魔族少女のエロタナティブ   作:アナリザンド

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最後の一撃は

 

 

 

 リュグナーの身体が魔力の粒子になって消えようとしていた。

 

 フェルンのゾルトラークによって心臓を撃ちぬかれた今、もはや再生は叶わない。いや、手も足も折れ曲がり、見た目はひどいことになっているが、それは本質的には彼にとっての致命傷ではない。血を送り出す器官である心臓こそが、彼の核たる部分だったのだ。

 フェルンはHUDを使って、今度こそ――リュグナーの根源を見極め、ピンポイントで撃ちぬいたのである。相手の根源的属性を理解し、まるで複雑なじゃんけんをするように、相手を負かす。

 

 そうであるならば、その死は魔法使いにとっての本懐である。なぜなら、殺し合いによって、両者はわかりあえているから。()()()()()()()()から。つまり人は人に出逢えるから。魔族にとってもそうであると信じることができるからだ。

 

 しかし、そうはならなかった。アナリザンドの魔法とも言えぬ魔法でグチャグチャに破壊され、尊厳も誇りも踏みにじられた。あげくには、同じ魔法使い――フェルンに――再度不意打ちを喰らい、露と消える。そこには何も残らない。唯一の自己の存在を支える――人生の大半を捧げてきた魔法が――誰にも看取られずに死んでいく。

 

 まさに犬死にだった。

 

 リュグナーはこのときばかりは、わずかに後悔の念が湧いた。もし、フェルンの言葉に乗っていれば、魔法使いとして決闘していれば、このようなみじめな最期を遂げなかっただろうに。

 

「おのれ。騙したな。卑怯者め!」リュグナーは最後の力をふり絞り、怒りと不満を表明する。

 

 向けられた視線の先にはアナリザンドがいた。

 殺さないといったそばから殺していく。魔族よりも魔族らしい心性。いや、魔族よりも惨たらしい慈悲なき者。存在をすべて否定する者。

 

――魔女は、哀しそうに微笑んでいる。

 

 沈黙する姉に代わり、フェルンが一歩前に出る。

 

「最初に騙したのはあなたのほうでしょう。和睦を求めるグラナトの人々を嘲笑った。あなたを討ったのは、私ではありません。人間の(やわらぎ)を願う心です」

 

 フェルンは油断なく杖をかまえ、リュグナーの命を刈り取ろうとさらに近づいた。

 

「和平だと……。そんなものを本当に貴様たちが求めていたとでもいうのか。魔族を放逐し、滅ぼしたかったのは人間のほうだ」

 

「確かにそうかもしれません」フェルンは哀しげな顔になった。「人間はあなたがたより嘘をつきます。己すら欺いて生きているのです。だから、人間は矛盾している……」

 

「そんなものに私が敗れたというのか。人間どもめ。覚えておけ。おまえたちをいつか滅ぼすのは、私達魔族ではない。おまえたち自身に巣くう闇だということに」

 

 ああ、死に際のセリフまで、笑っちゃうほどファンタジーだ。

 

「そんなことは識っています。……けれど、ご忠告感謝いたします」

 

 フェルンが介錯の魔法を放ち、今度こそリュグナーの姿が見えなくなる。

 こうして、己の魔法の名前すら明かすことなく、どちらかと言えば、外交官としてではなく最も魔族らしかった魔族、リュグナーは死んだ。

 

 

 

 

 

「申し訳ございませんでした。アナリザンド様」

 

「どうして謝るの?」

 

「アナリザンド様は、あの魔族に慈悲をかけようとなさっておりましたでしょう。私が殺してしまいました。本当は、もしかすると――言葉が通じたのかもしれません。わかりあえたのかもしれません。私が台なしにしてしまいました……」

 

「いいえ。ありがとう。私にはやっぱり殺せなかったみたい。妹に手を汚させるなんて、姉失格だよね。和睦の使者も死んじゃうしさ。もうメチャクチャだよ」

 

