傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第一話:ボロボロのエルフ

「よおベルク、こんなところに顔を出すなんざめずらしいな」

「ちょっと買い物来てたからね。奴隷なんて商売、やめたらどうだ??」

「ハッ、俺がいなけりゃ死んだ奴らも大勢いるからな」

 

 俺の名前はベルク・アルフォン。

 これは、この世界での名前だ。

 

 数年前、この王都オストラバへやってきた。

 

 それも、異世界転生というやつだ。

 

 元々はブラック企業で働いていたただのサラリーマンだった。

 しかし気づけば森の中。

 

 だがその前に女神と出会った。

 

 ほしい能力を授けてやろうと大盤振る舞いで。

 

 俺は、三つの能力をもらった。

 

 一つは、物を作る才能だ。

 

 これはとても便利で、一度より二度目、三度目より四度目と必ず良いものができる。

 

 当たり前だろ、と思うかもしれないが、普通はそうはいかないもんだ。

 

 二つ目は、錬金術の豊富な知識。

 

 といっても全部が頭に入ってるわけじゃなく、頭の中でページをめくるような感じだ。

 なぜこれを選んだのかというと、単純に物を作りたかったから。

 

 無双に憧れる年齢でもないからな。

 

 三つめ、人には言えないスキル。

 

 秘密にすることで発動しているものだ。

 これだけは言えない。

 だがこれのおかげで俺は生きているだろう。

 

 

 そして今、その効果が発動しているのかもしれない。

 

「……彼女(・・)は?」

「ああ、前の主人が相当ひどかったんだろうな。ほらみてみろ」

 

 奴隷市場は、この王都で合法な商売だ。

 というより、異世界ではよくあること。

 

 人権は無視していると思うが、奴隷の中には望んでいる人もいる。

 

 そして俺の目の前には、手足がなく、耳がつぶれ、目もないエルフが横たわっていた。

 これが、奴隷?

 

「ひどいな」

「ああ、エルフはこれでも売れるみたいだからな。といっても、随分と安いが」

「金貨二枚か」

「ああ、買うか?」

 

 今まで奴隷を買おうと思ったことはない。

 それが良心からかどうかは俺もわからないが、当然だと思った。

 

 だが、目の前の光景が可哀そうだとも感じた。

 

 ……人助け、されど研究か。

 

「ちょうど実験したかったんだ。金貨一枚でどうだ?」

「一枚だぁ? ――まあいいか、売った」

 

 そして俺は、初めての奴隷を野菜籠で家に運んだ。

 

 

「――ふう」

 

 荷物を降ろすように籠をそっと卸す。

 家は一軒家の一階だけの借家で、そこまで大きくはない。

 

 といっても、借りるまでにかなり時間がかかった。

 色々な商品を卸して商人としての資格を取るまでお金がなかったからだ。

 

 今の俺の資金源はポーション。

 

 そう、この子はその実験として使う予定だ。

 

 これがひどいことなのかどうかはこれからで決まる。

 

 回復すれば善。

 死んでしまえば悪。

 

 でもそれが世界だとわかっている。

 

「聞こえるか? 聞こえないよな」

 

 耳に触れてみるが、反応がない。

 肌は傷だらけ。皮膚感覚はあるみたいだが、ビクビクしている。

 

 ここまでするとはよほどひどい奴だったのだろう。

 

 ひとまず手持ちのポーションを飲ませようとしたが、どうにも胃袋が受け付けないらしい。

 

 仕方ないので小さな桶にありったけのポーション入れて湯に浸からせるように浴びせさせると、少しだけ頬が緩んだ。

 

 さて、これが第一歩になるといいが。

 

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