キキョウジム。キキョウシティにあるポケモンジム。
町に着いた私はすぐその門を叩いた。
実体験してみてつくづく分かる洒落にならない高さの舞台上で、ジムトレーナーを難なく倒していって、奥に控えている陣羽織装束の少年の前に立つ。
ようやく対面したジムリーダーは、私の顔を見て何やら唖然とした表情を見せる。
「――お前、ギンカか……?」
「うん。久しぶりだね、ハヤト」
ひらりと手を上げ、以前会った時のまま軽い調子で返す。
実は、ハヤトとは幼馴染みの間柄だ。東西ジムリーダーによるちょっとした交流の場で、ジムリーダーの父親を持つ者同士で仲良くなった。次行く現ヒワダジムリーダーであるツクシともそこで知り合い、何度かのそういう催しの度に遊んだ親友と呼べる関係である。
ジョウト、カント―と隔たれた地方に住むため、そこから成長した今は直接の付き合いこそなかったが、ポケギアでたまに連絡を取り合う仲だった。顔を合わせて会うのは小さい頃ぶりだ。
しかし、なんだってそんな信じられないような顔してるんだ?
「そこまで驚くことか? サプライズしたくて連絡しなかったけどさ」
「い、いや、お前……女だったのか!?」
「……あー」
そういうのか。そういや言ってなかったっけ。
改めて言うことでもないが、私は自他共に認めるイケメン美少女だ。私も転生してすぐ鏡で見た時はビビったもんである。
で、今でこそ良く見れば女と分かるが、色々と小さい頃は髪も短かったのもあり、頻繁に男と間違われてた。シルバーの弟だとか。ハヤトのお父さんにも「将来有望な息子さんが二人もいて」と見間違われ、謝られた一幕があった記憶がある。まあ、当時は前世の意識が抜け切ってなくて『俺』呼びだったし仕方ないが。
幼い子供の頃は性別の違いなど気にしない。私もわざわざ明かすこともなかったので、それから直に会わない期間があったのもあり勘違いしたままだったのだろう。
まさに『久しぶりに会った男友達が実は女だった』パターンのヤツだ。まさかこの目で見れるとは。
「ツクシは知ってたから話してるもんだと思ってた。アイツも知ってると思ってたのかな」
「そ、そうなのか……って、今はそんな話をしてる場合じゃないな。ジムリーダーとして、挑戦者に向き合わないと」
自分の役目を思い出し、気を取り直せばキッと構えるハヤト。立派になったなあ。原作知ってても、昔からの付き合いの友達のそんな姿を見ると胸が熱くなる。
そっちがそうなら、私もジムチャレンジャーとして立ち向かうぞ。
雰囲気上げに脳内でBGMを流して――ジムリーダーのハヤトがしょうぶをしかけてきた!
「お前相手なら加減は無用だ! 行け、ピジョン!」
「ピジョーウッ!」
ハヤトは初手からピジョンを繰り出してきた。言葉通りいきなり本番か。
ならば、と。目配せし、応えた相棒――リーフィアが前に出た。
「頼んだぞ、リーフィア!」
「ふぃおおおっ」
「――やはりこの後に及んでそのリーフィアか……だが、空を舞う鳥の前にどこまでやれるかな!」
私の相棒を当然知っているハヤトが吠え、飛び上がったピジョンが羽ばたいてリーフィアに突風を放つ。相性的にかぜおこしだと察知していたリーフィアは、突っ込む形で渦巻く風をギリギリ逸れて避ける。そのまま接敵したところで、私が技の指示を出す。
「スピードスター!」
星の散弾が飛び、宙を飛ぶピジョンにヒット。リーフィアが得意とする物理は、この場において悪手である。故の必中飛び道具技だが、信頼する一番の相棒はそれを更に有効的な狙いでピジョンへと当て込んだようだ。
「やるな! もっと風を起こせ! ピジョン!」
が、その一打で倒せるほどジムリーダーのエースポケモンは甘くない。ピジョンは逃げ場を奪うように翼で掴んだ風を巻き上げ、リーフィアに撃ち放ってきた。流石のリーフィアも数度避けるが、そこを追い詰められて喰らってしまう。大きなダメージが見て取れる。
「スピードスター!」
「かぜおこし!」
技の応酬が繰り広げられた。こちらは必中技だから、命中を下げるどろかけをしてこないのは英断だ。草に効果は今一つだしね。むしろそこを隙にして反撃してくるのを読んだか。流石はハヤト。
一般的にはこっちは不利対面だ。弱点の飛行技を次また受ければ危ないのは明白。なおかつこっちはタイプ一致と分類一致、得意技を二重に封じられている状態である。考えなくても厳しい。
一瞬のアイコンタクト。だが、『ちょっぴり強情』な相棒の言いたいことが分かった。OK、それならお前に懸けようじゃないか……!