 アナリザンドはしょんぼりとうなだれる。

 そう――結局のところ、アナリザンドは覚悟らしい覚悟がなかったのだろう。

 和睦のために奔走したところで、結局はどこまでいっても空回り。

 心がないのだから当然だ。人間の集合的無意識に支えられて、それらしくふるまっているだけで、結局、その心は無なのかもしれない。

 

 アナリザンドは空を見上げる。

 満月が見える。それ以外は闇。

 

 多くの人、魔族が死に、和睦の道は血塗られている。

 こんなはずじゃなかったのに。

 

 わたしは魔族には珍しく後悔できる機能を有しているらしい。

 

「まだ終わっていません。アウラと和睦できればすべてが丸くおさまります」

 

「そうだぜ。姉ちゃん」

 

 内壁をよじのぼって、シュタルクがあらわれた。

 体中傷だらけだが、男の子はそれぐらいがちょうどいい。

 強くなった。わたしは、誇らしさに胸がいっぱいになる。

 けれど、ここにシュタルク君がいるということは――。

 

「無事だったのですか。シュタルク様」

 

「ああ、強敵だったけどな。なんかブツブツ呟きながら襲ってくるから怖かったけどよ」

 

「殺したの?」アナリザンドが聞く。

 

「いや、殺してねぇぜ。姉ちゃんのいうことはきちんと守ったんだ。あとで褒めてくれよ」

 

 リーニエは森の中で幸せな夢を見ている。

 

 アナリザンドの表情に希望が灯った。リーニエは死んでいなかった! 和睦の道も生き残っているかもしれない。まだ、なにも遅くはない。

 

「アウラ様と通話してみるね。シュタルク君はアウラ様のもとに急行してちょうだい。ここから二十キロメートル先の小高い丘のところにいるよ」

 

「応! わかったぜ!」

 

 シュタルク君は、俊敏な動きで内壁を降り、フリーレンのもとに向かって行った。

 わたしやフェルンちゃんでは、とてもじゃないが追いつかない。前世では考えられないことだが、あの勢いなら、二十分もあれば到着するんじゃないか。とてつもないタフネスさを、この世界の戦士たちは備えている。シュタルクが君が到着すれば、きっとフリーレンを止めてくれるだろう。

 

 そう、わたしは勘違いしていた。

 どこかで固定観念を抱いていた。

 

 フリーレンとアウラは魔力量で倍以上の差がある。しかも、魔族を欺き殺すためだけに魔力量を隠匿している、いわば魔族殺しのプロフェッショナルだ。冷徹な頭脳は寸分の狂いなく、魔族を殺し、きっと七崩賢であっても、そうするだろう。そう思っていたのだ。

 

 つまり、アウラは放っておけば殺されると思っていたのである。

 

 首無し騎士たちに守られているアウラはそう簡単にはやられないだろうし、アゼリューゼをつかって自滅させられることもない。

 

 だから、どちらも――傷ついているかもはしれないが、取り返しがつくはず。

 

 そう信じて、わたしは小窓を開き、アウラとつながろうとする。

 

――そこに、激しい後悔が待ち受けているとも知らずに。

 

 

 

 

 

 凄惨――。

 

 その状況はただ、一言、そう言い表すのが正しかった。

 首無し騎士だったものは、そのほとんどが討ち倒され、バラバラ死体となっていた。そうバラバラだ。大半の死体は、グチャグチャのドロドロで、ぶちまけられたジグソーパズルのように、辺り一面に転がっている。

 

 その中心には、傷ついた一匹の猛獣のように、フリーレンが殺意のこもった目でこちらを見ていた。呼吸をすることすら忘れて、ただ獰猛な獣のように、アウラを射抜いている。

 

 生き残った(という表現もおかしいが、ともかくまだ動いてるやつのことだ)首無し騎士が、一斉にフリーレンに斬りかかる。

 

 フリーレンが地獄の業火を召喚する魔法を使い、首無し騎士たちは吹き飛ばされる。炎とトルネードが時期はずれの花火のようにあたりを照らし、戦士の村でよくふるまわれるような肉のミンチ――ハンバーグのように騎士たちを変えた。こんなのアニメでは流せない。

