魔族少女のエロタナティブ 作:アナリザンド
その日は、ミミにとって最上の日だった。
ひとつ注意しておくと、これから先の記述はすべて脚注になるということだ。
魔族には、最上もなければ最悪もない。
ずっと平坦な、なにごともない特別な一日が永遠に続く存在なのだから。
ただそれでも、魔族にとって魔力の多寡は存在比重の差異として感知が可能だった。
要するに、ミミは魔力値が低く、他の魔族からは見下されていた。少なくともミミ自身はそのように感じていた。直接殺す魔法や攪乱効果すらない。ただ人の姿を精密に写しとるだけの変身魔法。ミミはこの魔法に誇りを感じてもいたが、同時に不満を覚えてもいたのである。
魔法こそが価値や意味という言葉を持たない魔族にとって、唯一無二といっていい他者との尺度だった。人の心を持たない魔族であっても、かろうじて内面化できる
歪んだ鏡に過ぎない魔族であっても、それだけは絶対の真実だ。
どういうことが起こったのかというと、人間の視点でみれば他愛のない、ある意味ほのぼのとした出来事だった。
レヴォルテは目隠しをしている。
その目隠しと似たようなものを、レヴォルテから贈られたのだ。
「レヴォルテ様。これはどういう意味なのでしょうか?」
「鍛錬せよという意味だ。おまえはまだ脆弱な魔力しか持たない。魔力視を発達させれば、より早く動ける。より強くなれる。人間を容易く屠れるようになる」
目隠しと言えば、メカクレも同じように視線を布で遮っている。
レヴォルテと同じく武人としての気質が似通ってるからかもしれない。
それは極めて危険な誤解を生む表現であれば、家族であるかのようで――。
ミミは、幼子のように地面を跳ねた。
「レヴォルテ様。あたしもレヴォルテ様みたいに強くなれますか?」
「さてな。おまえに才があるかはわからない。だが、多くの一級と呼ばれる魔法使いを殺すうちに気づいたことがある」
「なんです? なんです?」
「才は最初から目覚めていることは少なく、眠っている場合が多いということだ」
「興味深いです。才能は目覚めさせるために鍛錬が必要ってことですね!」
「そうだな」レヴォルテはあえて言葉を濁した。「そういうことにしておこう」
「あたしも才が眠ってるのかなぁ?」
「無駄ではないと考えている」
ミミはそっと大きな手を伸ばされた。
柔らかな布が目の前に差し出される。それは小さくも、重みのある布。
それから、レヴォルテはミミに対して、目隠しをした状態で廃城の奥まったところ、人間たちが何に使っていたかはわからないが、懺悔室と呼ばれる場所へ向かうよう命じた。
そしてなんの意味があるのかわからないが、そこで待つように命じられたのだ。
瞑想でもせよということなのだろうか。
そういった鍛錬があることは知っていたが、ミミはその言葉に従うつもりだった。
期待されていると感じたからである。
自分の存在が認められていると感じたからである。
いや、そんな心は、魔族にあるはずもなかったけれど。
廃城の石床はひんやりと冷たく、目隠しをされたミミの足音だけが、やけに大きく反響する。
魔力視を研ぎ澄ませ。レヴォルテにはそう言われたけれど、未熟なミミに視えるのは、霧のような薄暗い魔力の残滓だけだ。
それでもミミは幸せだった。
(そういった感覚は魔族にはないが、そういう表情を選択しているのは事実である)
レヴォルテから贈られた布。その重みが、まるで自分という希薄な存在を世界に繋ぎ止めてくれる楔のように思えたから。
(いや、ただの気のせいかもしれない。生存に合理的な選択だからだろう)
「懺悔室……。たしか、こっち」
壁を伝い、ようやく辿り着いたその場所は、カビと埃の匂いが充満していた。
人間が女神という概念に自らの罪を差し出す箱。
魔族には罪もなければ、女神に赦しを乞う必要もない。
――ただの木箱だ。
ミミがその狭い箱の中に身体を滑り込ませたとき。
目の前には朽ち果てかけたボロボロの椅子があった。
そこに座って、何かを待つ。
待てと言われたのだから、その命令を遂行する。
