優柔不断ゾンビ~ゾンビだらけの世界で女の子と海に行こうとするバカの話。ゾンビだらけといってもゾンビがだらけているわけではない、念のため~   作:でぃくし

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抗え!生類抹殺の令

 

 「さっきまでいなかったよね。あの子たち」

 「今はお散歩の時間なのかも」

 

 ミニスカゾンビたちはこちらに襲い掛かる様子もなく、やはりどこか焦点の合わない目でぼんやりと前を見つめている。

 たまにびくっと痙攣するような動きをすることを除けば、その動作に人間らしさは感じられない。

 

 

 

 「ああ……あの尻に顔をうずめたい……」

 

 「……」

 「……」

 

 だが友人の男にとってはどうでもよいことなのだろう。ミニスカゾンビたちにねっとりした視線を送りながら、腐敗の具合を品定めしている。

 

 

 

 「なあシンイチ、お前はどの子が好みだ?」

 「そりゃ優ちゃんに決まってるだろー」

 

 「んーふふー」

 

 

 

 シンイチたちはとりあえず敷地内をふらふらと歩きながら見学する。グラウンドは荒れ果てており、校舎の半分が倒壊していた。

 花壇には突然変異を起こしたのかヒトデのような気味の悪い植物がいくつも生えている。

 

 ゾンビたちのうめき声のようなものも聞こえてくるが……まあそれはいつものことなので気にしたって仕方がない。

 

 

 

 これでも外のゾンビ地獄に比べればなんとも牧歌的というか、落ち着いた雰囲気の校内だ。

 

 

 

 「わあ、女の子がこっちに来てるよ」

 

 「おお、逆ナンかよ?うはは」

 「いや多くね?」

 

 これは一体どういうことだろうか?

 シンイチたちに向かってミニスカゾンビの集団がゆっくりと歩み寄ってくるではないか。

 

 

 

 「なら合コンか?」

 「いやそうじゃなくて……いやっ、ちょっと!多い多い多い!」

 

 

 

 先ほどまで数体だったミニスカゾンビの数はあっという間に増え、シンイチたちを取り囲むようにして続々と集結しつつあった。

 その数、100体以上!もはやこれは合コンなどという生易しいものではない、大合コンだ!

 

 

 

 そしてミニスカゾンビはシンイチたちを取り囲むと一斉に服を脱ぎ……などということがあるはずもなく!

 

 爪を振り上げ、牙を剥き出しにしながら襲いかかってくるのであった!

 

 その様はまさに死の津波!

 その冷たい体でかけがえのない命たちを押し流してしまうつもりか!

 

 

 

 「アァァアァァアァッ……!!」

 「ォオォォォォオォッ!!」

 

 「うひゃあ!誰でもいいから俺と付き合ってくれ!!」

 

 「おい、囲まれちゃまずい。あの建物に逃げ込むんだ!」

 「シンイチ!でもショットガンの弾はもうほとんどないぞ!」

 「落ち着け。大丈夫だ。俺に考えがある!」

 

 

 

 シンイチが示す方向には倉庫のようなプレハブ小屋が建っている。前方のミニスカゾンビたちを優ちゃんに蹴散らしてもらいながらシンイチは駆ける。

 

 「うはははっ!シンイチぃ!ミニスカの女の子に抱きつかれるぅ!」

 「落ち着け。喜んでんじゃねえっ!!」

 

 そしてシンイチと友人の男が倉庫へ逃げ込むと、それを追うようにしてミニスカゾンビたちも続々と建物へと雪崩れ込んで来た。

 

 

 

 先ほどのまで鈍重な動きはカモフラージュだったのか、ミニスカゾンビの脚力はあまりにも速かった。まさに死の津波、いやそれすら生温い地獄の大瀑布……それすなわち生類抹殺の令!

 

 だがしかし、天は彼らを見捨てなかった!

 

 シンイチの目論見通り、プレハブの中には大量の弾薬があるではないか!