 

――フリーレンは選んでいた。

 

 自分の乙女心を殺してでも、魔族と刺し違えようとしていた。ただの殺人マシーンになってでもアウラを殺そうとしていた。

 自らの忌むべき魔族と同じように、首無し騎士たちは邪魔だから()()()()

 ただ、それだけのことだ。

 

『あら。遅かったのね。あなたが通信してくるのをずっと待ってたのよ』

 

 カタカタと天秤が震えている。

 アウラは標準的な微笑を選択している。

 その内実は、悪鬼のごとく殺しにかかってくるフリーレンに恐れを抱いている。

 

「アウラ様。どうしてこんなことになったの?」アナリザンドは聞いた。

 

『知らないわよ。私は真実を伝えてあげただけ。そうしたらフリーレンが怒って、魔法をぶっぱなしてきたの。私は悪くないわ』

 

「真実?」

 

『フリーレンの心の中にヒンメルはいるって伝えてあげたのよ』

 

 聞きようによっては、慈愛溢れる女神の言葉だ。

 それがどうして、怒りにつながるのか理解できない。

 

「よくわからない。それがどうしてこうなるの?」

 

『ヒンメルは鎧を吹き飛ばしたかつてのフリーレンを叱ったらしいわ。だから、最初はフリーレンも鎧を傷つけることなく私の魔法を解除していたのだけれど、その魔法――魔力消費が激しかったのよね。いずれ魔力が尽きて私の魔法(アゼリューゼ)で殺されることになる。だから私は褒めてあげたの。人間の不合理を――理解できないけれど理解してあげようとしたのよ』

 

 アウラは魔族らしく微笑を浮かべる。

 うっとりとした視線で、自らの天秤(いんかく)を見つめ――。

 

『私は選ばせてあげたの。この天秤に乗せてね。どうやらフリーレンはヒンメルを殺すことを選んだらしいわ。私にとってはどうでもいいことだけど』

 

 ヒンメルを殺すか。ヒンメルに殺されるか。アウラは選択を迫ったらしい。

 

「なんて残酷なことを……」フェルンが震えていた。「フリーレン様。おやめください。もう自分で自分を傷つけないでください」

 

『フェルンか……。こんなかっこ悪い姿、弟子には見られたくなかったな……ヒンメルは勇者はいつでも美しくなきゃいけないって言ってたのに……』

 

「もうやめましょう。戦いは終わったんです。こんな戦い無意味です」

 

『無意味? 何を言ってるの。私はいま戦っているんだ。終わってなんかいない』

 

「和睦の障害だった魔族は私が殺しました。もう戦う相手は残っていません」

 

『へえ。魔族をやっつけたんだね。すごいねフェルン。でも、おかしなことを言うね。そこにまだ残ってるじゃん』

 

 そこ――が、どこを指すのか、フェルンは正確に理解した。

 アナリザンドとアウラ。

 フリーレンの中に例外はない。魔族であれば、おしなべて殺す対象だ。

 

『リュグナーが死んだのね』アウラが物憂げに言った。『人間もなかなかやるじゃない。フリーレンと同じく、魔力を制限しているのね』

 

「アウラ様。騎士たちを停めて」アナリザンドが説得する。

 

『それって、私に抵抗するな。死ねって言ってるのと同じよ』

 

「そうじゃない。逃げたらいい」

 

『あの目を見たでしょ。あいつ、どこまでも追ってきて殺すつもりよ』

 

 フリーレンは隙なく殺すタイミングを見計らっていた。

 撤退戦は最も難しいとされる。しんがりは一番死にやすい。

 この場合、そこにはアウラしか生きている魔族はいないのだから、アウラが死ぬ可能性は確かに高まるだろう。アウラにとっては、ここでフリーレンを殺しておかねば、自分が殺されてしまう。

 

 アナリザンドも見られただけで身がすくんだ。

 