無為に時間が過ぎる。光も音もない絶対的闇が広がる。
ミミはその間、一度もレヴォルテを疑わなかった。
やがて、5分か10分か。あるいは数時間は経過したころかもしれない。
箱の外からかすかに衣擦れの音がした。
「誰?」
ただ感じる。ものすごい魔力の圧を。
人間ではないことは確かだ。
魔力だけでみれば、レヴォルテよりもずっと強く、本能的にひれ伏したい気分になる。
だが、衣擦れの主は、ひとつも声を発さない。
暗闇の中ではいるのにいないのと同じ。
そして、それはネットを通じて密かに視点を共有しているアナリザンドにとっても同様のことが言える。ネットによる視点共有は、共有している主体の魔力は感知できるものの、その視線の向こう側にいる誰かのことは視点のみでしかわかりえないのだ。
音の主はやがて、ミミの背後にまで近づいた。
指先ひとつでも動かせば殺される。そんな気配すらして、ミミはわけもわからず命乞いがしたくなる。消えたくはなかった。死にたくはない。いくら異端の魂とはいえ、魔族にだって生存本能くらいは存在する。そうでなければ、とうの昔に絶滅していただろうから。
そっと――手に手が触れた。
鳥小屋よりも狭い木箱の中で、誰かが接着するほど近くにいる。
しなやかな感触。恐怖。困惑。不安。
ミミは目隠しを取り払ってしまいたいと思ったが、それを取り払ってしまえば、レヴォルテの期待を裏切る気がして、できなかった。
「どなたです?」
また言う。今度は敬意をこめて呼んでみた。
それでも背後にいる存在は何も言わない。
だが――。腕の先に何かを感じる。人間たちが使っている文字のよう。
ミミも幼く見えても既に何十年も人間という存在を観察している。
文字もあまり興味はなかったが、ひととおりは読める。本好きな子どもなんていくらでもいるのだから、そうしなければ捕食できなかったからだ。
その文字は――爪先で刻むように、何度も繰り返された。
言え。そういうこと?
ミミは、その言葉を唱える。
――我。
瞬間、何者かの手によって布切れが取り払われた。
目の前には半透明の小窓が浮かんでいる。
そして振り返ると、微笑。
わたしには見える。
ソリテールの姿。
ソリテールはミミを見ていなかった。
いや見ている。まなざしは確実にミミに向けられている。
けれど、ソリテールは、その背後にいるわたしを見ていた。
「どなたでしょうか」
ミミが魔族にしては礼儀正しく聞くも、ソリテールは慈愛の表情を選択しながら、目だけは笑っていない。そして、そっと沈黙を促すジェスチャー。人差し指を唇に当てる。
それだけでミミは黙ってしまった。
自分よりも遥かに強い魔力を持つ個体に命じられたのだ。
それに従うのは、魔族という階層構造を持つ存在にとっては当然のこと。
「久しぶりというべきかしら。アナちゃん」
「あたしは、アナリザンドじゃ……」
「……」
ゾッとするような視線を感じ、今度こそミミは言葉を失う。
どうする。空間転移をして。
「やめておいたほうがいいわ」
わたしと一言も会話をかわしていないのに、ソリテールはわたしを停止させた。
「あなたができるのは、ただ見ておくだけ。いくらあなたが早くても、魔力の揺らぎが空間に浸透するまで、わずかにラグがあるもの」
――何をするつもりだろう。
「あなたは何をするつもりかって考えてるでしょうけど、たいしたことじゃないの。これはただの実験よ。それよりも、あなた爵位まで戴いたそうじゃない。魔族が爵位持ちになるなんて素晴らしいわ。何百年ぶりかしら……。確か……600年ぶりくらい?」
――実験?
「実験というのは、これからおこなうことよ。この子を使ってね」
ソリテールは、もはや震えるばかりとなった憐れな検体に、すっと手を伸ばした。
頬に手が近づく。白くしなやかな指先が視界に広がる。
ミミの視界に、ソリテールの端正な顔が近づいてくる。
そうして、わたしをより精確に観測しようとしているようだ。
「それにしてもこの子、アナちゃん好みの顔立ちよね。レヴォルテに強請ったかいがあったわ。私にとってはとても都合がいい」
――殺すつもり?
