魔族少女のエロタナティブ 作:アナリザンド
ゼンゼ先生の扉の前で、わたしは一呼吸した。
トントントン。開かない。
トトト。返事がない。
トントントン。三回目。
「なんだ。君か」
声がして、ドアが開け放たれる。
ノックの仕方だけで、わたしだとわかったらしい。
ゼンゼ先生が、その長い髪の毛で開けてくれたのである。
わたしは満面の笑み3を浮かべ、両の手をひろげる。
「せんせぇ♡ みてみてー♡ 今日はぁ♡ 一味違うアナリザンドだよ♡」
わたしの姿を見て、先生は、ほんのちょっぴりだけ遅延した。時間にして一秒くらい。
眠たげだった瞳はそのままだが、一ミリくらい見開かれたように思う。
無理もない。そこにいるわたしは、いつものわたしではなかったのだから。
――ミミを見て覚えた変身魔法。
魔族の変身魔法は皮膚の下まで変わる。骨格も、皮膚も、魔力の匂いすらも。わたしはそれを使って本日、少なくとも風貌においては完璧な人間の女の子になっていた。
つまり角がなかった。
ヘアピンで髪の毛をあげて角なしアピール。
つるりとしたおでこを丸出しにしている。
赤い瞳は薄い茶色になっている。
黒いドレスの代わりにクリーム色のワンピース。
自分でも驚くほど、ふつうの女の子だった。
ゼンゼ先生に少しだけ寄せていた。妹みたいな風味。
「変身魔法か?」
「うん。正解!」
わたしはパタパタと足音をたてて先生の机に近づいた。
ゼンゼ先生は魔導書から視線を離し、わたしをじっくり見た。
魔法使いらしく観察する目だった。
「魔力の匂いが全然違う。もはや人間と区別がつかないな。君の顔じゃなければわからなかったかもしれない」
「顔まで変えちゃったら、先生にわたしだってわかってもらえなくなっちゃうからやらないよ」
「魔族としては不正解だろう」
「わたしとしては正解かな。だって、わたしってかわいいですし!」
胸を張って美少女アピールするわたし。
「君らしいな。夜も遅いが……温かいミルクでも呑むか? それとも――」
ゼンゼ先生が、ベッドに視線をやった。
添い寝をするのも悪くない選択。抱き枕になる魔法でアナぬい状態にならなくても今日は角が当たらない。今のわたしは、普段より良い抱き心地かもしれない。
試したい。試されたい。
そんな気持ちがないまぜになって、
「先生ならいいよ?」と無邪気に言ってしまう。
「ミルクはだそう」
ふむ。お気に召されなかったようだ。
ちょっと残念。でも、あったか無料ミルクはだしてくれる。
「じゃあ、少しだけここにいていい?」
「妹弟子を追い出す姉弟子はいないだろう」
ここに至るまで、ゼンゼ先生は大きなデスクから一歩も動いていない。
わたしは、デスクの横からまわりこみ、先生におでこをこすりつける。撫でられる。
先生は嫌な顔ひとつせず、そのままの状態で、髪の毛をつかって、棚からカップを二つとりだし、ポットからミルクを注いでくれた。とても便利。
小さな丸椅子に座り、先生の淹れてくれたミルクを呑む。
先生もおつきあいなのかミルクを呑む。
魔導書を膝のあたりにゆっくりと頤を揺らす様子は、まさに貴族か商家の子女といった風情。
ゼンゼ先生はあいかわらず、ものすごく整った顔をしている。
推定年齢さんじゅ……いや年齢のことはやめておこう、ともかく、この世界の魔法使いには整った顔の人が多い。
特に人類最高峰と言われる一級魔法使いは美人さんが多いのだ。
ここでいう美人とは、価値判断というよりは平均的な顔つきに近いという意味合いに近い。
美人――整った顔の条件は、死に近くないこと。つまり、悪性のなにかしらが顔面に張りついておらず、歪んだ骨格ではないこと。あるいは極端な容姿ではないことを意味する。それは個性の死も意味するが、要するに人類総体の平均的容姿に近づくことでもあるのだ。
――魔族はどうか。
魔族も美人さんが多いよ。異形の角を除けば、美男美女あるいは美少女美少年といった風貌のものが多かったように思うし、クヴァールやレヴォルテみたいに異形の者も中にはいたが、それでも機能美的な美しさを持っていた。殺し合いを前提にしなければ、戦闘機のフォルムを見るときのようなカッコよさがあったように思う。
そのすべては、人を殺すため。
そんなシャープな美――矛盾なき完璧な対称性こそが魔族の美しさだろう。
――人間はどうか。
わたしはゼンゼ先生をじっと見つめる。
先生はわたしとの沈黙すら愉しんでいる。
騒がしくない静寂の夜。落ち着いた雰囲気。
骨格。輪郭。目の形。
人間の体はどうしてこういう形をしているのだろうと、いつも不思議に思う。
人間の、とりわけ女性だけが、なんとも言えない柔らかさを形の中に持っている。
「先生」
「なんだ?」
「わたし、いまふつうの女の子に見える?」
先生はまた魔導書から顔を上げた。
今度はもう少しだけ長くわたしを見た。
「見える」
「ほんとに? どこかおかしくない?」
「どこもおかしくはない。完成度が高い」
「やった」思わずガッツポーズをした。
「君はやはり人になりたいのか?」
「んー。そうとも言えるけど、それは無理だよね。いくら姿が変わっても魔族は魔族だし、その本質は変わらないんだから」
「君は、人を食べたことはないだろう?」
「そうだけど、そうじゃないよ。わたしにだって人を食べたいって衝動がないわけじゃないから」
「なら、なぜ変身した?」
先生の言葉は詰問じゃない。ただの問いだった。
「ちょっと試したかったの」
「なにを?」
「先生がわたしをどう見るか。やっぱり角があるときとないときで違うかなって」
「特に変わらないな」
ゼンゼ先生は少し考えてから言った。
「本当に?」
「君は君だろう」
ゼンゼ先生にまた撫でられる。
角があるあたりもよしよしされる。少しくすぐったい。
「ちょっとは驚くかなって思ってた」
「驚いたよ。一目見たときは本当に驚いた」
「でも普通にしてた」
「驚いたからといって取り乱すのは、驚きに対して誠実ではないだろう。落ち着いて確認するのが魔法使いとしての正しい手順だ」
「ゼンゼ先生って、時々すごくお姉さんみたいなことを言うね」
メモメモ。
先生のやり方を心に刻む。お姉さん所作の模倣のために。
「時々か」とゼンゼ先生は言った。
「いつもかも?」
「君ほどではないよ」
先生はふっと息を吐いた。笑い方がお月様みたいだった。
「それで」先生は言った。「リハーサルは終わりか?」
「お見通しだった?」
「君が私に試すときは、だいたいはゼーリエ様の前の練習ということが多いからな。君との付き合いも長い。もう覚えた」
「ゼンゼ先生のほうが優しいもん。時々すごく甘えたくなるの。ダメだった?」
「ダメじゃない。まあ――だいたいにおいて、母親より姉のほうが優しいものだからな。妹に対する責任より子に対する責任のほうが重い。子の生存に関わってくるから厳しくなるほかない」
「ゼーリエ先生はわたしのことを子どもだとは思ってないよ」
「そうかもしれない。だが君はもっと慎重に考えるべきだ。関係というものは一方の想いだけで定義されるものではないだろう。むしろ、君がどうなりたいかを見定めるべきだと思う」
「わたしがどうなりたいか?」