 凍りつきながら燃え盛るような殺意のまなざしは、それだけの力を秘めているようにも思われた。そのいわば邪視に抗おうとするのは、魔法生命体である魔族にとっては――いや、人間であってもおかしなことではない。

 

『私は必死に抵抗しただけよ。最初からフリーレンはヤル気満々だったんだから』

 

「それはわかってる。でも、そこまでやる必要はなかった。フリーレンをなぶる必要なんてなかったでしょう。これ以上は過剰防衛だよ」

 

『それは命令かしら?』

 

「お願いだよ。アウラ様。やめて」

 

『私、お願いというのはよくわからないの。誰かに媚びを売るなんてしてきたことないのよ。今度、是非教えてくださらないかしら』

 

「アウラ様は、もう知っているはずだよ。わたしに融資を求めたじゃない」

 

『生き延びるために、人間の猿真似をしただけ。反吐がでるほど屈辱的な行為だったわ』

 

「ごめんなさい。アウラ様を傷つけたことは謝るから」

 

『慈悲深いのね。今度いっしょにお茶をしたいわ。ねえ、アナリザンド様』

 

 通信は切れた。

 

 アウラは、死者の軍勢を、最後の数体をフリーレンへと向けた。

 フリーレンは、破滅の雷を放つ魔法を唱え、死体からは腐った肉が香ばしく焼けるイヤな臭いが立ちのぼった。そこは、地獄と形容するにふさわしい場所だった。

 

 アウラは観測する。フリーレンの魔力は、か細く消えそうになっている。

 

――もはや身を守る盾はない。

 

 それはアウラも同じで、首無し騎士たちは全滅してしまった。

 

 すべての言葉が尽きたあと、純粋な殺し合いが待っている。あとはどちらが早く撃つか。ただの早撃ちの勝負だ。

 

「終わりよ。フリーレン」

 

「終わりだ。アウラ」

 

 最後の一撃を加えるのは誰か。

 

 

 

 

 

「アナリザンド様。座標転移を使って、おふたりを止めることはできませんか」

 

 フェルンは懇願する。

 確かに、アナリザンドの座標転移を使えば、フリーレンやアウラを物理的に止められる可能性はある。けれど、どうやって? わたしは煩悶した。

 

 あれだけふたりは極まった殺し合いをしている。ゼーリエやソリテールのように殺し合いを楽しんですらいない。戦いを忌避しながら、殺し合う。そうせざるをえない状況に追いこまれているからだ。意志と呼べるほどの意志がないわたしに、ふたりとも殺さずに止めることができるだろうか。

 例えば、アウラに抱き着くなりして無理やり止める。フリーレンが魔法を放つ。わたしは死なないがアウラは死ぬ。

 例えば、フリーレンに抱き着くなりして無理やり止める。フリーレンはわたしを殺そうとする。ふっとばされる。わたしは死なないが、そのうちアウラが魔法を放つ。フリーレンは終わる。

 

「イメージできない……」

 

 魔法の世界ではイメージできないことは実現できない。

 魔法学校の初等部で習う基礎中の基礎だ。

 

 それになにより――怖かった。

 殺意の応酬にさらされるのが怖かったというのもあるが、まがりなりにも友誼を結んだアウラが死ぬのが、そして、妹の慕うフリーレンをまちがって殺してしまうのが、怖かったのだ。

 

 ここにきても、わたしは好きと嫌いを切り分けることができない。

 

「なにか方法はないのでしょうか。このままではフリーレン様が死んでしまいます」

 

「……あるよ。ひとつだけ」

 

「どういう方法でしょうか」

 

「わたしを殺せばいい」

 

「どういう意味でしょうか」

 

「フェルンちゃんはアウラを殺してでも、フリーレンを生かしたいんでしょ。わたしがんばったんだよ。魔族たちは人の話を聞かないし、人間たちは嘘をつく。それでも、和睦を結べたらいいなって本当に思ってたの。アウラ様だって、もしこのままお話できたら、きっといつかは人間を殺さないことを学んでいけるんだなって思ってたんだよ」

