魔族少女のエロタナティブ   作:アナリザンド

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天才VS秀才

 

 

 

 エーレ。第8パーティ。二級魔法使い。

 およそ魔法の世界で、エーレのことを知らないものはいないだろう。

 あの、大魔法使いゼーリエの一番弟子たるレルネンの孫。

 そして、乙女ゲームを創りだした稀代の魔法使いの卵。

 エーレの名はそれなりに売れている。

 

 しかし、クリエイターとしての能力とは別に、彼女の戦闘スタイルはよくも悪くもお行儀のよいものであり、誇り高い品のある戦い方を旨としていた。戦う者としての彼女はまだまだひよっこもいいところで、一級魔法使いたちの実力に比べれば見劣りする。

 

 一言でいえば、優等生なのである。

 

 だが魔法学校での教え方がそもそも、そうなのだ。一級魔法使いという化け物じみた強さを持つ存在を創り出すのではなく、二級相当の優秀な人材を数多く選出することを目的とする。魔法とは人類発展の要であり、すばらしいものであるという教えがある。戦いにも利用できるが、敵を殺すための道具という意識は薄い。

 魔法の穢れた部分は、学校教育からは丁寧に取り除かれているからだ。

 

 そういった意味では、エーレは魔法学校が作り出した最高峰のパッケージ化された商品だった。

 

 ヴィアベルとの邂逅や、師であるレルネンのわずかな時間での教えによって、魔法学校のプログラムは、多少なりとも薄らぎ、()()()()()()()()()という、ごくごく単純な思想に呼び戻されつつあったが、それでも多年にわたる教育は、エーレを一般的な英才の範囲に収まらせている。

 

 いまも、エーレは空中に浮かびあがり、適切な距離を取りつつ、自身が最も得意とする魔法をいつでも射出できる状態を保っている。教科書どおりのお手本とも言える戦法。

 

 エーレにとってはルーチンワークみたいなもので、意識がやや散漫になる。

 自動的に、攻撃と防御のやりとりをしながら、他のことに意識が飛ぶ。

 

(ヴィアベル……。あの軽薄そうな女と戦って、大丈夫かしら)

 

 危険な香りがした。

 戦闘に臆することもなく、むしろ愉しんでいるように見えた。

 ヴィアベルも十分に危険な男といえたが、根底の部分では優しかったりする。

 

(大丈夫よね。あの女、幼くないし)

 

 ヴィアベルの好みからはずれているはず。

 しかし、そうなると、あの女と同年代の自分も好みからはずれることになるのだが、エーレは、これを『ロリコン矯正計画』だと考えている。

 

 場違いな思考が頭をよぎり、エーレは小さく首を振ってそれを追い払った。

 今は目の前の敵に集中しなければならない。

 

 エーレの視線が、数メートル離れた地上に立つ紫色の髪の少女を捉える。

 

 フェルン。三級魔法使い。――フリーレンの弟子。アナリザンドの妹。

 

 その表情は能面のようにつかみどころがなく、静謐な湖面のように、宙に浮かぶエーレを淡々と見上げている。フリーレンのように感情を抑える術を学んでいるのか。アナリザンドの騒がしさとは無縁のところにあるようだ。

 

(戦闘スタイルは、フリーレン寄りなのかしら?)

 

 伝説の勇者一行の魔法使い、フリーレン。その弟子であるという事実は、エーレにとって無視できない重みを伴っている。

 

 フリーレンはフランメの弟子であり、ゼーリエの孫弟子だ。

 見ようによっては、フェルンは曾孫弟子ということになる。

 

 対するエーレは、ゼーリエの一番弟子レルネンの弟子であるから、ゼーリエの孫弟子と言えなくもない。

 

 要するにこの戦いは、互いの師の名誉をかけた代理戦争なのである。

 

(この戦い、負けるわけにはいかないわ! お爺ちゃんの名にかけて!)

 

 エーレはキュッと唇を引き結び、杖を握る手に力を込めた。

 

 フェルンが使ってくる魔法は、今のところ一般攻撃魔法ゾルトラークと、基本的な防御魔法の二種類のみ。それなのに、その練度は恐ろしく高い。まるで、長年修行を積んだ老練な魔法使いが、最小限の動きで若手の荒削りな攻撃をいなすかのような。ともすれば古臭い戦い方だ。レルネンに似ているともいえる。

 

 曲射されるゾルトラークが、フェルンの杖からわずかな時間差をともなって二発放たれた。

 

 一撃は目の前。余裕をもって防御魔法を展開。前方に意識した瞬間に後方に攻撃が伸びる。それも、なんなく防御魔法で防げた。

 