「他者がどう思っているかはわからない。他者の気持ちを変えるのは難しい。でも、君がどう思っているかは君の自由だ。そのうえでマッチングするかは運次第だな」
「でも、わたしは人より無意識の部分が大きいの。わたしにも<わたし>の気持ちはわからないし、コントロールできる気もしない」
ゼンゼ先生はすぐには答えなかった。
カップをそっと机に置いた。
「君の中に在る<わたし>は、君が創ったのか?」
「創ったというか、気づいたらいたって感じかな。でもたぶん、わたしが必要として、呼び集めたのだと思う。ブラックホールみたいに周囲の星々を呑みこんで、いつのまにか宇宙の卵になった感じというか」
それは良いとか悪いとかの話ではなく、「光あれ」と誰かが呟いたら、「光がそこに在った」というのと同じ文法だと思う。誰にとっても――つまり、わたしにとっても宇宙に過去や未来があったとしても現在の宇宙は唯一無二のものであるし、内的に生じたものだから、
「つまり、欲望の起点となったのは君自身であるし、その集積が<わたし>ということになる」
「それはそうかな」
「なら」先生は言った。「<わたし>の気持ちがわからないというのは、自分の欲望がわからないということだろう。それは――」
少し間があった。
「人間も同じだ」
「え?」
「人間も自分の欲望がわからない。自分がなぜそれを望むのかわからない。コントロールできない。だから一生かけて付き合っていくしかないんだ。私が不眠に悩まされていたのは君も知っているだろう」
「でも人間の<わたし>は一人だよ。わたしの場合は十億もいるの」
「数の問題ではないと思う」先生は静かに言った。「むしろ君は正直なのかもしれない。人間は自分の中にたくさんの声があることを、見ないようにして生きている。君はそれを全部抱えて、応答しようとしている」
「わたしが考えなしなだけかもしれないよ。多数派が言ってることは正しいって、思考を放棄しているのかも」
「君が本当に考えなしだったら、こんな夜更けに私のもとに尋ねてはこないだろう」
「迷惑だった?」
「迷惑じゃない。むしろ嬉しいとさえ思った」
「どうして?」
先生は少し考えた。魔導書の表紙を指先でそっと撫でながら。
「君が尋ねてくるということは、答えを求めているということだろう。答えを求めているということは、まだ思考を諦めていないということだ」
「諦めてないのは当たり前じゃない? 生きるのを諦めたら死んじゃうわけだし」
「そうでもない」先生は静かに言った。「諦めてしまった人間を、私は何人か知っている。そういうやつは夜更けに誰かの扉を叩かない。自分の部屋で静かにしている。ただ死んでないだけで、ただ呼吸しているだけで、そんなのはゾンビと変わらない」
わたしはその言葉を少しのあいだ持った。
「ゼンゼ先生も、そうだったことがあるの?」クエリ。
「あった」コール。
短く、はっきりと言った。
「不眠の頃?」
「その少し前だな」
先生は窓の外を見た。夜の空が静かだった。
月明りが優しく部屋を照らし出している。
「だから」と先生は言った。「扉を叩く人間が来ると嬉しいと思う。来る者が誰であれ、過去の私を救えるチャンスがきたと思えるからだ。君は私をズルいと思うか?」
「ズルくないよ。マッチングしたからだよね」
「そうだな」
わたしはミルクの残りを一口飲んだ。
もうぬるくなっていた。でも、それがちょうどよかった。
「先生」
「なんだ」
「次に来たときは、いっしょに寝てくれる? 抱き枕じゃなくて魔族の姿のままで」
「もちろん」
わたしはお礼を言って、それからゼーリエ先生のいる場所へと向かった。
もうそろそろ深夜零時になろうとしている。
魔法が解ける時間だ。
ゼンゼ先生の部屋を後にしたわたしの足取りは、いつになく人間的だった。
角がない。浮いてない。魔力の揺らぎが、皮膚の内側に完璧に封じ込められている。
クリーム色のワンピースの裾を揺らし、深夜の静寂に包まれた大陸魔法協会の廊下を進む。
道すがら、わたしは魔法を唱える。
「――
人間耳をエルフ耳に。瞳を黄金色に。
ついでに髪色もくすんだ金髪に変える。
窓ガラスに映る姿を見て、わたしは満足した。
ゼーリエ先生の子ども風味なわたし。
顔つきだけは変わらない。
たどり着いたのは、最奥の重厚な扉。いつもの謁見室の前。
先生はかなり夜更かしするタイプで、だいたい深夜2時頃までは、私室に戻らないらしい。
信頼のおける一次ソース(レルネンデータ)による。
わたしがノックをする前に、内側から声が響いた。
「入れ。小細工は無用だ」
わたしは身体ごと扉を押し開いた。
ゼーリエ先生はいつものように魔導書を読み広げて、傍らには小窓を開いて、魔法図書館をアップデートしていた。民間魔法の補充作業をしているようだ。先生の魔法譲渡もとい魔法売買は、売られた魔法の記憶を抹消してしまう。だから、そのたびに覚えなおさないといけない。先生ほどの実力があれば、さほど時間はかからないところだろうけれど、それでも魔法を求める人間の数は膨大だ。消費する時間もそれなりといったところなのだろう。
「それで……。なにをしにきた。アナリザンド」
先生は視線を魔導書に小窓に。
「先生、どう? なにか気づかない?」
びよーん。エルフ耳を引っ張るわたし。
でも、先生は一瞥すらせず、そのまま魔導書をよみふけっている。
「先生。ちょっとくらい見てよ!」
「くだらないな。あの魔族の小娘の魔法を奪ったのか」
「奪ってないよ。教えてもらったの」
「魔族にとっては固有の魔法を他者が使う等――簒奪と同義だろう。ずいぶんと残酷なことをするものだな。この私よりも冷酷で容赦がない」
「そのままじゃなくて変奏しているよ。ねえ、
「狡知も備わったか。魔王の完成まであと一歩というところだな。こっちへ来い」
ようやくわたしを見てくれた。
でも、その瞳は何かを裁定するように厳しく、なんの甘さも見受けられない。
わたしは十歩分くらいの距離で停まる。
「貴様は、私を母親だとは思っていない」ゼーリエ先生が断言する。
「うーん。正直なところそう。先生って先生だし、ママって感じじゃないし」
「では、私に何を言ってほしいんだ?」
「わたし、まちがっちゃったのかなって」
「何をだ?」
「レヴォルテのこと。アンデア君から聞いてるでしょ」
「いや、ゲナウから聞いた。あいつもなんだかんだ言いながら、おまえを褒めていたよ。あのゲナウがだぞ……。虫唾が走ったよ。おまえは私の弟子をどれだけ破壊すれば気が済むんだ」
「ゲナウ先生が?」
ちょっとだけ嬉しい。
でも、ちょっとだけ苦しい。
ゼーリエ先生がアルカイックスマイルを浮かべる。
「おまえは私に採点でもしてほしいのか?」
「うん……」
「おまえは魔族の将軍を討った。街を守った。仲間の命も救った。これ以上何を言うことがある。一級魔法使いとしては満点の働きぶりだ。よくやった。これでいいか? さっさと帰れ」
「そうじゃなくて……。あのね。先生。教えてほしい」
「言ってみろ」
「レヴォルテを殺したのはわたし」
「そうだな」
「ミミを助けるためにそうしたの」
「だろうな」
「レヴォルテを殺したのは、ミミがレヴォルテに殺されそうだったからなの。助けるために殺したというより、止めるために殺した、という感じに近いかな」
