皆を幸せにしたいから。そういう世界を作るために、俺は王様になるんだ」

「そうか。良い夢だ」

「それでさ――」

「……――いや、待て待て」

 マイペースに問答を交わし続けるふたりに、茫然自失状態から復活したベニマルが割り込む。

「何?」

「どうした」

「どうしたじゃない。なんでいきなりお友達から始めるんだ」

 ――違う、そうじゃない。

 混乱しているのか妙なことを口走ったベニマルに、群衆とついでに紅炎衆(クレナイ)が内心でツッコむ。

「いや、そうでもなくてだな。……とにかく、アノスとソウゴとやら。俺についてきてもらうぞ」

 すっかりぐだぐだになった空気を蹴散らすように咳払いをして、正気を取り戻したベニマルが言った。

「何故だ?」

「お前たちが何者か、どういう理由でここに来たのか――そういう話を場所を変えてしようということだ」

「だそうだが……ソウゴはどうするつもりだ?」

「俺はついていこうかな。情報を集めるなら大人しくしといたほうがいいと思うし」

「ふむ、一理あるな」

「……こちらだ」

 色んな意味を込めたため息を零しつつ、ベニマルが背を向ける。そのあとに続くアノスとソウゴを、やはり遠巻きに眺める群衆。

 この様子では、そう遅くないうちに情報が広まるだろう――と。

 報告すべき内容を精査しつつ、今後のことに思いを馳せて遠い目をするベニマルであった。

 

 ――かくして。

 異世界より、ふたりの魔王が来訪した。

 それがこの世界に何をもたらすのかは――まだ、誰にも分からない。

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