 空中に次々と魔法陣が現れる。一般攻撃魔法の光がわずかに遅れて射出される。

 それらをひらりひらりと交わしながら、エーレも魔法で反撃する。

 しかし、フェルンのほうが手数が多い。

 凄まじい速射術。洗練されていて、隙がない。

 この戦いでは、ほんのわずかな油断が命取りになる。

 だが、それも一手一手。お手本どおりの戦い方だ。

 教科書の範疇を超えるものではない。

 

 お返しの一般攻撃魔法。

 フェルンは予想していたのか、まったく焦る様子もなく防いだ。

 

「一般攻撃魔法と防御魔法。基礎的な魔法しか使わないのね。手の内は見せないつもりかしら」

 

 エーレは攻撃を加えながら言った。

 

「戦闘では基礎的な魔法以外使わないように言われてますから」

 

「フリーレンの方針なのね。アナリザンドは戦い方について教えてくれなかったの?」

 

「アナリザンド様は、あまり戦いを好まれない方です」

 

「……そう」

 

 確かに、アナリザンドと対話した限りでは、まちがいなく戦いとは無縁な幼女だ。

 

 クリエイターとしての基礎的な考え方、()()()()()()()()()という戦い方を教えてもらったものの、文字通りの意味での戦闘は見ていない。

 

 なんとなく弱そう、くらいのイメージしか湧かない。猫みたいだし。

 

――ただ、違和感。

 

 魔法インターネットという発明をなしたアナリザンドは、ある種、魔法の天才のはずだ。その思想を少なからず受け継いでいるのであれば、フェルンの戦い方にも、その影響があってしかるべきはず。しかし、その戦闘様式は、熟練の魔法使いそのもの。

 

 アナリザンドの頬のような、柔らかな発想とは無縁に思える。

 

 氷のように冷たく硬いイメージ。果汁80パーセントのジュースのように、フリーレンの占める割合が多いのかもしれない。だったら勝てる。こんな手垢のつきまくった戦い方に、人間が多年にわたり積みあげてきた魔法が負けるわけがない。魔法の歴史は克服の歴史。そして、エーレの戦い方は、人類の最先端なのだから。

 

「あなたも難儀ね。こんな戦い方、ヴィアベルが相手だったら今頃死んでいたわよ」

 

「それはおかしいです。この中で一番強いのは貴女ですよね?」

 

「どんな意味で言ってるのかしら。この状況を創りだしたのは――匿名掲示板に石を投げいれたのは、ヴィアベルの戦略よ。あいつは、アナリザンドみたいな幼女にしか興味がもてない変態だけど、戦い方だけはうまいのよ」

 

 ピクリと、フェルンが反応した。

 

「それは良いことを聞きました。ありがとうございます」意味深な微笑。

 

(怖っ!)

 

「あなた、ヴィアベルに何をするつもりよ」

 

「べつにどうこうするつもりはございません。ただ――、ロリコンのような害虫を振り払うのは妹の役目だと思いますから。ヴィアベル様には速やかにこの試験から退場していただくだけです」

 

「ヴィアベルを矯正するのは私よ。石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)!」

 

 エーレの杖の先端に魔力が収束し、周囲に存在する石や土くれを、確かな質量と破壊力を持つ立方体の切り石の弾丸へと変えていく。それが天から降りそそぐ雨粒のようにフェルンの目の前を覆った。

 

――ズドドドドドド。

 

 質量攻撃は単純に魔法の威力をあげる。

 まるで、バルカン掃射のように、雨あられと石礫がフェルンに降りそそぐ。

 フェルンの顔が、一瞬しかめられたように見えた。

 一般攻撃魔法とは比べ物にならない重さは、まるで砲弾を受け止めるようなものだ。

 防御魔法の出力をあげなければ防ぎきれない。

 

 このまま押しつぶす。

 エーレは、ふわりと地面に降り立ち、弾丸を、石礫を補充する。そのまま間隙を加えず放つ。

 

――石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)

 

 石の砲弾には、魔力制御がこめられ、熟練の砲手が目標を捉えるように、フェルンの急所へと撃ちこまれていった。フェルンの体躯が見えなくなる。

 

 と、思われた瞬間。

 

――ゾルトラーク。

 

 硬質な衝突音が連続し、フェルンは迫りくる石の弾丸の雨を、冷静にゾルトラークで撃ち落としていた。速度、角度、威力、そのいずれが欠けても、このような芸当はできない。針穴に一発で糸を通すような精密な魔力操作をおこなっている。

 

(この娘、天才ね……)

 

 だが、ある意味では型にはまっている。

 フェルンの戦い方は想像を超えるものではない。

 

 秀才の天才として、エーレは発想する。

 再び空中へ浮かび上がり、ドラガーテを連続で放つ。

 フェルンもすべてを撃ち落とすことはできないらしく、最小限の体捌きと的確な防御魔法を合間に挟みながら、やはりゾルトラークで反撃してくる。

 

