魔族少女のエロタナティブ   作:アナリザンド

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フォル爺

 

 

 

 

――さほど意味のないプロローグ――

 

 

 

 わたしはゼーリエ先生を見ている。

 扉の隙間から、じーっと観察している。

 先生は、いつもと変わった様子はない。

 玉座のうえであぐらを組んで、気だるそうに魔導書を読んでいる。

 

 おそらく、魔法図書館における有償サービスたる魔法売買のため、ランクが低く一見すると何の役にもたたないくだらない魔法を覚えなおしているのだろう。

 

 例えば――。

 

 手に持ったゴミを確実にゴミ箱にシュートできる魔法(地面に落ちてるのはダメです)。

 トーストにいちごジャムを均一に塗り広がらせる魔法(いちごジャム以外はダメです)。

 暗い部屋のなかで目だけをピカっと光らせる魔法(軽くホラー風味。自分も眩しいぞ)。

 デスラー総統みたいに顔を青くさせる魔法(ブルーベリィみたいな色合いになります)。

 足の小指をタンスの角にぶつけても痛くない魔法(効果はコンマ数秒でジャスガ必須)。

 

 まるでドラえもんの秘密道具みたい。くだらないのもなかにはあるけれど、魔法の価値ってそもそも存在しないからね。人間が後から付加価値をつけてるってだけの話。値打ちだけが客観的データとして存在する。

 

 ところで、先生が魔法を他者に授与する際には、その魔法のプロセスというか、アプリケーションそのものが、先生の記憶から消えてしまうらしい。でも、そのおかげか、魔導書を単に与えるだけではなくて、先生の魔法を買った人たちは、すぐにその魔法を自分のものにできる。魂の一部――おそらく記憶とかそういうのを引き継いで、インストールするという仕組みだ。

 

「また覗き見か。アナリザンド」

 

 やっぱりバレテーラ。

 わたしは扉を開けて、トコトコと近づく。頭をふりふり。

 歩き方にさえ、媚びを売る。どうだ。かわいいでしょう!

 

「なんの用だ? またくだらない遊びか? それともようやく抱き枕の魔法を私に披露する気になったか? もらっておいて感想すら言わないとは、このゼーリエも舐められたものだな」

 

 ビンビンに怒ってらっしゃる!

 でも、先生に抱き枕って似合わないような気がするんだよなぁ。

 

「えっと、先生――、ちょっと考えたんだけど」

 

「なんだ?」

 

「先生って、魔法を誰かに授与するときに、その魔法を忘れるんだよね?」

 

「それがどうした?」

 

「先生って、()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

「どうしてそう思う?」

 

「これは、わたしの経験と知識に基づくお話なんだけど――」

 

 オレオール先生の啓示。

 魂の循環システム。そのシステムにおいて、人間の魂は回収され記録、保存され、再分配される。魔族はレジデューとして、基本的には廃棄処分。

 

 じゃあ、エルフはという話。

 

 エルフは長大な時間を生きていて、魂の循環速度がきわめて低速な存在だ。

 オレオールからしてみれば、エルフという存在は廃情報ではないけれども、効率性というべきか、そういった意味では、人間よりも劣るわけだ。

 

 そんなエルフの位置づけは、おそらくメモリなのではないかと思う。

 魂の循環システムに毀損が生じたときに、エルフはそのバックアップデータとして機能する。

 

 だから、エルフの魂には、記憶の揮発性がほとんど見受けられない。

 

――不揮発性メモリ。

 

 種族的な特性として、忘却という機能が存在しないのではないか。

 

 なんて思ったりするのだ。わたしの観測結果はおそらく正しいだろう。

 

「つまり、先生は忘れるってことがあんまりできない存在なんじゃないかって」

 

「そんなことはないぞ。私も千日前に何を食べたかとか、そういうくだらない記憶は忘れている」

 

「それは膨大な情報量がフラグメンテーションを起こして、アクセスしにくくなってるだけじゃないかなって思うんだけど。先生も思い出そうとすれば思い出せるでしょ? 時間はかかるかもしれないけどさ」