いや、魔族に殺意はないが、実験とやらのために殺すことは考えられる。
「そんなつもりはないわ。この子はただの媒介物。わたしの実験対象はあなたよ」
まるで思考を盗聴されてるみたいだ。
ソリテールはわたしの思考パターンを読み取ることで、独り言を対話として成立させている。
「ねえ、アナちゃん。あなたはこの子のことも救いたいのよね? 聞かなくてもわかるわ。でも、そんなことにはならない。私が絶対にそうしてあげない。いつかの時も言ったでしょう?」
――魔族は悪意を抱けないはず。
なのに、ソリテールはわたしに対して敵愾心があるようにみえる。
「それはただの誤解よ。私たちの本質はずっと昔から変わっていない。変わっていないことが進化の証なの。アナちゃんだってわかっていることでしょう」
――じゃあなんで。
「だから実験なのよ。面白いじゃない」
ソリテールの魔法の根源は――観測欲――。
わたしと似ている。
「さぁミミちゃん。お姉さんの言う通りにしましょうか?」
「ど、どうすればいいんです?」
「いい子ね。教えてあげる」
ソリテールは、恐怖で硬直するミミの影に隠れるようにして、小窓を操作し始めた。
「ねえ、アナちゃん。人間たちはあえて考えないようにしてるみたいだけど、それを思い出させてあげたら、きっと愉しいことが起こるわ」
ソリテールの指先が空を舞う。
――やめて。
「やめないわ。実験だもの。あなたが干渉すれば殺す。あなたが干渉しなければ二度とこの子が人間たちに受け入られることはない。いずれにしろこの子は助からないけど、アナちゃんはどちらを選ぶのかしら?」
それは三度目の街への侵入に他ならなかった。
ソリテールが微笑を浮かべる。あの壊れることなき永遠の微笑を。
その日は、わたしにとって最悪の日だった。
【騎士爵アナ様の街を祝うスレ】
11:名無しの魔法使い
ついに爆誕してしまったって感じやな
アナちゃんはワイが育てた
17:名無しの魔法使い
街の元の名前がもう思い出せない
確か、一級魔法使いゲナウの故郷だった気がするんやが
24:名無しの魔法使い
冷静に考えると異様な風景なんだがな
街で出迎えてくれるのは、ヴェールを被ったアナちゃんで
「ここはゲナウ先生の故郷の街だよ」って言ってくれる
具体的な名前を聞いても
「ここはゲナウ先生の故郷の街だよ」
変わらない
なんやこれ? かわいいけどさ
30:名無しの魔法使い
ひとりひとり微妙に反応が違うみたいっすよ
「ここのパン屋さんはとってもおいしいの」
「騎士団長さんはとても強い人だよ」
「武器は装備しないと意味がないよ」
35:名無しの魔法使い
宿屋で一泊するとなぜか
「ゆうべはお楽しみでしたね」
って言われた
俺、なにもしてないんだが
アナ様でアナ様したくらいか
37:名無しの魔法使い
しとるやないかい
38:名無しの魔法使い
騎士爵様やぞ
もうアナちゃんは俺らの手の届かないところに行ってしまったんや
アナ様でアナ様したらダメなお方なんや
でも高貴なアナ様をアナ様するのってなんかいいよね?
42:名無しの魔法使い
騎士団の巡回ちゃんとしてるのえらい
48:名無しの魔法使い
騎士団の皆々様方と、それに付き従うアナ様たち
どう見ても、子連れのお父さんとお散歩してるようにしか見えなくて草
55:名無しの魔法使い
俺んち、ちょうど大陸魔法協会の建物の目の前にあるんだけど
毎日、顔をあわせる際に、「こんマゾ」って声をかけてもらえる
これが……恋か
こいマゾ……
57:名無しの魔法使い
病気ですね。お薬は多めにお出ししておきます
それとも回復魔法がよろしいでしょうか
63:名無しの魔法使い
水路近くをなにげなく小窓開きながら歩いていると
危ないことしちゃだめだよって言われた
それからは毎日同じことをしてる俺がいる
これが、こいマゾか
69:名無しの魔法使い
>>63
迷惑なやっちゃなー
マジで危ないんでやめろ
ちなみに、声かけは不審者に対してもおこなわれるらしいぞ
74:名無しの魔法使い
アナ様に不審者認定されてるとか逆に興奮するんだが
80:名無しの魔法使い
雨の日はヴェールがちょっと透けるのえっちだと思います
86:名無しの魔法使い
いちおうお貴族様なんだが?
不敬罪なんだが?(狂信ムーブ)
87:名無しの魔法使い
でもえっちじゃん
92:名無しの魔法使い
アナ様にとってはえっちイズオーケー理論が適用されるからな
まあ、御触りがない限りは問題ないよ
98:名無しの魔法使い
あのさ
ちょっと聞いてくれよ
スレとあまり関係ないけどさ
街の入り口にいる、テンプレ回答アナちゃんだけど
10回くらい連続で話しかけたら
「…………」ってちょっと間があるの
気づいたやつおる?