その時、ハヤトが動いた。
「はねやすめ!」
「……!」
はねやすめ――リメイクより追加されたハヤトのピジョンの持つ技。回復技として、体力を削ってきてあと一歩と確信していたトレーナーを絶望させてきただろうハヤトのピジョンにおける凶悪技だ。
指示を受け、ピジョンは地に降りる。大きく回復するダメージ。これで差は歴然になった。
――そこが狙い目だった。
「はっぱカッター!」
「なにっ!?」
満を持しての草技が炸裂する。鋭い葉っぱの連弾がピジョンに全て被弾し、ピジョンは苦悶を上げた。
はねやすめ。その回復技の副次効果は、
飛行に草は半減。つまり飛行タイプがなくなれば、等倍だ。
「くっ! 飛ぶんだ、ピジョン!」
意図を察して対処しようとするハヤト。しかしそれより早く、リーフィアは続けざま葉っぱの斬撃を繰り出し依然地に着くピジョンに畳みかける。予想外のダメージに慌てるも、なんとか飛び上がったピジョン……そこへ私は、決めに掛かるため指示の声を上げた。
「リーフィア――はっぱカッター!」
「ふぃおおおっ!」
宙へと浮かんだ相手に追撃。当然半減となる技だが、もう底は見えていた。体勢を持ち直す暇なく、防御もままならないで攻撃を喰らったピジョンは落下する。咄嗟にハヤトが指示しようとするも、フィールド上に落ちたピジョンが既に戦闘不能と見て口を噤む。
これで、私たちの勝ちだ。
「――見事だな。草や虫に負けない自信はあったが、改める必要がありそうだ。また強くなったな、ギンカ」
「ハヤトもね。あのまま攻め込まれてたら押し負けてたよ」
「そうしたら別の手もあっただろう? どちらにしても俺の負けだ。その実力を認めて、リーグ公認のウイングバッチを贈ろう」
潔い笑みを見せてハヤトが歩いてきて、バッチを渡すと共に握手を求めてきた。私は快く応じる。すると観戦していたジムトレーナーたちが健闘を讃えるような拍手を送ってきて、注目される状況についつい居心地の悪さを照れ隠しとして覚えてしまう。
こうして第一のジムを突破。私の気まま旅は順調に始まるのであった。
今作で拘っている点として、ポケモンの声は原作ゲームの耳コピを書き起こしております。シリーズ遡るほど難易度上がる。でもハマると楽しい。
〇ハヤト
ギンカと幼馴染みで親友ポジの原作キャラ。今までギンカが男だと信じて疑いもしてなかった。名前なんて先入観で除外されるもの。これ以降、異性として意識するかどうかは神のみぞ知る。
〇リーフィア
性別は♂。意地っ張りな性格でちょっぴり強情。物理が強いが、素でかなりの実力持ち。技ははっぱカッター、スピードスター、でんこうせっか、やどりぎのタネ。
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