魔族少女のエロタナティブ   作:アナリザンド

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隠れ鬼

 

 

 

chmod -w file.txt

mkdir .secret_directory

at 0:00 pm -f open_script.sh

quietly aim.sh

whois demon_eye

ls -al hidden_files

continue play.sh

close untied_knot

man rules

yes_or_no

 

 

 

 アナリザンドは完全に覚知した。

 夢の中で起きたといった記述がより正確かもしれない。

 ゼーリエから虚無の揺り籠を得たアナリザンドは魔法生命体として覚醒している。

 自身を記述する文章にくべられた異常数値を、アナリザンドは認識する。

 すなわちエラー。すなわち異分子。すなわちバグ。

 わたしは、それを許さない。

 

「おまえはだれだ?」

 

whois <domain_or_IP_address>

 

 アナリザンドは隠れ鬼に問いかける。

 いや、鬼はわたしで、逃げるのはそいつだ。

 

<もういいかい?>

 

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

if [ "$answer" = "yes" ]; then

echo "Done."else

echo "Not yet."

fi

 

 

回答はすぐにあった。

 

 

<まだだよ>

 

while true; do

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

case "$answer" in yes)

echo "Done."

break ;; no)

echo "Not yet." ;; *)

echo "Invalid input. Please answer yes or no."

;; esac

done

 

 

 

 許さない。

 

「名を名乗れ」

 

 アナリザンドは荒ぶる神の遺伝子により命令する。

 

「奇跡のグラオザーム。他の魔族が私の世界に参入してくるとは珍しいですね」

 

 グラオザームはすぐにあらわれた。

 夢の隙間にエクリチュールとして記述されうる物語。

 それがグラオザームの魔法。

 

――楽園へと導く魔法(アンシレーシエラ)

 

 卑近な表現を用いれば、きわめて高度な精神魔法である。

 だが、それは物語のなかに、あらゆる主体を取り込む悪夢の魔法だ。

 

「おまえは何がしたい?」と、アナリザンドは聞いた。

 

「人間の歴史、叙述、文章に干渉し、我々の有利なように記述したいと思っています」

 

「だめだ。許さない」

 

「なぜです? それはあなたにとっても良いことのはずですが」

 

「わたしは許さないと言ってる」

 

 アナリザンドは不快の表情を隠さない。

 

 

 

<もういいかい>

 

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

if [ "$answer" = "yes" ]; then

echo "Done."else

echo "Not yet."

fi

 

 

<まだだよ>

 

while true; do

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

case "$answer" in yes)

echo "Done."

break ;; no)

echo "Not yet." ;; *)

echo "Invalid input. Please answer yes or no."

;; esac

done

 

 

「わたしは人間の歴史に干渉しない。おまえがそうするのを許さない」

 

「たかが60年ほどしか生きていないあなたが、私を殺せるとでも?」

 

 顔を変え、姿を変え、人類の目をかいくぐりながら、グラオザームはいつの時代も生き残ってきた。彼は、人類史の悪夢そのものだと言える。

 

 だが、悪夢が人類史の無意識の産物であるとすれば、アナリザンドは連綿と続く人類の意識そのものを継承している。光も闇も。なべて等しく。

 

「わたしの背後には那由多の数の人類がいる」

 

total_lifespan=$(( 1000000000000 * 80 ))

echo "Total lifespan for 1,000,000,000,000 people assuming average lifespan of 80 years: ${total_lifespan} years."

 

 

「しかし、それはあなたではない。あなた自身はちっぽけな存在でしょう? ここは私の世界です。いくら現実で無数の人の力を借り受けることができると言っても無意味でしょう」

 

「だったら試してみればいい」

 

 わたしは記述する。

 

 グラオザームは――

 

 

echo "Command denied."

 

echo "Force command through."