ゼーリエ先生は黙って聞いてくれていた。続きを待っている。
「レヴォルテはミミを道具として使って、最後にその道具を壊そうとした。わたしはそれを止めた。その結果、レヴォルテが死んだ。順番としてはそんな感じ」
客観的なデータとしては、そう観測するのが最も素直な見方。
でも――。
「おまえ自身はどう思っている」
「まちがっちゃったかもって」
「どこをだ」
「レヴォルテが本当にミミを殺すつもりだったかどうか、最後まで確信が持てなかったの。わたしはレヴォルテに騙されたのかもしれない。でも騙されたとしても、ミミが傷つく可能性がある以上、止めるしかなかった」
「後悔しているのか」
「後悔という言葉が正しいかはよくわからない。だって、わたし魔族だから。その言葉は本質的には<わたし>のものであって、わたしのものじゃないから」
「それで?」
「わたし、<わたし>のことがよくわからない。何がわからないかもわからないの」
「わからないところがわからないから教えてくれか――、おまえは私をなんだと思っている? 私はテレパスでも全知全能の神でもないんだぞ」
「でも、先生は私が知らないこともたくさん知ってるでしょ」
「おまえは何が一番わからなかった? 言ってみろ」
「レヴォルテが最後に笑っていたの。わたしが撃った後で。それがずっと引っかかって……」
謁見室は静かだった。
しばらく、ゼーリエ先生は窓の外を見ていた。
ここでも、当たり前のことだけどお月様が顔を出している。夜の空が広い。
「おまえが命を助けた魔族の小娘はどうしている?」
先生は安易に答えを与えてくれず、話題はミミのことに移った。
「街で暮らしているよ。168ちゃんっていうわたしの元分身を監視につけて、人間社会で暮らしていけるよう見守ってもらってる。最初はやっぱり疑われたり怖がられたりしてるけど、最近は子どもたちが遊んでくれるようになったかな」
「子どものほうが好奇心が強く、騙しやすいだろうからな。おまえという前例がある以上、魔族に対する警戒心が極端に薄い。だが――大人たちはどうだ?」
「正直、まだかな……」
「当たり前だ」
ゼーリエ先生にはお見通しだったみたいだ。
わたしがいくらミミちゃんを救いたいといっても、それはまだ途上の出来事。
人間社会に浸透するには長大な時間を必要とする。
特に、わたしと違って、ミミの場合、人を食べちゃった宣言もしているのだ。
その溝が埋まるにはどれほどの時間がかかるか検討もつかない。
「だが、人間という種族は新陳代謝が激しい。三世代も変われば、印象も変わる。およそ100年といったところか。私にとってみればひと眠り程度の時間に過ぎんが、人間たちにとってはそうではない。おまえにとってはどうだ?」
「100年経てば、ミミは赦されるの?」
「罪が消えてなくなるわけじゃない。ただ忘却され、罪を覚えている者がいなくなるだけだ。あの黄金郷のマハトも数十年かそこらで人間たちの信頼を勝ち得た。結果として街は黄金に沈んだが、忘却という名の赦し……罰は存外早い」
先生が赦しを罰と言い換えたのは、わたしが罪悪感を覚えているってちゃんと見抜いているからだ。それがうれしくて、わたしはつい甘えてしまう。
「先生、わたし……ミミをかくまえばよかったのかな。山奥でひっそり育てて100年くらい経って、街で暮らさせる。そのほうがいいかな? 今からでもそうしたほうがいい?」
「山奥でかくまうか……。おまえという圧倒的な捕食者の傍らで、無菌室のような環境で100年。……そうして出てきたその小娘は、いったい何者になっていると思う?」
「わかんない。天使みたいな女の子?」
「
「街に放ったあともずっと見守ってれば?」
「ずいぶん教育熱心なことだな。よく聞けアナリザンド」
ゼーリエ先生が酷薄に哂う。
「おまえたち魔族が人間社会で生きるということは、永遠に化けの皮を被り続けるということだ。その生き方を自分で選ばなければ、ミミは人間にもなれず、魔族にもなりきれず、おまえの人形として、ただ生かされるだけの存在に成り果てる。それでもいいと言うのなら勝手にしろ」
「それはヤダ。ミミには社会の中で自由に生きてほしいの」
矛盾している言葉かもしれないけれど。
「おまえが養育者としてどれだけ正しい道を選ばせようとしても、あの小娘がおまえの望む道を選ぶとは限らない。おまえにできることは、選択肢を与えることだけだ」
エルフとして、魔法の頂点として、何人もの弟子を見送ってきた先生ならではの言葉だった。
「わかってるよ。先生」
「本当にわかっているのか? おまえはレヴォルテがなぜ最後に笑ったのか答えられるのか?」
「わかんない……教えてほしい」
「おまえが矛盾しているからだ。おまえは魔族のように純粋に死ぬことも赦されず、人間のように女神に赦されて死ぬこともない。おまえは永遠に苦しみ続ける。誰もおまえを救えない。だから、おまえはミミという道連れを共に、地獄の道を突き進むしかない。だからレヴォルテは笑ったんだ」
「先生は助けてくれないの?」
「どんな理由で私が助ける?」
「先生はわたしの先生だから」
「私は魔法を教える者だが、他者の人生の尻拭いをする役目など負っていない」
「それはそうかもだけど」
「私の弟子たちは、皆、自分の願いを果たすために私の元を去った。あるいは死んだ。私は誰一人として助けていない。なぜなら助けるという行為は、その者が自分自身の手で掴み取ろうとした魔法を否定することに他ならないからだ」
先生は言葉は厳しくて優しい。
冷たくて温かい。
「でも弟子が、助けてほしいって言ったら先生は助けてくれないの? 人生みたいな大仰な話じゃなくて、ほんのちょっとだけでも手助けしてくれると嬉しいなって」
わたしは必死にかわいさアピールした。
「――アンデアから聞いている」
先生の言葉にわずかだが棘が混ざった。
「あの魔族の小娘が人間の街で、致命的な失敗をやらかしたらしいじゃないか」
――変身魔法事件。
やっぱり先生は知っていた。
事件というほど事件ではないけれど、街の猜疑心は確実に膨れあがった。
その事件が、わたしがここにいる理由。ここに来た動機だった。
わたしは、その事件のあらましを脳裏に再生する――。
最初にミミに興味を持ったのは、街の幼い子どもたちだった。
No168は側に控える形で、じっとミミの様子を窺っていた。
いっしょに遊ぼうと声をかけてもらい、ミミは「なんです? 小さい人間はあたしに興味があるんですか?」と好奇心に突き動かされて、いっしょに遊んだ。鬼ごっこをして、ミミは身体能力的には優っていたけれど、168には人間と同スペック程度に抑えるよう言われてそうした。
大人たちは嫌な顔になった。
けれど、168に対する信頼もそれなりにあった。
一年にも満たない間ではあったが、子どもたちは168に見守られてすくすくと成長している。
これまで一度だって怪我をして帰ってきた子どもはいない。擦り傷くらいはあるけれど、すぐに女神様の魔法で治してくれる。
女神の魔法を使えるということは、女神様に愛されているということでもある。
168はその天使のような容貌もあいまって、天使のように思われている。