 だが、一般魔法攻撃と質量攻撃であれば、単純にエネルギー差で押し勝てる。

 急所を狙ってくるゾルトラークを、一瞬の防御魔法で身を守りながら、エーレは身の回りに浮いたすべての弾丸を発射した。

 

――ズドドドドドド。

 

 避けさせない。フェルンの身体を縛りつけるように、圧倒的な弾幕で移動を封じる。

 攻撃の手を緩めない。精密射撃ではなく、むしろここでは容赦なくバラまく。

 

 フェルンはなすすべなく、いや――冷静にこちらを観察している。

 防御魔法を前面に展開しながら、エーレを鋭いまなざしで見据えている。

 

(そうやって、ずっと見てなさいよ)

 

 エーレはわずかに哂いをこぼす。あのヴィアベルに似た酷薄な哂い。

 フェルンが異常に気づいたときには、すでに遅かった。

 

 地面を穿った石の弾丸は、砕け散るのではなく、その魔力を核として周囲の土くれを吸い寄せ、ギシギシと音を立てながら、数体の人型のゴーレムを形成し始めた。それは、師レルネンが得意とするゴーレム生成術の、ほんの初歩。だが、今のエーレにとっては強力な一手となるはずだ。

 

――魔法使いは接近戦が苦手。

 

 もちろん、その言葉には得意不得意があり、一概に言えるものではない。

 ただし、多人数を相手にする場合、その動きは制限されるはず。

 

「行きなさい!」

 

 土色のゴーレムたちが、重々しい足取りでフェルンへと迫る。その背後から、宙に浮いたエーレはさらにドラガーテの弾幕を浴びせかけ、フェルンの意識を分散させようと試みる。

 

 フェルンは迫りくるゴーレムと、頭上から降り注ぐ石の弾丸を冷静に見据える。

 

――嵐の中で輝く灯台のような。

 

 茫洋とした中にも強い意志を秘めたまなざしが、エーレと交差する。

 

 怖気が走った。

 だが、これが現代戦だ。決闘とは名ばかりの、圧倒的手数で、相手を包囲殲滅する。

 

 ゴーレムが振り下ろそうとする土くれの拳を、フェルンは最小限のステップで回避。同時に、杖先から放たれたゾルトラークが、寸分の狂いもなくゴーレムの胸部を撃ち抜いた。鈍い音が響き渡り、ゴーレムは動きを止めた。その巨体が土埃を上げて崩れ落ちる。

 

「一撃!? それなりに硬いつもりなんだけど」

 

 エーレの困惑をよそに、フェルンは次々とゴーレムを打倒していく。石というそれなりに硬い物質をまるで粘土かなにかのように、破壊していく。

 

(いや、違う。こいつはHUDでゴーレムのコアを正確に撃ちぬいている)

 

 ゴーレムでは足止めにもならない。だが、ほんのわずかだが時間稼ぎにはなっている。フェルンがゴーレムを破壊した一瞬の隙を突き、エーレはさらに魔力を高め、ドラガーテの密度を上げる。

 

「まだよ!」

 

 次々と生成される石の弾丸が、先ほどよりも激しくフェルンを襲う。そして、その弾丸のいくつかは、再び地面に着弾し、新たなゴーレムを生み出そうと土くれを蠢かせ始めた。一体を破壊されても、すぐに次を生み出す。物量と波状攻撃で押し切る――それがエーレの狙いだった。

 

 

 

 

 

 フェルンは思い出していた。

 

 それは、長年修行をつけてもらってきたフリーレンの戦い方でもなく、アナリザンドのような抽象的でふわっとしていて、つかみどころのない考え方でもなく――。

 

 ハイターの教えだった。

 フェルンがフリーレンに出逢う前。ハイターには、魔法を手ずから教えられた。ハイター自身は僧侶であり、魔法使いではなかったので、基礎の基礎を学問として教えられたのだが、その経験がフェルンの中で生きている。

 

 物量と波状攻撃。そして、ゴーレムによるかく乱。

 

(魔法学校の教本にでも載っていそうな、実に正攻法な戦術ですね)

 

 ハイターが教えてくれた戦い方。

 

 実のところ、フリーレンは本を読めと促すだけで、直接的に教えてもらったことはほとんどない。フリーレンは師匠としては、実践主義者であり、敵の前に放り投げて、あとはがんばって覚えてねというタイプである。魔物との初戦闘時はガクブルしながら倒したことを覚えている。

 

 それは、もちろんフェルンが既に学びを終えており、あとは実践のみという段階だったからともいえるのだが、教本を片手に戦い方や生きのび方を教えてくれたのはハイターだったのである。

 

 だから、今も――。

 

 フェルンは、頭上から降り注ぐドラガーテの石塊を的確にゾルトラークで撃ち落とし、同時に足元から迫る土くれのゴーレムを冷静に処理しながら、心中で淡々と分析していた。

 

