個性溢れる新作ある昨今でも、改めて前時代ハードのシリーズやると面白いよね。という訳で、思い入れある金銀のリメイクであるHGSS題材に書いてみました。楽しんでいただけるようやっていきたい所存です。
「本当についてくる気はないのか、ギンカ」
念を押すようにして、シルバー――兄さんがそう問いかけてきた。
それに私は、生まれついて決めていた答えを今一度返す。
「ここからは一人で行くよ。私はきっと兄さんの邪魔になるだろうしね」
「考え直すのなら今の内だぞ? 俺は弱い奴らが群れて偉そうにしているのは嫌いだが、お前となら互いに腕を磨いて強くなれるだろう。それは目的が違えど、強くなりたいのは同じであるお前にとっても悪い話じゃないはずだ。今なら世界で一番強いポケモントレーナーになる俺の旅の共連れにしてやってもいい」
相変わらず自信に満ちた上から目線だが、そこに家族の情というものもあるのは良く知っている。恐らく現時点で私にしか向けられていない評価。その妙な優越感は思わず感じざるを得ないだろう。
だけど。ゆるゆると首を振った私はきっぱり告げる。
「兄さんは最強のポケモントレーナーになる道を選んだなら、私は私の道を行く。ジョウトを巡るのは一緒だから、また何処かで会えるだろうけど……ここでお別れだよ」
「ッ……もういい、分かった。結局お前は一番強くなることを諦めた。それだけの簡単な話だ」
言い捨てるようにして、兄さんは背を向けて歩き出す。そのまま去ってしまうかと思いきや、ピタリと立ち止まってこちらに一瞥をくれながら力強く言葉を投げ掛けてきた。
「だが、トレーニングは怠るなよ。何処かで会うことがあるなら、俺が強くなるための練習台にはなってもらう。弱くなっていたら引導を渡してやるのが兄貴の務めだが、もっと強くなった妹のお前を倒して、俺は更なる高みを目指してやる……!」
今度こそ歩を進め、ここ31番道路をヨシノシティ方面に駆け出していく兄さん。ヨシノを挟んだ先にあるのはワカバタウンだ。そこで何をするつもりかは……もはや語る必要もないだろう。
長く共に暮らしてきた兄を見送り、私はとうとう一人になった。
当然、心細さはある。突然に放り出された世界は思ったより広く拓けて、心から安心できる自宅に帰りたくなる衝動が湧き出す。
最初から決断していたことではあるが、これから自力で旅をしていかなくてはいけないリアルな実感に弱い心が顔を出してしまう。
だが、それでも。
「――とうとう始まったか、私のハートゴールド・ソウルシルバー旅」
誰もいないのを幸いに、つい口を吐いて本音が出てしまうのであった。
私はギンカ。前世はポケモンがゲームの中の存在だった世界にいたが、ド定番の交通事故に遭ってしまい、ポケモンの世界で第二の人生がスタートした。それも女として。
――赤い髪をポニーテールにし、父や兄似の眼付きが良いアクセントとなっている整った顔。豊かではないが程よいスタイルの長身に黒いジャケットとジーンズを身に着け、男目線でも女目線でもモテそうな雰囲気があるイケメン美少女。それが私の今の容姿だ。
それだけでも相当に衝撃的だが、更に驚かされたのはサカキの娘として生まれたこと。元・トキワジムリーダーにして、ロケット団のボス。そんなシリーズ屈指の悪の親玉が実の父親と知った時の私の心境は、色々複雑だったとだけ言わせてもらう。もう説明をするまでもないが、事実上のサカキの息子であるシルバーとは血の繋がった兄妹の関係だ。
父が悪の組織のボスだったからと言って、特に不利益なんかはなく。むしろ申し訳ながら一般より恵まれてる家庭環境で育った私(と兄シルバー)だったが、それもロケット団が解散され、父サカキが行方を眩ましたことで変わった。それがちょうど三年前。