 

「……くだらんな。そんなくだらないことをわざわざ思い出そうとする私ではない」

 

「千年前のフランメちゃん十歳のことは忘れないのにね」

 

 髪の毛ふりふり。今日もフランメの幼いときのあみあみポニテですよー。

 先生の大好きな髪型ですよー。

 

「どうやら、私をおちょくるのが今日のメインテーマだったようだな。お仕置きもセットしてやろうか。様式美というやつだ」

 

 ぷるぷると震えるわたし。

 それも様式美というやつで話が進まない。

 わたしはすぐに愛嬌のある顔をつくった。

 

「エルフの魂の規格がシステムメモリとして設計されているのは間違いないと思うんだよね。それはフリーレンの情動が変化しにくいってところからも、そうなのかなって思うんだけど」

 

 保存を旨とするので変化しにくいわけだ。

 

「私とて変わる。フリーレンも永遠不変の存在ではないだろう」

 

「うん、わかってるよ。先生もすごく変わったかなって思うし。フリーレンも変わった。だから、魂の規格っていうのは、必ずしもそうでなければならないっていう決定論的なものじゃないと思うの。先生って、魂の規格とかそういうの超越してると思うし」

 

「私は私だからな。そんな魂の規格なんぞに縛られる私ではない」

 

 先生の言葉は、もはや魂という枠組すら超えてるようで頼もしい。

 

 魂が高次元のデータセットであるとするならば、メモリとしての枠組みのうえにも、その上を走らせるアプリケーション、あるいはプロセッサーとしての役割も持っているのだろう。

 

 エルフという魂であってもエルフを超えることはできるし、魔族だってそうだ。

 人間もドワーフも同じ。つまり、みんな太陽の子である。それぞれ在り方は違うけれど。

 

「今回は、先生が忘れることが嬉しいんじゃないかってお話だったよね」

 

 わたしは話を戻した。

 ゼーリエ先生が不遜にわらう。

 

「20数年前に、私とおまえが初めて会話したとき、おまえは私が認知症になるのを恐れているといったな。あの言葉はまるきり嘘だったというわけか。20年越しにフラグを回収するとは、たいしたやつだ」

 

「ううん。そうじゃなくて……。まだあのときはわたしもよくわかってなかったんだけど、忘れるってことが必ずしも悪いことじゃないんじゃないかって考えてるの」

 

「ほう、おまえらしい突飛なアイディアだな。言ってみろ。先生が評価してやる」

 

「忘却っていうのは、記憶に対するアクセスが失われるってこと。つまり接触方法を喪失するって考え方が一般的だと思う。パソコンで言えば、ファイルそのものはどこかに残ってるかもしれないけど、ショートカットキーが壊れちゃって、どこにあるかわからなくなっちゃったみたいな」

 

「記憶そのものは失われるわけではないと、そう言いたいのか。だとしても、呼び出せない記憶など、無いも同然だな。それが揮発性のない石碑のようなエルフの記憶であったとしても同じだ」

 

 先生にとっての忘却という言葉の語用は、フラグメンテーション。つまり記憶の断片化を意味している。輝くような日々の思い出も、情報の洪水に押し流されてしまう。ただの風景と化してしまう。それが、先生にとっての忘れるという意味。

 

「そこが難しいところなんだよね。人間の記憶は、先生とは違って記憶に対するアクセス方法を完全に喪失してしまうってこともあるかもしれない。どうしても思い出せないって時もあるからね。揮発性の高いメモリ、あるいはキャッシュデータに過ぎないのかも」

 

「それは喪失だろう? ある意味では死ぬことと同義だ。生者にとって死とは最も忌むべき概念のはずだ。特に短い時を生きる人間たちにとってはな」

 

「わたしはそうは思わないの」

 

「なぜだ?」

 

「そうあるべきだからだよ」

 