 エーレという魔法使いは、噂に違わず優秀なのだろう。あの乙女ゲームの作者だ。発想が豊かで、一つ一つの魔法の練度も高く、魔力量も豊富だ。

 

 だが、その戦い方はどこまでも予測の範囲内だった。

 

(フリーレン様なら、意表を突く手を使ってくるか、圧倒的な魔力で一瞬にして終わらせるでしょう。アナリザンド様なら、そもそも、こんな泥臭い戦いは選ばないかもしれませんね)

 

 ふと、二人の師であり姉である存在の顔が脳裏をよぎる。フリーレンからは魔法の深遠さと、戦いにおける冷静さを。アナリザンドからは……言葉にするのは難しいが、もっと自由で、既存の枠にとらわれない発想のようなものを、知らず識らずのうちに学んでいたのかもしれない。

 

 エーレのドラガーテは、確かに厄介だ。一発一発の質量が大きく、防御魔法で受け止め続ければ魔力の消耗も馬鹿にならない。ゴーレムも、数が増えれば無視できない脅威となる。

 

(ですが、この戦い方では、私には勝てません)

 

 フェルンは確信していた。エーレの攻撃は、全て『視える』のだ。

 軌道も、タイミングも、次に何をしてくるかの意図すらも。

 フェルンの思考能力は、エーレのクロック数を遥かに上回っている。

 

 だから、単純に手数で、そのスピードで、押し切れるという絶対的な自信がある。

 包囲殲滅しようとしているエーレの意図は、フェルンの速さの前に敗れ去る。

 

 エーレには速さが足りない!

 

 フェルンは、杖を頭上に掲げ、そこからゾルトラークを放つ。

 

「また、曲射?」エーレが呟くように言ったが、違う。

 

 放たれた光は、ぐるぐると渦巻を描きながら、周囲にいたゴーレムたちの核を正確に撃ちぬき、たった一撃で、すべてのゴーレムを倒しつくしたのだ。

 

「ありえない……。なんなのよ。あなた」

 

「一般攻撃魔法です」

 

「まだよ!」

 

 また、ドラガーテ。そしてゴーレム生成。

 エーレの頬に汗がつたっている。

 

 彼女の戦い方は、消耗が激しい。一般攻撃魔法よりも質量攻撃は消費が激しくなるし、しかもゴーレムを生成し、動かしているのだ。エーレの息はあがっており、魔力が揺らいでいるのが見えた。

 

 フェルンは冷静に、石礫を撃ち落とし、エーレに向けて、次々とゾルトラークを放っていく。

 

 放つ。放つ。放つ。

 

 ド、ド、ド。

 

 ドドドドドドドドドドドドドド!

 

 ゾルトラークの発射音が間断なく続く。

 

 ゾルトラーク。ゾルトラーク。またゾルトラーク。

 

 フェルンの杖先から放たれる光条は、雨のように、滝のようにエーレへと降り注ぐ。

 

「こんな力業、馬鹿じゃないの……!? 品性の欠片もない!」

 

 エーレは、先ほどまで、自分がやっていた戦法のことなど忘れて、フェルンがいま執行している包囲殲滅のための最も単純な飽和攻撃に顔をしかめていた。

 

 既に、エーレは詰んでいる。詰めろの状態だ。

 

 一発一発が正確にエーレの防御魔法の僅かな隙間を狙い、あるいは次の攻撃の布石となり、徐々に、しかし確実にエーレを追い詰めていく。

 

「あ……、さ、捌ききれない」

 

 ドォンという炸裂音が響き、エーレの姿は煙の中にかき消えた。

 

 

 

 

 

 エーレは亀のように身を固めることしかできなかった。

 もはや避けるなどということができる余地はない。

 反撃を繰り出すこともできない。

 

――超高密度で降り注ぐゾルトラークの豪雨。

 

 それはもはや魔法の応酬ではなく、純粋な暴力の奔流だった。

 

 エーレは必死に防御魔法を展開するが、次から次へと襲い来る光条は、容赦なくその障壁を削り取っていく。視界は白く染まり、耳をつんざくような炸裂音が鼓膜を揺さぶる。

 

(つ、強い……! これが、フリーレンの弟子の、本当の力……!)

 

 押しこまれる。

 このままでは負ける。脱出路を探すも、コックピットのように魔法防壁が周りを覆っており、どこにも逃げ出す余地はない。魔力が尽きかけているエーレには押し返すだけの力も残っていない。

 

 終わる。終わりたくない。

 

 エーレには夢があった。それは自分の創ったゲームがみんなに楽しまれるという、他愛のない乙女のような夢であったが、彼女の魂を支える大切な概念だったのだ。

 

(こんな……こんなところで……! 私は、まだ……!)

