優柔不断ゾンビ~ゾンビだらけの世界で女の子と海に行こうとするバカの話。ゾンビだらけといってもゾンビがだらけているわけではない、念のため~   作:でぃくし

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校舎を覆う影!

 

 

「やっぱりこうなるんだな!優ちゃん、援護頼む!」

「うんっ!」

 

 

 

 そしてシンイチと優ちゃんは手分けをして迫り来るおっさんゾンビたちを次々に血祭りに上げて行く。

 

 デブゾンビにハゲゾンビ、デブハゲゾンビにチビデブハゲゾンビついでにレアめのヒゲゾンビ……だが倒しても倒してもきりがない。まるで腐った肉と脂肪のバリケードだ。

 

 

 

 「くっそ、キリがねえなこのおやじども!」

 

 

 

 シンイチはそう毒づきながらもショットガンをぶっぱなす。

 だが肝心のショットガンの弾数はもはや心もとない。

 

 そう、刻一刻と弾切れの時が近づいているのだ……。

 これは非情な現実であり、シンイチたちの戦いは決してサバイバルアクションゲームなどではないのである。

 

 

 

 「よっし、弾丸装填!」

 

 

 

 それでもシンイチは足元でくるくる回っていたショットガンの弾薬を偶然にも手にすると、再びゾンビへの攻撃を開始する。

 

 しかし、この藁の中で金の針を探し出すような幸運がどれだけ続くというのか!

 

 

 

 「シンイチ!もう弾がない!もうダメだあ!終わりだあ!」

 「落ち着け。まだそこにくるくる回ってるのがあるだろ」

 「シンイチ!体力回復用の薬ってどっちだったっけ?」

 「落ち着け。そっちの緑色の薬だ。青いのはスタミナ回復だからいらない」

 「シンイチ!呪文を封じられちゃったよ!何もかもお終いだ!」

 「落ち着け。お前は呪文なんか使えないだろ」

 

 

 

 もう一度言おう、ゾンビとの戦いはゲームではないのである!

 

 

 

 「シンイチ、このおじさんたちどこから来たの?」

 「……優ちゃん、俺も気になるけど今はそれどころじゃないよ!」

 

 

 

 そうこうしている間にも迫り来るおっさんゾンビの群れはどんどん数を増していく。

 一体どうしてこれだけの数がいるというのか……未だに屋上には数百体ものゾンビがひしめいている。

 

 

 

 おっさんを召喚したそばからゾンビ化する魔法のゲートでもあるのかもしれないが、今はそんなものを探っている暇はない!

 

 

 

 シンイチは焦りながらショットガンの引き金を引くが……。

 

 (あれ?)

 

 弾が出ない。どうやら弾切れらしい。

 

 そしてすかさず迫りくるデブゾンビたち。

 デブゾンビたちの動きは遅いものの頑丈で、弾丸をどんどん消費させられてしまうのだ。

 

 

 

 「くっそ!みんな退避だ!一度ここから出て体勢を立て直すぞ!」

 

 

 

 シンイチは優ちゃんの手を取るが……今度は屋上の入り口から大量のハゲデブゾンビが二人をめがけて押し寄せてくるではないか!

 まさに絶体絶命、しかしシンイチにはもう何も打つ手がない……!

 

 

 

 「俺が囮になる!みんなはその隙に逃げてくれ!」

 「シンイチ、そんなの絶対だめ!」

 

 

 

 打開策は何もない、しかし優ちゃんは決して諦めようとはしなかった。

 

 そんな優ちゃんの執念が類まれな偶然を引き起こす!

 

 

 

 びかびかと赤く点滅していたハゲデブゾンビを優ちゃんが蹴飛ばすと、ハゲデブゾンビは他のハゲデブゾンビを巻き込みながら連鎖爆発していく!

 そして周囲のゾンビたちの上半身をド派手に吹き飛ばし、致命的な大ダメージを負わせるに至ったのである!

 

 

 

 だがこのような偶然に頼っていても長くは持たないだろう。

 屋上にはまだ百体近いおっさんがいるのだ……!

