魔族少女のエロタナティブ   作:アナリザンド

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鋼鉄の花束を貴女に

 

 

 

 戦いの始まりは、優しく――静かに――そしてだんだんと強く。

 

 クヴァールがオーケストラの指揮者のように優雅に腕を掲げる。

 

 魔法陣がいくつも空中に出現する。魔力の高まり。HUDの数値はひとつあたり、さほど高くはない。いまの人類の魔法技術なら防ぐのは容易。

 

 しかし、運命の扉が、けたたましくノックされる。HUDの警戒音が、気忙(けぜわ)しい。

 

 黒いゾルトラークが幾重も飛来した。

 

――防御魔法。

 

 六角の青い光が、ゾルトラークを防ぐ。

 しかし、一撃ごとに重くなる。フェルンが見せたような速射性、フリーレンが見せたような追尾性、そしてデンケンが見せたような面での制圧力。

 ゾルトラークの歴史は、魔法の進化そのものだ。人間たちが80年かけて辿りついた領域に、クヴァールは一足跳びに追いつこうとしている。

 

 クヴァールは試しているのだ。音楽家が奏でる音に間違いがないか試みるように。一撃ごとに実験している。我こそはゾルトラークの創造主なのだと主張している。人間が改良を加えてきた、一般攻撃魔法とすら呼ばれるようになった、人類のゾルトラークに『否』をつきつけ、本当の完成を目指している。

 

 エーレは知らず息を呑んでいた。

 

 頭のどこか冷静な部分が、目の前の光景を現実だと認識することを拒絶していた。

 いや、エーレは優秀な頭脳を持っているからこそ、この戦いに勝てるイメージが湧かなかった。

 

 一次試験では、やはりどこか()()という雰囲気が漂っていた。ゴーレムに守られ、相手も同じ人間だ。命を奪おうとする者まではいないはず。なぜなら同じ人間だから。自分もそうなのだから相手もそうだろうと知らず考えてしまっていた。それが人類の思考特性なのである。

 

 思考に惰気が混じっていなかったかと言われれば、そうではないだろう。しかし、ここでは本当の殺し合いがおこなわれている。殺し合いだ。まだ学校を卒業したばかりの自分が、なぜか七崩賢レベルの魔族と殺し合いをしている。性質の悪い冗談のようだった。

 

「エーレ。ボサッとしてんじゃねえ!」

 

 ヴィアベルの怒号が飛ぶ。

 

 足が震える。杖を握る指先が、氷のように冷たい。オイサースト魔法学校の首席として積みあげてきた知識も、祖父レルネンから受け継いだ魔法理論も、この規格外の理不尽の前では、子供の砂遊びのように無力だ。

 

「エーレ! なんでもいいから撃ちまくれ。相手に撃たせるな!」

 

 ヴィアベルもシャルフも防御魔法を展開しつつ、エーレを守っている。

 そうだ。このまま攻撃されつづけるとまずい。

 

 自分の得意な魔法を放って牽制する。震える指で、必死に術式を組み立てる。学校の実習なら満点が取れるであろう、完璧な魔法構築。ゾルトラークに比するほどの速射性能。

 

――石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)

 

 だが、クヴァールはそれに視線をやることすらなかった。彼の周囲に展開された六角の防御魔法が、エーレの攻撃をまるで雨粒でも弾くかのように霧散させる。

 

「もう、防御魔法まで……」

 

 あまりにも簡単にコピーされている。いやコピーどころか、既に改良すら加えられている。ゾルトラークの対抗として開発された、これこそ元祖人類と呼べる魔法なのに。

 

 魔法の講義において、防御魔法はゾルトラークの対抗手段として開発され、その対抗手段を超克するために、質量攻撃が推奨されている。防御魔法は物理的な攻撃も防ぐが、大枠の理論としては、魔法そのものに対する同調作用で破壊力を削ぐというものであるからだ。

 

「教科書通りの綺麗な魔法ね。でも、それだけ。あなたには殺意が足りないわ」

 