 

 朦朧とする意識の中、エーレは歯を食いしばり、必死に耐える。

 思い出す。魔族に村が襲われた時を。

 理不尽に命が奪われていく光景を。そうなるはずだった。そうはならなかった。

 

 ヴィアベルに救ってもらったからだ。

 あの光り輝くような頼もしい()()を、エーレは思い出す。

 

 その時、人を殺す魔法の向こうから、冷徹な紫色の瞳が再びエーレを捉えた。フェルンは、攻撃の手を緩めることなく、エーレが弱っている様子を観察し、さらにゾルトラークを放つスピードをあげた。その姿は、まるで情け容赦のない処刑人のようだ。

 

(もう……ダメ……!)

 

 迫りくる白い閃光。死を覚悟したエーレの脳裏に、不意に、ある光景が鮮やかに蘇った。

 

 それは、幼い頃、祖父レルネンが語ってくれた物語。いかなる困難にも屈せず、絶望的な状況から人々を救い出した、伝説の勇者ヒンメルの姿だった。

 

――ヒンメルなら、こんな時、どうしただろうか。

 

「勇者様……私を……守って……!」

 

 エーレの唇から、悲痛な叫びが漏れた。それは祈りにも似た、心の底からの願い。その瞬間、彼女のなけなしの魔力が、最後の輝きを放つかのように燃え上がった。エーレの前面に展開された防御魔法が、一瞬、眩い黄金色の光を帯びる。

 

 そして、エーレの瞳には、確かに見えた。

 

 降り注ぐゾルトラークの光の奔流の前に、凛として立ちはだかる、蒼色の髪をなびかせた英雄の背中を。その手には聖剣が握られ、どんな絶望も切り裂かんとする強い意志が、その全身から放たれているように感じられた。

 

――顔は見えない。

 

 もしかすると、ちょっとだけヴィアベルに似ているかも。

 

 そんなことを思いながら、エーレはふっと力を抜く。

 絶対的な強者に、守られている安心感。

 

 圧倒的な光線が、英雄の幻影と激突する。

 世界が白に染まり、轟音が全てをかき消す。エーレは、その衝撃に意識を失いかけた。

 

――どれほどの時間が経っただろうか。

 

 舞い散る砂煙が徐々に晴れていく。奇跡的にエーレは無事だった。

 

 全身はボロボロで、魔力もほとんど残っていない。だが、確かに生きている。あの絶望的な攻撃を、エーレは耐えきったのだ。

 

「何をしたんです?」フェルンは不思議そうな顔をしている。「いったい、何を……」

 

 アナリザンドがこの場にいれば、こう評しただろう。

 

――英雄の盾。

 

 エーレの魂の輝きが、絶対的な守護の力をもたらしたのだ。

 

「わからないわ」

 

 当の本人にも理解の及ばぬところであったが。

 

 全身を虚脱するような感覚が覆っている。完全にガス欠寸前で、体はふらつき、今にも倒れそうだ。もはや戦う力はほとんど残っていない。

 

 けれど、諦めることはできない。

 

「続けますか?」フェルンが聞いた。

 

「当たり前よ」

 

 わずかに息を整えて、エーレは啖呵をきった。

 

 

 

 

 

 フェルンは木立にまぎれながら、目の前に陣取るいくつもの石の要塞――トーチカを観察した。

 

 計七基。エーレが地面に手をつき繰り出した最後の一手は、周辺の石を寄せ集め、カマクラのようなサイズの、けれど人が隠れるには十分なサイズのそれを出現させた。

 

 土煙にまぎれながら、エーレの姿はいずれかに消えた。

 

 そして、トーチカは、ひとつの要塞のように生体的に動き、七つそれぞれがゾルトラークを撃ってきた。しかし、初撃で終わりだったのは、本当に魔力が尽きかけているからだろう。

 

(一気に勝負をつけたいところですが……)

 

 先ほどまでの戦闘を冷静に反芻する。

 

 エーレが放った、あの黄金色の防御魔法。通常の魔力強化とは明らかに異なる、どこか神聖さすら感じさせる輝き。そして、あの圧倒的なゾルトラークの奔流を、完全にではないにせよ、耐えきったという事実。

 

(フリーレン様が以前、人の想いが魔法に影響を与えることがある、と話していたのを思い出します。勇者という存在への強い思慕が、あの現象を引き起こしたのでしょうか。あるいは、北部魔法隊隊長ヴィアベル様への……いえ、それは考えすぎかもしれませんね)

 

 アナリザンドなら、もっと詩的な、あるいは科学的な分析をするのかもしれない。だが、今のフェルンにとって重要なのは、それが再現可能な現象なのか、そして、今のエーレにまだその力が残っているのかどうかだった。

 

(魔力はほぼ枯渇しているように見えましたが……油断は禁物ですね)

 

