かいたくしゃ の のうをやく !   作:クラウディ

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銀狼 の ターン !


銀狼 の はなし

――「星核ハンター」

 

 カンパニーによって多額の懸賞金を懸けられるほどの犯罪者集団。

 「運命の奴隷」と呼ばれる謎の人物『エリオ』をリーダーとし、彼がもっとも信頼している構成員『カフカ』、名前を捨てた剣士『刃』、立ちはだかる敵を全て焼き尽くす白銀の鉄騎『サム』……様々な経歴を持つ者達によって構成されているこの組織は、エリオの持つ『脚本』のままに行動を起こしている。

 それが他人にとっては「悪」と見なされようと、彼らは進み続けるのだろう。

 

 そんな星核ハンターのメンバーの中でも、少し毛色の違う人物がいる。

 

「あ゛あ゛っ゛!? ハメ技するのはアウトだよな!!??」

「うるさーい! 私の目の前でスーパーレジェンド3枚抜きとかいう神引きを見せつけてきた罰だ! 食らえ! 最近開発した10割コンボ!!」

「ぐあぁああああああああああああああ!!!」

 

 とある惑星のとある建物の一室、そこで2人の男女がコントローラーを握りしめ、白熱した戦いを繰り広げ……てはいなかった。

 カールさせた銀髪のポニーテールを持つ少女が、隣に座る茶髪をポニーテールにした青年の操作キャラクターを、画面端で一方的にリンチしている。

 俗に言う「壁ハメ」という有利な立ち位置にいながら、銀髪の少女は青年に怒りをぶつけているようだ。

 

 遅ればせながら紹介しよう。

 少女の名前は『銀狼』。

 星核ハンターの一人であり、この世界的に見ても最上位に位置する腕前のハッカーだ。

 

 対する青年の名は『戒』。

 宇宙一のお節介焼きである。

 

 パッと見では接点の無い2人だが、実のところは組織の垣根を越えた「親友」といえる存在である。

 2人の馴初めを語ろうとすると、それはそれはゲームのような日々から語ることになるため、後回しにしておこう。

 

 そんな2人だが、今現在プレイしているゲームは、対戦型格闘ゲームの中でも知る人ぞ知る名作「ファイターズオブキングダム」のナンバリング7作目――「ファイターズオブキングダム7」だ。

 高度な駆け引き、コマンド入力によって変化する技の数々、シビアな間合い管理などの要素が強く、玄人向けに製作されたこのゲームを2人はプレイしているのである。

 

 だが、そんな2人は先程からなにやら言い合っているようで、ともすればゲームの中だけでなくリアルの方でも取っ組み合いを始めてしまいそうだ。

 

 それはなぜなのか……その答えは簡単に出てきた。

 

「許されない……! アニバキャラを引くだけに飽きたらず、人権レジェンダリーサポーターも確保するなんて……!」

「教えたの銀狼の方だよな!? 『面白いソシャゲがあるんだけど一緒にやらない?』って誘ってきたの銀狼だろ!? それと! 俺の運がいいのは前から知ってたはずなんでこれは無罪でーすっ!」

「戒! あんたは言っちゃあならないことを言った! そこになおれ! ガチャ強者は粛清してやる!」

 

 ……銀狼が勧めたソシャゲを戒がプレイした結果、引きが良かったのを見せつけられただけのようだ。

 

「ぐぬぬぬぬ……!」

「うぎぎぎぎ……!」

「「……………………ぷっ! あはははは!」」

 

 互いに威嚇するようなポーズをとり、一触即発といった場面だったが、次の瞬間には互いに笑いだし、緊迫した空気が霧散する。

 これが2人のいつもの日常だ。

 互いのことに一喜一憂し、時にはいがみ合うこともあるが結局は笑いあって終わる。

 そんな、特になんでもないどこにでもいる『親友』という関係性を持つのがこの2人だ。

 

 ひとしきり大声で笑った2人は、まだ余韻が残っているのか肩で息をしつつ口を開く。

 

「まぁ、あなたが強いキャラ引けたのは嬉しいことだから良しとしておく。早めにこっちの手伝いもしてほしいからね」

「オッケーオッケー、なんだかんだ言って息抜き程度だけど楽しくやれてるから銀狼には感謝してるからさ」

「ふーん? それじゃ、その感謝の「お返し」も期待してもいいってこと?」

「えっ、あ、た、高くないやつにしてくれたら助かるんですけど……そろそろトパーズちゃんから借りるの心苦しいんで……」

「やだ。というかカンパニーの女から借りてるの? 相変わらず罪な男だね」

「罪な男て……俺はそんな人間じゃないんだけどなぁ……」

「よく言うよまったく……」

 

 何気ない会話をしながら、2人は散らかっている部屋の片付けをしながら次にプレイするゲームを探し始める。

 

 その時、ふと銀狼は気になることが頭に浮かんだ。

 