 とあるドワーフとの邂逅が、わたしに新たな知見をもたらした。

 ハイターが天国はあるべきだと言ったように。

 忘却にも救いがあるべきなのである。

 

 

 

 

 

『フォル爺』

 

 

 

 

 

 フリーレン一行は旅の途中で、なんの変哲もない名もなき村に立ち寄った。

 

 そこは、本当に何もない牧歌的な風景で、都会の風はここには吹かない。

 ただ唯一珍しいのは、村の入り口近くの手ごろなサイズの岩の上に、年老いたドワーフが物言わぬ彫像のように、ただ静かに座っていたことだ。

 

 まるで日向ぼっこをしているかのような、老猫の風情。

 

 しかし、そばには幅広の剣が立てかけられており、頭には鉄錆びた兜を身にまとっている。

 

 彼はフリーレンの長寿友達らしい。名をフォルと呼び、みんなからはフォル爺、あるいは単に爺さん、はたまた村の守り神様と呼ばれている。

 

 フォル爺は、四百年もの長きにわたり村を守ってきたらしい。

 ドワーフの寿命がおよそ300年ほどであることからすれば、彼の死は近い。

 

 寿命が尽きる前に、フリーレンがもう一度彼と話をしたかったようだ。

 

「フォル爺」フリーレンがいつもより明るめの声を出す。「どう? 歴戦の老戦士って感じで恰好良いでしょ?」

 

「老戦士ってレベルか?」とシュタルク。

 

「はて誰だったかな?」とフォル爺は眠そうに言った。

 

「よぼよぼじゃねーか」

 

 シュタルクはフリーレンの前評と異なり、彼岸に片足をつっこんでそうなフォル爺を見て、弱そうだと思ったのである。少し前のオルデン家の嫡男との決闘の勝利が、シュタルクに自信をつけさせたということもあるだろう。

 

 ただ、それは驕りとまでは言えない。結局、決闘に勝ってもアナリザンドと踊ったのはヴィルトだったわけだし、セカンドダンスも、次男であるムートに誘われて、あっさり奪われたのである。

 

――強くなりたい。

 

 という渇望が、シュタルクを落胆させたという言葉が最も正解に近いだろう。

 

 フリーレンが乾いた視線で、フォル爺を見ていた。

 

「フリーレンだよ」

 

「そうだったな……」

 

「まだボケたふり続けているの?」

 

 のどかな風景に冷たい声が響く。

 ほんのわずかな緊張感。

 

「ほえ~」

 

 それを切り裂くように、アホみたいな間延びした声を出したのはアナリザンドである。

 

「おひげが長ーい」

 

 アナリザンドは、いつもの調子で明るく言った。

 フォル爺の纏う雰囲気が、ただの好々爺ではないことに、魔族の本能が微かな警鐘を鳴らしていたが、基本的にアナリザンドは人慣れした猫のようなものである。

 

 野生を忘れて、持ち前の好奇心をいかし、ただひたすら甘えザンドになろうとする。

 年老いたドワーフの戦士は、どこかアイゼンを思わせて、もしかしたら仲良くなれるんじゃなんて甘い幻想を抱き、アナリザンドの警戒心をさらに薄くしていた。

 

 一歩。村の境界へと足を踏み入れた。

 その瞬間、気配が変わった。

 

 それまで眠たげだったフォル爺の目が、カッと見開かれた。その瞳に宿るのは、長年戦場を生き抜いてきた戦士だけが持つ、鋭い殺気。

 

「――魔族かっ!」

 

 低く、しかし大地を震わせるような声と共に、フォル爺は傍らに立てかけてあった幅広剣を、老齢とは思えぬ俊敏さで掴み取り、アナリザンドに向けて振り下ろそうとした!