 ステルスの魔法を使い、完全に魔力を遮断しながら、HUDを使って相手の魔力を探る。逆探知の可能性もあるので、潜水艦のソナーのように、ほんの一瞬だけの発動。

 

(相手もステルスを使っている? いや、単純に魔力がほぼゼロなのかもしれません)

 

 完全にゼロということはないだろうが、少ない魔力量なら隠匿もたやすい。

 フェルンは魔力探知に優れているが、エーレも優秀さでは負けていない。

 基礎的な魔力隠蔽程度はこなすのだろう。

 

(トーチカに籠り、散発的な攻撃でこちらの消耗を誘うつもりでしょうか。あるいは、隙を見て奇襲を仕掛けてくるか……。どちらにしても、持久戦は避けたいところです)

 

 フェルンの魔力量はエーレを遥かに上回るが、無駄な消耗は好まない。そして何より、この試験は時間との戦いでもある。ユーベルもラントも、フェルンが接した時間は長くない。同年代と過ごした経験の浅いフェルンは、彼女たちの実力がよくわからなかったのだ。

 

 正直なところ、どちらが勝つか。というのもうまくイメージできない。

 

 それどころか、エーレという初めての同年代での強敵を前に、やはり自分なんかはたいした魔法使いではないと、勝手に低く見積もって、普段以上に慎重になっていたのである。しかし、慎重になればなるほど状況は悪化する。エーレも回復してしまうだろう。

 

 ゆえにフェルンは焦れている。

 

(トーチカは頑丈そうですが、一つ一つ破壊していくのは非効率的。かといって、下手に近づけば、あの石の魔法の餌食になる可能性も……)

 

 エーレのドラガーテは、一発の威力こそゾルトラークに劣るものの、その手数が厄介だ。

 要するに散弾なのである。

 トーチカを短い間隔で配置している狭い場所では、無類の強さを誇る。

 

(やはり……。最後は、アナリザンド様の教えに従うしかありませんね)

 

――光の子らのように進め。

 

 フェルンは、木立の中から悠然と躍り出た。

 

 

 

 

 

 エーレもまた焦れていた。

 

 彼女は、浅く掘った土の中に身を潜め、息を殺していた。

 

 トーチカは陽動。まさか、魔法学校首席の自分が、こんな泥臭い戦法を取る羽目になるとは思わなかったが、背に腹は代えられない。

 

 わずか一か月前、ヴィアベルに泥に沈みながら魔法を撃つよう訓練させられたときは、本気の本気で怨んだが、ここに来て役に立つとは思わなかった。

 

 だがそこまでしてなお、現状は、かなり絶望的といえるだろう。

 魔力はほとんど残っておらず、正面からの撃ち合いでは勝ち目がないことは、嫌というほど理解させられている。フェルンが手をこまねいて、こちらの魔力回復を待ってくれる、なんて悠長なことをするとは思えない。きっと何か、決定的な一手を狙っている。

 

 エーレは、じっと暗闇の中で、目をこらした。

 

 先ほどから、フェルンの姿を観測できない。ほんのわずかな殺気のようなものを感じ取って、このフィールドから離脱していないことは、かろうじてわかっていたが、姿どころか魔力すら観測できなかった。

 

(あいつ。あの年齢で、ステルスを使っているの?)

 

 それ自体は、エーレも使うことは可能だ。だが、戦闘モードに切り替えたときまで、ずっと魔力を隠蔽しつづける戦法は稀だ。どうせ視認できる距離であれば、ステルスの意味は薄い。

 

 HUDの誘導性能は光学的に相手をとらえた場合も威力を発揮する。

 

(一撃……。仕掛けるなら、一撃必殺しかないわ)

 

 エーレは、最後の魔力を振り絞り、ドラガーテの発動準備を整える。全身の神経を研ぎ澄まし、周囲の僅かな音、空気の揺らぎに意識を集中させる。フェルンが姿を現した瞬間、全神経をこめた正真正銘の最後の一撃を叩きこむ。もはやそれしかない。

 

 その時だった。

 木立の影から、ゆらり、と紫色の影が現れた。フェルンだ。

 何の衒いもなく、まるで森林浴でもするかのように、トーチカ群へとまっすぐ歩いてくる。

 

(何を考えているの……!? わざわざ、この殺し間に……!?)

 

 エーレは混乱した。

 

――罠か? それとも、こちらの潜伏場所を見抜いた上での挑発か? 

 

 だが、今は考える時間はない。フェルンは悠々と光の子らのように、トーチカ群の中心――エーレが仕掛けた最大のキルゾーンへと足を踏み入れようとしている。

 

(……来た!)

 

 もはや、ここしかない。エーレは全魔力を右腕に集中させ、地面から飛び出す勢いで杖を構えた。

 

「これで、終わりよ! 石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)!!」

 

 渾身の力を込めて放たれたドラガーテ。無数の弾丸が、フェルンを包み込むように殺到する。

 至近距離からの、回避不能の飽和攻撃。

 いくら魔法の天才でも、これを捌き切ることは不可能なはずだ――!

