外れ者共は今を生きる   作:春夏 フユ

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第28話 男は夜行性を仕込む

 只今、ラスイの触角で突如逃走した水色ゴーストを追跡中。

 命を持たないゴースト自体は〈触角探索〉に引っ掛からないが、事前に貼ってあったシール草の方には反応し、追う事が出来る。

 

 「・・・あ、かなりの速度で逃げていたんですけど・・・・少し先で急に停止しました」

 

 水色ゴーストの向かい先を感知して追うラスイについて行っているラスイが、俺達にそう言う。

 ゴーストに体力という概念があるか不明だが、まだ逃げられてから2分も経っていない。

 逃げるにしてもこんな中途半端に止まるものか?

 

 「シール草が途中で剥がれて落ちちゃったとかじゃないよな」

 

 確かにあくまで感知するのはシール草の方だから、水色ゴーストから剥がれたらもう向かった先が分からない。

 普通にそれは困る。

 

 「どうやら人が1人そこにいるみたいです。 その1人とシール草はほぼ同じ位置にいます」

 ・・・・人?

 

 一体誰だ?

 他の参加者だとしても3人1組のはず。

 単純に何らかの理由で単独行動しているとしても、水色ゴーストが急停止したと思われる場所ピッタリにいる奴・・・・どう考えても怪しい。

 

 そうこう疑念が芽生えていると、ラスイが立ち止まる。

 俺とテクルもそれに合わせて立ち止まる・・・・どうやら水色ゴーストに貼ってあるはずのシール草と謎の1人の生命反応がある位置に辿り着いたようだ。

 

 そこは木々の少ない小さな広場のような場所だ。

 化け物をテクルが叩き殺したポイントもそうだが・・・・この森には具体的な数が分からない程沢山の広場がある。

 何故これ程広場が多いのかも、名前の由来、カオスな生態系に並ぶ【赤みがかった森】の謎である。

 

 しかし今はそんな謎を気にするタイミングでは無さそうだ。

 俺達は広場に入ったばかりで立ち止まった為、上から見ると円の形になっている広場の端っこにいる。

 その俺達とはちょうど逆側の端にいる1人の・・・・男

 距離はダッシュで突っ込めば10秒も経たずに辿り着ける逆側の位置にいる男は、何か呟きながら座り込み、グッタリした様子の水色ゴーストを抱き抱えている。

 

 「ったく、動きが止まったからまさかと思ったが・・・・まさか本当にやられてたのか。 〈霊召集〉の魔法で引き寄せて正解だったな。 遠隔じゃリアルタイムの情報は大体の動きでしか分からんのはかなりの欠点だ。 ・・・・ん、何か貼られてるな。 なんだこれは・・・・草か? まぁいい。 1回離れて立て直・・・・」

 

 そう激しい独り言を呟きながら、男は立ち上がりそれに伴い視線をあげた。

 ・・・・結果、俺達とバッチリと目が合った。

 

 その男には見覚えがあった。

 その男は宝石を撒き散らしたような鎧を着ていた。

 その男が詐欺師の・・・・[クズルゴ]という男だった。

 

 「はぁ!? な、何でここまで着いてこれたんだ!? ゴーストは気絶状態だったのにいきなり高速で逃げたんだぞ! 普通見失」

 

 どごぉん!!!

 テクルはクズルゴの話を遮るかのように、荒々しく地面に触手をぶつける。

 

 「・・・・お前の話はどうでもいいんだ。 とりあえず、私の尻を触られたのはお前が何かしたからか?」

 

 「いやそれ多分オレの指示じゃなくて、コイツが勝手にっていうかなんていうか」

 

 クズルゴは水色ゴーストに指を差す。

 

 「やっぱりお前ゴーストと繋がりがあるんだな。 ってことはあの夜行性の魔物が行動しているのもお前の仕業か?」

 

 俺はクズルゴの今の発言から推測し、問いかける。

 

 「・・・ほう? 分かるのか」

 

 クズルゴは先程話の腰を折られた反動か、テクルから俺の方へと向き直り嬉しそうに話し始める。

 

 「そうだ! 俺は勝ちたいと思った時はとことん勝ちを狙うタイプだ。 だから今回は勝つために色々準備した! 夜行性の魔物は俺が用意した仕込みだ!」

 

 意気揚々と話すクズルゴを見てそれをうざく思ったのか、テクルは悪びれることも無く思いっきり舌打ちする。

 親友を騙した本人を前にしてテクルは非常に苛立っているが、そこまで露骨にやるのか。

 