 

 

 

 「優ちゃん、俺は君が傷つくことに耐えられない。だから……」

 「だめ!シンイチやみんなと離れたくない!」

 

 

 

 そんな優ちゃんの執念がまたも偶然を引き起こした!

 

 

 

 転がっていたおっさんの腕を優ちゃんがアンダースローで放り投げると、おっさんの 腕は血に飢えた真空ゾンビブーメランとなってハゲデブゾンビたちをばすんばすんと切り裂いていくではないか。

 

 おっさんの腕はまるで残された連中を地獄に引きずり込もうとするかのごとく、次々とハゲデブゾンビたちを血煙に変えていく!

 

 

 

 だがこのような偶然にどこまで意味があるというのか。

 屋上にはまだ五十体近いおっさんがいるのだ……!

 

 

 

 「いやそんな偶然あるわけねーだろ!?」

 「シンイチ、なに言ってるの!こっちは真剣!」

 

 「あ、ああ……ご、ごめんよ優ちゃん」

 

 

 

 迫りくる無数のゾンビの群れ!状況は依然として絶望的だ。

 

 

 

 優ちゃんはともかく、ショットガンのないシンイチたちに出来ることは限りがある。

 このままではシンイチも友人の男もおっさん集団に揉まれて大惨事間違いなしだ。

 

 そして貯水タンクの周辺では女子校生ゾンビのスカートの中をのぞこうとおっさんたちが足を滑らせ投身自殺をくり返していた。地獄絵図とはこのことだろう。

 

 

 

 しかし……。

 

 

 

 「優ちゃん!!」

 「シンイチ!!」

 

 決して諦めない二人が抱き合った時、それは起きた。

 

 見る者によってはただの偶然にすぎないだろう。

 だが人は運命の存在を予感させる偶然(それ)をこう呼ぶのだ。

 

 ……奇跡と。

 

 

 

 「あっ、足元にバットが落ちてるよ」

 「よしこれだ」

 

 

 

 シンイチは奇跡的にも足元に落ちていたバットを拾い上げると、迫りくるゾンビに向けてフルスイング!

 するとなんということだろうか!ジャスミートされたデブゾンビがあっけなく吹き飛んでしまったではないか!

 

 

 

 「すごいよシンイチー!」

 「へへ、ありがとう優ちゃん」

 

 

 

 「シンイチ!すげーぞこれ、あの王選手のサイン入りだぜ!」

 

 「落ち着け。誰だよそれ?」

 「伝説のホームラン王だよ!」

 

 

 

 友人の男は落ちていたホームランバットを拾い上げると、フラミンゴのような構えで迫りくるゾンビをカッ飛ばす!

 

 するとどうだ、四方八方に吹き飛んだゾンビたちがぼすんぼすんと鈍い音を立てつつ周囲のおっさんたちを爆死させていくではないか!

 

 

 

 「うおるぉあ!俺は最強だコラあ!!」

 

 これこそ9回表の逆転満塁弾!

 白球に願い乗せて、緑の芝に思い描いた青春。僕らの夏の奇跡はまだ終わっていない!

 

 

 

 「シンイチのバットってすごいね!」

 「ふっ、まあな。バットなら誰にも負けないよ」

 「でもどうしてバットが落ちてたんだろう?」

 「……それはきっと俺たちが『主人公』だからだよ」

 

 

 

 とかなんとかシンイチは言っちゃってるが、屋上にはまだ三十体以下のおっさんがいるのだ。状況はなんというか、多少は絶望的だったがどうにかなるレベルである。

 

 

 

 それからは一方的だった。

 

 

 

 シンイチがバットで応戦したかと思えば、優ちゃんはおっさんの頭をもぎ取っては別のおやじにずどんと一発ストライク。

 続いて友人の男がホームランをカッ飛ばしておっさんを蹴散らしていく。

 

 見る見るうちに屋上のゾンビと化したおっさんたちはその数を減じていき、ついに残り九体となった。絶望的!

 

 

 

 「シンイチ~!」

 「優ちゃん!」

 

 「お前らいちゃいちゃしてんじゃねえ!」

 

 

 

 だがここで、今回のレイドボスが登場だ!絶望的~!

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