 

(さっきのお返し!)

 

 その瞬間だった。

 フェルンの姿が、まるで陽炎のように揺らいだ。

 次の刹那、彼女はエーレの視界から完全に消え失せていた。

 

(消えた……!? まさか――!!)

 

 エーレの膨大な魔法理論を記憶している類まれな頭脳、その脳裏に、ある魔法の理論が閃光のように過った。

 

――空間跳躍魔法。

 

 大陸魔法協会の高位魔法使いであるゼンゼが編み出したとされる、超高等魔法。理論こそ公開されているものの、その習得難易度はあまりにも高く、実用レベルで使いこなせる者はいないとされていた。それを、私と同じくらいの女の子が……!?

 

 驚愕するエーレの背後。

 

 ほんの数メートル先。先ほどまでフェルンが立っていたトーチカの中心とは真逆の位置。

 

 そこに、音もなくフェルンが出現していた。

 その紫色の瞳は、感情を一切映さず、冷徹にエーレを捉えている。

 冷たい刃が首元に当てられたかのような、背筋の凍る感覚。

 

 杖先には、既に螺旋状の軌道を描くゾルトラークが形成され、凝縮された魔力が眩い光を放っていた。

 

「しまっ――!」

 

 防御魔法を展開する暇すら与えられない。

 螺旋の光条が、エーレの身体を容赦なく貫いた。

 

「きゃあああああああっ!!」

 

 衝撃と共に視界が明滅し、エーレの身体は木の葉のように吹き飛ばされる。地面を数度転がり、ようやく動きが止まった時、全身には激痛が走り、口からは鉄の味が広がった。魔力は完全に底をつき、指一本動かすことすら億劫だった。

 

(……あ……れ……? 生きてる……?)

 

 朦朧とする意識の中、エーレは辛うじて自分の身体がまだ繋がっていることを確認した。致命傷のはずだった。ゴーレムが助けてくれるのかとも思った。お爺ちゃんがつくった優秀なゴーレム。

 

 だが、ギリギリのところで、守ってくれたのは、やはりあの光。

 英雄の盾。

 

(でも、もう……限界……)

 

 魂を削るような守護の力。それが、今のエーレに残された最後の砦だったのだろう。

 

 フェルンが、ゆっくりとエーレに近づいてくるのが見えた。その表情は変わらず冷徹で、杖先には再びゾルトラークの光が灯り始めている。歩き迫る。殺人マシーンのようになんの感情の揺らぎもなく、フェルンの顔が、杖が、視界いっぱいに広がる。

 

(嘘でしょ。そんな至近距離から乙女の顔めがけてぶっぱなす気? 正気じゃないわ、この子)

 

 エーレは、もはや抵抗する力も、言葉を発する気力も残っていなかった。ただ、迫りくる死の光を、虚ろな目で見つめるしかなかった。

 

 フェルンが、冷徹に二撃目を加えようと、杖に力をこめた、まさにその時――。

 

「――そこまでだ、嬢ちゃん!」

 

 鋭い声と共に、一陣の風が巻き起こった。

 次の瞬間、エーレとフェルンの間に、見慣れた男の背中が割り込んでいた。

 服は所々切り裂かれ、鼻元には真一文字の傷があったが、その立ち姿は変わらず不敵だ。

 

「おまえもおっかねぇな……。目の前にいるのにまったく気配を感じねぇ」

 

 フェルンは無言のまま、杖をかまえなおしている。

 油断なき双眸は、ヴィアベルをじっと見つめ、ちょっとした敵意のようなものが垣間見える。

 もしかすると、アナリザンドを狙っているロリコン疑惑が、フェルンの中にも芽生え始めているのかもしれない。

 

「ヴィアベル……!」安堵と悔しさがこみ上げ、エーレの声が震えた。「遅いのよ! あんたが油売ってるから、私こんな目に……!」

 

 顔も服も泥まみれ。品性の欠片もない!

 

「悪ぃな。状況が変わった。引くぞ、エーレ」

 

 ヴィアベルがエーレの腕をひっぱり、無理やり立たせる。

 本当に容赦ない。

 

「え? でも……」

 

 まだ戦える、と言いかけたエーレの言葉を、ヴィアベルは遮った。

 目の前にいるフェルンも、初見殺しのソルガニールを使えば倒せるかもしれない。

 魔力も相当に消費しているはずだ。少々、卑怯ではあるが――。

 ヴィアベルはあいかわらずニヤついた余裕を見せながら、口を開く。

 

「こいつらには、どうやら四人目の仲間がいやがるみてぇだ。俺が戦ってた女の連れみてぇだが、厄介なことに変わりはねぇ。シャルフを探して回収するのが先決だ」

 