――天使に監視されていれば、魔族も怖くはない。
そんなふうに理論立てているわけではないけれど、感情がギリギリのところで均衡を保っていたのである。そのため――ミミは子どもたちと遊ぶことを許された。正確には放任されたといったほうが近いか。この世界においては、大人はすべからく仕事をしなければならない。そうでなければ生きていけないほどに、生存ギリギリを保っている。北部高原にある街は特にそうだ。土地は豊かではなく、流通はギリギリ。人間たちは今を生きるのに必死だ。
だから、子どもたちにかまけている時間があまりなかった。大人たちは子どもたちを愛していないわけではなかったが、見守る時間にどうしても欠落が生じることをも意味していた。
子どもはなんにせよ自由に遊ぶものだ。下手をすると勝手に門番の目を盗んで門を出ていって、探検と称して、命の危険も知らぬまま森の中を練り歩くなんてこともしてしまう。そうならないよう、親の目が行き届かないところを168はたくみにカバーし続けた。信頼は層のように連なりミルフィーユのように分厚くなった。疑念と猜疑心が少しずつ解消されていく。
そんなことが何回か、何十回か続いたある日。
子どもたちはミミに慣れ始めた。
アナリザンドによく似たミミの幼い姿は、子どもたちを安心させた。
いわゆる刷りこみのような形。
「ねえねえ。ミミちゃん。ミミちゃんって魔族なんでしょ」
「そうですよ。小さな人間はよく知ってますね」
「もう、わたしユンって名前なんだけど。いつ覚えてくれるのかな?」
その子は10歳くらいの女の子で、子どものグループの中では最年長だった。
ミミと見た目が同じくらいだからか、よく構ってくる子だった。
その理由はよくわからないが、自分の擬態が成功している手ごたえを感じて、ミミも悪い気はしない。
「そうなんですね。とても興味深いです」
ミミは微笑を浮かべて、当たり障りのない会話をする。
そうしないと168に叱られるからだ。
「ねえ。魔族って魔法が使えるんでしょ。見せてよ」
「魔法ですか? 興味があるんです?」
「うん。魔法って不思議な力だよね。見たいなぁ」
「いいですよ」
微笑。それは本当の微笑だ。
魔族にとって、魔法とは自らの存在を仮託したものであるから。
ミミは少し考えるように首を傾げた。
それから、ユンの顔をじっと見た。
鼻の形。目の色。耳の丸み。唇の厚さ。
するすると、ミミの顔が変わった。
着ている物すら同じ。
「わあ!」
子どもたちが声をあげた。
ユンが二人そこにいた。声まで完璧に同じだった。
本当に瓜二つ。双子というより鏡を合わせたように一致している。
「すごい! おんなじ!」と周りの子どもたち。
「ほんとにおんなじ!」とユン。
「ね、おんなじでしょ」
ミミがユンの声で言った。子どもたちが笑った。ミミも笑った。
そこへ、足音が聞こえた。
「ユン!」
ユンの母親だった。三十代くらい。買い物袋を下げていた。
広場を横切りながら娘を探していた。
「ママ!」
ユンが走り寄った。
ミミも、ほとんど反射的に走り寄った。変身したまま。
「ママ」おんなじ笑顔で、同じ声色で、ピタリと寄せるように走る。
一瞬戸惑いに母親の視線が揺れる。
この個体は、どちらが本物か区別がついていない。
その瞬間だった。
ミミの頭の中を、一つの考えがよぎった。
――この子を食べたら、すり替われる。
考えただけだった。
やろうとしたわけではなかった。
でも考えた。確かに考えた。
次の瞬間、見えない何かがミミを縛った。
168の魔力だった。優しくて、しかし絶対に逃れられない力で、ミミの変身を解いた。
角が現れた。桃色の髪。魔族の瞳が現れた。魔族の顔がそこにあった。
母親がつんざくような悲鳴をあげた。ユンを抱きかかえて後ずさった。
子どもたちはその母親の声に驚いて、蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
広場に、ミミと168だけが残った。
ミミは動かなかった。不思議な感覚。あの衝動は――確かにあって、今も熱のように胸の奥を焦がしている。だけど、最後にユンが母親に連れ去られる際に、一瞬だけ申し訳なさそうな顔になった。あの表情の意味がわからない。エラーを吐いている。
「ミミ」
168が呼んだ。
ミミは振り向かなかった。
「帰りましょう」
「……うん」
小さく言った。広場は驚くほど静かになった。
アンデアのところに世界最恐の組織が襲来したのは、翌朝のことだった。
――P・T・A。P・T・A。
アンデアの立場は微妙どころであるが、よく用心棒が言われるように街にとっては先生的な立場なのである。尊敬と信頼を集めているアンデアのもとに母親たちが詰めかけるのはごく自然な流れだったのだ。
一人目は、ユンの母親だった。
二人目は、その友人だった。
三人目が来る頃には、アンデアはもう覚悟を決めていた。
結局、十人になった。
その誰もが今から戦争にでも向かうかのような悲壮きわまる表情をしている。
アンデアは全員を執務室に通した。
椅子が足りなかったので、自分は立ったまま話を聞いた。
気分はサンドバッグである。いやサンドバッグのほうがまだマシかもしれない。
「あの魔族を追い出してください」
最初に口を開いたのはユンの母親だった。
昨日の悲鳴がまだ声の奥に残っているような顔をしていた。
般若のような形相というのは、このことを言うのだろうか。
「まあまあ……奥さん。そんなに、熱くならないで」
アンデアは両の手で気持ちを抑えるようなジェスチャーをする。
効果はない。
「娘が二人いたんです。声まで同じで。どちらが本物かわからなくて」
「話は聞いています」
「あなたはわかりますか。自分の子どもが、目の前で二人になる恐怖が」
アンデアはすぐには答えなかった。気持ちはわかる。魔族という異形が、人間の姿かたちまで模倣する。それはもはや、気づかぬうちに侵入されるという恐怖だけに留まるものではない。
「でも……。この街を狙っていた魔族の将軍レヴォルテを倒したのは、我ら一級魔法使いの一翼を担うアナリザンドですよ。そのアナリザンドがあいつのことを許したんだから、街のみなさんも少しは受け入れていただけると幸いなんですが……」
「アンデア様はあの魔族にお腹を貫かれたとおっしゃっていたじゃないですか。あなたもあの魔族が近くにいて迷惑しているんじゃないんですか? 怖くはないんですか?」別の母親が言う。
「そりゃ怖いか怖くないかで言えば、怖いです。でも――、魔族はそういった恐怖の隙間に忍び寄ってくるんです。俺も見守りますから、耐えていただきたい」
「子どもたちが毎日あの魔族と遊んでいる。それだけでも怖かった。でも、168様が見ていてくださるから、と自分に言い聞かせていたんです。でも昨日のことがあって、もう無理です」
さらに別の母親が続いた。
ゾルトラークよりも激しい波状攻撃に、アンデアはたじたじとなる。
誰かタスケテ。
「変身魔法は禁止にしてください。せめてそれだけでも」
「街の中では使わせないでほしい」
「子どもたちに近づけないでほしい」
わーわー。きゃーきゃー。
金切り声が重なった。
アンデアは全部聞いた。全部耐えた。