 ソリテールと名乗る影色の魔族が、くすりと微笑む。その声は優しいのに、エーレのプライドを根こそぎ奪っていく。今まで積み上げてきた全てが、この一瞬で無価値になった気がした。

 

「耳を貸すな! エーレ!」

 

 ヴィアベルが吐き捨て、ワンドから牽制のゾルトラークを連射する。だが、それすらもソリテールは予測していたかのように軽やかに身を翻して回避した。その動きは、まるで舞踏。死と隣り合わせのこの空間で、彼女だけが優雅に遊んでいる。

 

 ヴィアベルが、相手の魔力を完全拘束するソルガニールを使わないのは、クヴァールが見上げるほどの巨躯であることと、ソリテールがその影に隠れるように姿をゆらめかせていること。

 

 そして、剣。ソリテールは影色の魔力でできた十数本の長剣を、まるで孔雀の羽のように展開している。ソルガニールは視界に全身を収めなければ効力を発揮しない。ソリテールにはわかっているのだ。アナリザンドの情報を解析し、最適解を導き出している。

 

 そうだ。アナリザンドは!?

 

――アナリザンドは来ない。

 

 小窓通信すら先ほどから断絶している。

 

 エーレの心に、最後の希望が潰える音がした。彼女はHUDのパーティ通信画面を横目で必死に見ていた。だが、そこに映るのは、他のパーティが各地で強力なシャドーと交戦し、苦戦していることを示す赤い警告表示だけ。アナリザンドのアイコンは、その火消しのために目まぐるしくマップ上を飛び回っている。もはや回避ルートはグチャグチャで、逃げきれない。

 

 突出した自分たちのところに他のシャドーが駆けつけないようにするのが手一杯だったのだ。

 

 助けはこない。その事実にエーレの心は折れそうになる。膝に力が入らない。

 この絶望的な戦場にいるのは、私たち三人だけ。

 

 ソリテールは、その表情を愉しげに見つめていた。

 

「あらあら、見捨てられちゃったのね。かわいそうに。でも、それが現実よ。誰もが自分のことで手一杯。あなたたち()()を守るために、自分が死ぬリスクを冒す英雄なんて、物語の中にしかいないの」

 

「だったら、自分(てめえ)が英雄になればいい!」

 

 ヴィアベルが、気炎を吐いた。その言葉はエーレに言い聞かせているようでもある。

 エーレの凍てついた心に、小さな火を灯す。

 

 英雄に……?

 

 そうだ。ヴィアベルはいつもそうだった。絶望的な戦場で、誰もが諦めかけた時、ただ一人、前だけを見据えていた。ヴィアベルがいる限り、まだ終わりじゃない。そう思わせてくれる何かが、彼の背中にはあった。

 

 それは、もはや英雄というよりも。

 誰かの勇気を奮い立たせる者。――勇者。

 

 だが、その覚悟すら、無慈悲な現実は嘲笑う。

 

「もういい年した大人でしょう。その年齢で英雄願望だなんて、終わってるわ」

 

「わりぃな。ガキの頃から変わってねーもんでよ」

 

「なら、幼心地のまま、死になさい」

 

 ソリテールの言葉は死刑宣告だった。

 

 彼女の背後に翼のように控えていた十数本の影の剣が、一斉に命を得たかのように宙を舞う。それらは、まるで獰猛な鳥の群れのように、ヴィアベルたちの上空を取り囲むように散開し、完璧な包囲網を形成した。

 

 キュルリと金属が鳴るような音と共に、それぞれの剣の切っ先から、禍々しい紫色の魔法陣が浮かび上がる。一つではない。十数個の魔法陣が大広間の天井を埋め尽くし、あらゆる角度から三人を冷徹に睥睨していた。

 

 高速で不規則に飛来する剣が、それぞれ個別の意志を持つかのように操られている。

 

 逃げ場はない。完全に制空権を握られた。ソリテールは、ただそこにいるだけで、この空間を完全な処刑場へと変貌させたのだ。

 

「さあ、幼年期の終わりよ。そしてあなたたち人類は終末期を迎えるの。さぁ――、あなたたちの魂は、ここでどれだけ美しく砕け散るのかしら? お姉さんに見せて」

 