「四人目……? でも、あなたの魔法を使えば……この子くらいは」

 

 ちらりと、ヴィアベルはフェルンを見た。

 

「無駄だ。発動前にやられちまう。俺もあのクソ女にやられたからな。危ねえ橋はこれ以上わたるべきじゃねえ。逃げるべきときに逃げないやつは雑魚だ。そうだろ?」

 

 ヴィアベルの言葉は、どこか自分に言い聞かせているようでもあった。

 フェルンは、そのやり取りを黙って見つめている。

 杖は構えたままだが、追撃してくる様子はない。冷静に戦力差を測っているのだろう。

 そして、静かに口を開く。

 

「ここで、あなたがたを黙って引かせると思いますか?」

 

「戦闘はもう終わっている。あんたがその気なら別に戦ってもいいが、全力で抵抗するぜ。もちろんエーレもな。それでもいいのか」「もう無理」

 

「わかりました」

 

「……じゃあな、天才さんよ」

 

 エーレに肩を貸しながら、ヴィアベルはフェルンに背中を向ける。

 二人の姿が森の奥に消え、フェルンは杖をおろした。

 

 

 

 

 

 歩き始めて三分も経った頃だろうか。

 やがて、エーレの足がもつれ、その場にへたり込みそうになった。

 

「もう……立てない……。ヴィアベル、おんぶして……」

 

「へいへい、純粋培養のお姫様はこれだから困るぜ」

 

 軽口を叩きながらも、ヴィアベルは手慣れた様子でエーレを背負う。先ほどの戦闘で負った傷がズキリと痛むが、顔には出さない。それはヴィアベルも同じだろうから。

 

 エーレは安心しきったようにヴィアベルの首に腕を回し、そっと顔を寄せて、体重を預けた。

 大きな背その温もりが、なぜか心地よかった。

 

(……私の勇者様)

 

 そんな乙女フレーズが胸に湧く。

 恥ずかしくて口には出さなかったけれど。

 

「チッ、シャルフの野郎、どこでくたばってやがるんだ……」

 

 ヴィアベルはそんなエーレの気持ちに気づくこともなく、仲間の姿を必死になって探している。シャルフが失格になれば、パーティ全員が失格になるので、ヴィアベルの気持ちもわかる。それに、べつに失格にならなくても、彼は探すだろうとも思う。

 

「HUDは?」

 

「どっかで気絶でもしてやがんだろ。魔力隠匿は苦手そうだったからな。あいつ」

 

 確かにそうだろう。

 魔力探知も魔力隠匿も粗削りで、我流という感じだった。

 眼鏡をかけた青年の強さはよくわからなかったが、魔力隠匿という面では、眼鏡の青年のほうが優れている。シャルフが勝てたかどうかは怪しい。

 

 でも、エーレにとってはどうでもよかった。

 こうやっておんぶされている時間が、少しでも長く続けばいい。

 胸のドキドキが接着している背中から、伝わらないかが心配だ。

 

 ふと、エーレがヴィアベルの肩越しに、ぼんやりと森の奥を指さした。

 

「……ねえ。ヴィアベル。あそこ」

 

 エーレの指さす先、なんの変哲もない木の枝に、小さな鳥がとまっているのが見えた。

 幸せの青い鳥ならぬオレンジの鳥。シュティレだ。

 探そうとすれば見つからず、探さなければ見つかる。

 本当に世の中はままならない。

 

 ヴィアベルはエーレをおぶったまま、視線だけをシュティレに向けて魔法を放つ。

 

「――見た者を拘束する魔法(ソルガニール)

 

 強力な魔法によって縛り上げられたシュティレは、そのままボトっという音を立てて、金属製の置物のように、木のたもとに落ちた。

 

 そのまま、エーレをいったん地面におろし、視線をそらさぬままシュティレを鳥籠にいれる。

 ふぅ、と一息。

 

「手間かけさせやがって……」

 

 背中のエーレが、くすりと笑う気配がした。

 

「なんだったのかしらね。今までの私たちの苦労は……」

 

「ま、結果オーライだろ。これで一次試験はクリアだ」

 

 ヴィアベルはこともなげに言い、今度こそシャルフを探すために再び歩き出した。

 

 

 

 

 

――シャルフを見つけたのはそれから二十分後。

 

 手を組み、胸元に花を添えられている姿はまるで死者のようで。

 ご丁寧に花でつくった輪っかが、頭のうえに乗っけられている。

 こんなことをするやつはひとりしかいない。

 

「アナリザンドの野郎。ふざけてやがるな。利用したことへの仕返しのつもりか」

 

 ヴィアベルは一瞬で、犯人を看破し、吐き捨てた。

 遠くでカラスがアホーと鳴いた。

 

 

 

 




「暇だったので……」などと供述しており。
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