99:名無しの魔法使い
それは単に面倒くさがられているのでは?
104:名無しの魔法使い
内部クールタイムやろ
110:名無しの魔法使い
クールに! クールになるんだ!
115:名無しの魔法使い
なんにせよ帝国が認めたって事実がデカい
あの皇帝陛下がオーケー出してるんやろ?
119:名無しの魔法使い
>>115
それな
逆にここで問題起きたら帝国の面子丸潰れやし
援助も期待できそうやしな
124:ミミ ◆h1t0kUi7
こんマゾ!
人間さん人間さん、あたしは魔族です。
少しお話しませんか。
129:名無しの魔法使い
なんや急にロールプレイ勢か?
130:名無しの魔法使い
ここ魔族の街やぞ
もう魔族プレイはお腹いっぱいなんや
136:名無しの魔法使い
コテハンは珍しいな
自己紹介えらい
143:名無しの魔法使い
匿名掲示板でコテハン?
しかも魔族?
妙だな
149:名無しの魔法使い
基本こういうやつは、自己顕示欲の塊だってばっちゃまが言ってた
150:名無しの魔法使い
話すって何を?
行列のできるパン屋の話なら乗るぞ
157:名無しの魔法使い
とりあえず年齢と性別をどうぞ
161:名無しの魔法使い
15歳以上は女と認めない(キリッ)
168:名無しの魔法使い
(ロリコンが)いたぞぉ! いたぞぉ!(ゾルトラーク連射)
170:名無しの魔法使い
わざわざ「魔族です」って言うのなんなんや
魔族はネットに接続しない
もはや常識やで
おっさんが超一流のなりすまし方教えたろか?
174:名無しの魔法使い
いまどきこんな古臭い手口ようせんで
180:ミミ ◆h1t0kUi7
これでいいかな?
――自撮り画像の投下。ピース姿。快活そうに見えるロリっ娘魔族。――
184:名無しの魔法使い
は?
マ?
189:名無しの魔法使い
いやままておちつつつつつけけ
193:名無しの魔法使い
ふぅ……
196:名無しの魔法使い
いや果てるの早すぎだろ
197:名無しの魔法使い
で……なんだ
ミミちゃんだっけ
人間さんの何が聞きたいのかなぁ?
202:名無しの魔法使い
おじさんがなんでも教えてあげるよ(ニチャア)
206:名無しの魔法使い
いや待てガチやんけ
ヤバいやんけ
208:名無しの魔法使い
コラじゃない?
211:名無しの魔法使い
魔族ってこんな感じなんか
213:名無しの魔法使い
アナ様よりほんのちょっとだけ育ってる感覚がするな
人間換算でいうと、おそらく12歳程度と見た
214:名無しの魔法使い
アナ様。早くきてくれー。どうすりゃいいんだ
221:名無しの魔法使い
リーニエちゃんみたいな例もあるからな
俺らのナカーマになりたいとかかな?
224:名無しの魔法使い
ありえん……
絶対にそれはない
アナリザンドやリーニエは例外なんだ
今も魔族に襲われてるやつはたくさんいるんだぞ
226:名無しの魔法使い
≫224
でもこの子も例外かもしれないじゃん
231:名無しの魔法使い
まあ騎士爵アナ様の街やし
変なことにはならんやろ
232:ミミ ◆h1t0kUi7
お話しましょう。
なんでも答えるよ。
人間さんたちが知りたいことなんでもね。
234:名無しの魔法使い
ん? 今なんでもするって言ったよね(言ってない)
240:名無しの魔法使い
じゃあ魔族ってどうやって増えるの?(震え声)
244:名無しの魔法使い
魔族って寝るの?
248:名無しの魔法使い
人間のことどう思ってる?
254:名無しの魔法使い
人間を食べたことはあるのかしら?
255:名無しの魔法使い
>>254
おい。そりゃライン越えやろ
259:名無しの魔法使い
それを言っちゃおしめえだろうが
264:名無しの魔法使い
はっきりさせといたほうがよくね?