 ソリテールの指が、わずかに動く。

 その瞬間、十数個の魔法陣が一斉に黒い輝きを放った。

 

――多角同時飽和攻撃(オールレンジアタック)

 

 回避不能の死のスコールが、三人に降り注ぐ。

 ひとつひとつの威力は小さい。

 だが、この場合は、その威力の小ささこそが絶望をもたらす。

 

 時間差で、角度を変えて、威力を調整して、HUDを使い、的確に急所を狙ってきている。

 もはや個々の魔法ではない。計算され尽くした、一つの巨大な殺意の術式だ。

 

 エーレたちは嬲り殺されようとしている。

 

 最初の数発を、ヴィアベルは気合で防御魔法を張って弾く。だが、背後から、側面から、頭上から、息つく暇もなく追撃の光条が突き刺さる。構築された術式の隙間を縫うように的確に撃ちはなたれる。防御魔法が悲鳴を上げ、ガラスのように砕け散った。

 

「ぐっ」

 

 ヴィアベルの肩を、エーレの足を、シャルフの腹を、極細のゾルトラークが貫く。抵抗できない。こちらもゾルトラークで魔剣を撃ち落とすが、ソリテールはそれに倍する魔剣を生み出している。

 

 飲みこまれていく。ソリテールの口腔に、ヴィアベルたちはかみ砕かれようとしている。

 

「シャルフ!」

 

 ヴィアベルがただ名前だけを呼んだ。

 それだけで、シャルフは了解し、鋼鉄の花弁で繭のように周りを覆う。

 その周りを、ヴィアベルとエーレが防御魔法でさらに覆った。

 

「あらあら、今度は亀さんなのね」

 

 そして、唐突に攻撃は()んだ。

 花弁の隙間から、ソリテールの様子をうかがう。

 

「もの悲しいわね」ソリテールはうっとりと血染められた床を見ている。「夏の線香花火って知ってるかしら。アナリザンドのデータにあったのだけど、最後の一本が落ちる寸前の美しさ、儚さ。わびしさ。いまのあなたたちに通じるものがあるわね。風情があるわぁ」

 

「……余裕かよ」

 

「そう、余裕よ。それに彼にも見せ場を与えなくちゃ」

 

 ソリテールに促されるようにしてクヴァールが手を掲げる。

 五芒星が手のひらに浮かぶ。魔力を溜めている。

 いや、こめられている魔力はさほどではない。クヴァールはじっくりと確かめるように術式を改変している。ゾルトラークの終極を、この場で創造しようとしている。

 

 史上初の()()()()()()

 

「ただの力任せの破壊能力がある魔法じゃないわよ」

 

 その仕組みは、単純な破壊ではなく、防御魔法に接触した瞬間に術式そのものを解体する。

 防御魔法をクラッキングする情報魔法なのだ。

 

「口がきけない彼の代わりに言ってあげるわ。名づけるなら、そう――」

 

――ゾルトラーク・オメガ。

 

 ソリテールが、うっとりとその名を口にした。

 

 クヴァールの手のひらに宿る黒い光は、もはや魔力の奔流ではない。それは、あらゆる防御という概念そのものを否定する、一点の無。その闇が放たれた瞬間、シャルフが作り出した鋼鉄の繭も、ヴィアベルとエーレの防御魔法も、全てが無意味と化すだろう。

 

 エーレたちは動けない。

 モルモットのように、ただクヴァールの魔法に曝されるのを待つのみ。

 繭の中から飛び出せば、ソリテールの多角飽和攻撃で、死が早まるだけ。

 いずれにしろ、死ぬ。

 

「ヴィアベル……」

 

 シャルフが、口から血を滴らせていた。

 腹には穴があいている。臓器は避けたようだが、このままではいずれ死ぬ。

 

「俺が時間を稼ぐ」シャルフはまっすぐにヴィアベルを見据えた。

 

