優柔不断ゾンビ~ゾンビだらけの世界で女の子と海に行こうとするバカの話。ゾンビだらけといってもゾンビがだらけているわけではない、念のため~   作:でぃくし

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対決!集合体ナースゾンビ

 

 「よし!いくぞ!!」

 「おっし!」

 

 先手必勝!!

 

 シンイチと友人は同時に飛び出し、肉塊を取り囲むように走り出す。

 

 

 

 「うおらぁああっっ!!」

 

 友人の男は飛び上がると同時にナースゾンビの肉塊に目がけて液体の入った瓶を投げつけた。ナースゾンビは無数の乳房をぶるぶると揺らし、その何かを長い手足で叩き落とそうとする。

 

 

 

 (さっきのオイルか)

 

 シンイチは直感的に友人の意図を察した。

 

 

 

 「おらああっ、ヌルテカナース軍団の誕生だコラぁ!!」

 

 

 

 瓶が破壊される同時にどろりとした粘液が降りかかり、ナースゾンビの肉塊はさながらローションをかけられたかのようだった。

 

 「ァアイイアイァア……!!」

 

 ナースゾンビの肉塊はぬらぬらと滑りながら、闇雲に腕を振り回し、乳房をふるわせながら大暴れする。

 

 

 

 「いくぜええ!」

 

 

 

 火のついた着火剤を投げつける友人の男の姿が見えたと同時にナースゾンビの肉塊がまばゆい閃光に包まれた!

 火は一気に燃え広がり、ナースゾンビの肉塊を瞬く間に炎の球体へと変えていく。

 

 

 

 「アァァァアアアアッッ!!」

 

 

 

 強烈な熱気でじくじくとその身を焦がされ、悪臭を放つ水蒸気を噴き上げながらナースゾンビは激しく暴れまわる。

 

 「くせえっ!しかしどうだコラまいったか!」

 「いけそうだな……」

 

 シンイチは思わず呟く。

 どうやら思った以上にその効果は出ているらしい。優ちゃんは燃え上がる肉塊から距離をとったまま、じっとそれを見つめていた。

 

 

 

 「アァアアアアッ!!」

 

 だがこんなことで終わるナースゾンビではなかった!

 

 

 

 炎を振り払うように激しく暴れまわっていたかと思うと次の瞬間、全身をぼこぼこと激しく泡立たせたのだ。すると泡の勢いに炎はたちまちかき消され、ナースゾンビはもとの不気味な姿に戻ってしまった。

 

 「うわっ!」

 

 シンイチたちは思わず後ずさる。

 

 

 

 「くっそ!やっぱこの程度じゃだめか……」

 「大丈夫、いい感じだぞ!この調子で奴の体力を削ってやるんだ!」

 

 シンイチは友人の男を励ましつつ、ナースゾンビの周囲を走り回る。

 まだまだこれからだ……もっと弱らせるんだ!

 

 「くらえ!」

 

 シンイチは待合室の椅子を掴むとぶうんと勢いよく投げつける。

 

 ナースゾンビは避けることもせず、怒ったように手足を伸ばすと椅子はバラバラに砕け散ってしまった。

 

 

 

 「イラついてるぞ!この調子でどんどんぶつけてやろう!」

 「おらおらぁ~キャッチしてみろや~!」

 

 

 

 ナースゾンビの振るう腕をかいくぐりながら二人は待ち合い室の椅子を投げつけ、あるいは花瓶を思いきりぶつけていく。

 

 

 

 ボールペンにぬいぐるみ、液状化した刺身セットにハゲヅラやモノポリー、オリハルコンや風魔手裏剣など何でもかんでも目につくものは手当たり次第に投げつけ、その勢いはどんどん増していった。

 

 

 

 「おらおらぁああっ!」

 

 

 

 そんなものをぶつけられたところでどうせ致命傷になどなりえないだろうが、それでもナースゾンビはむしゃらに手足を振り回しながら、投げつけられたがらくたを次々に粉砕していく。

 

 

 

 「アアアアアーーッッ!!!」

 

 

 

 だが、ナースゾンビもやられてばかりではない。

 長い手足をしならせブタミントンを切り裂いた次の瞬間、そのまま薙ぎ払うようにシンイチと友人に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 「うおわ!?」

