優柔不断ゾンビ~ゾンビだらけの世界で女の子と海に行こうとするバカの話。ゾンビだらけといってもゾンビがだらけているわけではない、念のため~   作:でぃくし

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対決!ゾンビゴールデンハムスター

 

 「シンイチ!なんかデカいのが出てきたぞ!」

 「落ち着け。あれは……」

 

 「かわいー♪」

 

 

 

 規格外の巨大な体につぶらな瞳。

 

 ナースゾンビたちが趣味全開であつらえたドレスとショルダーバッグを身にまとって登場したのは、アフリカゾウのように大きなゾンビゴールデンハムスターだった!

 

 

 

 「もんがあ」

 

 

 

 そのあまりにもかわいすぎる姿にシンイチは思わずパイプ椅子を取り落とし、優ちゃんは目をハートにしながら飛びついたのだが……これは罠だった!

 

 

 

 「ぷべっ」

 

 ゾンビゴールデンハムスターは打ち下ろし気味の右フックで優ちゃんをコンクリートに叩きつけると、そのまま馬乗りになって優ちゃんを猛烈な勢いでタコ殴りにする。

 

 どどどどどど、とまるで削岩機のピストンのような猛スピードの連打で優ちゃんを圧倒すると、ゾンビゴールデンハムスターは立ち上がり勝利の雄叫びを上げた。

 

 

 

 「もんがあぁあーっっ!!」

 

 

 

 ナースゾンビたちの手で生まれ変わったゾンビゴールデンハムスターのゾンビボディは、その愛らしい見かけによらず活火山のマグマのごとく熱くたぎっていた。

 

 だがシンイチは見てしまった。

 愛する優ちゃんの体が枯れた枝のようにへし折れる姿を。

 

 ここでシンイチは怒りをついに爆発させたのである!

 

 

 

 「よくも優ちゃんを!ぶっ殺してやる!!」

 

 鉄球がごとし打ち下ろしを紙一重で回避し、シンイチはゾンビゴールデンハムスターの鼻づら目がけてパイプ椅子を打ち据えた。

 

 そしてそのままぐるりと体を捻り、回転しながらパイプ椅子を何度も叩きつける。

 

 それはまさにパイプ椅子を使った地獄の殺人竜巻!

 

 だったのだが……。

 

 

 

 「シンイチ!落ち着け!ぜんぜん効いてねえぞ!離れろ!」

 「落ち着……えっ!」

 「シンイチい!!」

 

 

 

 「もんが!」

 

 慌ててパイプ椅子を投げ捨て、シンイチはゾンビゴールデンハムスターから距離をとる。すると先ほどまで立っていた場所が炸裂し、コンクリートがごっそりと抉り取られていた。

 

 

 

 「あっぶねっっ!ンだよあれ!」

 

 「シンイチ!パイプ椅子じゃどうしようもねえ!いやあんな化け物、ショットガンでも……」

 「落ち着け。チャンスはあるはずだ。落ち着け」

 

 彼は自分に言い聞かせるように呟き続ける。

 

 

 

 しかしシンイチは知らなかった。

 

 このゾンビゴールデンハムスターは普通のゾンビよりも遥かに俊敏性が強化された超近接特化型ハムスターなのだ。

 

 シンイチに余裕を与えることなく、巨大なゾンビハムスターは怒りとパワーにまかせて猛然と突撃をくり出してきた。

 

 「もんっっ……がああああーっ!!」

 

 その巨体からは想像もつかないすさまじいスピード、まるでジェットエンジンを積み込んだブルドーザーのようだ。

 

 攻撃を受け流すことなど到底不可能だろう。

 

 わずかにかすっただけでも大きな衝撃が走り、シンイチはゴールポストにぶつかったサッカーボールのようにあっさりと跳ね飛ばされてしまう。

 

 

 

 「うっ!」

 

 

 

 膝から崩れ落ち、へたり込むシンイチ!

 もはやこの怪物を止める術はないのか、絶望しかないと思われたその時、友人の男が大声をはり上げる。

 

 「シンイチ!わかったぞ!こういう時はこれだ!」

 

 「落ち着け。それはバーベキューオイルと日焼けオイルじゃないか」

 「はは、まあ見てなって!」

 

 友人の男はオイルの栓を開け、どぼっと一面に垂らす。

 

 

 

 「もん?」

 

 するとゾンビゴールデンハムスターがオイルの海につるつると足を滑らせ始めたではないか!

 

 

 

 抜け出そうとすればするほど、踏ん張ろうと力を入れるほどにオイルは足を絡め取り、ついにゾンビゴールデンハムスターはぐるぐると回転しながらその場に転んでしまった!

 

 「も、もん?!もがっ!もんがぁーっ!!」

 

 ゾンビゴールデンハムスターがのたうちまわる隙を逃すようなシンイチではない。彼はすかさずパイプ椅子を振りかぶると渾身の力で尻に叩きつけた!

 

 「もん?!」

 

 もちろんシンイチは冷静だ。彼だってわかっている。

 

 ゾンビゴールデンハムスターの強大な皮下組織と筋肉の要塞を、パイプ椅子ごときで突破できるはずもないことは。

 

 しかしシンイチの狙いは別にあったのだ!

 

 シンイチはパイプ椅子を振りかぶると力任せの一発を再びゾンビゴールデンハムスターの尻へと叩き込む。

 

 

 

 「おらぁああっっ!もう一発!」

 「も、もーーーん」

 

 

 

 パイプ椅子でケツをしこたましばかれ、ゾンビゴールデンハムスターの巨体はオイルの海の中でくるくると回り続ける。腐ったオイルにまみれながらのたうち回るゾンビゴールデンハムスターは大混乱だ。もはやどこにも力など入るはずもない。

 

 シンイチはその隙を逃さず、すかさずもう一発パイプ椅子を打ち込んだ!

 

 

 

 「おら、行け!行けぇー!」

 「っしゃあああ!行け行けぇえ!」

 

 

 

 友人の男が応援する中、ゾンビゴールデンハムスターはカーリングのストーンよろしく、オイルまみれの床をぬるぬると滑りながらシンイチに押されるように屋上を突き進んでいく。

 

 

 

「もっ!もっ!?」

「行けぇー!!」

 

 

 

 そしてついに……。

 

 ゾンビゴールデンハムスターはなす術もなくフェンスに激突、そしてそのまま押し潰すようにフェンスをなぎ倒しながら屋上から真っ逆さまに転落してしまった!

 

 

 

 「もぁあぁぁあぁ……」

 

 

 

 そう!これこそが期限切れのオイルを使ったゾンビの調理法である!

 

 

 

 「シンイチ!やったな!」

 「落ち……違うよ。ぜんぶお前のお手柄だ。いや、優ちゃん!大丈夫か!」

 

 

 

 「えへへ……シンイチ、怖かったぁ……」

 

 優ちゃんはぐしゃぐしゃになった体でシンイチにしがみつく。かろうじて動いてはいるものの彼女は生気を欠いていた。

 

 流石の彼女も体組織を失いすぎたことで受けたダメージを修復することが出来なくなってしまっているのだ。

 

 

 

 しかしこれは身から出た錆であることも間違いなかった。

 油断と慢心が引き起こした事態なのである。

 

 今度ゾンビゴールデンハムスターを見たら絶対に逃げなければいけないだろう。

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