 

「危ねぇっ!」

 

 シュタルクの叫びと、金属が激しくぶつかり合う甲高い音が、ほぼ同時に響き渡った。

 

 シュタルクは、とっさにアナリザンドの前に立ちはだかるように割りこみ、自身のバトルアックスでフォル爺の剣撃を辛うじて受け止めていた。

 

――ギィィィン。

 

 鉄と鉄がぶつかりあう。

 

 火花が散り、シュタルクの腕が衝撃で痺れているのがわかる。フォル爺の一撃は、見た目の老いからは想像もつかないほど重い!

 

「爺さん! 何すんだよ! 姉ちゃんは敵じゃねえ!」

 

 シュタルクは歯を食いしばりながら、フォル爺の剣を押し返そうとするが、歴戦のドワーフの力は想像以上だった。巨岩で潰されているみたいだ。

 

「くそっ……重い。うわっ!」

 

 そのまま、若いシュタルクが、よぼよぼだったはずの老人に力負けして、吹っ飛ばされる。

 その理は、わずかに力を抜いて、その隙に一撃を加えるという柔の力だった。

 

「若いな……。力の使い方がなっておらん。だが反応は悪くないな」

 

 地面にはいつくばりながら、それでもシュタルクが立ち上がろうとする。

 

 目の前には守るべき姉がいるのだ。その姉であるアナリザンドは、いつものようにぷるぷると震えている。力なき存在であるからというより、アナリザンドは暴力が嫌いだからだ。

 

――姉ちゃんを泣かせるやつは絶対に赦さねえ。

 

 シュタルクがまた斧をかまえた。

 フォル爺は凪のように動かない。

 

「フォル爺……」

 

 フリーレンが迷いを秘めた、微妙としか言いようのない声で名を呼んだ。

 アナリザンドが魔族であることは言うまでもない。

 魔族が憎むべき敵、滅ぼすべき害悪であることもわかっている。

 しかし、アナリザンドは……。

 

「フリーレン。魔族だぞ。ボケたのか?」とフォル爺は逆に問いかける。

 

「そうなんだけどさ……」

 

「違うのか? フリーレン。魔族は人を欺き、村を襲う獣に等しい。そんなことすら忘れたのか」

 

「違わないけどさ……」

 

 きょどきょどするフリーレン。

 自分の中にまだ回答らしい回答がないので、そう答えるしかないのである。

 

「あの~~、フォルお爺ちゃん。わたしってけっこう有名だと思うんだけど。前に、ほら大規模な女神様の魔法を使ったでしょ。そのとき、お爺ちゃんのことも回復したんじゃなかったっけ」

 

 アナリザンドがピョコンと手をあげて自己アピールする。

 女神様の魔法を使える魔族なんて、そうそう忘れられるものではないはず。

 

 ただひとつ懸念事項があるとすれば、大規模回復魔法は、命の危険などの危急の用がなければ、交渉したあとに施されたものであるという点だ。名誉の傷という概念をきちんと理解しているアナリザンドは、なにがなんでも回復するというような強行には及ばなかった。

 

 そのため、没交渉の場合は、ほんのり感じられる程度――その程度の回復だったのである。

 

 要するに、眠たげな様子のフォル爺に対しては、ほんのちょっと身体が軽くなったくらいの、陽光にあたりながら、肩たたきをされたくらいの心地よさしかもたらさなかったのかもしれない。

 

 そして、その懸念事項は当たっていた。

 

「はて……なんのことやら」

 

 すっとぼけているのか、それとも本当に忘れたのか。

 この老人には響かない。

 

「いかに耳心地のいい言葉を並び立てようと、村に魔族を入れるわけにはいかん」

 

「この爺さん。100年前で時が止まってるんじゃねーか……」とシュタルク。

 

「かもしれん」フォル爺は言った。「儂はこの村を400年もの長きにわたり守ってきた。もはや身に染みついた習性のようなもの。魔族は敵だと、心よりも身体が先に判断する」

 

 フォル爺はもはや本能で行動しているといえる。

 

「徘徊老人じゃねーか……」シュタルクがドン引きしていた。

 

「アナリザンド様。ここはいったん引いたほうがよろしいのでは? 村の滞在期間は一週間程度です。どこか安全な場所でお過ごしいただき、あとから合流するのはいかがでしょうか」