「笑えねえ冗談だな。その怪我で動けば確実に死ぬぞ。瓶を割ったほうがまだ助かる確率は高いかもしれねえ。エーレおまえもだ。俺が時間を稼ぐ」

 

「ヴィアベル」

 

 男には視線だけで通じる言葉がある。

 

「……そうかよ。悪かったな」

 

 ヴィアベルはシャルフの肩に手を置いた。シャルフは軽く頷いた。

 それだけだった。それだけで、すべてを了解した。

 

「シャルフ。ダメよ。殺されちゃうわ!」

 

 エーレは納得できない。それはシャルフの身を案じてというよりも――もちろん、案じてはいたのだが、この理不尽な状況で、仲間が死ぬ。そんな暗い予感に心が耐えられなかったのだ。

 

 だが、シャルフはエーレの悲痛な叫びに、答えなかった。

 彼は立ち上がり、確かな足取りで鋼鉄の繭の出口へと向かう。その背中は、致命傷を負っているとは思えないほど、堂々としていた。

 

「悪いな、エーレ」

 

「なんで?」

 

「――嬉しかったんだ」

 

 

 

 

 

 シャルフ三級魔法使い。

 彼には魔法の師と呼べる存在はおらず、我流で魔法をおさめてきた。

 魔法だけが友達というつもりはないが、そもそも魔法にはそういったストイックさが求められるのであり、仲間や友といった存在は、魔法の強度を弱めるものと考えていたのだ。

 

 転機が訪れたのは、ラントとの決闘。

 あのとき、ラントには我流の危うさを指摘された。

 それだけなら、まだ自分が弱かっただけだと納得できただろう。

 

 しかし、ラントとの戦闘に敗れた後、半ば意識を取り戻しつつあったシャルフは、電撃魔法を神経に喰らい、身じろぐことすらできない状態だった。ヴィアベルたちがかけつけるまで、たっぷり一時間、実のところ、死の恐怖と隣り合わせだったのだ。

 

 シャルフは認識していた。

 空中を泳ぐ魔物の群れに襲われなかったのは、アナリザンドが側にいてくれたからだ。

 アナリザンドは「ひとりぼっちはさみしいもんな」とわけのわからないことをいいつつ、その場に腰をおろして、じっと見守っていたのである。

 

――ひとりぼっちは寂しい。

 

 本心でいえば、そうなのかもしれない。実直でストイックな性格をしているとみられがちなシャルフも、本当は仲間と呼べる存在が欲しかったのだ。

 

――でも、できなかった。

 

 人に教えを乞うなんてできそうにないし、仲間ができれば、助け合いという義務が生ずる。わずらわしいと感じていた。魔法は結局のところ、ひとりで為してひとりで達成するものであるから、誰かのために魔法を使うというのがくだらないことのように思えたからだ。

 

 一次試験が終わったあと。

 シャルフはヴィアベルの魔物狩りに付き合わされていた。ほんのわずかだが気まずかった。パーティを勝利に導けなかった負い目と、自分の魔法への疑念が、彼を無口にさせていた。もともと口下手だということもある。

 

 焚き火の火を見つめるだけのシャルフに、ヴィアベルがこともなげに言った。

 

「おまえの魔法、悪くねぇな。女子供には大ウケだろ。エーレも褒めてたぜ。あれだけの花弁を操るイメージを持てるのは、並大抵の努力じゃ無理だってな」

 

「所詮我流だ。学校出のエリート様には、笑われるような魔法だろう」

 

 魔法学校の首席のエーレ。

 彼女は、ネットの世界で華々しい活躍をしている。

 ひとり孤独に、魔法を研鑽している自分と違い、一級魔法使いの祖父を持ち、魔力探知能力も魔法の術式構成スピードも比ぶべくもない。

 

 我流の限界。自分の限界を感じる。

 いや、その言葉は、防衛機制。

 あらかじめ自らを否定することで、傷つかないようにしている。

 ずっと、そうしてきた。そうすることで自分の弱い心を守ってきたのだ。

 