ここからは金銀、及びHGSSのストーリーだ。父の失踪で反抗心を抱いた兄シルバーが家を飛び出し、代わって最強のポケモントレーナーになろうと奮起する。私はそれに便乗する形で同行し、こうして今に至っていた。
兄さんの気持ちは分かる。原作で既に知っていても、実際に家族視点で見るそれは同情して余りあるものがあった。できれば目的が成就してほしいし、そのために手を貸すことも辞さない。
でも、誠に不純ながら……どうせポケモンの世界に降り立ったなら、自由気ままに旅がしたいというのが心情だろう。
神様――ポケモン世界ならアルセウスか?――がどうしてサカキの娘として生まれ変わらせたかは知る由もないが、せっかく夢にも見たポケモンの世界で第二の人生なら、そういう役目とか考えず冒険がしてみたい。某ポケモンマスターを目指すマサラ人や、死ぬ前までやってた新主人公ちゃん、そして何より原作ゲームの主人公のように思うまま世界を堪能したいのが本音である。
そんなこんなで。決して信念を胸に旅する兄を軽視しているつもりはないが、その兄さんに言った通り、私は私の道を行くと決めていた。それが今始まるんだ。
「さて、そうとなったら……」
ここは31番道路、キキョウシティに通じるゲートの近く。本当にたまたまであるが、ここで旅が始まるのは運命的だ。第一のジムがすぐそこ。ならば気楽な旅路のためにも原作に沿って順繰りに挑戦していくのがマナーだろう。
差し当たりの目的を決めたところで、私は腰からモンスターボールを一つ取り出す。
HGSSはポケモン連れ歩きを本格登場させた作品だ。かつてはピカチュウ版、最新ではもう当たり前にあるらしいシステムだが、せっかくの要素をそこにいる以上堪能しない道理はなかろう。
いっぱしのトレーナーとして旅に出るまで我慢をしていただけに、ちょっとワクワクしながらボールから相棒を外に出してやる。現れたのはイーブイの多数ある進化の一つ、そしてジョウトには通常いないはずの種類であるリーフィアだ。
「行こうか、リーフィア。頼りにしてるぞ」
「ふぃおおおっ♪」
目指すは一つ目のジム。早速鬼門っぽいけど、別に目的を急ぐ旅でもない。それに兄さんと違って他にも頼れる手持ちがいない訳じゃない。だから多分大丈夫だろう。
そうして私は気軽な足取りで眼前のゲートへと歩を進めるのであった。
HGSS題材といいつつ早速他シリーズ登場ポケ出した件。今だからこそこういうクオリティでもいいというノリ。
〇ギンカ
サカキの娘(シルバーの妹)としてTS転生した主人公。兄似のイケメン美少女。前世ではポケモンエンジョイ勢で、プレイ歴はUSUM止まり、知識は最新まである程度把握している。
前世は一人称「俺」だったが、今世の人生で「私」が定着してるという小話。それでも前世の意識が抜け切っていないためためか、ぱっと見男にも見えてしまいがち。髪も短く成長途中だった幼少期は特に顕著で、それに際してちょっと一部原作キャラたちと因縁があったりなかったり。
名前はシンプルに「銀+女性名」と「銀貨」。またはジョウトの雰囲気に合う「銀花」。
〇リーフィア
ギンカの相棒ポケモン。子供の頃、サカキから与えられた時からの付き合い。典型的な物理タイプだが、当然タイプ一致の物理技はまだ使えない。それでもギンカの父譲りの戦闘センスと合わせて抜群の強さを誇っている。
〇シルバー
金銀及びHGSS原作キャラ。ギンカの実兄。性格は原作に限りなく近いが、ギンカに対しては若干評価が高い。シスコンではないが妹想いな面も。家を出る前まで自分のポケモンを持っていたが、父サカキからもらったためケジメのために置いて来たという裏話がある。
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