 

 

 

 シンイチと友人の男は咄嗟に優ちゃんを抱えると飛び退いて回避する。

 

 すさまじいスピードだった。

 少しでも触れたら最後、骨折どころかミンチにされてナースゾンビに取り込まれてもおかしくはない。

 

 風圧だけで病院のガラスにびきびきと亀裂が入り、風にあおられた蛍光灯が明滅しながら大きく揺れた。

 

 

 

 「シンイチ!あんなのに当たったらひとたまりもねーぞ!」

 「落ち着け。ああ、わかってるって!」

 「で、どうする?もうあんまり派手なやつは残ってないぞ」

 

 「大丈夫だ、消しゴムでもバトル鉛筆でも瓦礫でもどんな物でもいいから、どんどん投げて時間を稼い……」

 

 そこまで言いかけたシンイチの目は段ボールの山に向けられる。

 段ボールにはラベルが貼られており、それは……。

 

 

 

 「これだ!」

 

 

 

 シンイチは優ちゃんを静かに床へ横たえると、シンイチは段ボールの中身を取り出し再びナースゾンビと対峙する。

 

 「なあ、どうして鬼は豆に弱いと思う?」

 

 「ああ?いきなり何だよシンイチ……魔を滅するとかそういう理由だろ?」

 「違うぜ」

 

 

 

 シンイチは大きく振りかぶると、ナースゾンビへ叩きつけるようにして腕を振り下ろす。

 

 「鬼も数には勝てねえからだ!!」

 

 

 

 びゅんという風を切り裂く音と共にナースゾンビから血しぶきが上がる。

 シンイチの投げたそれは……解剖用のメスだった!

 

 段ボールの中に入っていたのは解剖用メスの刃、100枚入り。

 そしてそれが1000セット!

 

 すなわち合計10万枚のメスの刃だ!

 

 

 

 「うーん、なんか違う気がするけどまあいいか」

 「鬼は外!鬼は外!」

 

 

 

 シンイチと友人が投げつけるメスの刃はナースゾンビに突き刺さっていく。

 無数の小さな刃がナースゾンビの肉体を引き裂き、じわじわと肉塊を削り取っていった。

 

 だがナースゾンビもただ一方的にやられているわけではない。二人の侵入者を叩き潰そうと、全身を激しくうねらせながら待い合い室の中を暴れ回る。

 

 「アァアアアッッ!」

 

 ナースゾンビの振り回す手足が、椅子や机を次々に破壊していく。その一撃はシンイチたちの体などたやすく粉砕してしまうだろう。

 

 

 

 「おらぁああぁあっ!!福は内!!」

 

 しかし二人はそれでも攻撃をやめない。

 

 

 

 優ちゃんがナースゾンビの攻撃範囲に入らないよう注意を払いつつ投げ続ける。

 シンイチも友人の男も躊躇なく床に這いつくばり、瓦礫の上を転がり、どれだけ無様に見えようと泥臭くナースゾンビの血肉を削り消耗させていく。

 

 そんな二人を見つめながら優ちゃんは意識を集中し続けていた。

 

 

 

 (大丈夫、もう少しでいけるから……!)

 

 

 

 シンイチの腕の筋肉はパンパンだ。

 顔にはいくつもの擦り傷、打ち身が出来ている。疲労で脚までガクガクと震えているし、もう立っているだけで精いっぱいだった。

 

 それでも彼は決してその腕と足を止めない!

 

 ナースゾンビを挟み込んで立っている友人の男もまた似たような有り様だった。だが、普段の弱気な言動は欠片ほどもない。

 

 あいつはいざ戦いが始まれば絶対に頼りになる奴なのだ。

 

 

 

 「ハァーッ……ハァッ、ハァッ……」

 

 

 

 シンイチの疲労は限界に達しようとしていたが、ナースゾンビの肉塊は目に見えて小さくなっておりその動きも鈍っていた。

 

 たくさんのメスの刃が突き刺さったその姿は、まるでサボテンかハリセンボンのようだ。もはやナースゾンビに戦う力は残っていないのかもしれない。

 

 しかし……。

 

 

 

 「……優ち」

 

 シンイチが優ちゃんに目をやろうとしたその時だった。

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