immortality Undertale 〜不死身博士との冒険譚〜   作:月夜見優

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 (掛け持ちしてなんなら他作品の主人公ifみたいなの作ったけど後悔はして)ないです。
 (これも見切り発車だし続けるかどうかは評価次第だったりし)ないです。



プロローグ
深い闇からの始まり


 

 深い、深い、闇の中。

 

 一人の青年が横たわっていた。四肢はドロドロに溶け、頭は半分もなく、あちこちから血が溢れているその様は、誰が見ても痛々しいものだった。彼には右目がない。手がない。足がない。肝臓が、胃が、食べるための口が、味わうための舌がない。彼の穴という穴からは血のようなものが常に流れ出ていた。

 

 青年はまるで闇に沈んでいるようだった。彼は奥底深くで眠ってしまいたいと思っていた。

 

 青年はまるで闇に浮いているようだった。彼はこのまま闇に身を任せ、何処かしらに流れ着きたいと思っていた。

 

 青年はその瞳を開かない。彼は血のように見える赤茶の瞳を開けない。彼はもう自分の体を見たくないと思っていた。

 

 青年は髪を揺らさない。彼は血に滲みながらも煌めく茶色の癖毛を揺らせない。彼はもう動きたくないと思っていた。

 

 青年は涙を流さない。彼は閉じ切った茶色のまつ毛を濡らさない。彼はもう涙を流すくらいなら此処から出たいと思っていた。

 

 

 

 あァ、もう嫌だ。何故あの時、引き換えさなかッたンだ。危機信号を体が発していたのに。危険だと分かッていたのに。

 

 

 

 青年は後悔(repent)を抱いた。過去の自分を責めた。過去の行動を反省した。どうしようもないと分かっていながらも、後悔(repent)を抱いた。

 

 

 

 あァ、まるであのSCiPのような空間だ。彼もここに似た空間で苦しンだのか。ただでさえ彼には愛おしくて堪らないであろうパートナーがいたと言うのに。

 

 

 

 青年は哀憫(compassionate)を抱いた。創作された彼を哀れんだ。彼の痛みを理解した。どうしても痛みを和らげてはあげられないと分かっていながらも、哀憫(compassionate)を抱いた。

 

 こうも青年が苦しむことになったのは、遥か数年前に遡る。

 

 

 


 

 

 

 遡ること数年前。

 

 青年は宅配業者だった。その会社はとても有名で、どんな所であろうとも届けられる、密林の名を冠した会社だった。

 

 青年は特殊だった。幼い頃に神隠しに遭って以来、怪異などによく遭遇し、それに対抗する体質になった。それ故に、体で危機は感じつつも、心では特に警戒もせずに油断するようになっていた。

 

 青年は特殊であるが故に、馬車馬の様に働かされた。危険な場所からも無傷で帰ってきたからだった。彼のおかげで、この会社は更に評価が上がった。

 

 彼の心はすり減っていた。いくら自身の身は安全とはいえ、休暇は殆どなかった。故に、心理的疲労が溜まって、同僚とも喧嘩をしてしまった。同僚はそのまま会社を辞めた。彼の心はまたすり減った。

 

 青年は疲弊していた。視界は狭まり、幻覚のような物ですら見え始めていた。それは仕事中であっても同じだった。故に、現実との区別がつかなくなった。

 

 青年は油断していた。目の前の深い闇を幻覚だと思っていた。森の奥深くにあるにも関わらず、自身の体が危険信号を発しているにも関わらず、その闇に身を投げ出してしまった。

 

 

 

 

 かくして、青年は今に至るまで、この闇を彷徨った。

 

 

 


 

 

 

 暗い、深い、闇の中。数歩先ですら見えないような、闇の中。

 

 青年の後悔と哀憫に答えるように、

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤い光が、煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 *随分と 耐えたね 。 君を 助けて あげよう 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤く煌めく宝石の嵌め込まれたネックレスが、青年の元へと舞い降りる。意識が薄れ行く中、彼は無意識ながらもない筈の手を伸ばす。指をピンと張らし、少しでも近付けるようにと差し向ける。

 

 

 

 負けて、たまるか。はやく、一刻もはやくこの闇から、出るンだ。このクソッタレな空間から……!