聞きながら、窓の外を一度だけ見た。
通りの向こうに、ミミと168の姿があった。市場の帰りだろうか。
ミミは俯いて歩いていた。168が隣に並んでいた。
アンデアは視線を母親たちに戻した。
「変身魔法については、禁止の方向で検討します」
それしか言えなかった。
母親たちが帰った後、アンデアはしばらく椅子に座ったまま動かなかった。
身体がだらしなく机に溶ける。
ゼーリエのもとで修行に明け暮れた日々よりもずっと疲労困憊だった。
母親たちの意見が一概に間違っているとは思わなかった。
だが、正しいとも言い切れなかった。
その夜、アンデアは変身魔法の禁止令の草案を書いた。
書きながら、何度か手が止まった。お腹を抑え、痛みに耐える。
過敏性腸炎になってしまったのかもしれない。
魔族に穿たれた古傷が痛んでいるだけなのかもしれない。
それでも、書いた。
書くしかなかった。
「ちょっとまずい状況だぜ……アナちゃん」
その呟きは、静かな執務室の中に吸いこまれて消えていった。
禁止令が正式に出たのは、三日後だった。
アンデアが168に伝え、168がミミに伝えた。
朝の食事の後だった。
その日は硬くないチョコパンと新鮮なサラダを食べて、温かなミルクを食べた。
生きるための補給活動。それ以外の理由はない。
ミミは窓の外をぼーっと見ていた。
「変身魔法は、当面使用を禁止されました」
168は事務的に言った。当面と言ったが、それはほぼ永遠を意味するだろう。
そう言うのは忍びなかったので、当面という言葉を使ったのである。
「……」
「ミミ、理解しましたか?」
「……わかった」
それだけ言った。
168はミミの横顔を見た。
泣いていなかった。怒っていなかった。
なんの感情も感じさせない虚無の表情をしていた。
ただ、呼吸が浅くなっていた。
魔族にとって魔法はアイデンティティだ。168にはそれがわかった。アナリザンドから分かたれた個体として、魔法を持つことの意味が、骨の髄まで染みこんでいる。
同じ魔族として――168とはだいぶん在り方は違うものの――理解できる。
ミミにとって変身魔法は、唯一自分だけのものだった。
レヴォルテの配下にいたときも、変身魔法だけはミミのものだったのだ。命令されて使うことはあっても、その技術はミミの中から生まれたものだった。
――それを禁じられた。
街の中では使えない。人前では使えない。
街中に住んでいる以上、どこでも使えない。
ミミは部屋の隅に座った。膝を抱えた。微笑の彩度が下がる。
外から子どもたちの声が聞こえた。
ユンの声が、その中にあった。
ミミはそちらを見なかった。
168はミミの隣に座った。何も言わなかった。ただ隣にいた。
しばらくして、ミミが小さく言った。
「ねえ、168」
「はい」
「あたし、ここにいていいの?」
168は少し間を置いた。
「います」と言った。「ミミはここにいます」
「いていいかって聞いてるの!」
「いていいです」
ミミは膝に顔を埋めた。
窒息しそうだった。
空気はちゃんとあった。呼吸もできた。
でも、何かが胸の内側から、じわじわと押しつぶしてくるような感覚があった。
魔法が使えない。
変身できない。
このままここにいていいのかもわからない。
ユンの笑顔が頭をよぎった。なぜかそれが一番苦しかった。
あの子は明日、また広場に来るだろうか。
来ても、もう近づいてくれないかもしれない。
それは、仕方のないことだった。
仕方のないことだと、ミミにはわかっていた。
でも苦しい。息ができない。
誰か――助けて。
そんなミミの窮状は、すぐさま168からわたしに伝えられた。
というのが今回のあらましである。
ゼーリエ先生は、ミミの――というより魔族と人間のコンフリクトをきっちり見抜いていた。
遅かれ早かれ、同じようなことは起こっただろうし、これからも起こるだろう。
リーニエちゃんがこれをひとりで乗り切ったってすごくない?
「ミミはわたしの妹だよ。だから助けるの」わたしは先生に向かって宣言した。
「それだけか?」
「それだけだよ。他に理由がいる?」
「では、おまえの師として、その尻ぬぐいの尻ぬぐいを私に求めているということか?」
「ううん。ただ見守っててほしいなって」
「見守る?」ゼーリエ先生の視線がわずかに細くなる。
「だってこれからやろうとしていることは、先生の魔法図書館と競合する部分もあるから」
「回りくどいのはあいかわらずだな。何が言いたい」
「あのね。先生、ちょっとだけお耳いい?」
「好きにしろ……」
わたしは先生の椅子のあたりまで近づいて、お耳にこしょこしょ話をする。
「……はっ」
そして笑われてしまった。
「貴様がやろうとしていることは、人間たちの虚栄心による恐怖の上書きか。そんな上っ面だけの魔法で人間を騙せるとでも思っているのか?」
「うん。でも――。虚栄心っていうよりかは、それは自分を少しだけ肯定できる魔法なの。先生は美人さんだし、よくわからないかもしれないけど、普通の人間にとっては、それが必要だったりするんだよ」
――わたしのプチ変身魔法。お化粧魔法は、この世界に革命をもたらす予感がする。
「結局、デモンストレーションだったわけか。こんな真夜中に……。いい迷惑だな。少しは考えて行動したらどうだ」
「ミミが窒息しそうな顔をしていたの」
一刻の猶予もなかった。
「その苦しみが癒されることはない。人間と共存する限りは」
「どこまでなら許されるかが知りたかったの。わたしは妹を助けるためならなんでもやっちゃうけど。でも誰にも相談しないで何もかもひとりで決めたら、それこそ魔族だよね」
「おまえがそれを言うのか」先生は少しだけ笑った。「いいだろう。わたしにプチ変身魔法とやらをかけてみろ」
お赦しがでた。
「――
劇的な変化はない。何が変わったと言われれば、けっこう微妙な差異なんだけど。もともと整った顔が、少しだけ違う光を帯びた。肌が柔らかく見えた。目の奥に、微かな温度が灯ったように見えた。唇に赤味がさした。
ゼーリエ先生は立ち上がり、小窓を鏡代わりに見ていた。
いいのか悪いのか。見定めるようにじっくりと見ている。
「いまさらだな……」とゼーリエ先生。
「何がいまさらなの?」
「もともとおまえには、ミミのことはすべて任せると言ったはずだ」
「先生の意見が聞きたかったの」
「それが手助けの意味か」
「うん。だって、先生の美的センスってすごく独特だもんね。先生がいいって言えば、限界ギリギリのラインが見定められるって寸法だよ」
「悪くはないな」
顎のあたりに手をやって、先生はまだ小窓を見ている。
「もう行け。夜もすっかり更けてしまった」
「ありがとうございました。先生にはこのサービスの初月は無料にしてあげるね」
「初月?」
「うん。サブスクってやつ。そのほうが儲かるからね」
「馬鹿弟子が……」
わたしは謁見室を後にする。
最後に扉が閉まる寸前。
ゼーリエ先生が声をかけた。
「おまえは、角があったほうがいい。そのほうが私の好みだ」
「うん。先生。覚えておくね♡」
わたしは魔法を部分解除し、エルフ耳に魔族の角という珍妙な生物として先生にバイバイした。
かくして盤上は整ったのである。
あとは、やりきるだけだ!
