優柔不断ゾンビ~ゾンビだらけの世界で女の子と海に行こうとするバカの話。ゾンビだらけといってもゾンビがだらけているわけではない、念のため~   作:でぃくし

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待ち合い室で待ち受ける者

 

 「ところでその研究ってなんなんだよ?」

 

 『ふん、決まっていよう!それはバイオ生命体の研究だ!お前たちはゾンビ動物とでも呼ぶかもしれんがな』

 

 

 

 「なんで動物病院なんかで研究してるんだよ。もっとでかい病院とかまともな設備のある研究所があったろ?」

 

 『ははは、バカめ!何も知らないのだな!その種の場所はゾンビパンデミック黎明期に暴動の舞台となりことごとく破壊され、略奪の対象となったのだ!もはや何も残っておらん!』

 

 「そっか、そんで残ってたのがこういう動物病院ってわけだな」

 

 『そういうことだ。バイオ生命体……ありとあらゆる細胞と拒絶反応なく融合し驚異的な……まあいいだろう。一階の待ち合い室へ行け。最強のバイオ生命体がそこでお前たちを待っている』

 

 

 

 「まあこっちも行くつもりだけどさ、最強だ~つってウイルスだの毒ガスやらをばら撒くだけとかそういうつまんないのはやめてくれよ」

 

 『貴様ら劣等種でもあるまいし、そんなだまし討ちのような真似はせん!私はバイオ生命体でこの世界を覆い尽くし、神となる存在なのだからな!』

 

 「へえ、まあせいぜい頑張ってくれ」

 

 

 

 そしてAIは一方的に通信を断ってしまった。

 どうやらシンイチたちのことを完全に敵と認識しているらしい。

 

 

 

 「なあシンイチ、あいつって本当にAIなのか?」

 「さあどうなんだろうな。でも相当な寂しがり屋だろうな」

 「ん?どうしてだ」

 

 「本当は自分のことを誰かに見て欲しくて仕方なかったんだろう。神だなんて自称するのがその証拠だよ」

 

 

 

 シンイチと友人は互いに笑い合うと、いよいよ一階へと向かい歩き始めた。

 

 しかしあれだけいたはずのナースゾンビたちの姿はどこにも見当たらず、院内には不気味なまでの静けさが漂っていた。

 

 

 

 (優ちゃん……)

 

 

 

 最大戦力である優ちゃんは今は本調子とはほど遠い状態だ。

 

 最強のバイオ生命体とやらがゾンビゴールデンハムスターよりも強い相手ならシンイチたちにはどうしようもないかもしれない。

 

 それでもシンイチが諦めることなど絶対にありえないのだ。

 

 

 

 かくして三人は一階の待ち合い室へと戻る。そこは訪れた時と同様に半壊していたが、今やその中央で巨大な何かがうごめいていた……。

 

 衝撃の実話を基に予期せぬ恐怖に襲われるサバイバル・ヒューマンドラマが今始まる!

 

 

 

 「……う、うはぁあ……」

 

 

 

 シンイチたちはその姿を見て思わず息を飲む。

 それはまさに悪夢だった。

 

 「はあーはあーっ、はあーっ……アァア……」

 

 腐敗した色合いの巨大な腫瘍の塊。そこから突き出したコブのような複数の頭とイソギンチャクの触手のように揺らめく無数の手足。

 

 そしてその隙間からはいくつもの乳房が垂れ下がっている。

 

 

 

 そう、それは何体ものナースゾンビたちが絡み合い混じり合い、そして溶け合いながら一つに融合した恐るべきバイオ生命体だったのだ。

 

 

 

 「き、キモっ!」

 「なっ、なんだよこれ!?おっぱいだらけじゃん!!」

 

 「アァアアァ……」

 

 

 

 その姿はまるでナースの死体で作った肉団子のようだった。

 どうやらつい先ほど生み出されたものなのか、床や壁にはナースゾンビたちだったものが飛び散り、ぼたぼたと汚らしく滴っている。

 

 でも……。

 

 (こんなものが最強……?)

 

 シンイチは少しがっかりしていた。

 見た目こそおぞましいものの、それだけだ。まるでゾンビゴールデンハムスターの敗北を想定していなかったAIが、苦し紛れに生み出したような存在……。

 

 

 

 まさか、先ほどの自爆装置をめぐる一連の間抜けなやりとりはこいつのための時間稼ぎだったのだろうか?

 

 

 

 しかし、自分たちは出し物を見に来たわけではない。どうにかしてこの不気味な怪物を退けねばAIは脱出を許さないだろう。

 

 

 

 「シンイチ、わたしも戦う……」

 「……優ちゃん、無理しないで」

 

 「大丈夫だよ、どこか痛いんじゃなくて、すっごく眠いだけだから……うぅ……」

 

 

 

 シンイチが床に降ろされた優ちゃんは眠そうな目をこすってふらふらと立ち上がる。だがやはり体力が戻りきってないのか、その動きはどこかぎこちない。

 

 このまま最強のバイオ生命体とやらと戦っても彼女にとって辛いだけだろう。あるいは取り返しのつかないことにもなりかねない。

 

 

 

 シンイチは優ちゃんをぐっと押し留める。

 

 

 

 「優ちゃん、もちろん俺たちだけじゃ勝てない。だから君にも戦ってほしい」

 「うん……」

 「けど今は少しだけ休んでいてくれ」

 「え?」

 

 シンイチの言葉に優ちゃんはきょとんとした顔をする。

 

 「俺たちが出来る限りあいつを消耗させて、時間を稼ぐから」

 「で、でも……」

 「大丈夫だ。最後のとどめに優ちゃんの最高の一撃を頼む!」

 「シンイチ……」

 

 「一緒にがんばろうぜ」

 「わかった!待っててね!」

 

 シンイチの言葉は優ちゃんの心に届いたようだ。

 彼女の力強い言葉にシンイチは安心する。

 

 優ちゃんの様子を見届けたシンイチは友人の男と向き合う。

 

 

 

 「おい!お前もそれでいいよな?」

 「あ?ああ、もちろん!」

 「おっぱいだらけだからって油断するなよ」

 

 「当ったり前だろ、あんなにあっても手も口も足りねえよ!」

 

 

 

 二人は相変わらずいつも通りの言葉を交わす。

 

 そんなシンイチたちの態度に気を悪くしたのかナースゾンビが咆哮を上げた、とうとうシンイチたちを敵と認めたのだ!

 

 衝撃の実話を基に予期せぬ恐怖に襲われるサバイバル・ヒューマンドラマが今始まった!

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