外れ者共は今を生きる   作:春夏 フユ

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第29話 行使せよ、触手の鉄槌を

 私は的確にクソ詐欺師野郎の顔面目がけ、高速で自身の触手を伸ばす。

 ずっとその顔を潰してやりたかったのだ。

 ラスイを騙し、何年も貯めてきた、積み重ねてきた金を奪ったお前は絶対に許さない。

 

 これは決して、ラスイのストーカー相手にした時のように我を忘れてるから、顔面を殴ろうとしている訳では無い。

 私はしっかりと理性を保った上で家族同然の親友を騙した報いを受けさせてやりたいと思ったから、ぶん殴ろうとしてるのだ。

 

 ・・・・・しかし。

 触手の先端がクソ詐欺師野郎も顔面に到達することは無かった。

 何故なら・・・・私の触手がクソ詐欺師野郎の顔面に到達するまであと少しと言ったところで。

 

 「無駄さ。 オレが何もしなくとも・・・・・その攻撃は当たらない」

 

 クソ詐欺師野郎はムカつくすまし顔でそう言いながら、レイピアを触手の迎撃をする訳でもなく、ただただ虚空に向かって振るっていた。

 

 ドゴォン!!!

 

 私の触手は・・・・深々と“地面”を抉った。

 

 あと少しでクソ詐欺師野郎に到達するかと思われた私の触手は、何故か軌道がズレてクソ詐欺師野郎の横隣の地面に激突した。

 私の触手は普通に右手と変わらない感覚で左手のように動かすことが出来るが、今軌道がズレたのは私の意思ではない。

 軌道がズレた時に感じのは、いきなり大きな力に受け流されたような感覚だ。

 

 「テクルちゃんの触手・・・・変に外れなかった? 大丈夫?」

 

 「何で急に触手が外れたのかは知らないが・・・・ お前は他参加者を攻撃したら失格になるのを忘れてたりするか?」

 

 クロイが私を見てそう言うが・・・・もちろん覚えているに決まってるだろう。

 

 だが、私は優勝賞金よりクソ詐欺師野郎へ報復する方が何億倍も価値があると思っているのだ。

 故に別に復讐出来れば失格になってもいい。

 

 ・・・・しかし何故私の触手が外れた?

 私の触手を受け流したのは何だ?

 また透明化したゴースト・・・・?

 

 ・・・・・考えても分からん!

 考える暇があるならその受け流している何かを上回る力でぶん殴る!

 

 抉った事で先端が埋もれてしまった地面からすぐさま触手を引っこ抜き、その勢いのまま真横のクソ詐欺師野郎に鞭のように振るう。

 

 バチィン!!

 

 しかし再び軌道がズレて・・・いや、今度は何かにぶつかったような音がしたかと思うと真上に“弾かれていた”。

 今度は受け流された、というより振るう途中の触手に急激に下から負荷がかかって強制的に上に方向転換させられた感じだ。

 

 「・・・・今度は弾かれたな」

 

 「凄いですねクズルゴさん。 テクルちゃんの触手って細く伸ばした分力が弱くなるんですけど、それでもかなりのパワーはあるはずですよ? それを防ぐなんて」

 

 私の一歩後ろにいるクロイとラスイの2人が、見物客のように見て話していた。

 戦闘が苦手なラスイはいいけどクロイは手伝えよ!

 ・・・・まぁ、手伝って貰っても貰わなくても戦力的には変わらんか!!

 

 私は上に弾かれた触手を、そのままクソ詐欺師野郎の脳天目掛けて振り下ろす。

 

 再び何かにより軌道がズレて先ほどとは逆側の横の地面に激突させられる。

 

 クズルゴは先ほどから変わらずレイピアをよく分からない方向に振るっているだけ・・・何の意味があるんだ?

 

 「今度はまたズレたな」

 

 「クズルゴさん、さっきから関係ない所にレイピアを振るってるだけにしか見えませんけど、どうやって様々な方向からの触手攻撃を弾いたりズラしたりしてるんでしょう?」

 

 「多分屍霊術師の能力だろうから、ゴーストが何かしてるのか? でも俺の知識では屍霊術師と使役されたゴーストには思考だけで会話可能な〈念話〉は出来ないらしい。 じゃあ、どんな風に指示してるんだ? それとも、水色ゴーストみたいに指示なしで独立して行動して守っているのか? そもそも屍霊術師ってのはどんなことが出来る?」

 

 後ろの2人は何やらこのクズルゴの謎の防御方法の考察を進めている。

 

 私はそれを聞き流しつつ、弾かれたりズラされたりを繰り返しながらも触手を振るい続ける。

 不用意に体ごと突っ込まずに、いきなり何か飛んできても平気なよう間合いをとりつつ遠くから何度も何度も伸ばした触手を振い続ける。

 相手のレイピアをずっと虚空に振り続ける謎の動きにも警戒しつつ触手を振るい続ける。

 

 そうやってずっと振るい続けていると、既に5分以上が経過していた。

 流石に5分間ぶっ通しで全力で触手を振り回すのはかなりの体力を使う。

 私は少し汗が滲んでいた。

 

 しかし私とは対照的に、クソ詐欺師野郎には一切疲労の様子は伺えず、何なら余裕たっぷりといった表情をしている。

 「どうしたよ? オマエのその気持ち悪い触手はオレにかすりさえしてないけど、大丈夫かぁ? 幸いな事にここらには仕込んだ夜行性の魔物を特に多めに徘徊させてる・・・・他参加者はここら辺に近づいて来ない! 心ゆくまで絶対に当たらない意味のない攻撃をしてろ! ・・・・いや、オレからしたらそもそも攻撃では無い! ただの滑稽な踊りだ!!」

 

 ・・・・・コイツ、3回ぐらい殺してやる!

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