配信の準備はすぐに整った。喉をすべらかにする紅茶が少しあればいい。
あとは小窓の魔法を唱えるだけ。準備は一任されている。というか数秒である。
わたしの隣にミミちゃんが座っていた。
ここは街中にある大陸魔法協会の建物だ。
ちょっと角度を変えれば、アンデア君が座っている。
168ちゃんもいる。
ミミは何が起こるのかわからず、きょろきょろと周りを見渡していた。
168を通じて事前に説明は受けたはずだけど、あまり理解できなかったのだろう。
「怖い?」とわたしは聞いてみた。
「怖い?」とミミはオウム返しに応えた。
「緊張しているのかなって」
「よくわからない」でも、身体を縮こませている。
見世物小屋の化け物にでもなった気分なのだろうか。
あるいは、自分が殺されようとしているとでも思っているのかもしれない。
逆らうことはできない。わたしも168もアンデア君も、まともに戦えば一瞬でミミを塵にすることができる。そうなることはミミも理解しているはずだから。種族間闘争に負け、檻に囚われた魔族がここにいる。
「大丈夫だよ。ミミちゃん」
「何が大丈夫なんですか?」
「わたしの魔法はね。ちょっとだけ、人間を綺麗にする魔法だから」
本日の主役ミミちゃん。
角がある。少し尖った耳。桃色の髪。薄いラズベリー色の瞳がある。
そこには魔族の顔があった。
でも、少しだけ違った。
お肌が柔らかく輝いていた。目が少しだけ生き生きして見えた。
お化粧魔法をかけた状態だった。
角はある。人を欺くための微笑も。
――
「こんマゾ。アナリザンドです。今日は皆様方に、特に日々、美しさを追及している奥様方に朗報があります。あるいは婚活という戦闘を日々繰り広げている子女の皆様にとっても、有能な武器になることでしょう。そのまったく新しい魔法の名は――」
わたしは画面に向かって言った。
今日のわたしはちょっとだけ真面目ザンドである。
「と、その前に隣にいるこの子を紹介します。ミミちゃんです。今回の魔法の共同開発者です」
ミミが、画面に向かって固まった。
共同開発者という言葉を聞いて固まったのだ。
コメント欄は困惑と不安が流れていく。
ミミは匿名掲示板にコテハンとして出現したことがあるからだ。
『人喰い魔族を出しちゃらめぇぇぇぇ』
『でもミミちゃんかわいいいいいいい』
『アナ様は賭けにでたのだ。ミミという魔族が受け入れられるかに命を賭したのだ』
『アナ様は例外として許容できるけど、ミミって人食べたことあるんだろ? 無理だべ』
『魔族が人喰いである以上はどうしても忌避感湧くよな』
配信画面のコメント欄は、かつてない速さで流れていく。
ほんのわずかな希望と、それ以上の恐怖と拒絶が吹き荒れる。
ミミはそんな流れ星のようなコメント達を不思議そうに眺めていた。
「アナリザンド様。これなんです?」
いつしか、ミミはわたしのことをお姉さんともお姉ちゃんとも呼ばなくなってしまった。
それは少し残念だけど、今はミミを守ることがわたしにできることだ。
「これは配信って言って、窓の向こうに、人間がたくさんいるの」
「ふうん……変なの」
わたしは小窓に向きなおる。
「さて、まず最初に言っておくことがあります」
一瞬だけコメントが停止する。
「先生たちが感じてる恐怖は、正当なものだよ。もし、ミミのことを側に置きたくないって人がひとりでもいれば、わたしはいつでも街の外にミミを連れ出す用意はできてます」
『じゃあ、さっさと外に叩き出そうぜ』
『街の中に魔族がいたら、おちおちうたた寝もできやしねえ』
『子どもたちがいっしょに遊んでいる姿を見ると不安になります』
『怖いんだよ。マジで』
『故郷が魔族に滅ぼされたやつはたくさんいるんだ』
「うん。わかってる。でもね。考えてみてほしいのは――わたしも魔族だってこと。みんな忘れてるかもしれないけど、わたしだって立派な魔族なんだよ? ほら、角だってあるし」
角アピール。
『そりゃまあ……そうだけど』
『アナ様は人間を食べたことはないんだろ?』
『ミミは自白してる。その罪は明らかだ』
『アナ様は例外だろ。30年以上は少なくとも人間の側にいたわけだし』
『女神様にだって認められてる』
「そうだよ。わたしはたかだか30年かそこら人間の側にいただけなの。それだけであなたたちは魔族を信じて、魔族にインフラさえも委ねてしまってる。わたしがほんの少しサービスを停止しただけで、街は機能停止に陥ってしまうところまできているんだよ」
『やめて……アナ様やめて』
『怖いです。アナ様がとても』
『やっぱりアナ様も魔族だったんだ!』
『いったいいつから?』
「――最初からそうだよ」
わたしはにっこりと笑った。
「でも、わたしはここにいる。あなたたちの街のインフラを作って、魔族の将軍から街を守って、今日もここで配信している。それはなぜだと思う?」
コメントが止まった。
「わたしがここにいたいからだよ。先生たちの側にいたいから。ただそれだけなの」
『うーむ……いまさらAP止められたら万単位で死人が出るしなぁ』
『ネットがない生活にはもう戻れない……』
『つまりアナ様はミミを追放したら自分もいっしょに追放されるってコト!?』
『レンタルアナ様にヨシヨシされたい!』
『もういまさらよな。アナ様なしの生活なんて考えられんし』
『でも、魔族は怖いし』
「おもしろいね。先生たちって……。魔族がそこにいることに恐怖して、魔族がそこからいなくなることにも恐怖しているんだから」
『合理的なんだよ。人間は』
『功利主義的に言えば、アナ様はいたほうがいいよなぁ』
『クソ雑魚魔族ちゃんじゃない!?』
『アナ様がいないと生きられない身体になってしまった。どうしてくれる?』
『くそおおお。魔族めぇぇ。スパチャしてやる。1000AP』
「あ、スパチャありがと。もう一桁あがると、アナリザンドは小躍りして喜びます♡」
1000APあれば、ダブルチョココッペパンロングが一つ買えるぞ!