「我流? 結構じゃねえか」ヴィアベルは、初めてシャルフの目を見て、ニヤリと笑った。「得意な武器を研ぐのに、何の不都合もねえ。むしろ、お前みてえな尖ったやつがいる方が、パーティはおもしろくなる。……悪くなかったぜ、おまえとの連携」

 

 全身が震えるほど、嬉しかった。

 

 初めてだった。誰かに自分の魔法を、自分の存在を、真っ直ぐに認められたのは。

 仲間――そう呼べる存在ができたのは。嬉しかった。心の底から。

 

 だから――――。いや、理由なんかいらない。

 魂が震えている。シャルフは鋼鉄の繭から光の中へと身を躍らせた。

 

「ふぅん、一番の雑魚がお出ましね。捨て石にでもなりにきたの?」

 

 ソリテールは実験動物を眺める視線を寄こしている。

 

「ああ、そうだ!」シャルフは叫ぶ。「花は散るほど美しい!」

 

「じゃあ、さっそくだけど。あなたの散り際をお姉さんに見せて」

 

 魔剣が殺到する。

 かまわず、シャルフは杖に自分のすべてを捧げた。今この時に魂を燃やす。

 一面が花畑に覆われる。風もないのに、一斉に花弁が散る。

 

「――万花繚乱。咲き誇れ!」

 

「またそれ? 本当に芸がないわね。って、あら?」

 

 ソリテールが降りそそぐ鋼鉄の花弁を観測する。

 

 それは、鋭い錐のような鋼鉄ではなく、陽光を乱反射させる雲母のように、細かく薄い無数の鉄片だった。殺傷能力は皆無。だが、その膨大な数が、まるで光の吹雪のように大広間を埋め尽くしていく。

 

「これは……魔導欺瞞紙? 魔法が衰退しているこの時代に……?」

 

 ソリテールがアナリザンドの知識から似たような物理作用を導き出す。

 

――いわゆるチャフと呼ばれるもの。

 

 ソリテールの魔剣が軌道を乱される。HUDの表示がノイズで乱れる。クヴァールが眉をひそめ、魔力の照準が定まらないのを感じる。シャルフが放ったのは、単に視覚を攪乱するための魔法ではなかった。

 

 それは、この空間に存在するあらゆる魔力の流れを乱し、複雑な()()()()()()の構築を阻害する、極めて高度な対魔法領域。我流で、ただ一つの魔法だけを突き詰めてきたシャルフだからこそ到達できた、シャルフだけの結界。シャルフは、仲間を守りたいという純粋な想いを、彼が唯一信じた魔法に託す。

 

 この魔法に、派手な名前はいらない。ただ、咲き誇れと願うだけ。

 

 魔法と情報科学が融合した近未来においては、必ずこの魔法の名前があがるようになる。魔法管制射撃に対抗する手段のひとつとして、候補の筆頭となる。その歴史が今まさに始まったのだ。それは誰も知らない未来の魔法史。

 

 いまは、シャルフだけの魔法だった。

 

「俺の我流は……仲間を守るためにある……!」

 

 クヴァールが放とうとしていたゾルトラーク・オメガの術式が、魔力のノイズによって強制的に解体されていく。ソリテールの魔剣も、精密な遠隔操作が不可能となり、数本が制御を失って地面に突き刺さった。

 

「小賢しい……!」

 

 ソリテールは舌打ちし、最も単純で、最も確実な方法を選んだ。

 残った数本の剣を、直接シャルフへと向かわせる。軌道をずらされようが関係がない。単純な投擲に近い動作で、光学的にまっすぐ一直線にシャルフに迫る。

 

 シャルフが目を見張った。

 

 もはや、防御魔法を唱える魔力すらない。いや、もし唱えることができたとしても、尋常ではない魔力のカタマリである魔剣の勢いを殺すことはできないだろう。

 

 ヴィアベルが、エーレがなにごとか叫んでいる。自分の名を惜しんでくれている。

 シャルフは、その光景に満足げに微笑んだ。

 彼の身体を、ソリテールが放った数条の影の剣が貫いた。

 それでも、彼が作った光の吹雪は消えない。

 彼の魂が、仲間とともに在り続ける限り――。

 

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