「そういえば、戒って私と一緒の時は口調が違うよね? あれ、なにか意味あるの?」

「え? あー、それか。んー……銀狼と一緒の時は気を張らなくていいからかな?」

「気を張らなくていいから? なにそれ、列車の奴らの時は気を張ってるって言うの?」

「……たぶんな。なんというか、まだ守ってやらなきゃいけない気がしてさ。丹恒は吹っ切れたから大丈夫。ヴェルトさんは無茶しないでほしいところだけど、特に姫先……違った違った、姫子嬢とか、なのかちゃんに星ちゃんとかな」

「……随分と気にかけてるんだ。特に女に対して。……他に何人の女を落としてきたのかな」

 

 なにか含みのある戒の言葉に、銀狼はジト目を向けながらそっけなく返す。

 言葉の最後には、気づいて欲しいけど気づかれて欲しくない意図を含めた言葉を呟きながら。

 しかし、そんな彼女の意図に気づかない彼は、苦笑いを浮かべつつ、自分なりの意思を伝えた。

 

「あははっ、俺の「役柄」からしてピッタリと思うんだけどな。「誰かを守る盾となり、厄災を退ける!」って講談師の人が言ってた受け売りだけどな。お、このゲームもいいな……」

 

 笑いながら何の気なしに言う戒。

 その後ろ姿を見ながら、銀狼は少しばかり不機嫌そうに呟いた。

 

「…………「誰か」じゃなくて、ずっと私の傍にいてくれたらいいのに……この間なんか……」

「ん? 何か言ったか?」

「何でもな~い……」

「?? まぁいいけど……」

 

 銀狼の言葉がうまく聞き取れなかったのだろう、銀狼に聞き返す戒だったが、彼女自身がなにもないと言うので思考を切り替える。

 その時、戒の頭がふとあることを思い出した。

 

「あ、そういえば、さっき言ってた「お返し」はどうするんだ?」

「あー、それね。んー……お返しだから……」

「流石に信用ポイント使うやつは今月は厳しいけど……それ以外なら何でもいいぞ!」

 

 確かに、その話もしていた。

 口約束程度のものだが、なんだかんだ信頼関係が築かれている2人の間なら、金銭が関わるものでもある程度なら許容できるだろう。

 

 だから戒は軽い調子で言ったのである。

 「なんでも」と。

 

「―――――――――へぇ。じゃ、今お返しをもらってもいいんだ」

 

 それが悪手だとも知らずに……。

 

 

 


 

 

 

 『戒』と『銀狼』の思い出はゲームのように刺激的な日々で構成されている。

 

 そんな彼女が星核ハンターに加入する前、いつものアーケード系統から気分転換をするためにプレイし始めた5v5のFPSゲームで出会ったプレイヤーがいる。

 

『へぇ、「ルールブレイカー」……変な名前。ま、ヨロシクー』

 

 早めにマッチした試合で仲間に来た「ルールブレイカー」。

 「ルールを破る者」という名前の割にはリアルの何倍も制約の多いゲームをプレイする変人、第一印象はそんな感じだった。

 しかも、そんな「ルールブレイカー」のレベルは1。

 その割にはやることも多いし、負ければ戦犯呼ばわりされることもある「タンク」を真っ先に選んだのが本当に困惑した。

 

《ルールブレイカー:初心者ですがよろしくお願いします!》

『わざわざチャットで言ってくるとか……はいはい「対戦よろしくお願いします」っと』

 

 最初はサブアカウントを使ってるプレイヤーかと思ったが、動きがどことなくぎこちないので恐らく本当に初心者なのだろうと判断する銀狼。

 また代わり映えのしない試合になるのかと、「退屈」で埋まった考えのままスティックとボタンに手を伸ばし…………困惑した。

 

《ルールブレイカー:攻撃引き受けるので詰めても良いと思います!》

《ルールブレイカー:Silverさん、援護します!》

《ルールブレイカー:盾になるんで下がってください!》

『……こいつ本当に初心者?』

 

 試合が始まってからの動きがあまりにも別人過ぎたのだ。

 

 タンクとしての仕事である、最前列で相手の攻撃を受け止めるが倒されないことの見極めどころか、2番手にいるプレイヤーのもとへ駆けつけ、手厚い援護もし始める。

 試合開始直後こそ、指示を多めに飛ばしてくる「ルールブレイカー」のことが気にくわないのか、ボイスチャットをつけてまで暴言を吐いてくる仲間もいたが、動き始めた「ルールブレイカー」の腕前に協力するようになってきた。

 

『……マジ……?』

『OMG……おいルールブレイカー。お前本当に初心者か?』

『これ本当にマスターレートに合わせられたマッチなんだよな……?』

 

 その結果が、圧倒的大差での勝利。

 正直、銀狼自身は自分さえいればなんとかなるだろうと考えていた。

 カジュアルだから初心者が入ってくるのは仕方ない。

 連携が組めず負けるくらいなら自分一人でも無双した方がいいと。

 