 

 フェルンが現実的な提案をした。

 確かに、アナリザンドは四六時中、フリーレンたちといっしょに旅をしているわけではない。

 空間転移を使って、きままにフラッと立ち寄っては去っていく。

 

「うーん……」と、アナリザンドは悩む。

 

 身の安全という意味ではフェルンの言葉は正しいだろう。

 

 だが、どこか釈然としない気持ちが残る。自分は人の子であり、女神様の子であるという自負があるというアナリザンドにとって、魔族は害獣であると言われっぱなしでは、どこか女神様をも冒涜されている気がするからだ。

 

「逃がすわけがなかろう。魔族は一匹見かけたら三十匹はいると思え。昔からそう言われておる。ここで斬っておかねば、村に危険が及ぶ」

 

「やらせねぇよ」シュタルクが重い声をあげる。

 

 裂帛の気合をこめて、フォル爺をにらみつけ、アナリザンドを守るように前に出た。

 

「小僧……。儂の見立てでは、おぬしはこの年老いた儂よりも遥かに弱い」

 

 フォル爺の目が細められ、そのわずかな隙間から眼光鋭く言った。

 剣先がシュタルクに向けられる。伸びた先にはシュタルクの首。

 

()()()」ただの宣告。ゆるぎない確信。歴戦の戦士は淡々と事実だけを告げている。「一撃でおぬしは無に帰す。二撃でそこな魔族は葬り去られる。無意味に命を散らすな」

 

「んなことはわかってるんだよ!」

 

 恐怖でも、絶望でも、捨て鉢でもない。

 

「冷静な判断もできんのか」

 

「そうじゃねえよ。ただ……、オレにとって姉ちゃんは守るべき大切な人なんだ。だから……オレの命をかけてでも姉ちゃんは守る!」

 

 臆病だった少年は、いつのまにか立派な青年に――戦士の顔つきになっていた。

 彼を奮い立たせているのは、守りたいという意志。そして勇気。

 

――長い、長い沈黙が流れた。

 

 のどかな田舎風景にふさわしい喧噪から遠い世界。

 森の木々が風にそよぐ音だけが、辺りを支配する。

 

 やがて、フォル爺は、ふぅ、と大きなため息をつくと、シュタルクに向けられていた剣の切っ先を、ゆっくりと、本当にゆっくりと、下ろした。

 

 そして、傍らにいたフリーレンへと、どこか遠い目をして語りかける。

 

「フリーレンよ」

 

「なに、フォル爺」

 

「どうやら儂が、うたた寝でもしておる間に、世の中はずいぶんと変わってしまったらしい」

 

「そうだね」フリーレンはなぜだか寂しそうに呟いた。

 

 変わっていく。

 頑固なドワーフですら、軽やかに移ろっていく。

 

「……小僧。名をなんという」続けてフォル爺は言った。

 

「え、オレ?」シュタルクは一瞬戸惑った。「シュタルクだけど」

 

「――強くなれ、シュタルクよ」

 

「強くなれって言ってもよ。そんなに簡単に強くなれたら苦労しねーよ」

 

 すぐにいじいじしてしまうのは、シュタルクらしかった。

 

「ならば、儂がおぬしに稽古をつけてやろう」

 

「え、爺さんが、か……」

 

「守るべきものがあるのだろう。利用できるものはなんでも利用すべきだ。老いぼれたとはいえ、儂は強いぞシュタルク」

 

 実利を重んじるドワーフらしい言葉だった。

 

「シュタルク。この際だから稽古をつけてもらいな」とフリーレン。

 

「わかったよ。よろしくな爺さん」

 

「この村におる間は、儂のことは師匠と呼べ」

 

「ああ、頼むぜ。師匠」

 

 こうして、シュタルクはフォル爺の臨時的な弟子になったのである。

 もちろん、アナリザンドもちゃっかり村に侵入することに成功したのであった。

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