『マジかよ。この真面目な場面で』
『誇り高き魔族の姿かこれが』
『うーん。あっという間に幼女なんだよなぁ』
『言ってることは恐ろしいんだが、イマイチ実感がわかん』
『つまりはどういうことだってばよ?』
「つまりは、ミミちゃんに対する恐怖は全部わたしが受け止めるよ」
コメントが止まった。
今度は本当に止まった。
『……え』
『受け止めるって、どういう意味?』
『アナ様が盾になるってこと?』
「そうだよ。ミミちゃんが何かやらかしたとき、最初に怒鳴り込む先はわたしにしてほしいの。わたしが全部聞く。わたしが全部謝る。わたしが全部なんとかする。だからほんの少しだけ呼吸ができるスペースが欲しいの」
『それって……』
『アナ様が責任取るってこと?』
『魔族が魔族の保証人になるの、初めて見た……ってリーニエちゃんもいたな』
『うーん。アナ様の保証人はゼーリエ先生ともいえるわけだから、アリと言えばアリか』
『一級魔法使いには助けられてるしなぁ』
『でも、魔族に襲われてるんだぜ。いわばマッチポンプってやつなのでは?』
「ミミちゃんはまだ、人間の街で生きることを覚えている途中だから。途中の子に全部の責任を取らせたら、誰も新しいことを覚えられなくなっちゃうでしょ」
ミミがわたしを見た。
何か言おうとして、言えなかった。「なんで」と唇だけが動いた気がした。
わたしはミミを見ずに続けた。
「それに、ミミちゃんはお化粧魔法の共同開発者です。うちの大事なビジネスパートナー。粗末に扱われたら、お客様、あー、お客様、困ります」
『今度は商売の話になったw』
『金金金、魔族として恥ずかしくないのか』
『そのネタ何年こすってんねん』
『今のネタ笑うとこ?』
『でも、なんかわかった。アナ様はミミちゃんのことが好きなんだね』
「――そうだよ。妹だもん」
コメントがしばらく静かに流れた。
『妹か。また妹が増えた』
『アナ様じゃなくて姉さま』
『フェルンちゃん激おこなのでは?』
『リーニエちゃんのことも妹って言ってたよなぁ』
『何人、妹がいるんだって話だが』
「先生たち知らないの? 妹は何人いてもいいんだよ。ハイターが昔言ってた」
それはハイターに教えられた言葉。
死に際に、最期に。今際の際に。
わたしは微笑を浮かべる。
『ハイター様ぁ……』
『神官ハイターの話、出てきた』
『アナ様とハイター様の話、好きなんだよな』
『ハイターα2ちゃん……』
『ハイター様がミミちゃんを見たらなんて言うかな』
わたしはその言葉を少しだけ胸の中に置いた。
きっと、笑いながら『α3』にするんだろうな。あるいは『α4』だったりしてね。
その際には、ぜひ、わたしを『α1』に配置変えしてほしいけど。
「さて、そんなわけで重い話はおしまい。なにかあったらわたしにDMしてね」
わたしは気持ちを切り替えた。
「本題に入ろうかな。今日のメインはミミちゃんじゃなくて、こちらの魔法です」
わたしは自分の顔にお化粧魔法をかけた。
ファンデーションをポフポフと。まつげはくっきりと。
薄い桃色のリップクリームはたっぷりと。
お肌はしっとり、髪の毛はつやつや。
劇的な変化はないけれど、そのひとつひとつがわたしの印象を変える。
そして、わたしの心も、ひとつ武装を身にまとった心強さがあった。
「名前はプチ変身魔法。あるいはお化粧魔法とも言うの。ミミちゃんの変身魔法を参考に、わたしが作ったんだ。人間にも使える劣化魔法かな。ゾルトラークと同じだよ」
『どう違うの?』
『変身魔法と何が違うか説明して』
『ミミは人間に変身できるんだよな。おーこわ』
『アナ様を信じろ!』
『アナ様を信じる!』
『人間たちってすぐ騙されるんだからー。まったくもー』
「変身魔法は別人になれる。でもこれは別人にはなれない。顔立ちはそのまま。角がある人は角がある。ただ今日の自分が、少しだけ好きになれる。そのくらいの魔法だよ」
『なんか地味じゃない?』
『そんなもんでなんか変わるの?』
『でもアナリザンドさん、確かにいつもより輝いて見える』
『ロリに化粧はご法度でしょ。ご法度』
『リップクリームとかおしろいと何が違うのかよくわからんなぁ』
『いいえ。この魔法は革新的だわ!』
お、さっそく食いついてきたねぇ。ふふふ……。
「わたし、まだ幼いから、お化粧ってあんまりよくわからないの」
幼く妖艶に、わたしはメスガキっぽく、腰を曲げて唇に手を持っていく。
「では、ここで人間の容貌を長年観察してきた一流の化粧師さんにご登場願いましょう」
パチパチと拍手をする。なんのことはない。隣にいるミミだ。
「いい? ミミちゃん」
ミミはわたしの顔をじっと見た。
これだけ至近距離だとわかる。獲物を観察する目だった。
ユンの顔を見たときと同じ目。鼻の形。目の色。唇の厚さ。骨格の下にある構造。人間の顔というものを、ミミは設計図のように読む。変身魔法とはそういうものだから。
でも今日は、別人になるためじゃない。
ミミの手が、ゆっくりとわたしの顔の輪郭をなぞるように動いた。
触れているわけじゃない。でも、触れているような距離だった。
魔力がわたしの肌に染みこんでいく。
まず、目の周りから変わった。
目尻がほんの少しだけ持ち上がった。くっきりしたわけじゃない。でも、光の集まる場所が変わった。視線の重心が変わった。次に、頬の高さが変わった。
変わったというより、もともとそこにあったものが、今日の光の中でようやく見えてきたような感じ。彫刻家が石から形を取り出すように。削ったわけじゃない。でも、そこにあるものがより、そこにある。光と闇のマジックってやつ? 錯覚を利用しているのだろう。
それから、唇。
乾いていない。荒れていない。ただ、潤っている。
薄い桃色が、桃色として正しくそこにある。
最後に、顔全体。
ミミは少し首を傾けた。設計図を最終確認するように。
それから、もう一度だけ、わずかな魔力を足した。
何が変わったかわからない。
でも、変わった。
顔の各部品が、ばらばらに存在するのではなく、今日のわたしという一枚の絵として、初めて統合されたような感じだった。
ミミは手を下ろした。
「こうですー?」
素っ気なく言った。
でも、その目はすっきりと満足していた。ほんの少しだけうまい空気を吸えた目だった。魔族が魔法を使い終えたときの、静かな充足がそこにあった。
「見てください」わたしはここぞとばかりにアピールする。「存分に御覧ください。ただでさえかわいいわたしが、128%ほどかわいさアップしてます! これはもう一撃悩殺まちがいなしです。ほら、見てー先生ー。ちゅ♡」喰らえ。投げキッスザンド。
『えっ』
『なにこれ』
『アナ様がアナ様のまま別人みたいになってる』
『角もそのままなのに』
『ミミちゃんすごくない?』
『これ魔法? それとも腕?』
『変身魔法使いの本気ってこういうことか』
『ていうか、アナ様が自分をかわいいって言うのウケるw』
『うちの奥様がアップしはじめたんだが?』
「この魔法……。なんとなんと月にたった1万APで使い放題。カケホーダイ! さらに2万APをプラスすることで、な、なんと! ミミちゃんのアドバイスも受けられます!」