 

 

 

 伸ばす。腕からは血が滝のように溢れ出る。ドロドロと音を立てて溢れるその様は、彼を酷く不快にした。しかしそれでも彼は諦めない。

 

 伸ばす。もう無い足(上半身)を動かして、必死に近づく。中々進めない事実に、彼は苛立った。しかしそれでも彼は諦めない。

 

 伸ばす。閉じ切っていた瞳を開いて、赤い光を睨みつける。時折目に血が入ってしまい、光を見失ってしまうことが、彼には耐え難かった。しかしそれでも彼は諦めない。

 

 あと、もう少し。

 

 

 

 「っァ……ァァアアア!!」

 

 

 

 僅かにしか残っていない力を振り絞って、青年はネックレスに接近する。あとほんの数cm。届く、届く!ここから、出れる!やッと、この地獄みてェな空間から、出られる!

 

 

 

 

 

 

 だが、現実は残酷。

 

 

 

 

 

 必死に()()()()()()()()()は、空中を掠めた。彼には腕が無いのだから、無論届く筈がないのだ。彼の半分もない顔には、絶望の表情が浮かぶ。彼の瞳には、救いようのない赤い現実(レッド・リアリティ)が映っていた。

 

 

 

 「…ァ……ァァァアア!!!ぃゃ、ぃやだいやだいやだ!!!」

 

 

 

 激しい咆哮が暗闇に響き渡る。彼の力の殆どはもう無い。

 

 しかしそれでも青年は踠く。たとえどれほど踠こうとも触れられないという事実を分かっていながらも腕を伸ばす。彼はまだ諦めていなかった。ただ生に対する執着が、解放に対する執着が彼を突き動かしていた。

 

 

 

 いやだ、おれはまだいきるんだ!ふざけんな!なにがなんでもここからでるんだ!たとえどんなめにあっても、どんなだいしょうをはらっても!

 

 

 

 半分しかない、溶けつつある脳の内で、ただ喚く。生きる、生きたい、ここから出る、出たい。そんな思いが彼の脳を支配していた。

 

 

 

 *ふむ 。 やはり 君は 相棒(パートナー)に 相応しい 。 試すような マネを して すまなかったね 。

 

 

 

 

 青年の耳に、聞いたことのない男性の声が入る。彼は幻聴だと思い、頭を振ってまたネックレスに近づこうとする。まだ、まだだ!まださわれるはずだ!おれにはからだがまだあるんだ!あきらめるな、もがけ!

 

 

 

 

 彼の思いが実ったのか、はたまた声の持ち主が彼に感心し動かしたのか。どちらにせよ、彼にとって救いとなる出来事が起こる。

 

 

 

 

 

 

 救いようのない赤い現実(レッド・リアリティ)を映すネックレスは、何かによって青年の首に掛けられた(現実を改変された)

 

 

 

 

 

 

 

 

 *よろしく 頼むよ 相棒(パートナー) 。 私の 名は ジャック ブライト 。 ブライト博士 と 呼んでくれ 。

 

 




 
 ブライト博士の口調むずかちいです。(白目)
 なお当人はSAN値ピンチの二人目の模様。

 穴繋がりのSCPでブライト博士がSAN値ピンチな理由が分かるかと思いまする。レッド・リアリティって、絶望感がいいよね。

SCP-3001 - Red Reality
by OZ Ouroboros
http://www.scp-wiki.net/scp-3001
http://ja.scp-wiki.net/scp-3001 (和訳)

Personnel Director Bright's Personnel File
by AdminBright
原版:http://www.scp-wiki.net/dr-bright-s-personnel-file
和訳:http://ja.scp-wiki.net/dr-bright-s-personnel-file

SCP-963 - Immortality
by AdminBright
原版:http://www.scp-wiki.net/scp-963
和訳:http://ja.scp-wiki.net/scp-963

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