 その心配は杞憂だったようだ。

 

『あ、あー、大丈夫っすかね? 一応やれるだけのことはやったんすけど……』

『!? おまっ、お前ルールブレイカーか!? お前ほんとに初心者なんだよな!?』

『うえぇっ!? いやいやマジで初心者っすよ!? FPS? っていうのも初めてで……』

『だとしたらお前上手すぎだろ! 今からでもプロになれよ!』

 

 その時である。

 件の「ルールブレイカー」が話し始めたのは。

 男性、それもかなり若い方の声だが、もしかしたらボイスチェンジを使ってるかもしれない。

 それを聞きながら、銀狼は手元のコンソールを操作して「ルールブレイカー」のアカウントを調べる。

 

『うわ、なにこいつ。本当に初心者じゃん。キモッ』

 

 そして分かったのは本人の言う通りに、彼は初心者だということ。

 他のゲームもやってはいるが……今回のようなスタイルのゲームは初めてのようだ。

 

 だから、思わず問いかけてみたのである。

 

『ねぇあんた。初心者なのに何であれだけ動けたの?』

『え、いや……なんとなく? こうした方がいいかなって』

『なんとなくってお前……それであのムーブはヤバイだろ……』

『なんとなく、ね……』

 

 なんとなくで操作方法も覚束ないのにあそこまで「動けてしまう」。

 

『……………………「面白い」……!』

 

 思わず口に出た言葉のままに、マッチから退出した銀狼は部屋を飛び出す。

 

 目指すは「ルールブレイカー」の居場所だ。

 銀狼自身、ここまでの遠出をするのは初めてだったが、自分に「楽しさ」を与えてくれそうな存在がいるなら動かないわけにはいかなかった。

 

 それが銀狼と「ルールブレイカー」……『戒』の出会いだ。

 

『そこはそうして、スティックを押し込みながら……』

『な、なるほど……奥深い……』

 

 自身の教えたことを湯水のように吸収し、果てには自身と並び立つほどの腕前。

 最初はゲームを教える師弟のような関係だったが、いつしか隣り合ってふざけ合える「親友」になっていく。

 それは銀狼が星核ハンターに加入し、戒が星穹列車の乗員になっても変わらない。

 

 しかし、ある時に銀狼の中で「ナニカ」が変わった。

 

『ふふっ、似合ってるわ戒。ほら、こっちも着てみて?』

 

『か、戒さん! 一緒にスイーツを食べに行こう!』

 

――戒が星核ハンターのメンバーと親しくしている場面を見てからだ。

 

 自身以外の女と親しくしている戒を見ると、銀狼の中でタールのようなベットリとした感情が生まれる。

 その日ほどゲームに身が入らなくなり、イライラは積もるばかりであった。

 

 しかし、銀狼はその感情を見せることはしなかった。

 何でかは銀狼自身分からないが、これを見せてしまえば戒との関係が今の「心地いいもの」から変わってしまうと思ったからだ。

 

 だから、感情を抑え続けたのである。

 

 

『…………め、目を閉じてもらえますか?』

『目? いいっすけど何を――』

『……!』

 

 

『………………は?』

 

 

 ……彼が、どこぞの女に唇を奪われたと知るまでは。

 彼に何かあれば駆けつけられるようにと仕込んでいたビーコンから傍受した会話内容を聞いたとき、銀狼は足場が崩れる感覚を味わった。

 そしてそれ以上の『怒り』が沸き上がったのだ。

 

(な、んで、なん、で、なんで、なんでなんで何で何で何で何で何で何でナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ!!!!)

 

 心が半狂乱になりながら、すぐさま目の前の女を消そうとしなかったのはどこかで残った理性が繋ぎ止めたのだろう。

 

 「ソレ」をしてしまえば、彼は本当に自分のもとから消えてしまうだろう、と。

 

 だから、銀狼は我慢した。いつも通りに。

 

「ぎ、銀狼……? だ、大丈夫か……?」

「大丈夫、これは「お返し」をもらうだけだから」

 

 だけど、限界だった。

 彼は「なんでも」いいと言ってくれたのだ。

 ならばこれもいいはずだと、自身の腕によって動けなくなった戒の姿を見る。

 

 困惑はしているが振りほどこうとはしない。

 彼には自分程度の力では抑えきれるわけがないのに、抜け出そうとしないのはこのままシテもいいんだ。

 彼が全部悪いんだ、と。

 

「散々、人のことめちゃくちゃにしておいて、やっぱり無しじゃ面白くない」

 

「今日も最後まで付き合ってよ戒」

 

 

 

「大丈夫」

 

「きっと楽しいから」

 

 

 

 そして、モニターからの無機質な光が照らす中、2つの影は重なった




めのまえが まっくらに なった !

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