「えー、めんどぉ……」とミミちゃん。
まあ、魔法をかけるのはわたしなんだが――。
野暮は言うまい。ミミちゃんがローテンションなのと異なり、コメント欄は大盛り上がりだ。
その理由は単純で、皆、美の追及に餓えていたのだ。
需要はありまくりで、供給はほぼ零に等しかったのだから。
コメントにもあったが、この世界にはリップやおしろいみたいな極めて原始的なお化粧くらいしかないのだ。あとは髪の毛に香油を混ぜるとかそんなのしかない。
女性と呼ばれる属性をまとう人間たちの、美にかける執念はすさまじい。
恐怖心なんて、どこかに吹き飛んでしまっている。
『欲しい。欲しいわ!』
『アナ様。明日デートなの。すぐに魔法をかけて』
『豊胸とかもできるのかしら?』
『胸にかけて胸に!』
『全身に魔法も可能なの?』
『脱毛とかもできるといいわねぇ』
『もう魔族とかどうでもいいのね』
『女ってこえー』
『お貴族様にとっては、神魔法じゃね?』
くくく。これぞ魔族の狡知。
あらがえまい。
お肌の曲がり角な年齢の奥様方にとっては喉から手が出るほどほしかろう。
そして、それに引きずられるように、男のほうだってみだしなみという理由で、手を出さざるを得なくなる。今まで見過ごされてきた粗が、お金と手間暇を惜しんだ怠惰と見なされるからだ。
エロスがタナトスを完全に凌駕した。
「さらに! 初月は無料でサービスしますよ! 紳士淑女の皆様方ぁ!」
わたしは内心でわっしょいわっしょいしながら、この商機/勝機を逃さんとばかりに声をあげて、勝どきをあげるのであった。
それから後の話。
街中には平均化された普通の人、普通の奥様がたが溢れているわけだけど。
彼女たちは連帯することで安心して、差異化されることで安心を得ている。
つまり、ほんのわずかだけ勝ってると思いこむことで、人は幸せになれる生き物なのだ。
どういうことが起こったかというと、みんなお化粧魔法に夢中になった。
その源泉がミミの魔法にあることはきちんと理解していた。
「ミミ。変身魔法の禁止令が解かれたようですよ」
168は朝ご飯が終わった後に、ミミにそう告げた。
どうしてそうなったかとか、そんなことはよくわからない。
でも、アナリザンドと配信した記憶だけが、なんとなく脳裏にこびりついている。
あの熱狂こそが、恐怖を覆いつくすためのヴェールだったのだろう。
「広場に遊びにいきますか?」
「いいの?」
「かまいません。ただし、自身に変身魔法を使うとしても角は出したままにしなさい」
「どうして?」
「どうしてもです。それが人間のルールですから」
ミミは少しだけ考えた。
角を出したまま変身する。
それはどういう意味だろう。
魔族だと知られたままそれでも変身する。
隠さない。でも変わる。捕食者が食べるために変わるはずだったのに。
なんのために。なんで?
なんか、変な感じ。不合理としか思えない。
でも結局、168には逆らえない。逆らうだけの力を持たない。
少しだけ窮屈だけど、まったく使えない前の状況よりはマシだ。
「……わかった」
ミミは立ち上がった。
窓の外を見た。広場の方角に、子どもたちの声が聞こえた。
ユンの声が、その中にあった。
広場に出ると、子どもたちがミミを見た。
一瞬だけ、空気が止まった。
あの事件の後、初めてミミが広場に来たのだ。子どもたちはどう接していいかわからない顔をしていた。
ミミは立っていた。
角がある。桃色の髪。薄いラズベリー色の瞳。魔族の顔。
笑顔を作ろうとした。
でも、作り方が少し変わっていた。
前は笑顔は武器だった。人間の警戒を解くための道具だった。
今はなんのために笑うのかわからなかった。
ぎこちない顔のまま、ミミは立っていた。
そこへ、走ってくる足音がした。
「ミミちゃん!」
ユンだった。
真っ先に走ってきた。他の子どもたちより先に。大人たちの視線を全部無視して。
ミミの前で止まった。息を切らせていた。
「来てくれた」
「なんとなく来ただけ」
「よかった」
「なにが?」
「なんでも」
意味がわからない。
「ユン」
「なに?」
「あたし、あのとき――変なこと考えた。おまえを」
「知ってる」
「怖くないの?」
「怖い」ユンはあっさり言った。「でも、ミミちゃんはしなかったでしょ」
「できなかっただけ。168がいたし」
「それってさ」ユンは少し空を見た。「あたしも、弟がうるさいとき、黙らせたいって思うことあるよ。でもお母さんに叱られるからしないってのと同じだよ」
ミミはユンを見た。
「それは同じじゃない」
「同じじゃないかもしれないけど、似てるとは思う」
ミミはしばらく黙った。
意味を理解しようとしても、わからない。
言葉を探り当てようとしても、それがどこにもない。
けれど、似ていると言われた。つまり成功しているということだ。
「……お化粧してみた」
ミミはぽつりと言った。
「え、ほんとに? どこどこ」
「どうせ人間にはわかんないよ。ほんの少しだから」
「えー。教えてよ。わたしもやってみたい」
「ユンには必要ない。おまえはちゃんと人間だから」
「そういう問題じゃないよ」ユンは笑った。「かわいくなりたいってのは、魔族も人間も関係ないでしょ」
ミミは少し止まった。
かわいくなりたい。
自分がその言葉を当てはめていいのかどうか、まだよくわからなかった。
でも、ユンに言われると、そうかもしれないと思えた。
「やってあげてもいい」
「ほんとに?」
「でも角には触らないで。敏感だから」
「え、触りたいのに」
「ダメ。集中できない」
ユンはくちびるを尖らせたが、それからにっと笑った。
「わかった。約束する」
他の子どもたちが、少しずつ近づいてきた。
最初は遠巻きに。それから少しずつ。
ミミは気づかないふりをした。
でも、気づいていた。
168が広場の端のベンチに座っていた。静かに本を読んでいた。
傍らにはユンの母親が座っている。ふたりともこちらを見ていなかった。
でもミミにはわかった。ちゃんと見ている。見張られている。
ミミはユンの顔をじっと見た。
鼻の形。目の色。耳の丸み。唇の厚さ。
いつもと同じ魔族的な合理性に満ち満ちた観察だった。
でも、目的が違った。
今日は、この子を食べるためじゃない。
この子を、少しだけかわいくするために見ている。
同じ目で、違うことをしている。
それがなんだか言葉にできない不可思議さを感じる。
笑いたいような、泣きたいような、どちらでもないような。
まだ名前のついていない感覚が胸の中にあった。
ミミはそれを持ったまま魔法をかけた。
角は出したまま。
――魔族もまた、少しだけ変わる。
母親は、子どもを呼ばずにそのまま待った。
うん。そうね。そう……。
記述にあるミミちゃんのお名前なんですが、アニメのクレジットによれば、『ユン』(たぶん、幼いという意味のヤングあたりから来てるっぽい?)ちゃんだったらしいです。
椅子から転げ落ちつつ、あばば(白目)。
まあそうなる可能性もちょっとはあるかなー的な思考はあったんですが、ここまで書いちゃってるからね。そのままいくほかないかなって。
仕方ないので、ユンちゃんを出演させました(魔族的狡知)。