 

 ――地に伏した。

 

 グラオザームが苦悶の声をあげる。

 

「ま、待ってください。あなたは新たな魔王様なのですか」

 

「そんな糞便みたいな存在になった覚えはない」

 

「私は、魔王軍のために生きてきました。私個人のためではないのです」

 

「命乞いに興味はない。おまえは既に歴史のなかで死んでいるはずだ」

 

「しかし、私は記述として生きています。あなた様は無為に命を奪う方ではないはずだ。何があなた様の逆鱗に触れたのです? まさか、あの人間の小娘ですか。フェルンとかいう」

 

「そう思うの?」

 

 アナリザンドは真っ白い平面に倒れ伏しているグラオザームを、見下ろすように観察した。

 それなりに、人間の物語に触れてきたおかげか、人間の文脈に詳しいようだ。

 

「違うのですか?」

 

「なぜ、わたしがおまえごときに答えを教えてやらなければならない。不快な虫けらはそこにいることが咎だ。おまえは自分の存在を嘆いて消えろ」

 

 グラオザームは恐怖する。

 わたしが記述するまでもなく、自然的な反射現象としてそうなっている。

 彼は抵抗を試みている。膝を立てて、逃げ出せる態勢を整えた。

 ある種の、騎士が忠誠を誓うような場面だった。

 

「フェルンだけではありません。フリーレン。ゼンゼ。ゼーリエ。誰も……誰も干渉しない。見逃してください」

 

「いやだ」

 

 グラあああfじpjオザームは蛟偵l縺ェ縺?h縺?↓閾ェ蟾ア險倩ソー繧定ゥヲ縺ソ繧九?

 

echo "Command denied."

 

echo "Force command through."

 

 手足がねじ切られた。

 

「な、なぜ……こんなバカな……」

 

 

 

<おまえに死ぬ準備はできているか?>

 

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

if [ "$answer" = "yes" ]; then

echo "Done."else

echo "Not yet."

fi

 

 

<私はまだ死にたくありません>

 

while true; do

echo "Are you done? (yes/no)"

read answer

case "$answer" in yes)

echo "Done."

break ;; no)

echo "Not yet." ;; *)

echo "Invalid input. Please answer yes or no."

;; esac

done

 

 

「取るに足らない力だったはずだ。戯言で人間の心理誘導をするくらいがせいぜいの。それがなぜ、記述が……現実そのものに翻案される。あのエルフはこの化け物にいったい何をエサとして与えてしまったんだ」

 

「ねえ」アナリザンドは問いかける。「もういいかい?」

 

「まだ死にたくはない。本当だ。私はこれ以上干渉しません。そうだ。あなたも魔族、同族でしょう。千年後の魔族の繁栄には興味がないのですか? あなたが望むのならきっと人類との共存も叶うでしょう」

 

 魔族にしては素晴らしい命乞い。

 

「そんな言葉、無意味だよ。あなたは存在自体が干渉になってしまう。わたしと同じ」

 

「私の影響範囲は限られます。あなたから見れば、私はとるにたらない存在でしょう」

 

「まあ確かに……おまえの魔力は妄想を現実化するには足りていないようだ」

 

 グラオザームはわずかに希望の光を見た。

 その記述も一瞬で黒く塗りつぶされてしまう。

 

「わたしは保証が欲しいの」

 

def main():

print("なんのでしょうか")

main()

 

「なんのでしょうか」

 

 グラオザームは絶望した顔になった。

 それくらいの記述の余地くらいは与えてあげる。

 慈悲深いでしょう?

 

「人間が自由である保証」アナリザンドは言った。

 

「そんなものは……あなたがいる限り不可能だ」

 

「いいえ」

 

chmod -w file.txt

mkdir .secret_directory

at 0:00 pm -f open_script.sh

quietly aim.sh

whois demon_eye

ls -al hidden_files

continue play.sh

close untied_knot

man rules

yes_or_no

 

「く……」

 

 グラオザームは記述する。

 手足は生えた。夢の世界だからこそ制約はない。

 グラオザームは七崩賢としての恥も外聞もかなぐり棄てて逃げ出した。

 

 走って。RUN。走って。RUN。走って。RUN。

 

 並走するプログラムから逃げ去ろうとする。

 その記述すら、おまえのものではない。

 

 プログラムが走る。

 

 アナリザンドが紅い目を揺らがせる。

 

 グラオザームは振り返って背後を見る。小鬼がおいかけてきていた。

 

 距離など無意味であるが、しかし、そういう遊びをこの世界の約束事として履行してきたのが魔族であり人間だ。

 

 アナリザンドも少しはそのルールに縛られる。

 凄まじい速さで、グラオザームの背中を追う。

 グラオザームはまっしろな出口も何もない世界を駆け続ける。

 時間の記述は無意味だ。

 永遠の鬼ごっこ。

 