 

 

 

 「えっ、なんで女子校にこんなもんがあんの?!」

 「校長とかが元特殊部隊か何かだったんだろ。どうでもいいから派手に使わせてもらおうぜ!」

 

 シンイチたちは素早くショットガンの弾を装填すると、ミニスカゾンビたちに向け散弾の雨を降らせる。

 

 

 

 「うわぁあぁ!みんなぁ、ごめん!ごめぇん!ごめんねえ!」

 「おらぁああぁあっっ!!」

 

 「えーい」

 

 優ちゃんがバスケットボールを投げつけると数体のミニスカゾンビがずどんと破裂し、血と臓物を派手にぶちまけながら砕けちった。まるでバズーカ砲だ。

 そしてシンイチたちの放った散弾は次々とミニスカゾンビたちの体を引き裂いていく。

 

 

 

 だがそれでもなおミニスカゾンビたちは止まらない。いやむしろより数を増して襲いかかって来るのだ。一体なぜなのだろうか?

 

 

 

 「シンイチ!この子ら普通のゾンビじゃねえぞ!撃っても撃っても立ち上がってくる!」

 

 「落ち着け。頭を吹き飛ばした奴は復活しない。狙うなら頭だ頭!」

 「わかった……しかし優ちゃんみたいなゾンビって中々いないんだな」

 「まあな、やっぱ普通のゾンビとの恋愛は難しいかもしれな……」

 

 その時だった。プレハブの壁を突き破り、無数のミニスカゾンビたちが室内に飛び込んできたではないか!

 

 

 

 「うおおぁおおぁおっ!!?」

 

 「くっそぉお!ミニスカなんか履いて期待させやがってよお!!むちむちした脚しやがってよお!!柔らかそうなお尻しやがってよお!!触らせろこのおぉぉっ!!」

 「落ち着け!」

 

 

 

 シンイチたちが散弾を浴びせてもミニスカゾンビは止まらない。

 しかもミニスカゾンビは前列の仲間を盾にして生き残り、後列のミニスカゾンビはその死体を踏み越えて進んでくるのだ。

 

 これぞ人は石垣、川あらば屍となりて川を埋める!

 士は己を知る者のために死すものなり!!

 

 

 

 「そりゃー」

 

 ついにミニスカゾンビがシンイチの眼前にまで迫ったその時!

 優ちゃんがソフトボールをぽいぽいと投げつけるとミニスカゾンビたちはまるで紙吹雪のように弾け飛びながら、血と臓物と肉片の嵐を巻き起こすのだった!

 

 

 

 「優ちゃん、ナイス!」

 「えへへー」

 「うおおぉおおっ!やったぜえええ!!」

 

 そしてシンイチたちが勝利を確信したその時であった。

 プレハブの壁を突き破ってさらにミニスカゾンビが乱入してきたのだ!

 

 「またかよ!もういいって!!」

 

 

 

 これは戦力の逐次投入ではない。

 むしろ敗北の局面においてこそ逐次投入という状況が立ち現れるのだ。

 

 もはやミニスカゾンビたちは三人の相手にならなかった。

 

 弾薬は大量に消費したもののシンイチたちはミニスカゾンビを鎧袖一触、彼女たちは立ち上がるそばからバタバタと倒れることしかできなくなっていた。

 

 

 

 「シンイチ、私すごい?」

 「すげえよ優ちゃん!愛してる!」

 「えへへー」

 

 

 

 無邪気な笑みを浮かべながらシンイチの首に腕を回すと、優ちゃんは彼と熱い口づけを交わす。

 

 なんという癒し。この温かさと柔らかさこそ生きる喜びではないか。

 ああ……今なら死んでもかまわない。

 

 いややっぱり死にたくない!

 

 ……とかなんとか葛藤をくり広げている間にミニスカゾンビの数はみるみるうちに減っていき、ついには最後の一体も動かなくなってしまった。

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