暴虐と平成とスライムがわちゃわちゃする話 作:Stuffing
「…………あれ?」
常磐ソウゴがそれに気付いたのは、
「「失くしたものがある?」」
「そうなんだよー」
リムルの執務室で、三人の魔王が顔を突き合わせる。
「この世界に来る前はちゃんと持ってたし、他のやつは今も手元にあるんだけどね」
それだけが見当たらなくて、と項垂れるソウゴに、リムルが問う。
「ちなみにどんなやつなんだ?」
「うーん……変身アイテム、って言ったら分かる?」
「変身アイテム?」
「え、お前
特撮という文化のない世界から来たアノスとは違い、元日本人のリムルには分かったらしい。
「リムルは知っているのか?」
「まぁな。――要するに、それ単体で特殊な力を持っていて、肉体を強化して一般人でも戦えるようにすることができる道具のことだよ。鎧っぽい魔道具みたいなもんだ」
魔法じゃなくて純粋な科学の産物の場合もあるけど、という言葉は、純粋なファンタジー世界の住人を前に呑み込んでおく。
「で、俺はコレとコレで『仮面ライダージオウ』っていうのに変身するんだよね」
そんなリムルに続けて、ソウゴがどこからともなく懐中時計のような機械と、腕時計にも似た形の二回りほど大きな機械を取り出した。
「こんな感じで」
後者を腹に当てると、自動でベルトが出現する。
『ZIKU−DRIVER』
「ほう」
「ずいぶん渋い声だな……」
「実はこれ五〇年後の俺なんだよね」
言いながら懐中時計――ライドウォッチの白い部分を回すと、時計のような仮面の絵が現れる。
そして、その頭頂にある起動スイッチを押すと、王の名が高らかに告げられた。
『ZI−O』
「成る程。なかなかどうして、遅めの声変わりだな」
「それで済ませていいレベルじゃなくね?」
「……ぶっちゃけ俺も思ってた」
どこかゆるゆるな雰囲気の中、ソウゴはライドウォッチをジクウドライバーの右側――D’9スロットに差し込み、ドライバーの上の部分を叩く。
すると歯車の音と共に曲が流れ、巨大なアナログ時計が後光のように現れた。
その全ての長針と短針が過去を遡るようにぐるぐると回る。歯車は回転し、ただその時が来るのを待つ。
「――変身!」
ドライバーが回転し、世界が一周した。
針が示すは一〇時一〇分――それはアナログ時計を最も美しく魅せる時刻。
荘厳な鐘の音が鳴り響き、時の王者の降臨を今ここに祝福する。
『RIDER TIME――KAMEN RIDER ZI−O』
「声が違うな」
「ねー。……そういえば誰のなんだろう」
「お前も知らねぇのかよ!」
そうこうするうちに銀の帯が解け、ソウゴの姿が顕になった。
黒いアンダースーツに、白と銀を基調とした軽装の鎧。全体的に腕時計を思わせるデザインであり、ベルトを思わせる銀が胸元から直垂のように伸びている。
何より特徴的なのは、時計のようなその仮面。
そして、目に当たる部分に堂々たる様で刻まれたマゼンタ色の文字だった。
「顔に文字、って……」
「確かライダー、と読むのだったか」
予想外のデザインにひきつった笑いを浮かべるリムルと、既に日本語どころか大抵の地球語を習得し、その意味を思案するアノス。
そんな二人をよそに、ソウゴは淡々と他のライドウォッチを取り出した。
「意外と数があるんだな」
「まあ、平成の歴史は豊潤だからさ。例えばこのオーマジオウウォッチはQuartzerっていう敵と戦って、平成生まれだけを吸い込む穴に吸い込まれそうになった時に手に入れたんだけど」
「平成生まれだけを吸い込む穴って何?!」
「ソウゴ、このひと際魔力を宿したライドウォッチの主は何者だ?」
「それ? ウィザードっていう魔法使いの仮面ライダーで――」
――斯くして。
意図せずソウゴの口から語られることとなった平成ライダーの歴史に、アノスは興味を抱き、リムルも興味を抱きつつ、だがツッコミのタイミングで頭を悩ませることになるのだった。
「――それで、失くしたアイテムとは結局何だ?」
一通りの話題が終わった頃、思い出したようにアノスが問うた。
「強化装甲のひとつ――みたいなものかな。『トリニティライドウォッチ』って言うんだけど」
そうして続いた言葉に、ふたりの魔王は釘付けになった。
「それを使うとね――
某祝福の鬼、及び各魔王の配下たちの登場は次回以降。