 

「識っております……」

 

「わたしはどちらかと言えば、フリーレンよりもアウラのほうが好きなの」

 

 話の通じないフリーレンより、話が通じるかもしれないアウラのほうが好き。

 そんな単純な話。もちろん、わたしが捉えているアウラ像もアウラの内心とはかけ離れている可能性がある。けれど、対話をしようとした。融資をしてほしいと頼んできた。

 そんな存在を見殺しにすることはできない。

 

 けれど、フリーレンを殺すこともできない。

 妹が――フェルンちゃんがフリーレンを慕っているから。

 フリーレンを見殺しにすることは、フェルンちゃんを殺すのと同じ。

 

 だから、どちらも選べなかった。選べないということすら選べない。

 思考がループする。

 

 わたしはS2(ことば)の領域で迷い子になっている。

 

 

 

 

 

 フリーレンが一歩近づいた。

 アウラが、天秤を掲げる。

 

「アゼ―――」

 

 その瞬間、アウラの身体が跳ねた。なにか正体不明の魔法がフリーレンから繰り出され、アウラの身体を吹き飛ばしたのだ。衝撃――、いや衝撃ではない。

 風や、炎や、電撃や、その他の自然現象ではない。衝撃ですらない。

 

 ただ、それはそうなったとしか記述できない何か。

 

「なによ、これ……私が魔法を感知できないなんて」

 

 そのまま、地面に磔にされる。躯になるのを強制される。

 そう――これはおそらくイメージ。

 イメージを直接、現象に置換している。あるいは単なる重力魔法?

 それとも、自然そのものを操った?

 

 いずれにしろ、このままではやられる。

 アウラは肉の身体でジタバタともがく。赤ん坊のように拙い動きだったが、それでもなんとか正体不明の力から脱することができた。

 フリーレンの魔力はほとんどもう底をついていたのだ。

 

 今一度、フリーレンが何かをしようとする。

 尽きかけた魔力をかき集め、最後の魔法を――。

 

服従させる魔法(アゼリューゼ)ぇぇぇ!!」

 

 アウラは射精するかのように不意に叫んだ。

 

 もしかすると――、もしかするとだが、あのときアナリザンドが命じた『射精しろ』という言葉。射精とは、()()()()()ということも意味されている。シニフィエとシニフィアンの結びつきは恣意的なものだが、英語もそれなりに知っているアナリザンドは、その有意をアウラに知らず知らずのうちに植えつけていたのかもしれない。

 

 反射のように、突然発せられた魔法は、フリーレンの魔法を速さで上まわった。

 

 ふたりの魂が天秤に乗せられる。フリーレンの魂は天秤に捧げられた。

 

「勝った! 私の勝ちよ、フリーレン」

 

「……」

 

「みっともなく命乞いしたらどうかしら。今ならアナリザンドの言葉に免じて赦してあげるかもしれないわ。本当よ……。私はあなたを殺さない」

 

「そんな言葉……、信じない。私は刺し違えてでもおまえを殺す」

 

「なら、死になさい! フリーレン!」

 

 アウラの命令によって、フリーレンの杖が徐々に首のほうへと近づいていく。

 死神の鎌が、迫ってくる。

 勇者の魂は必死に抵抗するが――、アウラの魔法に逆らい続けるのは難しい。

 それに、フリーレンのこころはもはやズタボロだった。

 戦い続けるのに疲れ切っていた。

 最後に走馬灯のように、さまざまなシーンが再生される。

 ヒンメルの顔。フランメの顔。アイゼンの顔。ハイターの顔。シュタルクの顔。

 いままで出逢った様々な人の顔が思い浮かぶ。

 みんななぜか穏やかな顔をしていた。

 

 そして。

 

「フェルン……、あとのことは頼んだよ」

 

 フリーレンがまっくらな空に向けてささやいた。

 フリーレンの視界を、白と黒の閃光が覆った。

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