 「あれだろ? ゴーストとか死体とか、そういう死に関係する奴らを使役出来る・・・・屍霊術師って奴だろ、お前」

 

 俺はゴーストという魔物の知識を学ぶ際にそれを使役する存在、{屍霊術師}という存在を知った。

 この世では殆どの人が何らかの魔法を使える魔法使いだが、その{魔法使い}には種類がある。

 ラスイのような使える魔法の属性を多く持つ{多属性保持者} 

 行使する魔法が常人では達せない異次元レベルの領域に達した{賢者}

 全ての人が持つ魔力を生まれつき頑張っても使い切れないほど異常に多く持っている{魔力過多者}などなど・・・・

 

 その内の一つに{屍霊術師}がある。

 魂が失われ空っぽになった死体には命令を刻んだ仮の魂を植え付けて操り、未練によって死後も現世にしがみつく魂であるゴーストには自らが依代になることで繋がりを生み支配下に置く魔法が使える。

 それが俺の知る、生命を否定するような魔法を使用する『忌み嫌うべき命の冒涜者』と呼ばれている{屍霊術師}という存在だ。

 「・・・よく知っているな。 そう、オレはゴーストを使役でき、その上既に命散らしたものを操れる屍霊術師。 その魔法を使いオレは」

 

 「あ、も、もしかして私の触角が魔物に全然反応しなかったのって・・・・?」

 

 「多分コイツの口振りからして、事前に殺しておいた夜行性の魔物を操って他参加者を妨害してたんだな。 道理でラスイが反応できなかったわけだ。 そもそも死んでるんだから。 ゴーストは触角探索で感知出来ないのと同じ理由で命を持ってなかったからだな」

 

 「これがクズルゴさんのこの前に言っていた『驚く事』ですか!」

 

 仕込んだのがコイツってことはあのツキヤブリ隠してたのはクズルゴか!

 一回隠しておいて、後から操作するつもりだったんだな。

 てことは、あの時速攻テクルが反射で潰したツキヤブリは・・・・その少し前の時に見つけた隠されてた死体のツキヤブリと同一個体だったのだろう。

 テクルがゴーストにセクハラされる直前にツキヤブリを訝しんでたのは、さっき死体として見た個体と同じに見えたからかな?

 

 「・・・・全部言ってくれるなぁ。 オマエ達・・・・!!」

 

 自分の口で説明したかったのか、クズルゴは少し苛立ったかのように俺たちに向かってそう言う。

 

 「しかし、まさかラスイ御一行に暴かれるとは思わなかったな。 ・・・ ・死体やゴーストによる遠隔的な妨害だから制約石には引っ掛かってないんだが・・・・報告されたら面倒くさいな。 少し強めのショックを浴びせれば、記憶失ってくれたりしねぇかな?」

 

 そう言うとクズルゴはレイピアを取り出す。

 

 「このレイピアは伸縮自在な上にかなり頑丈でな・・・・いい武器だよ。 お前から騙し取った金で買ったんだぜ?」

 

 挑発するかのようにラスイに笑いかけるクズルゴ。

 

 その笑いに何故か同じく笑って返すラスイ。

 

 多分ラスイ相手にそう皮肉を言っても『それは良かったですね!(嫌味なし、心からの善意)』としか思わないだろう。

 

 しかし、あり得ない程卑屈でお人好しもラスイは良くても・・・・親友の方は良く思わないようだ。

 テクルが俺達の少し前に出て、クズルゴを睨みつける。

 吊り目寄りのテクルの眼が、“寄り”ではなく完全に吊り上がっている。

 

 「・・・・・私がお前がベラベラ話しているのを邪魔しなかったのは純粋に何故夜行性の魔物が活動してたのか、何故ゴーストがいるのかとかの答え合わせの為・・・・その答え合わせが終わったなら」

 

 テクルは自身の触手をクズルゴに向ける。

 

 「もうお前をぶん殴れる」

 殴ったら制約石が反応して失格になること覚えてるのだろうか。

 もしかしたら覚えてる上で覚悟の上で言ってるかもだが。

 いや、覚悟云々では無く、そもそも親友を騙したクズルゴに復讐出来ればこの大会はどうでもいいと思ってるかもしれんが・・・・というか多分挙動的に思ってるだろう。

 

 「それにしても伸縮自在のレイピアか・・・・私のと同じだな」

 

 そう言ったテクルは“伸縮自在”な触手を。

 急速に伸ばし、クズルゴ目掛けて先端を凄まじいスピードで槍のように突っ込ませーーー

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