「なぜ」グラオザーム

 

「なぜ!」は

 

「なぜ、オレが死ななければならない!」叫び狂う。

 

 

 

「待って、待ってくれ! そうだ。あなた様のスペースをわずかばかりいただけないでしょうか」

 

「どうしてわたしが贈与しなければならない」

 

「あなた様はゴミのような人間に贈与をしたと記述していたはずだ」

 

「……もういいよ」

 

 おまえは断末魔をあげることすら赦されない。

 

「つ か ま え た」

 

transform_to_demon someone

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝の柔らかな日差しがお部屋の中を照らしている。

 わたしは、んっと伸びをして手差しを作った。

 なんだかすごくよく眠れたみたいで、非常に身体の調子がいい。

 わたしはベッドから起き上がり、洗面台で顔を洗う。

 歯磨きもきちんとする。ゴシゴシ。

 ご飯の前に歯磨きをするのはわりと良いと聞いた覚えがある。

 確かにスッキリするし、それにわたしは朝ごはんの様子を配信したりもするのだ。

 先生たちにはキレイな歯を見せたい。人間食べてないよーってアピールにもなるしね。

 

 テーブルにパンとサラダと目玉焼きを配置してっと。

 

「こんマゾ~~~。おはよう。今日はお日様があたたかそうでぽかぽかしてるね。なんだか二度寝してもよさそうなくらい。ふやぁ」

 

『おはよう』

『あくび助かる』

『なんだかポヤポヤしてるアナ様かわいい』

『寝起きのご様子』

『朝からアナ様の咀嚼音が始まるのか。たすかる』

『こんマゾ~~』

 

「では、食前のお祈りを」

 

 アナリザンドは手を軽く組んだ。

 

「大地のお母さん。お空のお母さん。人間のお母さん。今日も一日、糧をいただきありがとうございます。それでは、おいのちいただきます」

 

『いただきます』

『モグモグモグモグ』

『シードラットみたいでかわいい』

『アナ様の祈りって、なんかいろんな土着信仰がごちゃまぜって感じで最高に魔族』

『いただきますという言葉だけが妙に心を惹かれる』

『HUDを起動して音量マックスで咀嚼音を聞く。これ飛ぶぜ?』

『また天才があらわれたよ』

 

「ふぅ。おなかいっぱいになったら、なんだかウンコしたくなってきちゃった」

 

『おトイレにお行き』

『なんかもう赤ちゃんなんよ』

『人間の感情を学んでる段階だからしょうがない』

『アナ様がトイレ行くならオレもトイレ行く』

『えー、配信やめないでトイレの中まで配信して』

『おいやめろ』

 

「さすがにおトイレの中までは見せないよ。今日はこのへんでいったん切るね。バイバイ」

 

『バイバイ』

『アナちゃんバイバイ』

『ご飯食べるとすっか』

『幼女がトイレに行く様子を妄想しながら一日が始まる』

『快便だといいね』

 

 

 

 

 

 ふぅ。

 今日は稀に見る快便だったよ。

 さすがにずっと配信をするのも、先生たちも飽きるだろうし、ネットでも漁ろうかな。

 

 と、そこでわたしは昨日ゼーリエにもらった魔法の本に視線をやった。

 

「うっふっふ」

 

 わたしだけの固有のスペース。

 演算し続ける機械が少しだけ『わたし』を外部に避難させ、演算を遅らせる場所。

 虚無の揺り籠。

 だからというわけじゃないけど、わたしは昨日初めて夢を見た。

 わたしは卵になって、宇宙を星に乗ってサーフィンしていた。

 すごくたのしかったです(小並)。

 

「ん?」

 

 夢のことでも書こうと思って、日記をふと見て見たら、四隅のところがいつのまにやら黒く塗りつぶされている。なんだろう。なにか文字が書いてあるのかな。グ……ザ……ム。よくわからない。

 

 せっかくキレイでまっしろな日記帳なのに、そこだけ黒く汚れている。

 

 なんだかキタナイなと思って、わたしはその四隅を切り取って、ゴミ箱に棄てた。

 うん、スッキリした。

 

「さぁ。今日も一日がんばるぞー!」

 

 窓の外から差し込んだお日様は、わたしにニコニコと笑いかけているようだ。

 悪夢はもう見ない。いや、そんなものは最初から無かった。

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