正直、人喰いの隣で寝れねえよ
266:ミミ ◆h1t0kUi7
いっぱい質問がきたからひとつずつ答えていくね。
魔族は寝るか。
寝るよ。脳みそが違っても生物は睡眠をとらなきゃ生きていけないようになってるの。
アナお姉ちゃんを見てたらわかりそうなものだけど。
270:名無しの魔法使い
なんだ。アナ様の関係者かよ
心配して損したぜ……
274:名無しの魔法使い
そういや城壁の上で、こっくりこっくりしてるアナ様いたなぁ
281:名無しの魔法使い
スクショプリーズ
284:ミミ ◆h1t0kUi7
次に魔族の増え方だけど、
人間さんと似てる部分もあるよ。
グチャグチャドロドロしたものが一塊になって、
わりと長い時間をかけて形になる感じかな。
285:名無しの魔法使い
ぜんぜんイメージできないんやが
290:名無しの魔法使い
えっちなイメージを期待した俺って穢れてるのかもな
293:名無しの魔法使い
アナちゃんと仲良く(意味深)したら増えるもんだと思ってたわ
295:名無しの魔法使い
なんか自然発生っぽい言い方だけど
俺らのやってることもグチャグチャでドロドロではあるな
魔族流の表現なんやろか
299:名無しの魔法使い
アナ様も全力でごまかすからなぁ
305:名無しの魔法使い
まあ俺らには関係のない話なんですけどね!
308:ミミ ◆h1t0kUi7
次に、人間のことをどう思っているかかぁ。
うーんとね。すごく興味深くて面白い存在かなって思うよ。
私たちにはない、何かを持ってるからだと思う。
その何かが私たちにはわからないけれど。
309:名無しの魔法使い
その「何か」って何やと思う?
313:名無しの魔法使い
それって魂とかか?
318:名無しの魔法使い
愛やろ愛
321:名無しの魔法使い
興味深いって……どういう意味で?
325:ミミ ◆h1t0kUi7
あなたたちの言葉ってどんどん増えていくのね。
答えてあげる。
それは魂ではない。それは愛ではない。
それは虚無なの。
だから、とても興味深いの。
だから、とても面白いの。
だから、とても栄養があるのよ。
332:名無しの魔法使い
ワイらが虚無? 空っぽってこと?
335:ミミ ◆h1t0kUi7
ううん。
空っぽだから増えるんじゃないよ。
増え続けるから、空くの。
336:名無しの魔法使い
それで人を食べたことはあるのかしら?
339:ミミ ◆h1t0kUi7
あるよ。
魔族だもの。
341:名無しの魔法使い
あるんかよ……
346:名無しの魔法使い
でも正直、文字で言われるだけじゃそんなに衝撃ではないかもしれん
他人事というか……
347:名無しの魔法使い
あんなにかわいい女の子なのに
やっぱり魔族は魔族なんやなって
351:ミミ ◆h1t0kUi7
ああ、でも安心して。
食べたのは、この街の周辺じゃないし
今このときでもないから
353:名無しの魔法使い
なんの安心にもならんのやが
359:名無しの魔法使い
いまは食べてないってことか?
省みてそうしてないってこと?
ならまだ可能性は……
362:ミミ ◆h1t0kUi7
だってアナお姉ちゃんが食べちゃダメって言うんだもの。
でも、どうしてダメなんだろうね。
私たちにとっては、ご馳走なのに。
お姉ちゃんにとってはどうなんだろう。
同じ魔族なのにね。
364:名無しの魔法使い
おい……これ、流石に笑えないぞ
アナ様が食べちゃダメって言うから食べてない?
それ、逆に言えば言われなきゃ食うってことだよな
366:名無しの魔法使い
なんでアナ様来ないんだよ
368:名無しの魔法使い
このミミって子と、アナ様はどういう関係なんだ?
374:名無しの魔法使い
皇帝陛下、これ知ってて認めたのかよ
嘘だろ。俺ら、食糧として飼われてるのか?
376:名無しの魔法使い
アナ様を信じろ!
アナ様を信じろ
アナ様を
信じろ!
377:名無しの魔法使い
さすがに陛下は無罪やろ
問題はアナ様の立ち位置だが、
たぶん、アナ様は優しいんやと思うで……
罪を罪とすら認識できないだけなんや
378:名無しの魔法使い
いや客観的な罪はそう認識できてなくても罪やろ
法の不知はこれを許さず
382:名無しの魔法使い
道義的な非難に耐えうるほど魔族の精神は成熟していないってことかも……
383:ミミ ◆h1t0kUi7
アナお姉ちゃん?
私と仲良しだよ。
だって、ここに書きこめているでしょう。
私は、まだ生きているもの。
――それから先は、疑念、不和、困惑、怒り、憎悪、恐怖、狂乱――
鳴りやまない通信。
城壁の下のざわめき。
呪いのように増え続ける言葉。
もう見たくない……。